本記事では、Win/iOS/Android版である『一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう』と、リメイクであるSwitch/PS5/PS4/Win版を解説する。
判定はいずれも 良作



一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう

【いっしょにいきましょういきましょういきましょう】

オリジナル版

ジャンル 滅亡世界を二人で旅するノベルゲーム
対応機種 iOS
Android
Windows(DMM.com)
発売・開発元 ウォーターフェニックス
発売日 【iOS/Android】2015年11月5日
【Win】2015年11月12日
定価 【iOS/Android】480円
【Win】489円
プレイ人数 1人
レーティング なし
判定 良作
備考 スマートフォン版は現在配信停止
Steam版は下記リメイク版に差し替え
ポイント ウォーターフェニックスの原点
生き死にを題材としたセカイ系ノベル
UIは不便

概要

ノベルゲームを専門で手掛けるメーカー・ウォーターフェニックスが開発した作品。
選択肢は一切ない一本道ノベルであり、後の『最悪なる災厄人間に捧ぐ』『アーキタイプ・アーカディア』に通ずる作風は既に確立されている。


あらすじ

誰もいない場所で一人目覚めた鏡夜。呼びかけても誰も現れず、身体も動かない状況に弱り果てる中で通りがかりの少女と出会い、彼女に連れられた際に今の地球が全ての生物が死に絶えた死の世界となっている事を知る。
そして少女が、「人間の罪」を清算するために死に続ける使命を神から背負わされている事も知り、その苦痛だけしか知らない彼女にいつしか「幸せ」を教えたいと思うようになる。


登場人物

  • 鏡夜
    • 主人公。滅亡した世界で突如目覚めた人間。
      身体を動かすことが何故か出来ず、一切の飲み食いをしなくても生きていけるなど謎の多い身体を持つ。
    • 年齢は明かされていないが、口調などから恐らく少年くらいと思われる。
  • アサギリ
    • ヒロイン。神から地球上の全哺乳類の死を追体験させることを義務付けられたという少女。
      首が落ちる・全身が燃え上がる・瞬く間に傷口が開く…など、死んでしまう程の傷を負っても瞬く間に再生し、甦る身体を持つ。また、食事や睡眠を必要としない。
      • 当初は無感情で使命以外の知識を何一つ持たない状態だったが、鏡夜との出会いを境に次第に人間らしい感情を持つようになる。
    • なお、アサギリのみフルボイスとなっている。

評価点

  • 良質なボーイミーツガールストーリー
    • 上記の通り当初のアサギリは生物の最期を追体験するため死に続けては甦るという使命に傾倒し、ボウリングといった遊びや服の存在を知らないなど「人間」を自称する割には人間らしさが皆無の状態だった。
      そんなアサギリがストーリーが進むにつれて、鏡夜を使命以上に気に掛けるようになるなど人間らしさを身に着け変わっていく様子が丁寧に描かれている。
    • 鏡夜は当初のアサギリを不気味に思いつつも、残酷なまでに降りかかる「死」という過酷な使命など人となりを知るうちに献身的になっていき、やがて自身の身体の秘密も知る。
      • 「滅亡した地球」というポストアポカリプスを題材とした事もあってか、基本的に登場人物は鏡夜とアサギリの二人ぐらいしか出ず、その分二人の交流と心情描写に重きが置かれている。
        この二人が互いに影響を与え、タイトルの「一緒にいきましょう」という題名に相応しい展開を迎えていく。物語の各所での何気ない言葉が思わぬ伏線となった部分も多い。
    • 当初は抑揚のない声だったアサギリがストーリーの進行と共に感情豊かになっていくなど、アサギリ役の声優である松代真由氏の演技も光る。
  • BGMが良曲揃いであり、過酷な世界観と美しい物語を良く演出している。

問題点

  • 表現がやや拙い所がある。
    • シーンが切り替わるたびにBGMも切り替わるのだが、それが同じBGMでも曲の初めから再生される事が多い。
    • 立ち絵やスチルの表情が口を閉じているのに文章では開いていると書いてあるなど、噛み合わない点も見られる。
  • UIが不便
    • 通常画面でマウスクリックボタンがあるのはオートモードとメッセージウインドウの消去のみ。既読/未読スキップ機能はキーボードなどの操作をしない場合、メニュー画面を開いてからでないと使用できない。
    • オートモードの表記が一切無いため、判別がしづらい。
    • バックログが自由にスクロールする事が出来ず、メッセージを戻す事しかできない。進もうとすると強制的に閉じてしまう。
    • チャプターセレクトも無いため、好きな箇所から読み返すことが出来ない。

