ASTLIBRA Revision
【あすとりぶら りびじょん】
ジャンル
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横スクロール2DアクションRPG
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対応機種
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Windows(Steam) Nintendo Switch
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発売元
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WhisperGames
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開発元
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KEIZO
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発売日
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【Steam】2022年10月13日 【Switch】2023年11月16日
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定価(10%税込)
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2,570円
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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120個
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レーティング
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IARC:16+(16才以上対象)
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備考
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ダウンロード専売
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判定
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良作
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ポイント
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時と運命に翻弄される青年の大冒険 ほぼ個人製作とは思えぬ大ボリューム ライブラリー機能の未実装が惜しまれる
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ASTLIBRAシリーズ 生きた証 / 幻霧の洞窟
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概要
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元々はKEIZO氏が2007年から2021年にかけて製作し、フリーゲーム大賞を受賞した『ASTLIBRA』という作品(サイトリンク)。
本作はそれをベースにDXライブラリ開発者の山田巧氏、『朧村正』や『ユニコーンオーバーロード』等の作品にも携わったグラフィックデザイナーのシガタケ氏、イラストレーターの龍渕はく氏らの協力のもと、フリー版からストーリーや新要素を多々追加した「完全版(通称「Revision版」)」となっている。
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尚、外伝作品『外伝 ~幻霧の洞窟~』が存在するが、Steam版ではDLCとして、Switch版では単体作品として発売されている都合上、
本作の評価には考慮しないものとする。
あらすじ
村が魔物に襲われ、幼馴染の少女と生き別れた主人公。
気が付くと、目の前にいたのは喋る鳥と、人間のいない世界だった。
時と運命とに翻弄されながらも、真の勇気と優しさを持ち立ち向かう青年の、数々の冒険を描いた長編物語。
(ゲーム説明文より引用)
登場人物
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主人公
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幼い頃に住んでいた村が魔物の襲撃を受け、生き残った少年。その後辺境の土地で父代わりのカロンと共に過ごしていたが、幼馴染の事が諦めきれず、自分以外の人間を探すためカロンと共に旅立つ。
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明確な台詞を喋る事は無いが、周囲の反応で何を言ったかは判別可能。
顔グラは用意されていないが、作中の描写を見る限り顔立ちは
男の娘
である。
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アヌリス
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主人公が探している、生き別れた幼馴染の少女。
名前が「不幸を呼ぶ黒い鳥」という意味のため非常に珍しく、主人公はそれだけを手掛かりに探し続けている。
そして、次第に真実が明らかになって行くのだが……
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カロン
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主人公を辺境の小屋まで運んだ、人語を喋るカラス。名前は主人公を運び込んだ小屋に置かれていた書物から拝借したもの。
父親代わりとなり、天涯孤独となった主人公を育てる。
まるでアヌリスとその立場を入れ替えたかのような描写が示唆されているが……?
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ガウ
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辺境から旅立った主人公達が8年かけて最初に出会った人間。
出会って早々に姿を眩ましてしまうが……?
システム
※ボタン表記はSwitch版準拠。
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基本はオーソドックスな2D横スクロール型のアクション。
主人公を操作してステージに配置された敵を倒しながら目的地に進んでいく。
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難易度は簡単・軽快・適正・困難・地獄・無理の6段階で、それぞれ敵の強さや入手経験値倍率、一部の仕様が異なる。
ストーリーをある程度進めると、困難以上の場合は下げる事は出来ても上げることが出来なくなる。
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フィールドでは敵の撃破の他、つるはしを消費しての採掘や、隠しマップ・隠し宝箱といった探索要素も存在する。
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アイテム
