テトリス ジ・アブソリュート ザ・グランドマスター2
テトリス ジ・アブソリュート ザ・グランドマスター2 PLUS
【てとりす じ・あぶそりゅーと ざ・ぐらんどますたーつー】
【てとりす じ・あぶそりゅーと ざ・ぐらんどますたーつー ぷらす】
ジャンル
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パズル
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対応機種
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アーケード
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使用基板
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PSIKYO SH2
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発売元
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彩京
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開発元
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アリカ
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発売日
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TA:2000年10月 TAP:2000年12月
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プレイ人数
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1人~2人
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判定
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スルメゲー
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ポイント
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初代TGMの正当進化 より難易度の上がったGMへの道
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テトリスシリーズ
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テトリス ザ・グランドマスターシリーズ TGM / TA/TAP / Ti / TGM-ACE
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概要
「20G」「I.R.S.」「G.R.S.」等の意欲的な仕様と高い難易度が話題を集めたテトリス ザ・グランドマスターの続編。略称は「TA」「TGM2」。
売れ行きが非常に良かったため、発売2か月後にモードを追加した「PLUS」(略称「TAP」)がTA購入店に無償で配布された。
実質的にアップデート版に相当するため、本稿では両方をまとめて一つの作品として紹介する。以降、作品を区別する必要がある場合は「TA」「TAP」と表記する。
前作からのシステム変更点
基本的なシステムは『テトリス ザ・グランドマスター』を参照。
上入力による即時落下の登場
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レバーで上を入力することで、操作中のテトリミノ(以下ミノ)が一瞬でフィールドの一番下まで落ちるようになった。
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現在のガイドラインで言う「ハードドロップ」に近いが、一番下まで落ちるだけでミノ自体は固定されないという独特の仕様がある。瞬間的に20Gになるとも言え、固定されるまでの遊び時間でミノを左右に動かしたり回転させたりできる。
インストカードでは「即落下」という名称で、海外では「Sonic Drop」と呼称されている。
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一方で下入力は従来と同じく一番下まで落ちるとミノが固定される。このため「上入力で瞬時に一番下まで落とし下入力で固定」という操作でさらなる高速化が可能になった。
メダルシステム本格実装
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前作では全消しを行ったときにだけ専用のマークが付与されたが、本作ではそれを拡張、6種類のメダルがプレイ内容に合わせて点灯するようになった。評価が高くなるほど銅→銀→金とランクが上がっていく。ただし、(プロデューサー三原一郎氏の発言が正しければ)メダルと段位は関係が無い。メダルが付与されるのはMASTER、T.A.DEATHの2モード。
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SK …4列消しを一定回数行うと点灯。回数が多いほどランクが上がる。
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ST …100レベルごとのセクション通過時間が筐体記録を更新すると金色が点灯。筐体記録より遅くなるほど金→銀→銅とランクが下がる。隠しコマンドによってタイムが記録されない状態では、比較される時間は筐体記録ではなく一定の時間に固定される。
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CO …2ライン以上の連続消し(コンボ)を一定回数行うと点灯。コンボ数が多くなるほどランクが上がる。本シリーズのコンボは1ラインの消去はコンボは維持されるが増加しないため、このメダルを点灯させるには2ライン以上でコンボを行う必要がある。
