スーパーファミスタ

【すーぱーふぁみすた】

ジャンル スポーツ(野球)
対応機種 スーパーファミコン
発売・開発元 ナムコ
発売日 1992年3月27日
定価 7,900円
プレイ人数 1~2人
判定 なし
ポイント グラフィックやサウンドは順当にクオリティアップで新しい基本形
'87以来4年3ヶ月ぶり(公認では初)の実名選手採用でチーム名は初の実名化
モデル選手が判別困難なOBチームとメジャーチーム
ファミスタシリーズリンク


概要

1992年3月にナムコから発売された人気野球ゲーム『ファミスタ』シリーズ初のスーパーファミコン作品。ファミコンを含めてシリーズ作品をカウントした場合8作目となる(他にゲームボーイで1作品あり)。
ファミコンやゲームボーイを含めた並びとしてはファミコンの『'92』とゲームボーイ『ファミスタ2』の中間に位置する。
根本的なゲーム性はファミコンシリーズから引き継いでいる。


内容

  • 旧来通り親しまれた操作性はほぼそのままで、スーパーファミコンならではの操作法も新しく取り入れたものになっている。
    • 同時に新しいシステムやモードも取り入れられている。

ファミコン・ゲームボーイシリーズからのシステム変更点

  • スーパーファミコン化により使えるボタンが増えたことでできるようになった操作は以下の通り。
    • Xボタンを使用して瞬時にバントの構えが取れる。
    • L・Rボタンでバットの持つ長さを変えられる。
      • バットを短く持つとミートしやすくなり、長く持つと長打が出やすくなる。
  • ファミコン時代の3作目『'88』以降、選手は変名されてきたが本作でやっと実名に戻すこととなった(ライセンス公認では初)
    • とはいえ5文字までしか表示できないため、それ以上になる阪神のジム・パチョレックは「パチョレク」、近鉄のラルフ・ブライアントは「ブライアン」と不完全な表記になっている。また西武の渡辺久信と渡辺智男は「ひさのぶ」「とみお」と名前のみの表記になっている。
    • 球団名は当初から略号こそ同じながら「ジャイアンツ」→「ガイアンツ」、「ライオンズ」→「ライオネルズ」など変名だったが、それも完全に実在球団そのままになった。
    • 1992年からロッテが「オリオンズ」から「マリーンズ」に愛称を改め略号が「M」になったためか略号が被った「メジャーリーガーズ」は「アメリカンズ」(略号:Am)と改称。
      • メジャー選手にまでライセンスが及んでいないためか大まかなモデル選手はいるものの名前は全然違うアメリカの地名になっている。
    • 実在12球団、「アメリカンズ」「ナムコスターズ」以外にスペシャルチームが12球団用意されている。これらは『'92』の「ビクトリーズ」(V9時代の巨人)「ダイナマイツ」(1985年の日本一阪神)を含む12球団の最盛期をモデルにしているが、ステータスのみで名前は全然違うものになっている。ライセンス公認で実名が使えるのは現役選手のみでしかないためと思われる。
      • チーム名は元になったチームのあらゆる要素から着想を得たもので、各選手名はそのチーム名に沿った大喜利的なものとなっている。
+ スペシャルチーム一覧
チーム名 対応するチーム 由来と思しき要素 選手名
レッズ(R) カープ チームカラーの赤 赤いもの
ユニコーンズ(U) ドラゴンズ 想像上の生物 想像上の生物・妖怪・未確認動物
ペンギンズ(P) スワローズ ペンギン投法の安田猛*1 寒さや冷たさに関係するもの
ビクトリーズ(V) ジャイアンツ V9時代 戦国武将・源平合戦の武士
オーシャンズ(O) ホエールズ 海のイメージ 魚類・水棲生物
ダイナマイツ(Dy) タイガース ダイナマイト打線 恐竜(ダイナとダイノ繋がり?)
アイアンズ(I) ライオンズ 名前の響き
親会社の「鉄」道事業
旧日本海軍の戦艦
ジャッカルーズ(J) バファローズ 荒野に生息する動物
偽名時代の「バッカルーズ」との名前の響き
哺乳類の動物
サブマリンズ(Sb) ブルーウェーブ 海のイメージ
サブマリン投法(アンダースロー)の山田久志*2
十二天や七福神等の日本伝承の神仏
キングス(K) ファイターズ 中世ヨーロッパのイメージ?*3 チェスの駒・トランプ用語・将棋用語
イーグルス(E) ホークス 猛禽 鳥類
アストロズ(A) マリーンズ 前身のオリオンズから天体のイメージ 星や宇宙に関係するもの
  • チーム選択画面でL又はRを押すと、球団旗がスペシャルチームのものになる。ユニフォームは後述する紅白戦におけるビジター用を基本としている。
  • 試合開始でナインがポジションに散る描写やホームランを打つと専用のデモ演出が入るようになった。
    • 見逃し三振時に打者が悔しがる、タイム後の選手交代画面で監督とベンチの様子が映し出される等、AC版『ワールドスタジアム』から逆輸入された演出も見られる。
  • バットスイングの判定が細かくなり、バットを一段階振った状態で打つことでホームランを狙いやすくする戦法(旧来で言う「寝かせ打ち」)がその効力を失った。
  • クラウチングや神主打法など選手固有のバッティングフォームが取り入れられた。
  • 選手名にカタカナも使われるようになった。
    • これにより、外国人なのに平仮名と言うちょっとマヌケに見える悪癖が改善。
    • ただナムコスターズは、何故か全員が平仮名になっている。
  • 試合におけるその他の新しい点。
    • 2打席目以降は、それまでの打席の成績が見られるようになった。
    • イニング毎の途中結果や最終結果で併殺回数を記録するようになった。同時にその試合でのチーム打率も見ることができるようになった。
    • フィルダーチョイスをヒットとカウントしなくなった。
    • 守備時の速さが選手ごとに異なるようになった。
      • この恩恵を受けているのがご存知超俊足の代名詞ナムコスターズの「ぴの」で、驚くほど広い守備範囲を誇る。

