ファミスタ3

【ふぁみすたすりー】

ジャンル スポーツ(野球)
対応機種 ゲームボーイ
発売・開発元 ナムコ
発売日 1993年10月29日
定価 4,900円
プレイ人数 1~2人
判定 なし
対応周辺機器 バーコードボーイ
ポイント 旧来のスタイルを引き継いで進化
選手をバーコードから発掘
シリーズ初「選手が成長」(ただ成長しすぎると…)
ファミスタシリーズリンク


概要

1993年10月にナムコから発売された人気野球ゲームシリーズ『ファミスタ』のゲームボーイシリーズ第3弾。
野球ゲームとしての根本的なゲーム性はこれまで通り前作から引き継いでいる。
またゲームボーイシリーズの最終作でもある(『4』は実質本作のマイナーチェンジでオムニバスタイトルの収録作品)。

前作との間にはファミコンの『'93』とスーパーファミコンの『スーパーファミスタ2』があるが、ハードが異なる都合上同等に扱うのは無理があるため、本項目ではゲームボーイの前作『ファミスタ2』との違いを主に扱うものとする。


内容

  • イニング選択が5or9回から1or3or5or7or9回と幅広くなった。
    • ラッキーセブンに代表される(9回制で7回)ラッキーイニングは7回制なら5回、5回制なら3回、1・3回制なら2回になる。
      • つまり1回制だと延長にならない限り突入しない。
      • 今までのゲームボーイのシリーズではラッキーイニングはただ単に「全員がバットフリフリの絶好調になる」だけで特別なデモの挿入はなかったが、初めてデモ演出が導入された。
  • リーグを構成する球団は日本プロ野球12球団+「ナムコスターズ」+「オリジナルズ」で計14球団。
    • 「オリジナルズ」は後述の通り、プレイヤーが作るチームで名前を自由に変更できる(略号は「O」で固定)。
  • ゲームボーイシリーズでは球場はいつも2つだったが、本作で3つになった。
    • しかもこれまでのような当り障りのない球場だけでなく変則的なものもある。

球場ラインナップ

球場名 モデル球場 左翼 右翼 中堅
うまか~ドーム 福岡ドーム 122m 100m 100m 人工
ひらめ球場 オリジナル 115m 95m 125m 天然
かれい球場 オリジナル 99m 110m 125m 天然
  • 『スーパーファミスタ2』に続いて本作もナムコスターズに女性キャラが登場している。
  • 前作での足の遅さによる珍しいアンバランスはなくなり、鈍足な選手でもそこそこ速くなった。もちろん前々作のような投高打低というわけでもない。
    • これにより、旧来のファミスタによくあった乱打戦スタイルなバランスになっている。
  • 前作ではピッチャーがファミコンシリーズのように先発とリリーフに紐づけられていたが、それもなくなった。

バッテリーバックアップによる公式戦

  • 公式戦がバッテリーバックアップにより、いつでも中断ができるようになった。
    • 旧来通り自チーム以外の全球団相手に勝利すると隠しチームとして「ダイナミック関西」と「オールジャパン」が登場する。
      • 「ダイナミック関西」選手名が関西弁。
      • 「オールジャパン」選手は全球団のオールスターだが能力が本物よりも高く、全員俊足で別人同然の強さを誇る。
  • 試合後には結果告知の「ナムコットスポーツ」の後に個人成績が発表されるが、前作のような総評や採点のような機能はなくなった。
    • 試合後はセーブが必須で、しないとタイトルに戻されて単発試合になる。

オリジナルチーム

  • 「オリジナルズ」として1枠用意されており、まず「チームコピー」で他の12球団+ナムコスターズのいずれかからコピーして、まずオリジナルチームの基盤にする。
    • チーム名や選手名は変更できる。
    • その後も他のチームの選手を個別にコピーできる(同時にいらない選手を除外)が、その時は2ポイントが必要。
      • ポイントは公式戦で勝つことによって1ずつ得られる。
  • 他球団のみならず『バーコードボーイ』と連動し、バーコードデータを読み込んでそれが選手データに変換される。
    • 読み込んだ選手を採用する場合も上記と同様に、誰かを外す形になる。
  • 試合はポイントだけでなく、選手自身のステータス成長にも繋がっている。
    • バッターはヒットを打てば打率が上がり、凡退すると下がる。ホームランは1本打つごとに上昇するのみ。
    • ピッチャーは1イニングあたりの失点を一定数に抑えるほど防御率の数字が下がり、一定数以上に取られると上がる。スタミナは長いイニングを投げて勝つことで上昇。上記の打撃に関してはどれだけ打とうが無関係。
      • これらはセーブしなくても上がったり下がったりする。

新機能「スコアブック」

  • 公式戦に限らず今まで行った1Pでの試合は全て記録される。
    • 球場別勝敗データ
      各球場毎のプレイヤーベースでの勝敗の累積。
    • チーム別勝敗データ
      各チーム毎のプレイヤーベースでの勝敗の累積。
    • 打撃データ
      トータルの打席数から、安打、二塁打、三塁打、三振、四死球、盗塁、得点の累計と、通産の打率、1試合の最高得点。
    • 守備データ
      投球回数、被安打、被二塁打、被三塁打、被本塁打、失策、完投数、奪三振、与四死球、与盗塁、失点の累計。