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RO …複数のセクション間で、ミノの回転数が一定以上だと点灯。レベルカンストまでに3回判定があり、それぞれの判定の成功回数でランクが上がる。回転しても形が変わらないOミノも判定対象。
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RE …ゲームオーバー寸前からの復活で点灯。フィールドが一定以上埋まっている状態から、半分以下までフィールドを消すことに成功した回数でランクが上がる。ただし後述のアイテムモードにてアイテムミノの効果で消去した場合は条件を満たしてもメダル点灯とならない。
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AC …全消しに成功したときに点灯。前作から引き継がれているメダル。
その他の変更点
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出現補正がより強化され、特定のミノが連続で降ってくる状況が発生することはかなり少なくなった。
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エンドロールはプレイごとにスタッフの順番がシャッフルされるようになり、スタッフの順番でエンドロールの進行度を測ることができなくなった。ただし「SPECIAL THANKS」以降は順番が固定されている。
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前作では2人プレイ時の挙動がディップスイッチによって固定されており、対戦するかどうかをプレイヤー側で任意に選択できなかったが、本作では乱入対戦を行うかどうかを任意に決められるようになり、またすでにプレイしている側はプレイ中にSTARTボタンを押すことで対戦拒否が可能になった。
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対戦自体についても、アイテムの追加や削除、効果の変更が行われた他にルールも一部変更。新たにゴールとなるレベルが設定されており、先にゴールレベルに到達もしくは時間切れの際に進んだレベルが多いプレイヤーが勝ちとなる。窒息してしまうとその時点で負けになるのはこれまで同様。
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対戦の環境は乱入された側が選んでいたモードに準ずる。例えば乱入された側が「T.A.DEATH」モードを選んでいた場合は同様に最初から高速20G状態での対戦となる。
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対戦用の隠しモードとして前作の「ノーアイテムモード」に加えて、ライン消去によるせり上がりもなくなり純粋な積み速度だけで競う「セメントモード」が追加された。
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隠しコマンドは「20Gモード」「ずっとTLSモード」「BIG BLOCKモード」と対戦用の「ノーアイテムモード」が続投し、新たに前述の対戦用の「セメントモード」と一人用モードにおける「アイテムモード」が追加。一方で「リバースモード」「モノクロモード」「UKIKIモード」は廃止された。
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「アイテムモード」は1人プレイ時に特殊な操作をすることで発動する新たな隠しモードで、一定時間ごとに対戦用のアイテムミノが出現するようになる。防御アイテムばかりが出るとは限らず、攻撃アイテムが出現した場合も自分にその効果が発動される。フィールドに複数のアイテムミノがあると、アイテムを発動した時点でNEXT欄のものも含めて別のアイテムミノは効果が消滅するため、なるべく防御アイテムか被害の少ない攻撃アイテムを優先的に発動させたり、厄介な攻撃アイテムを発動させても被害が少ない状況で消化させることがポイント。なお、対戦では1Pと2Pのフィールドを交換する「EXCHG FIELD」は何の効果もないハズレアイテムと化している。
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また「BIG BLOCKモード」は、前作では1マスずつ横移動する仕様だったため、うっかり1マスだけ動かすとそのラインは消去不可能になる「半ズレ」が起きていたが、本作では2マスごとに動くようになった。ちなみに、本作のみBIG BLOCKモード適用下ではNEXTミノも巨大化する。
NEXT欄に巨大ミノが表示される様はかなりシュール。
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前作と異なり、隠しコマンド適用時のプレイではグレード「GM」の取得ができなくなった。ランキング対象外になる点は前作と同じ。
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本作からクレジット投入後もスタートボタンを押さずに放置することでデモプレイへ移行するようになった。この時、既に入力していた隠しコマンドは全てリセット(=コマンドの再入力が必要)される。
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前作では誤って隠しコマンド入力をした場合、それを取り消す手段はなく、隠しコマンドが有効になったクレジットを消費する必要があったが、本作では上記の仕様変更によりコマンドの取り消しが可能となった。
TAPにおける変更点
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TAまでは、認定されたグレードに到達した瞬間のタイム「マスタリングタイム」が最優先でランキングに記録される仕様のため、レベル999まで完走した場合は「GM」でなければ認定グレード到達時のタイムが優先して記録され、完走時のタイムが記録されない問題があった。
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TAPではレベル999まで完走した場合に限り、完走時のタイムが優先して記録されるようになった(完走時の記録には緑線などが敷かれるのは同じ)。