球場ラインナップ

球場名 モデル球場 両翼 中堅
ドーム 東京ドーム 100m 122m
マリン 千葉マリンスタジアム 91m 118m
ろっこう 阪神甲子園球場 97m 120m

選手データの特徴

  • 選手データは発売時期的に1991年オフ~1992年開幕まで取り切るには無理があるためか1991年と1992年の中間のようなものになっている。
    • 1991年シーズン準拠例
      1991年限りで退団したブラッドリー(ゲームでは「ブラッドリ」)がゲームではまだ読売ジャイアンツにいる。
      1991年限りで退団したトレーバーがゲームではまだ近鉄バファローズにいる。
      このオフにオリックスブルーウエーブから読売ジャイアンツにトレードされた藤田浩雅が移籍前のオリックスブルーウエーブに入っている(トレード相手の高田誠は収録漏れ)。
    • 1992年シーズン準拠例
      このオフに広島カープから大洋ホエールズへトレードされた長内孝が移籍先の大洋ホエールズに入っている(トレード相手の銚子利男は収録漏れ)。
      このオフに大洋ホエールズから阪神タイガースに移籍したパチョレック(ゲームでは「パチョレク」)が移籍先の阪神タイガースに入っている。
      このオフにオリックスブルーウエーブから福岡ダイエーホークスに移籍したブーマーが移籍先の福岡ダイエーホークスに入っている。
    • 後述の通り以後『スーパー』のシリーズは3月発売なので、このような形は後々まで引き継がれる。

新しいゲームモード

紅白戦

  • 同じチームの選手をお互いに半分ずつ取り合って、まるでキャンプ中の練習のような試合を行うことができる。

ドラフト

  • 12球団のみが対象でそれぞれのチームに新人を2人入れてから、リーグモードを行う。
    • 候補選手は上述のスペシャルチームの選手と、当モードのために2チーム分用意された選手達*4の中からランダムで12名ずつリストアップされる。
    • ここで明示されるのは、大まかなランク(S・A・B・C・D)とポジションのみ。
    • まずプレイヤーは希望する選手を指名するのだが、もし他球団と被った場合、抽選になる(ランク上位6名は高確率で指名が重複する)。
      • 当たりくじを引けなかったら、他の選手を選び直しとなる。この場合は他球団(CPU)とは指名が重複しないため、希望の選手を確実に獲得できる。
    • 上記の流れで選手指名を2巡実施したのち、試合前メニューに移行する。入れた選手は、その対象ポジションのスタメンに入ることになる。
      • そのため、やみくもに最上位ランクの選手を取るばかりが能ではなく、多少ランクが低くてもチームの中で弱点になっている選手のポジションを補強したほうが効果的な場合もある。
        例えば中日なら落合博満、西武なら清原和博といった元々のファーストの選手が強力なので、打力がウリのファーストの高ランク選手を取っても大幅な戦力アップにならない。