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消費アイテムは、使用してから主人公の下側に表示されるゲージが減少し切ってから効果が発揮される。ゲージがなくなる前に攻撃を受けると使用がキャンセルされるため、状況を見極めて使う必要がある。
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一部のアイテムは「合成」を行って作成する必要がある。合成を行うには「合成レシピ」という書物アイテムが必要。
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主人公は武器、盾、鎧、アクセサリーが装備できる他、物語序盤で入手できる「天秤」や、敵やオブジェクトの破壊で入手できる「フォース」を消費した能力値の底上げによる強化が可能。
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武器には「属性」「攻撃力」「重量」「レンジ」「取回し」のステータスが設定されている。
攻撃アクションの速度は盾との重量の合計から素早さを引いた値と、取回しのステータスによって決定される。
レンジが最大の武器は盾を装備することが出来ないが、ダメージにボーナスが入る。
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アクセサリー以外の装備には「熟練度」が用意されており、経験値を溜めてマスターすれば「カロンの魔法」や「魔導クリスタル」を入手できる。
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以下、終盤の追加要素のため格納
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終盤では敵がランダムで強化されるようになり、その強化された敵からドロップした宝箱から「装備のボード」が手に入ることがある。ボードは装備品1つにつき3つまでセット可能で、3つ目以降は取捨選択する必要がある。
ボードをセットした装備は性能が大幅に強化される。その強化具合は、
初期武器が最強装備の攻撃力を軽々と超えてしまう程。
ボードにはピースと呼ばれる強化項目がランダムに設定されており、装備の能力向上や武器の攻撃属性変更は勿論、カロンの魔法やカロン憑依技の性能を変化させたり、強化する事で対応したステータスを底上げできる「ピース宝石」をセットしたりすることで、主人公の更なる強化が可能。また、性能の良いボードをセットするほど装備の基礎性能も強化されていく。
尚、ボードが出る装備は「現在所持している装備」から選出されるため、不要な生産可能装備を売り払えば厳選がかなり楽になる。
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主人公がレベルアップする度に、7つのステータスから任意の物を5ポイント分強化出来る。この割り振りは再びレベルアップした際や、各地に配置されている「青い置物」を調べる、アイテムのリセットポーションの使用等を行った際に好きに振り直せる。
ただし、主人公の現在のLvよりも3以上高い値に割り振った場合は、上昇幅が小さくなる「減衰」が起こる。
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割り振れるステータスとその効果
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HP(体力):戦闘不能になりにくくなる。
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ATC(攻撃力):武器自身の攻撃判定で敵に与えるダメージが上昇する。
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DEF(防御力):敵から受けるダメージが減少する。
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MAG(魔導力):憑依技の威力/遠隔攻撃の威力が上昇する。
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SPD(素早さ):攻撃速度/バッシュ範囲/一部奥義HIT数などが上昇する。
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LUC(幸運):取得コイン/取得経験値/素材ドロップ率などに影響する。
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ADA(適応力):潜水時間/水中速度/防風効果/状態異常耐性が上昇する。
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GROW
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敵の撃破や一部アイテムの使用、「憑依技」を命中させるといったことで入手できる6色の「フォース」を消費してマスを進めていくタイプの成長ツリー。
ステータスの底上げや後述する「カロン憑依技」の入手の他、装備や魔導クリスタルが入手できる事もある。
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尚、マスの対応色のフォースが足りない場合は、他の色のフォースを3倍の量消費する事でマスを解放できる。
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カロン憑依技
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Xボタンを押したままの状態で属性ごとに対応した方向の十字キーを入力し、Xを離すと「ST」を消費して発動する技。
同じ属性の技を複数習得済みの場合、「SKILL」のメニューから属性毎に発動する技を設定可能。
STは通常攻撃やシールドバッシュを敵に当てる事で上昇し、技発動後しばらくはダメージを受けなくなる。
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難易度が「無理」の場合を除き、Xを押している間は時間が停止するため、慌てず技を選択する事が可能。間違って発動しそうになっても「左・左」のコマンドで発動させない事も出来る。
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ただし、
カロンと別行動になった場合は発動できなくなる。
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カロンの魔法
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「KARON」のメニューから、「魔導クリスタル」の数をコスト上限として、主人公を強化したり動きをカスタマイズしたり出来るシステム。クリスタルは上述したマスター報酬の他、ステージ固定配置の宝箱やGROWの宝箱からも入手できる。
探索時にだけ使う効果はボス戦では切るなど、適宜セットし直すのがオススメ。マイセット機能もあるので活用するべし。
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また、「カロンの魔法が入手できる装備」の経験値をマスター済みの場合、その装備から得られる魔法の効果を
ノーコストでセット可能
になる。
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ただし、憑依技同様に
カロンと別行動になった際は効果が失われる。