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「BIG BLOCKモード」におけるライン消去時のレベル上昇のルールがTAでは前作と同じ1ラインにつき2レベル上昇だったが、TAPでは1ラインにつき1レベル上昇に変更。
この仕様変更により、クリアまでの所要時間がTAよりも長くなり難易度が上昇した。
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MASTERモードにおけるシャドウスタッフロールの出現条件の微調整。TAとおおよその条件は変わらないがその基準値が更にシビアになり、難易度が上昇している。
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また、グレード「m」の昇格タイミングも変更され、TAではシャドウスタッフロールの出現条件を満たすとその時点で「m」へ昇格となっていたが、TAPではシャドウスタッフロールを出現させた時点では昇格しないようになっている。
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隠しコマンド適用時のプレイでTAでは下記のシャドウスタッフロールは条件を満たせば出現できたが、TAPでは条件を満たしてもシャドウスタッフロールが出現しなくなっている。
モード
本作では複数のモードが用意されており、初心者向けのフォローが行われた一方で、TAPではMASTERモードでも物足りない上級者のための調整も行われた。
どのモードも規定レベルに達するとエンドロールとなる。モードによってフィールドリセットが行われるものと行われないものがある。
NORMAL
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初心者向けに用意されたモード。レベル300が目標。
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速度上昇のペースは実はMASTERよりも速いが、レベル100と200に達すると一旦速度が落ちるようになっている。なおこのモードではレベル99と199でレベルストップが発生しない。
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途中で対戦における防御アイテムミノが降ってくる。レベル100で「FREE FALL」、レベル200で「DEL EVEN」が出現し、それぞれミノの積み上げに慣れていない初心者を助ける役割を担っている。
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スコアが重視されない本シリーズにおいては珍しく、ランキングには獲得スコアが掲載される。
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レベル300に達するとプレイタイムに応じたボーナススコアが入るが、プレイが続いたまま落下速度が20Gになり、背景でエンドロールが流れ始める。
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エンドロール中のプレイ内容はスコアやランキングに影響せず、スタートボタンを押しっぱなしにすることで早送りできる。
MASTER
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レベル999と高い段位を目指す前作準拠のメインモード。前作から以下の点が変更されている。
レベル500以降も速くなる
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前作はミノの固定猶予時間、固定されてから次のミノが出るまでの時間(通称ARE)、ライン消去にかかる時間が全レベルで完全に固定されていたが、本作ではレベル500以降それらの時間が短縮されていく。
500に入った段階でライン消去の高速化はわかるレベルで、700からはAREが9フレーム短縮されテンポが大幅アップ、800になるとライン消去してもしなくても同じタイミングで次が出るようになる。
そしてレベル900に入るとミノの固定猶予時間が一気にほぼ半減され、少しでも操作が遅れると満足に移動や回転ができないままミノが固定されてしまい、あっという間に積み上がってしまう。
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これにより、ラインを小刻みに消し時間を稼ぐという前作のグレード度外視の完走用テクニックが使えなくなり、前作以上に素早い判断力、高度な思考力と操作精度が求められるようになった。
G.R.S.(段位認定システム)について
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前作と同じくプレイ内容によってグレードが認定されるGRSが搭載されているが、本作では次の昇段までに必要なスコアが表示されなくなり、昇段条件が分からなくなった。そのうえ、スコア以外にもライン消去間隔などの要素も考慮されるようになったため、正確なグレード上昇の把握が困難になった。
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また「S9」の次のグレードとして「m」が追加された(後述)。最高段位は前作同様「GM」。
MASTERエンドロール攻略ステージ化
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前作ではグレード「GM」到達のご褒美として用意されていたエンドロールが、本作MASTERモードでは完走および「GM」到達に必要な最後の攻略ステージとして立ちはだかるように。
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MASTERモードのみレベルが999になると一旦フィールドがリセットされ、フィールドの背景でエンドロールが始まるが、レベル900台のスピードを維持したままミノを置いて一定時間後に表示が消滅する前代未聞の仕掛けが発動する。このエンドロールで積み上がってしまうとその時点でエンドロールも停止してしまい、クリア扱いにならない。
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さらに「Lv999到達、かつそれまでにグレードS9」に加えある複数の条件を満たすと、ミノを置いた瞬間に表示が消滅する「シャドウスタッフロール」(通称「消えロール」)となる。