評価点

  • ファミコン時代から一転スーパーファミコンによってグラフィックやBGMのクオリティが大幅アップ。
    • それに伴って演出も多くなったが、それも適度なものに抑えられており、これまで通りのサクサク進む試合感は失われていない。
  • スーパーファミコンになりながらも、増えたボタンで煩雑にならない操作。
    • 定番タイトルらしくファミコンから引き継がれており、スーパーファミコンならではのボタンによる操作は、そこまでリアルタイムを必要としないバットの持つ位置や、バント程度に限られている。
      • バントに関しては旧来通りでも可能なので、新しい操作が必須ではないため自分に向いた方を選ぶことができる。
  • これまでになかった新機能。
    • 今までありそうでなかったのが「紅白戦」で1つのチームを2つに分けて戦えるのは新しい試みであり、今までになかった試合ができる。
    • 「ドラフト」もまた、弱いチームに新しい選手で補強したり、またこれ自身も現実のような演出がされるので雰囲気は出ている。
      • しかも「指名選手が先発陣やスタメン野手にそのまま入れ替わる」というシステムにより、ただやみくもに能力評価の高い選手を取ればいいわけではなく、チーム毎の穴になっているポジションを埋める選手が獲得できればより効果的にチームを強化できる。チームデータを元に戦略を立てる玄人にとってはその強みを生かせる仕組みといえる。
        また、敢えてランクの低い選手を獲得し主力選手のポジションを奪わせるという実際にやればファンの暴動が起こるであろう縛りプレイ的な遊び方や、運も絡むが使用チームに対応するスペシャルチームの選手を獲得し、擬似的にOBとの混成チームを作るといった楽しみ方もできる。後者に関しては問題点でも挙げているようにさほど実感が湧かないのがネックではあるが。
    • ルールが変更できるのは『'92』でも同じことだがイニング数だけでなく、コールドをなしにしたり、その対象点差も操作できるようになった。
      • イニングを1回、コールド点差を最低の2点にすると、まるでサドンデスのようなゲームができる。
  • 選手の実名化、更にそれの再現性を高めるバッティングフォームの導入。
    • ただ名前だけでなく外国人選手のクラウチグ打法や落合博満の神主打法なども取り入れられ、再現度はグッと高まった。

賛否両論点

  • 千葉ロッテマリーンズの球団旗・ユニフォームがオリオンズ(及び偽名時代のオリエンツ)をモチーフとした架空デザインとなっている。
    • チーム名変更に伴う新しい球団旗・ユニフォームの発表が本作開発期間内に行われなかったため、苦肉の策としてこのような措置が取られた。