総評

ポストアポカリプスに使命を帯びた謎多き少女とのボーイミーツガールと、いわゆる「セカイ系*1」作品の特徴が見られており、その手の作品が好きな方には特にオススメ出来る。
UIの関係で今やるなら後述のリメイク版の方が良いが、安価なこちらを選ぶのも手だろう。


余談

  • DMM版はスマートフォン版やリメイク版と異なり、表現が無規制のものとなっている。
    • 一番わかりやすいのは初登場時のアサギリであり、DMM版では服すらも着ていない。
  • 英語版はSteamにて2017年12月9日から2023年7月12日頃まで配信されていた。この時は日本語対応がなく、日本語ボイスのみ収録されていた。現在は後述のリメイク版へとアップデートされており、翻訳の改善と日本語と中国語に対応した。
    • ちなみに英題は「Stand by you」。意味は「あなたを助ける」というもの。

リメイク版

ジャンル 死に続ける少女と滅亡世界を旅する絶望ノベルゲーム
対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション5
プレイステーション4
Windows(Steam/Microsoft Store)
Xbox Series X/S
Xbox One
開発元 ウォーターフェニックス
発売元 ケムコ
発売日 【Switch/PS5/PS4】2022年10月14日
【Steam】2023年12月21日*2
【MS Store】2024年10月18日
定価 各1,430円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング IARC16+(16歳以上対象)
判定 良作
備考 ダウンロード専売
ポイント グラフィック・UIを一新
テキストはオリジナル版とほぼ同じ
ケムコノベルアドベンチャーシリーズ

概要(リメイク)

各CS機にて発売されたリメイク版。
移植支援プロジェクトとしてクラウドファンディングで資金を募り、想定以上の額を突破し無事に制作された。
BGMやボイスは原作からそのまま流用されているが、システム面は大きく改良されている。

Steam版は前述の英語版からアップデートする形で、2023年12月21日に配信された。
後発ではあるが、基本的な内容は他機種版と同等となっている。


評価点(リメイク)

  • 美しくなったグラフィック
    • 立ち絵や背景、イベントスチルが全て描き直されており、違いは一目瞭然である。スチルの追加も見られる。
  • 改良されたUI
    • メニュー画面から章ごとの目次機能が付いた。
    • バックログが自由に読み返せるようになった他、ボイスの聞き返し機能も付いた。
    • オートモードも表記が出るため、判別が容易。
    • シーンが切り替わる際にアイキャッチが表示されるようになり、オリジナル版でのBGMが一旦途切れてまた最初から流れる事への違和感が軽減した。
  • ギャラリーにて、最初から音楽鑑賞も出来るようになった。
    • オリジナル版では音楽鑑賞をするには一度読み終える必要があった。

問題点(リメイク)

  • 基本的な内容はオリジナル版とほぼ同様であり、テキスト面は規制に合わせての修正がある程度で、シーンの加筆などはあまり行われていない。
  • 割高になった価格
    • 原作から3倍近く値上がりしている。ただ、それに見合うだけの内容ではある。
    • セールはそれなりに行われるので、それを狙うのも良い。
  • Switch版はタッチ操作に対応しているが、タッチボタン部分が小さめ。
    • このため、誤ってバックログの表示やメッセージ欄の非表示を行いやすい。
    • 慣れない人は素直にボタン操作にするか、指でなくタッチペンを使った方が良いかもしれない。

総評(リメイク)

UIの利便性を向上させるなど、現代的にアップデートされたリメイクである。
オリジナル版よりも読み返しが簡単になったので、作品をより堪能したいのならこちらが適任と言えるだろう。


余談(リメイク)

  • リメイク版では英題が「Together We Live」と変更されている。
    • こちらの意味は「一緒に生きよう」であり、より原題に近い意味合いとなった。
  • リメイク版で使用されたUIは以後のケムコノベルシリーズでも本作をベースにしたものが使用されている。
最終更新:2025年01月20日 19:47

*1 ゼロ年代に流行したジャンル。定義は現在でも曖昧ではあるが「主人公など主要人物の行動が世界観に大きな影響を与えている」事も特徴として挙げられる。

*2 Steam版がリメイク版へアップデート販売した日。Steamのストアページの配信日の記載はSteam英語版配信日の2017年12月9日から変更なし。