置いたミノでエンドロールが見えないという声に応えたスタッフの親切とよく言われる。このシャドウスタッフロールで積み上がってゲームオーバーになると「m」、耐えきると「GM」が認定される。
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前作同様レベルカンストを達成できた場合はランキング上の記録にそれを示す緑色の下線が引かれるが、MASTERモードのみエンドロールを耐えきってクリアした場合は橙色の下線に変化する。
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ただし、TAPでシャドウスタッフロールを出現させた場合に限り、橙色の下線の条件が「シャドウスタッフロール中に32ライン以上消した上で耐えきる」ことに変更される(通称「橙GM」「GM2」)。これがTAPにおける事実上の最高段位となる。
そうでない場合は、シャドウスタッフロールを耐えきった場合にグレードGM+緑線(通称「緑GM」「GM1」)、途中終了した場合はグレードm+緑線となる。
DOUBLES
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2人で協力してラインを消し、レベル300を目指すモード。
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2人目のプレイヤーが乱入時に特殊な操作を行うと、乱入するかどうかの選択肢の下に「DOUBLES」が追加される。
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TAPでは特殊操作不要で最初からモード選択に表示されており、1人分のクレジットで遊ぶことができるようになった。
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横14列と広くなったフィールドで1Pと2Pが同時にミノを操作し、ラインを作って消していく。ただし、このモードも単なる協力プレイで終わっていない。
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1Pのミノは左側、2Pのミノは右側から落ちてくるが、操作中のミノにも当たり判定があり、逆サイドにミノを移動するときにもう片方のプレイヤーが操作しているミノを避けなければならない。
さすがに操作中のミノに上からぶつかっても空中で固定されたりはしないのでご安心を。
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レベルは1Pと2Pそれぞれで独立して存在しており、両方のプレイヤーがレベル300に到達しないとクリアとならない。さらに片方のプレイヤーだけレベル300に到達した場合、そのプレイヤーだけ落下速度が20Gになってしまう。よって、左右の干渉を避けつつ、両方のレベルをいかにシンクロさせるかがポイントとなる。
TAP追加モード
TGM+
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TAPより登場。前作をベースに新たに地形のせり上がりを搭載したモード。
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落下速度の上昇は前作とほぼ同一で、ミノの固定猶予が短くなることはないが、一定時間ごとに最下段の地形がせり上がる。レベルが上昇するとともにせり上がりの時間間隔も狭まっていく。
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せり上がりのパターンは完全に固定されており、24段でループする。セガが1990年に発売した『ブロクシード』のせり上がりパターンと類似しており、次作TiのSHIRASEモードに搭載されているせり上がりとはパターンが異なる。
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このモードではGRSやメダルは搭載されておらず、ランキングも記録されない。
T.A. DEATH
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TAPより登場。開幕からいきなり20Gで始まる上級者向けのモード。
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初期目標はレベル500になっており、通常はレベル500に達すると終了となるが、3分25秒以内にレベル500に達すると続行となり、目標がレベル999に設定し直される。
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通称「足切りタイム」と呼ばれる仕様。これを突破するには前半での時間稼ぎは許されず、積極的に下入れを活用してスピードを速めなければならない。
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MASTERモードのレベル700に相当する速度からスタートし、そこからレベル500になるまでさらにスピードが速くなる。レベル500以降は速度が固定されるが、ブロックの最短出現間隔がMASTERのレベル900台の2倍強の速さに相当する。
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GRSはMASTERモードのそれとは大きく異なり、レベル500の足切りタイム突破で「m」が認定され、そのままレベル999まで耐えきると「GM」が認定される。
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エンドロールはNORMALモードと同じく、フィールドと速度はそのままに背景でエンドロールが流れ始める。MASTERモードのようにミノの表示が消えることはなく、完走した時点で「GM」が認定されるため、エンドロールのプレイ内容は成績に影響しない。
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ほか、一部のメダルの点灯条件がMASTERモードと異なる。また、このモードはランキングが記録されない。
評価点
上入力の登場で操作効率アップ
