和階堂真の事件簿 TRILOGY DELUXE
【わかいどうまことのじけんぼ とりろじー でらっくす】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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PC(Steam) Nintendo Switch
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発売元
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room6
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開発元
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Hakababunko(墓場文庫)
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発売日
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2023年10月18日(Steam) 2023年10月19日(Switch)
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定価
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1,564 円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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IARC:12+
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判定
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なし
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ポイント
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古き良き本格推理ADVのムード 手堅く仕込まれたミスリードと意外な結末 快適性にはやや難あり
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概要
iOS、Android向けにリリースされていた『和階堂真の事件簿』シリーズ3作に、新作1話を加えた4話構成のアドベンチャー。
プレイヤーは和階堂刑事を操作し、陰惨な殺人事件の謎に挑む。
僅かな色数で構成された粗いピクセルアート、聞き込みで少しずつ手がかりを得ていく昔ながらの攻略法、1~2時間程度でクリアできるライトなサスペンスドラマの雰囲気が特徴となっている。
特徴
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操作体系
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探索するエリアは2D横視点で描画されており、その中を左右に歩き回りつつ、聞き込みや物品の調査を行って手がかりを獲得する。
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調査によって新たなエリアへ行けるようになる場合があり、その際は地図メニューから行き先を指定してエリア移動を行う。
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おおまかな進行
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獲得した手がかりは「MEMO」という形で専用のメニューに保管されていく。
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このMEMOは1度に1つだけ「セット」できる。いわば和階堂自身がその手がかりを念頭に置いた状態となり、その状態で聞き込みや調査を行うと新たな選択肢が出現する場合がある。
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セットによる新たな手がかりの獲得を繰り返していき、そのチャプターで求められる十分な手がかりが集まると、推理モードに移行する。
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推理モードは和階堂の精神イメージ的なエリアで行われ、そこで自問自答による事件の振り返りに正解すれば次のチャプターへ進行できる。
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要は他の推理ADVでも見られる択一クイズであり、設問に対して適切なMEMOを1つ選ぶことで正答となる。
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分岐やゲームオーバーはない。
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MEMO一覧のUI
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MEMOのメニューでは獲得した手がかりが一覧化され任意にセットできるが、同時に、そのエリアの誰(何)に使えば新たな選択肢が出るかも一覧内で明示されている。
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ヴィジュアル面
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画面は全体がほぼ鼠色で塗りつぶされており、黒いドットで背景が簡素に描画されている。
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人物や調査対象は白抜きであり、また、どのキャラクターも表情は描かれておらずのっぺらぼうである。
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血液は赤く塗られている。このため、画面上には無彩色を中心に概ね3~4色程度しか無いのが視覚的な特徴となっている。
評価点
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効果的に組み込まれたミスリードと真相の提示
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1話1~2時間程度で読了できるボリュームながら、プレイヤーをどんな思い込みへ誘導するかや、どんな真相を見せれば驚きを与えられるかと言った点が丁寧。
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謎解き面では手がかりがフェアに提示されており、ドラマ的な部分で意図的にプレイヤーに見せていない事柄があるという作りなため、ミステリとしての面白さが損なわれていない。
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いぶし銀の王道的進行
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和階堂刑事は卓越した推理力こそあれど、一介の刑事でしかないため超自然的な特殊能力は持ち合わせていない。
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足を使った聞き込みと探索、そして情報整理による解決への足取りは地味ではあるが、発売時点では逆に珍しくなった「王道感」「本格推理感」を抱かせるものとなっている。
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和階堂刑事のキャラクターも、表情こそ見えないが、動作と台詞から落ち着きと渋さを感じさせる。