問題点

  • スペシャルチームは難点が多く、蛇足感が強い。
    • 通常の12球団とは対戦ができない。
      • このせいで楽しめる幅を狭めている。
    • 一足先に発売されたファミコンの『'92』と同じ名前の「ビクトリーズ」「ダイナマイツ」がいることや12球団のウラチームとして各々チームに隠れた扱いになっていることもあって、そのチームのOB再現のような一面はなんとなく察せられても、選手名がネタに振り切れているせいで実感がまるで湧かない。
      • それぞれ現存球団のウラに隠されていることや『'92』の例からそれぞれの最盛期再現というのはなんとなく伝わっても、巨人・阪神・阪急のような最も強かった時代が明確なチームはともかく、中日・ロッテ・南海のように最盛期を明確にできない球団や、今がその最盛期といえる西武などは一体いつの時代の再現なのかがよくわからない。ユニフォームも表チームのビジター用でしかないので、そこから判別することすらできない。
        ましてプレイヤーの年齢層からすれば、'70年代や'80年代は物心つかず、生まれてすらいないことも珍しくなく、インターネットもない当時にその時代が知っているとすればちょっとした野球マニアで、それでも成績(ステータス)だけでそれを判別するなどまず不可能だったことだろう。
    • 実名化にこだわりながらライセンスはOBに及ばなかったので、ここだけ変名にするのは抵抗があったのかも知れないが、こんなわけのわからないことをするぐらいならばOBだけ変名の方がまだマシだったかもしれない。
  • 旧メジャーリーガーズことアメリカンズもよくわからない。
    • こちらもモデルのメジャー選手がいても、選手の名前が地名では結局誰なのかわからず本末転倒。OB同様ライセンスに関わる問題ならば変名の方がまだマシだったかもしれない。
      • 当時日本ではメジャーリーグ自体日本人無関係のためほとんど報道されず、さほど詳しくない人が多く興味の対象になりにくかった*5ためプレイヤーにとっては旧メジャーリーガーズ時点でも「よくわからないけどとりあえず強いからいい」ぐらいにしか思わなかったのが不幸中の幸い。
  • 広島カープの異常なほど強力な打力補正。
    • 1991年シーズンの広島カープは優勝したとはいえ完全に守り勝ったような形で得点力は極めて低く総得点数ではリーグ5位だった。特にチーム本塁打は88本と少なく打率もリーグ4位の.254と高くない。本塁打はチーム最多は江藤智の11本*6ということもあって個人単位でもそれほど光るものはない。
      • そのため、そのデータのままゲームに組み込んではそれほど強くならないこともあってか実際のデータ以上に打力は相当強力なものになっている。デフォルトで4番に入っている西田真二に至ってはゲームでは14本塁打(因みに実際の成績では7本)と本来ならこれでもせいぜい中距離バッタークラス程度だが、信じられないほどホームランをガンガン打てて、普通にスラッガーと大差ないレベルの打力を持っている。
    • もちろんエース佐々岡をはじめとした投手陣は現実同様に超強力なものになっているため紛れもなく最強クラスのチームになっている。
    • 打高になりがちなゲームシステムとの整合させるには前年のデータのままではバランス的に弱くなってしまうための措置と思われるが、不公平感は否めない。
  • あくまで雰囲気重視の紅白戦。
    • ポジション関係なくピッタリ9対9に分かれる草野球仕様なうえ、投手は1イニングにつき1人ずつ順番に登板していくルールがある。1チームにつき本職投手は5人しかいない関係上、イニング設定を短くしなければ野手が防御率9.90の投手として登板することとなり、大味な打ち合いは必至。
    • また、試合後の新聞画面における写真や監督のコメントは通常の試合と全く同じであるため、敗戦時には味方に敗れて泣き崩れる選手達の姿と、「あんなチームに負けるなんて…」という監督の苦言が掲載されるという珍妙な事態も起こりうる。
  • ドラフトモードの問題点。
    • 1人プレイ勝利時にはパスワードが取得できるが、選手の補強状況は記録されない。つまりはドラフトではない通常プレイ時のパスワードと全く同じ。
      よってそのときのチームでプレイを続けるならば『'88』同様に中断なし・ぶっ続けでの勝ち抜きを要求される。
    • 野手の入れ替わり対象はあくまでスタメンであり、同じポジションの選手を2人獲得しても一方が控えに回ることはなく、枠を1人分潰すことになる。
    • 投手はさらにやっかいな仕様で、リスト内では先発・リリーフのどちらに該当するかが識別できない。しかも入れ替わり対象は先発陣・リリーフ陣の中での同じ序列の投手となっているため、候補選手の元チームの情報を参照しなければかなりの頻度で枠被りが起こりうる。
    • ちなみに枠が重複した場合は1巡目で獲得した選手が優先される。
  • 近鉄のユニフォームの珍妙さ。
    • 当時の近鉄のユニフォームは赤いラグランスリーブとトリコロール(紺白赤)を大胆に象った帽子という独創的なデザインを導入していたが、本作では上着が赤一色で下がベージュ(ビジター用は水色)、帽子は紺色地に全面が赤というデザインであり、再現性が低い。
    • ユニフォームに2色しか使えなかったFC版時代*7ならまだしも、スーパーファミコンのスペックならばAC版『ワールドスタジアム』のように各部位のカラーリングを細分化することはできなかったのだろうか?
    • なお、このデザインは続編の『スーパーファミスタ2』でも引き継がれたが、『スーパーファミスタ3』からはより再現性の高いデザインに改められた。
    • 後に実際の近鉄も大阪ドーム移転〜球団消滅までの時期に、このユニフォームに類似した赤基調のビジターユニフォームを導入していた。
  • 球場ラインナップが少なく個性もない。
    • これは『'92』も同じだが広さの違いのみで特殊なクセのある球場がない平凡なものばかりで、3種類しかないのはスーパーファミコン化による進化を期待したい者からすればガッカリ要素(FC版でも直近の『'91』『'92』では4球場、『'90』では6球場も用意されていた)。
  • 選手の動きが少々鈍くなった感あり。
    • 恐らく走力の影響で相対的に鈍足化した選手が多いためと思われる。