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前作および従来のテトリスでは、下入力によって素早く落下させることができたものの、下入力で地面に着くとほぼ一瞬で固定されてしまうため、特に隙間ができた際のリカバリーで下入力しづらい面があった。
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対して本作で登場した上入力による瞬間落下は、地面まで一瞬で到達するものの固定自体はされないという仕様がミソ。リカバリーする際に「隙間の直前で下入力をやめ、自由落下で即固定を回避」する動作をしなくてもいい場面が多くなり、従来よりも効率が上昇。また単純に瞬時に一番下まで落ちるため、ミノの構築スピードの高速化にも一役買っている。
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この仕様を応用し、ミノをフィールドの壁際から1マスだけ離して設置する際、「ミノ出現前から右(左)入力で溜め→端まで来たら上入力→落下後に左(右)入力→下を入力して固定」と、レバーをほぼ一回転させる入力方法が考案された。これが『ストリートファイター』シリーズに登場するザンギエフの必殺技コマンドを彷彿とさせるため「ザンギ入れ」という名前が付けられている。
幅広いニーズに対応したモード
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前作は本作におけるMASTERモード相当の1本のみで、最初の100レベルでさえ他のテトリスと比較して速度上昇が著しいため、特にテトリス初心者にとっては完全お断りではないにせよすぐにゲームオーバーになってしまう事例も多々あった。
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本作では前作対応のMASTERモードに加え、初心者向けのNORMALモードが搭載されたことにより、テトリス初心者も気軽にTGMシリーズの雰囲気
と20Gの恐怖を味わうことが可能になった。
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TAPではさらにMASTERモードでも物足りない上級者のために用意されたT.A. DEATHモードや変則的なTGM+モードが追加され、常時解禁となったDOUBLESモードも加え、よりプレイヤーの間口を広げる調整が行われている。
ビジュアル・サウンド面も進化
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背景のアニメーションが行われるようになり、全体的なビジュアル・UIも前作より進化。
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本作はシリーズで唯一、2D専用基板用のタイトルである(背景動画のプリレンダ以外に3Dグラフィックを採用していない)が、背景動画やラインを消したときに破壊されるブロック破片の描き込み、対戦時の各種アイテムの多くに用意されたアニメーションはいずれも見事。
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サウンド面では本作もMEGA(細江慎治)とAYA(佐宗綾子)のテクノ節がいかんなく炸裂。本作のBGMの多くは前作のメインBGMのモチーフを再解釈(リミックス)する形で作られており、前作よりもインダストリアルなサウンドに仕上がっている。
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そしてMASTERモード終盤及びT.A. DEATHモード後半ではお得意のハイテンポなロッテルダムテクノが繰り広げられる。速まったゲームスピードとテンポの速いBGMが非常に良くマッチしており、焦燥感を駆られること間違いなし。
賛否両論点
険しくなったMASTERモードとGM取得難易度
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昇段条件のスコアが明確に示されており、基本的に構築スピードを上げていけば自然と「GM」が取得できるようになっていた前作と比較すると、本作のMASTERモードにおける「GM」取得の難易度はかなり上昇した。
構築スピードだけでなくミノの消去間隔などもグレード評価に含まれるようになったこと、レベル500以降もスピード加速が続行されるようになったことにより、前作で「GM」を取得できるほどの実力があっても、後半のスピードに圧殺されるプレイヤーが続出した。
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加えて上記の通り、本作から昇段条件が示されなくなったため、どうすれば次のランクに昇段できるかが不明瞭となり、必然的にプレイヤーは上昇したゲームスピードの中で、どうすればまず前提条件となる「S9」まで上げられるかという研究を迫られた。単純なスコアではないプレイ内容(安定性など)に応じた多角的な評価になったため、条件を示しづらくなったというのもあるが…。
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そしてレベル999の先に待ち構えるエンドロール。それまでのテトリスから一転、猛スピードでミノを構築しながらの地形記憶ゲーに、苦労してレベルカンストしたプレイヤーたちは唖然となった。
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通常のエンドロールであれば、ミノを置いてから表示が消えるまでに猶予があるが、「GM」の取得条件でもあるシャドウスタッフロール(消えロール)攻略ともなればそれも許されず、ミノ構築の安定性と純粋な記憶力が試されることとなる。通常エンドロールで段階的な練習を行うことができるのがせめてもの救いだろうか。
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「m」取得条件=シャドウスタッフロールの出現条件そのものについてもプレイに応じて変動しうる条件が加わり、輪をかけて複雑になっている。
MASTERモードよりも険しいT.A. DEATHモード
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TAPにて追加されたT.A. DEATHモードであるが、明確に「
超上級者向け
」として実装されただけあってその難易度は折り紙付き。