評価点

  • 旧来通りの点の取り合いが激しいエキサイティングなゲーム性。
    • 前々作は『'87』を上回るほどの投高打低、前作は極端な鈍足揃いとイマイチ盛り上がりに欠けるバランスだったのが改善された。
    • これにより球場の広さが全体的に広くなったにも拘わらず、点の取り合いが楽しめる。
  • 球場バリエーションはゲームボーイシリーズ最多。
    • これまで常に2つしかなく、広いと狭いだけの違いしかなかったが、3球場に増えて、しかも右有利、左有利という個性も出ている。
    • このような球場はシリーズ過去例としては『'90』の「ふえいふえい球場」(モデルはアメリカの「フンウェイパーク」)のみ。
  • オリジナルチームはやればやるほど強くなるシステム。
    • 過去に『究極ハリキリスタジアム』などでもあった機能だが、ファミスタでは初導入。
    • しかもほとんど積み上げ式なのでちょっとのミスを気にすることなく、強くなっていきやすいので初心者にとっては負けっぱなしでやる気がなくなるような悪循環に陥りにくい。
  • バーコードボーイによる選手発掘の楽しさ。
    • 既存選手のコピーからの強化も悪くはないが、完全にオリジナルな選手を育てられる楽しさは、より一層拘りも湧く。
    • ただ残念ながら、バーコードブームには間に合わなかったため、それほど活用されなかったのは残念なところ。
  • バックアップシステムのフル活用。
    • リーグ自体は総当り15試合なのでこれまでのようなパスワード制でも用は足りるが、本作はそれを細かいデータ蓄積に使っている点が一味違う。
    • もちろん、これまでの作品でパスワード自体は短くて苦にはならないレベルだったとはいえ、バッテリーバックアップでスムーズな再開ができるようになったことそのものも便利には違いない。
  • これまで5or9回の二択だったイニング選択がゲームボーイシリーズで初めて拡大。

問題点

  • 育成をし過ぎると大味なものになりやすい。
    • 評価点とは反対の意味で、元々打高投低のバランスでしかも長打力にあたるホームランは下がることがないためホームランの数はガンガン上がっていくためホームランばかりになりどんどんバランスが悪くなる。
  • 鈍足すぎてワザと落としてゲッツー狙いの邪道技が有効だった前作とは反対に足が速すぎる。
    • 本作は大体の野手がそれなりに足が速いため、CPU相手ではピッチャー真正面さえ避ければだいたいセーフとなるためセーフティバントばかり狙ったりする前作とは違った邪道技が有効になっている。
      • ただ内野安打の場合は上記の成長の対象外なので、こればかりが得策にならないようにはなっているのが幸いか。
    • また、このためにファミコンの『'92』以来、超俊足がより際立ったはずのナムコスターズの「ピノ」が速いには違いないもののそこまで超人的でないかつてのバランスに逆戻りした残念な一面も(一応ピノはピッチャー真正面でもバントヒットが狙えるぐらいのアドバンテージはある)。
      • 更にピノだけでなく、俊足を武器とした選手たちがあまり目立たなくなってしまった。
      • 反対に目を向ければピッチャーは遅さが目に見えて際立ってしまうほどで、これまで以上にあからさまに大穴になってしまっている。
  • 相変わらずボールが遅め。
    • 実際に出てくるスピードが見た目と合っていなく感じられることが多々ある。

総評

オリジナルチームと育成という新しい楽しみ方を生み出した点は非常に高く評価できる。特にバーコードボーイとの連動は遅きに失しなければオリジナル選手の発掘でより個性的なチームを作っての対戦が盛り上がったことだろうと思うと惜しまれる。
新しさやシリーズの中でのオリジナリティという点ではスコアや勝敗の集計機能なども、これまでのファミコンやスーパーファミコンシリーズにもなかったことをバッテリーバックアップの機能を活かして実現していることも見逃せない。
反面、やはりまだこのようなシステムに慣れなかったためか、強打ばかり際限なく上がってしまうなど、ある程度のバランスを保てず、かなりアンバランスな野球になりやすい点が玉にキズである。
育成を抜きにこれまでの試合のバランスでは相変わらず球速と釣り合わない見た目の遅いボールや、不自然に足が速い選手が圧倒的に多くなったことでその個性の1つが潰されてしまったという残念な一面もある。