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アストレイアの天秤
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物語序盤で入手し、以降ストーリーの根幹に関わることになる重要アイテム。
メニューの「LIBRA」から天秤にアイテムを乗せることが出来、乗せたアイテムに応じて様々なパッシブ効果を得ることが出来る。
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アイテムはそれぞれ「効果」と「カルマ(重量)」が設定されている。左右の天秤のカルマの合計値が釣り合っているほど発動した効果の量が高くなり、重量にズレがあると効果が下がっていく。また、同じ効果が存在する場合は効果が発揮されない。
尚、各地のどこかに隠されている宝箱から「天秤皿」を入手すれば、乗せるアイテムを増やすことが出来る。
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以下、終盤の追加要素のため格納
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終盤ではコインを消費して天秤皿を強化できるようになり、強化皿に乗せたアイテムの「ランクが一番低い効果」が「最高の効果」に変化するようになる。
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セーブクリスタル
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各所に設置されており、調べると「体力と状態異常完治」「敵雑魚の復活」「セーブを行うかどうかの選択肢」が発生する。
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ショップ
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ショップの品ぞろえはステージ毎に異なっており、装備を購入するには装備ごとに設定された素材を用意する必要がある。
また、敵が落とすレアな宝箱から「装備の設計図」を入手すれば、対応した装備が対応した店で購入できるようになる。
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尚、ショップは各ステージに存在する
風船で浮いている家「モキュンの店」
を利用するのが基本となる。モキュンの店では売買の他、ステータスの振り直しや後述するメタルの使用によるアイテム入手が可能。
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闘技場
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ストーリーの進捗に応じた試合が用意されており、クリアできれば貴重で便利な景品が手に入る。
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本作は章クリアごとの強化度合いが高いため、無理そうなら諦めてストーリーを先に進めると一気に楽になる。
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小さなメタル
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各ステージの隠し宝箱や闘技場の報酬で手に入る貴重アイテム。
メダルじゃないモキュ!
モキュンの店中央にあるガチャガチャの前で使用する事で、全37個の貴重なアイテムが順番に手に入る。
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ストーリーの進行によって、一部ではNPCが味方として戦力に加わってくれる。
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特定の条件を満たすまでは好きに連れ回せ、主人公の攻撃に合わせて攻撃してくれる。
条件さえ合っていれば
闘技場ステージにも同行してくれる
ため、ギリギリで勝てない場合はこれを利用するのも手。
評価点
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14年+αという製作期間を裏付ける、ほぼ一人で製作したとは到底思えぬ大ボリューム
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本作最大の評価点。
ショップの説明に「推定プレイ時間60時間以上」との表記があるのだが、
本編シナリオを完全クリアする為には本当にそれぐらいの時間がかかる。
実際、「そんなにかかるだろうかと思ってクリアデータのプレイ時間を確認してみたら本当に60時間以上かかっていた」というユーザーも少なくない。
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やり込み要素の中毒性
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「まだ見つけていない装備の設計図はあるのか」「新たな憑依技はどんな性能なのか」「この装備のマスター報酬は何なのか」「このマップに隠し要素はあるのか」「装備やスキルのビルドをどうするか考える」と言ったことが非常に楽しく、自然とやり込み要素に熱中しやすくなっている。
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良質なオリジナルBGMとOP
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OPには伏線が張られており、ストーリーの章が変わるごとに挿入される仕様も相まって、ゲームを進めるほど理解が深まる作りになっている。
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そのOPで流れる曲「君の赴くままに」は勿論の事、各地で鳴るBGMも雰囲気に合っており好評。なんと
ボカロ曲まで存在する。
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元々が個人製作であるが故の強み
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一部の敵やボスのデザインが
紳士的な意味でたいへんすばらしいもの
になっているのは勿論、イベント中の描写なども含めて「変に配慮したように感じる要素」は一切存在しない。
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パロネタも散りばめられており、
「ねんがんの」という一言が武器説明に添えられた「アイスソード」
や、
存在しないはずのMPが回復できるという説明文の「いのりの指輪」
等が存在する。
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更に……
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ストーリーで
主人公が女装するイベント
がある。しかも、
女装中はとあるキャラクターの容姿が眼福なことになる。
いいぞKEIZOもっとやれ
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また、アイテムや装備については所謂「取り返しのつかない要素」は皆無と言っても差し支え無く、取り逃がしても後で回収可能なため、気にする必要が無いのも嬉しい。
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ただ、シナリオには一部の展開で取り返しのつかない要素が存在するため、セーブデータを分けておくのも重要。