総評

良くも悪くも定番作の新ハード移行版としてベーシックスタイルとして地盤を作ったような形で、馴染んだ操作はほぼそのまま旧来通りの感覚でプレーでき、スーパーファミコンによりグラフィックやサウンドのクオリティはしっかりアップしている。
中身でも選手の実名化だけでなく、紅白戦やドラフトなど、新しい試みも少ないながら行われており、単純なハードに合わせたグレードアップだけでなく新しい試みも見られるのは良い。
その反面スペシャルチームやアメリカンズは無関係な名前ばかりなので存在自体を蛇足に感じるところが強い。


その後の展開

  • スーパーファミコンでの続編はゲームボーイ同様に数字のみのナンバリングで『スーパーファミスタ2』として1993年3月12日発売。
    • ユニークな趣向のオリジナル選手作成モード「きみがヒーロー!」など新しい試みがされている。
    • またナムコスターズはこれまで女子禁制だったがワルキューレモモといった女性キャラが登場。
      • だからといって女性型のグラが用意されているわけではない。こんなことならもっと早く起用しても良かったのでは?『'92』では丸尾君じゃなくちゃんと主役のまる子とか…
    • 以後『スーパー』のシリーズは3月頃の発売で『5』(1996年)まで続く。
  • ゲームボーイでも1992年7月30日に2年越しの続編『ファミスタ2』を発売。
    • こちらもライセンスを取得により実在球団と実名選手を採用し、ライセンス対象外のアメリカンズは本作同様地名が選手に使われている。
  • 旧来通りのファミコンでの年度ナンバリングシリーズとしては1992年12月22日に『ファミスタ'93』を発売。
    • 本作同様公式ライセンスによる実名を採用しており、野球ゲームのみならずサブゲームとしてクイズを搭載している。
    • 選手の体形がそれまでのずんぐりした姿から一変、実在の野球選手のようにややスリムになった。
    • その一方でチーム構成は12球団+ナムコスターズのみと少なくなり、『'87年度版』以降常連だったメジャーリーガーズ(アメリカンズ)は完全になくなったが、わけがわからない名前の選手を入れるぐらいならばこれで良かったと言えるかもしれない。
  • 1992年10月に本作のSNES移植作『SUPER BATTER UP』が北米で発売。
    • 当時のMLB全26球団*8のデータやユニフォーム(ホーム・ビジター共)が反映されており、チーム選択画面でアメリカンリーグ所属球団とナショナルリーグ所属球団を切り替えられる(リーグを跨いだ対戦ももちろん可能)。ナムコスターズ・アメリカンズ(むしろNPB選抜のほうが適切?)・スペシャルチームは用意されていない。
    • 選手の描写が八頭身のリアル調に改められている。後のアーケード作品『グレートスラッガーズ』シリーズに先駆けた試みともいえる。
    • 試合時のBGMは大幅に変更されており、オルガンを中心としたメジャーリーグらしい雰囲気となった。また、試合前にアメリカ国歌・カナダ国歌(ブルージェイズorエクスポズがホーム側の場合のみ)を静聴する演出が追加された。
      • 特筆すべきは日本産の応援歌「ダッシュKEIO」を原曲とした初代メインBGMがそのままオルガンアレンジされているというもの。オルガンなので曲自体の違和感は抑えられているものの、なかなかにシュール。
      • チャンス時BGMはアーケード版の初代『ワールドスタジアム』と同じ音程のアレンジとなっている。
      • 国歌静聴後の選手が守備位置に散らばるシーンのBGM(新規)、ホームラン時BGM(『パックマン』のコーヒーブレイクのアレンジ)は上述の『スーパーファミスタ2』で逆輸入された。