その後の展開

  • 直近では1993年12月1日にファミコンでの年度ナンバリングでは年末恒例の時期に『ファミスタ'94』(実質『'93』にあたる)を発売。
    • ファミコンの年度ナンバリングでは最終作であり、ナムコのファミコン用ソフトとしても最後の作品となった。またファミコン最後の野球ゲームでもある。
    • 本道がスーパーファミコンに移ったこともあってか『'93』に初搭載されたクイズもなくなってシンプル路線になり選手はずんぐり体形に戻っている。
  • 『スーパー』のシリーズでは3作目『スーパーファミスタ3』を1994年3月4日に発売。
    • スーパーファミスタ』と『スーパーファミスタ2』はさほど差がない「マイナーチェンジ+α」程度だったが、この作品では選手のグラフィックが旧来を踏襲しつつ一新し、BGMが歓声混じりになったりファインプレーなどのアクションもスムーズになるなど試合のシステムそのものまで進化したものになっている。
    • またファミスタシリーズ初の130試合のリーグ制を導入している*1。それに合わせてバッテリーバックアップを『スーパー』シリーズ初導入。またデーゲームとナイターを選択できるようになるなどリアル路線を追求している。その反面球場のバリエーションは2つと更に減少した。
    • 上記『'94』でファミコンの年度ナンバリングシリーズが終焉を迎えたためこの作品以降『スーパー』のシリーズに一本化される。

『ファミスタ4』について

  • ゲームボーイでのシリーズは本作が最後となるが、番外的に1996年11月29日発売『ナムコギャラリーVOL.2』のバリエーションの1つとして『ファミスタ4』が収録されている。
    • 『ファミスタ4』は本作を踏襲したものになっており、パッケージ裏の登場年が本作に準じて1993年でクレジットが「1993 1996 NAMCO」となっている*2
    • 根本的に本作のシステムで作られているが、バーコードボーイ関連の機能がカットされ、同時にバッテリーバックアップや、それに伴うスコアブック機能もなくなり、公式戦は旧来通りのパスワード制に変更されている。つまり事実上本作の簡易版のようなもの。
    • バーコードボーイ対応がなくなったこの作品でも「オリジナルズ」は存在するが選手はアメリカの地名になっている。もちろん成長したりもしない。
      • 選手の名前だけを見ると『スーパーファミスタ』の「アメリカンズ」のように思えるが能力は弱いのでメジャーモデルというわけでもないようだ。もちろんその年の3月に発売した『スーパーファミスタ5』の「アメリカンズ」で登場した野茂モデルの「ジャパン」*3もいない。
      • そのため地盤である野球のシステムは同じでもかなり物足りない出来になっている。
    • 他に『スーパーゲームボーイ』(1994年10月発売)を使うことにより、カラー画面に加えて通信ケーブルを使わずしてノーマルのコントローラーで2人対戦ができるという特徴がある。
    • 選手データ自体は1996年シーズン準拠であり1996年決定版ベースでのファミスタはこれのみである(開幕時ベースなら『スーパーファミスタ5』が該当する)。
      • 全体的には『ファミスタ4』と言うより『ファミスタ3 '96選手データバージョン』という感じである。

余談

  • 本作のオリックスブルーウエーブで代打に入っている「すずき」は鈴木一朗、つまり後のイチローである。
    • まだ当時はデビュー2年目で野手として伸び悩み、一軍に定着できなかった時期であったため能力は非常に低い。足は速めとはいえ他が皆そこそこ速いので目立たない。
    • 元々はピッチャーで入団時のドラフトでも4位と目立たない存在だっただけに、もし近い将来大物になると予見していたのであればその先見性には脱帽としか言いようがない。
      • イチローが鈴木一朗時代に収録されているのはシリーズでも本作のみである。次は「イチロー」として『スーパーファミスタ4』(1995年3月発売)で登場。
  • バーコード入力時にバーコードボーイを接続していなかったり認識されないと「ビー!」というアウトのSEが鳴る。
  • 本作は『バーコードボーイ』対応では最後のソフトとなった。
    • 後述の通り、発売した時期が遅きに失したこともあって対応ソフトは本作を含めわずか5本(専用は2本)という残念な結果となった。
  • 前年発売された周辺機器『バーコードボーイ』のルーツは言わずもがなエポック社が1991年3月に発売しブームを巻き起こした『バーコードバトラー』である。
    • 『バーコードボーイ』と同じ1992年12月にはファミコン対応のバーコードリーダー『データック』もバンダイから発売されている。
    • だがその時すでにバーコードブームは終焉に向かいつつある時期で双方とも遅きに失した結果となった。そしてそれを発売した両社は奇しくも2005年に合併することになる。
      • 1998年12月11日に『バーコード対戦 バーディガン』(タムソフト)というバーコードを読み取って対戦するゲームがゲームボーイカラーで発売されたが、専用のバーコードリーダーが付属しており『バーコードボーイ』には対応していない。
最終更新:2024年08月13日 12:58

*1 因みにこれはファミコン時代のライバルシリーズは既に1991年あたりに実現していたのでかなり遅い。最速は1987年7月発売の『燃えろ!!プロ野球』(ジャレコ)。

*2 『ギャラクシアン』は1979年『ディグダグ』が1982年『ドルアーガの塔』が1984年。

*3 この年のモデルとなった1995年シーズンは野茂がドジャースで鮮烈なデビューを飾った。それまで所属していた近鉄退団からメジャー移籍に纏わるゴタゴタの反動もあって、より衝撃的なニュースとなった。