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残酷過ぎず、かつ鮮烈な殺人現場の表現
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首無し死体をはじめ猟奇的な殺害現場が複数登場するが、特徴項に記載した通り、粗い描画と単色でべっとりと塗られた血の色で現されるため、残酷表現が苦手でも問題なくプレイできる。
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かといって味気ないわけではなく、表情も描かれていない死体は却って想像力もかきたてられ、サスペンスの一幕としては十分なインパクトを有している。
賛否両論点
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かなり親切設計なMEMO一覧
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特徴項に記載した通り、MEMO一覧では「その手がかりを誰(何)に対して使えば良いか」が一目で分かるようになっている。
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これのせいで何も考えなくても、一覧を開いて該当の手がかりをセットし対象に話しかければ、それだけで話が進んでしまう。
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慣れればすぐに、エリアに順繰り入っては一覧を確認し、概ね手がかりを得たら同じ道順でもう一周、という流れ作業ができあがるだろう。
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行けるエリアが増えてくるとこの作業が面倒に感じてしまい、プレイ意欲を削がれる可能性まである。
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とはいえこの機能がないと、最終的に20個前後まで膨れ上がる手がかりを手当たり次第全員にぶつけることになりかねない。
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総当たりを防ぐ良設計である一方、それ自体が考える楽しみを奪い、新たな作業感を生むという一長一短なつくりとなっている。
問題点
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歩くのが遅い
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ダッシュ機能がなく、常にゆったりと歩行するためもどかしい。
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探索中は当然エリア内のあちこちを歩き回る必要があるうえ、同じエリアに繰り返し訪問することもしばしばあるため、不親切な点といえる。
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スタッフロールを飛ばせない
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収録された4話はいずれも最後にスタッフロールが用意されている。
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少人数のインディゲームであるためそう長くもないのだが、基本的に何度も見て面白いものではなく、スキップできた方がより良かっただろう。
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同選択肢を選んだ際に初回と同じ長台詞を読まされる
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既に読んだことのある選択肢を選んだ際に、2度目以降の専用会話がなく、初回と同じやりとりが再度発生する。
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長台詞を連打で読み飛ばすことになるうえ、証拠品の発見に繋がった会話でも改めて驚くところからやり直すので興が削がれやすい。
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「手がかりをセットして新たな選択肢を出す」というゲームシステム上、攻略において同じ選択肢を2度選ぶ必要自体無いことが救いか。
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探索不可のエリアに進入した際、逐一強制イベントが発生する
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事情があって探索不可能なエリアに入った際、強制的に台詞が再生されてから自動退室する、という場面が多くある。
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一言程度ならまだ良いが、スクロール演出に加えて最大で4回ほどテキスト送りを強要されるケースがあり、若干のストレスになり得る。
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せめて地図上でエリアを選択した際に制止してくれても良かったのでは。
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中途半端なヒントモード
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行き詰まった時のためにワンボタンで次の行き先を教えてもらえる「ヒント」機能があるが、これを使えるタイミングがかなり限られている。
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というのも「知り合いの探偵社に電話をして答を教えてもらう」体裁であるため、それを行えなかったり、ストーリー上で必然性がない場合は使えない。
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元々ヒントが必要な難度でないのも相まって、あってもなくても構わない機能となってしまっている。
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推理モードにおけるいまいちな設問
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主人公自身の自問自答と、それに合致する手がかりを提示する、という構図の都合上、問いの時点でほとんど解答を言ってしまっている場合がある。
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例えるなら「昨日は道に足跡があったが、さっきはそれがなかった。それとは何だ?」→「答:足跡」のような設問があり、クイズとして成立しているとは言い難い。
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また「手がかりをセットすると新しい手がかりを得られる」というデザインの都合上、解答に似たものや、一方を包含する手がかりを所持していることが多く、十分正解と言える手がかりが外れ扱いになることもままある。
総評
短い時間でさくっとサスペンスを味わいたいならおすすめできる一品。
元の難度が高くなく、そのうえで詰まる要素が排除されているため、推理ゲームは好きだがあまり悩まされ過ぎるのは嫌だという時には合致するだろう。
一方で手ごたえを求めると肩透かしを食らううえ、一本道のシナリオであることからも1度クリアすればそれっきりではある。
ポケットサイズの推理小説という雰囲気をイメージしておいた方がよいかもしれない。
余談
1,564円という価格は「ヒトゴロシ」の語呂合わせになっている。
最終更新:2024年08月22日 20:57