余談

  • 本作のナムコスターズには、ついに本シリーズ自身を選手化した「ふぁみすた」が登場。スタメンのクリンナップ(5番)に入っている*9
    • だからといって能力では別に特筆したものはなく、主役の超俊足の「ぴの」と唯一の長距離バッター「ぱっくまん」を喰うどころか他のザコ選手にも喰われそうな目立たない存在である。
  • 前述の通り、ロッテが愛称を「オリオンズ」から「マリーンズ」に改称したことで現実では「O」のチームはなくなったが、スペシャルチームで大洋ホエールズのウラチームが「オーシャンズ」として「O」になっている。
    • 偶然だが、前年までロッテがホームに使っていた川崎球場は、かつて大洋のホームだった。そう考えると因縁めいたものを感じる部分ではある。
  • 「ろっこう球場」のモデル阪神甲子園球場はこの年からラッキーゾーンが取り払われた。
    • それを反映してか、ゲーム中でもかつてラッキーゾーンのあった所は芝の色が違っている。
  • かつてしれっと実名を使っていた頃、恒例の注釈「球団名・選手名はすべてフィクションであり実在の球団・選手とは何ら関係ありません」は本作でも少し形を変えて存在している。
    • 「ゲーム中のセ・パ12球団を除く球団・球場・選手等はすべてフィクションであり実在のものとは関係ありませんので予めご了承ください。」
      当然、これの指すものはアメリカンズやスペシャルチームのことと思われるが、上記の通り全然違う名前なのでいちいち言うまでもないし、あれだけでモデルがわかる者がいったい何人いるのだろうか?
    • また球場に関しても上記の通り言及されているが、球場選択で見られる写真はモロに実在のモデル球場そのものである。これは上記とは真逆の理由で旧来通りのツッコミどころ。
  • 前年の広島カープ優勝のきっかけとなったのが「炎のストッパー」と呼ばれた津田恒実の脳腫瘍による戦線離脱である(これが原因で後の1993年に32歳の若さでこの世を去った)。
    • 津田は4月の巨人戦で登板するも、上記の影響はいかんともしがたくアウトを1つも取れず降板して敗戦投手となった。監督の山本浩二はそんな病状を知らずその試合直後は「たるんどるぞ!」と言わんばかりに叱責したが、その事実を知るや詫びる気持ちからチームの他の選手にもその事実を伝え「津田のために優勝するぞ」という奮起につながり逆転優勝に繋がったという現在でも語り継がれるドラマチックなエピソードである。
    • そのため、広島を強くしたいなら不自然な打撃力補正などをするよりは津田を全盛期並みの能力でチームに入れた方がそれらしいし、その方がよっぽど嬉しいファンサービスになっただろう。
      • とはいえ、この頃の津田は前年シーズンが終った11月に正式にカープを退団しているためライセンスの対象外だったので実名化にこだわった代償ならば仕方ないといえば仕方ない*10
  • パッケージ裏には12球団の球団旗のアイコンが並んでいるが、ロッテのみナムコスターズに差し替えられている。
    • 上述の通りロッテのみ前時代を基にした架空デザインであったため、それに対する批判を避けようとしたとも考えられるが、実際の狙いは不明。
  • 2018年発売のSwitch作品『ファミスタエボリューション』の初回特典として本作をベースにした「スーパーファミスタレトロ2018」が、2年後の『ファミスタ2020』では「スーパーファミスタレトロ2020」を含むスペシャルコンテンツがダウンロードできるコードが付属していた。2017年発売の『ファミスタクライマックス』の初回特典「ファミスタレトロ」の流れを汲んだファンサービスと言える。
    • 選手データやユニフォームはそれぞれ最新のものを反映している。
    • スペシャルチームと紅白戦は廃止されている*11。ただしスペシャルチーム所属選手は、オリジナル版同様にドラフトモードの候補選手として登場する。
    • ゲーム内パスワード以外に新しくデータセーブ・ロードのシステムを導入しており、ドラフトモードの「選手の補強状況を保存できない」という問題点が解消された。また、指名重複時の抽選画面でセーブし、くじを外してもロードし直して当たりくじを手にするという不正も可能。*12
    • 一方でユニフォームがホーム用のみとなっていたり*13、チーム名の略号のフォントがオリジナル版から使い回されている*14*15等、演出面では「ファミスタレトロ」に比べてやや見劣りする箇所も見受けられる。
    • 「2018」では試合後の新聞でオリックスと楽天のユニフォームがアベコベに描写されているというミスがあった(「2020」では修正されている)。
    • 「2020」では全体的に現役野手陣の能力の底上げが図られており、分かりやすいところではオリジナル版では稀であった守備Sもしくは肩Sの選手が各チーム最低1人含まれている(この傾向は捕手で顕著)。
      • ただ、その能力インフレの煽りを受けて、ドラフトモードの選手達の魅力が少々薄れてしまった側面も見受けられる。
      • その中に混じって、日本ハムの中田翔が何故か走力40(カンスト値)に変更されている。現実の中田は強打者ではあるものの俊足ではないため、単なる設定ミスと思われる。
最終更新:2023年09月17日 21:27