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開始時点でMASTERモードの後半、レベル700台に相当するスピードで開始する。この時点でMASTERモードの完走がおぼつかないプレイヤーは門前払いとなり、怖いもの見たさでモードを選んだ生半可な覚悟の者に容赦ない洗礼を浴びせる。
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そこからさらにミノの出現間隔と移動の制限時間が切り詰められスピードが上昇していく。少しつまづいただけでもあっという間にミノが積み上がってしまうため、完走にはMASTERモード以上の操作の正確性と構築の安定性、そして素早い判断力が必須となる。
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ただし、上記で「レベル500以降はMASTERのレベル900台の2倍強の速さ」と記述したが、実はミノ固定までの猶予時間だけなら誤差に近い変化にとどまる。またMASTERモードや次作のSHIRASEモードとは違い、スピードが速くなる以外にギミックは発生しないので、純粋に構築スピードと安定性を極めていくことがこのモードを攻略するカギとなる。
問題点
ゲームとともにメンテナンス難易度も上昇
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レバー上入力の実装でレバーを上下左右満遍なく使用するようになり、かつ「ザンギ入れ」が考案されたためか、レバーの可動範囲を調整する「ガイド」と呼ばれる部品の寿命が縮まることが多発。
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前作では上入力がなくレバーを回すような操作をしないので、可動範囲が十字に近いセイミツ工業製のレバーが好まれていたが、本作では「ザンギ入れ」でレバーを回す操作が考案されたため、可動範囲がダイヤモンド型(◇)の三和電子製4方向レバーが好まれるように。
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当然そのような操作でレバーが酷使されれば、レバーのガイドが摩耗し斜め入力が誤爆したり、ニュートラル(未操作状態)に戻りづらくなったりする。
入力を軽くするためにスプリングテンションを下げるゲーセンが多かったが、下げすぎると逆に今度は横連打中に反動で逆にレバーが入ってしまいブロックが元の位置に戻る(通称:ビクビク)が多発するため、調整は凄まじくシビア。
横連打を「レバーから手を浮かせて、レバーを叩くように入力」する人が多かったため、余計反動がつきやすく、メンテ難易度は格ゲー以上と呼ばれるレベルのシビアさだった。
結果、本作を稼働させている筐体のメンテナンス頻度が上昇し、ゲームセンター及び店員の負担が増えてしまった。
回転仕様にまつわる問題点は据え置き
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ミノの回転法則や壁蹴りの仕様は前作と同一。このため前作でよく指摘された通称「三原の陰謀」をはじめとする、ミノの回転法則に起因する問題点は本作でもそのままとなっている。
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もっとも回転法則が変わらなかったことは、前作の操作感覚をそのまま持ち込めるという利点の側面もある。特に本シリーズでは高速でミノを処理することが前提にあるため、操作感覚に直結する回転法則をむやみに変更できないというのもあるが。
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「床蹴り」がなくIミノを立たせづらいなどの点は、次作Tiで床蹴りの実装により緩和されることになる。
Tiから本作に戻ってきた際に回しづらく感じるという新たな現象も発生したが…
RE・ROメダルの存在意義
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ゲームオーバー寸前からの復活で点灯するREメダルと、一定以上の回転で点灯するROメダル。点灯条件からもおわかりいただけるかと思うが、通常プレイの範疇では点灯が難しく、ROメダルに至ってはまず点灯できない。
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故意に点灯させようと思うと、REメダルはフィールド最上部まで積み上げるリスキーなプレイを要求され、ROメダルはテトリスから連打ゲーに変貌する。メダルは段位に直接関与しないとされるため、セクションタイムランキング入りの目安になるSTメダル、プレイ技術の目安になるSK・COメダル、全消しが難しく存在価値の高いACメダルの4つと比較すると、この2つのメダルは腕前の指標になるとは言い難い。
グレード度外視でメダルを点灯させる遊び方も可能と言えば可能だが。
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タイムアタック重視の作風に似つかわしくなかったためか、次作でこの2つのメダルは廃止となった。
TAP追加モードはランキング掲載対象外
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TAPで追加されたTGM+モードとT.A. DEATHモードであるが、上記の通りこれらのモードは一切ランキングが記録されない。
特にT.A. DEATHは非常に競技性が高いモードなので、せっかくの好タイムでクリアしてもまったく記録が残らない点はかなり痛い。
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ただ、TAPの配布はTAの売れ行きが良かったことに対する購入店への還元の面が強く、モード追加が予定外であった可能性はある。TA発売からTAP配布まで2か月という短さや、新たな画像が描き起こされていないこと、基板容量の面からしても、ある程度は仕方のないことだろう。
BGMバグの存在
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原因は不明だがプレイ中にBGMの一部の音が鳴りっぱなしになるバグがそれなりの頻度で起こる。プレイにおいて実害がないのが救い。
総評
初心者向けのモードや上級者向けのモードを搭載し、より万人向けのチューニングとなった本作は、前作から正当な進化を遂げたと表現してよい。