セーブデータ上限120個、かつSwitch版も同じ数セーブできる
ため、最大限活用しよう。
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アストレイアの天秤が導く、過去と未来が絡み合うシナリオ
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物語序盤で「思いのままに過去を書き換える」という力を持つ神器「アストレイアの天秤」を入手した事から、主人公とカロンは過去と現在を行き来し、最悪の結末を避ける為に奮闘する事になる。
ストーリー前半のタイムトラベルは主人公たちが意図しない形で発動するパターンばかりなものの、シナリオにいわゆる「行き当たりばったり感」を感じることは無いのも評価ポイント。
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そして、物語が進めば進むほど、アヌリスや天秤の力、主人公たちが生きる世界についての衝撃の真実が明かされていく。どんなシナリオ展開が待っているのか、「アストリブラ」や「生きた証」がどういった意味を持つのかなどについては、是非実際にゲームをプレイして確かめてほしい。
賛否両論点
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ステータス振り分けが幸運と素早さの二強
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幸運は素材のドロップ率に影響するため、
これに振るかどうかで装備生産に必要な素材を揃える労力が段違いに変化する。
ボス戦前になったら攻撃力に振り直せば良い。
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素早さも
武器の攻撃速度に直結する=DPSが一変する
ため、その武器の攻撃速度が最速になるギリギリの値になるようにモキュンの店で調整し、残りを幸運に振るのが最適解となってしまっている。
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逆に言えば、基本これにしておけば問題ないため初心者救済要素となっている。
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状態異常「猛毒」
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猛毒状態になると「主人公の頭上にカウントダウンが表示され、カウントが0になるまでの間に治療しないと
ゲームオーバー
」という仕様で、
耐性値を上げてもカウントの猶予を200以上にしなければ完全に無害化する事が出来ない。
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ただし害ばかりというわけでもなく、「酔拳」や「ジャンキー」といったカロンの魔法を活用した立ち回りが可能になるのも事実であり、かつ終盤では「使用する事で自ら猛毒状態になれるアイテム」も入手できる。
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Switch版は携帯・据置モードの切り替え時に、グラフィック最適化のためのロードが挟まる
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我慢できる長さではあるが短くもないため、人によってはストレスになる可能性も。
問題点
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イベントの回想や敵情報などを閲覧できる所謂「ライブラリー機能」が無い
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本作最大の問題点。
シナリオのボリュームが多いのに該当する機能が無く、振り返りたい場合は120個のセーブデータスロットを生かすしか方法がない。
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カロンの魔法「神の左手」に関する不具合
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「レンジが最大の武器を装備している際に盾を装備可能になる」という効果なのだが、これがマスタースキルで発動する盾を装備して該当武器を装備した状態の場合、
そのまま別の盾に装備を切り替えられる
という不具合が存在する。
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一部のUI
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自宅から過去に攻略したステージへ行く場合は天秤を調べる事でステージを選択するのだが、ステージ選択は十字キーではなく左右の秤を別々に調べなければならず、かつ表示されるステージ情報が風景しかない仕様のため、シンプルにUIが使いづらい。セーブポイントにワープできる「世界樹の花」の存在もあって、特定の状況を除いて利用する必要が無いため、利用せざるを得ない状態になった際にストレスに感じる事も。
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会話ログ機能が無く、連打でスキップしてしまった際に見返すことが出来ない。一応、それを利用した演出もあるが。
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メニューを開くと画面下部に「次の目的」が表示されるのだが、一瞬で表示されず徐々に浮かび上がる形式で、かつ表示されるまでに数秒ほど要する。
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「総重量」のステータス値が「STATUS」メニューでは確認できず、装備変更画面でしか確認できない。この値が武器の攻撃速度に関わるため、素早さを調整する際の確認に手間がかかる。
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「LIBRA」での強化値と、カルマが釣り合っていない場合の減衰がどの程度なのかが表示されない。
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終盤の追加要素関連のため格納
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ボードにピース宝石を付けた状態のまま、他の装備のボードに直接移し替える事が出来ない。その都合上、外し忘れたまま装備を変えてしまい、どの装備に宝石を付けたのか忘れた際の労力がとんでもない事になる。
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ボードの入手時にBで捨てることが出来るのだが、本当に捨てるのかどうかの確認がない。
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強化された敵は黒くなるが、一部のステージでは保護色の役割を担ってしまっており、視認性がとんでもなく悪くなってしまっている。
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総評
完成度の高いストーリーに加え、アクション、探索、やり込みといった要素がどれも豊富で、到底インディーズとは思えない大作という言葉がぴったり当てはまる傑作。
ある程度の稼ぎプレイや素材収集は必要なものの、それらを苦に感じないのであれば是非プレイしてほしい。
最終更新:2025年02月18日 13:39