*1 当人らしき投手もそのまんま「ぺんぎん」の名で登場。なお、(畜生)ペンギン呼ばわりされることが多い球団マスコットのつば九郎は本作時点ではまだ登場していないため、当チームとは関係なく偶然の一致である。

*2 当人らしき投手も「えびす」の名で登場。

*3 西洋兜を着用しバットを掲げたキャラ(正式名称はなく、ファンの間では「鉄仮面」「さまようよろい」等と呼ばれる)は本作時点ではまだ登場していない。当時のペットマークでもヘラクレス風の弓使い(こちらも名称不明)や翼を生やした少年「ファイトくん」等、どちらかといえばギリシャ神話を想起させるものが多かった。

*4 選手名は日本の山の名前or食べ物を由来としている。選手データを閲覧できる裏技を使用した際、前者は"DRAFT 1"、後者は"DRAFT 2"としてチーム単位で表示されるが、ゲーム中ではこれらの選手だけを集結させたチームとしては登場しない。

*5 興味を持たれた選手は直近ではセントルイス・カージナルスのボブ・ホーナー(1988年)やデトロイド・タイガースのセシル・フィルダー(1990年以降)といった一度日本球界で活躍して出戻った選手ぐらい。

*6 江藤に次ぐのが野村謙二郎でギリギリ2桁の10本と、2桁はこの2人だけ。大洋ホエールズはチームで66本と更に少ないが、レイノルズが15本、パチョレックが11本と打つ選手はそれなりに打っている。しかもチーム打率ではリーグトップで盗塁数も130とダントツだったため全体的な得点力自体は決して低くはなかった。

*7 ビジター用を基にした赤×グレーで通している。実際にはブルーグレー地だが、赤×水色は既に阪急(ブラボーズ)に使用されていた。ただし阪急球団がオリックスに譲渡され、ユニフォームが青×黄色に改められてからも近鉄側に変更はなかった。

*8 アイコンはロゴマークではなく各チームの略号で表されているが、保護地域が重複しているニューヨークのヤンキース(NYY)&メッツ(NYM)は共に「NY」、シカゴのホワイトソックス(CWS)&カブス(CHC)は共に「CHI」表記となっている。配置やカラーリングは各チームに応じたものなので推察は難しくない。

*9 姉妹シリーズの『ワールドスタジアム』は「わあすた」としてファミコンシリーズの年度ナンバリング『'89』から登場している。

*10 また発売間近の頃は津田自身もゆっくりながら病状も回復しつつあり元チームメイトで親友でもある森脇浩司のツテでダイエーの入団テストを受けて現役復帰する意思もあった。

*11 紅白戦はアイコン自体は残っている(選手のユニフォームの描写が当時の広島のものに改められている)が選択できない。

*12 当たりくじの位置自体は抽選画面に移行した時点で固定。

*13 上記2要素の廃止に伴う措置と言われればそれまでだが、かたや「ファミスタレトロ」では原作に存在しなかったホーム・ビジターでのユニフォームの差分がちゃんと用意されていた。

*14 横浜DeNAベイスターズ(略号:DB)には当時のオリックス・ブルーウェーブの「B」、オリックス・バファローズ(略号は2018年度までBs、2019年度からはB)には近鉄バファローズの「Bu」が割り当てられている。「ファミスタレトロ」ではそれぞれDB・Bsのアイコンが用意されていた。

*15 なお当時誕生していなかった楽天イーグルス(略号:E)に関しては、偶然にも福岡ダイエーホークスのスペシャルチームの名称が「イーグルス」であったため、そこから流用されている。