一方で最終目標である「GM」への道は前作より険しく、果てしない道のりと化し、多くのプレイヤーを葬っていった。
しかしシリーズ独特の要素や高まった難易度、よりスタイリッシュな演出が、前作から続くカルト的な人気を不動のものにし、その圧倒的な難易度に立ち向かっていった者も数多い。
次作ではガイドラインの導入等でゲーム性が変わった事もあり、本作を好むという人も多く見られる。
現在はアーケードアーカイブス配信もあり、より気軽にプレイできるようになった。
その後の展開
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初代TGMの移植中止および後述の本作のPS2版の頓挫により、本シリーズの移植は絶望的に思われていたが、2022年12月1日に初代TGMがアーケードアーカイブスとしてPS4・Switchに移植配信された。その半年後となる2023年6月1日に、本作TAPバージョンが同じくアーケードアーカイブスとしてPS4・Switchに移植配信された。
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基本的にはオリジナルに忠実な移植になっているが、デモ画面で流れるアリカのホームページアドレスは「DEMONSTRATION」に差し替えられている。
なお、三原氏によると「基板版より若干遅い」とのこと。というのもSwitch/PS4では60fps出力だが、オリジナル版は約61.5fpsと若干速いスピードで動いているため。コレを無理やり60fpsに収めるとコマ飛び等出力面に問題が生じるので、駆動自体を60fpsに調整したという。
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アーケードアーカイブスのオリジナルモードであるHI SCOREモードではMASTER・TGM+、CARAVANモードではNORMAL・T.A. DEATHが対象となり、HI SCOREモードでは到達段位とタイム、CARAVANモードではNORMALがスコア・T.A. DEATHでは到達レベル・段位とタイムがランキングに記録される。ちなみにT.A. DEATHは発売1ヶ月後には5分切りクリアが記録されたため、トップ層はレベル勝負からタイム勝負に移行している。
余談
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TAPが無償配布だったためか、現在稼働しているものはまず間違いなくTAPになっている。TAとして稼働している筐体はかなり貴重。
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テトリス版権元であるザ・テトリス・カンパニーがガイドラインを制定する前の作品だが、おなじみのテトリスロゴが採用されている。
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発売中止になってしまった初代TGMのPS移植と同様、本作もPS2への移植が予定されていたが、これも中止になってしまった。
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2001年における三原氏へのインタビューにより、GM以上のグレードが存在するかもしれないことが示唆されたが、結局次作Tiの稼働までには発見されなかった。
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この時の三原氏は非常に曖昧な表現を用いているが、GM以上のグレードが「少なくとも2つ以上はある」とも明言している。TAPで追加された「橙GM」やT.A.DEATHのm/GMのことを指して言っていたのかどうかは定かではないが…
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当時、ゲーム雑誌の月刊アルカディアではハイスコアランキングが集計されていたが、m以上のグレードが長い期間出現しなかったため、ステージ数やランクを重視する同誌にしては珍しく「m以上が出たとしてもm扱いとする」という特別ルールが敷かれた。
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また、インカムランキングではずっと「TETLiS」と誤植されていたそうな。
こんなところでも前身誌ゲーメストの名残が垣間見える。
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ミノが固定されてから次のミノが出るまでの時間は、説明の煩雑さゆえプレイヤーから俗に「あれ」と呼ばれていたが、この名称が海外のテトリスプレイヤーにも浸透してしまい、全世界で「ARE」と呼ばれるようになった。
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ネームエントリーが終わった後にABCボタンを3つ押しっぱなしにするコマンドを入力するとネームエントリー終了後のゲームオーバー画面でパスワードと思しき謎の文字列が出てくる。
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TA発売当初にアリカ公式サイトで行われていたMASTERモードのオンラインランキングの登録パスワードなのだが、何故かT.A. DEATHモードやTGM+モードでもこのコマンドは有効。
PLUS配布時にはこの2モードでもオンラインランキングを行おうとしていた名残と推定されている。
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ちなみに、上記のコマンドはアーケードアーカイブス版でも実行可能となっている。
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本作(TA)の販促用チラシは新要素のDOUBLESモードを前面に押し出しており、本シリーズが持つストイックさを醸し出していた前後作とはやや雰囲気が異なる。
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キャッチコピーも「テトリスなら自信あるぜ。」「テトリスなら知ってるわ。」「そんな2人のダブルスモード」とテトリスの持つ親しみやすさを感じさせるものとなっている。
最終更新:2025年04月17日 17:51