悪魔の招待状
【あくまのしょうたいじょう】
| ジャンル | アドベンチャー |  
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| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| メディア | 2Mbit+64kRAMROMカートリッジ | 
| 発売・開発元 | ケムコ(コトブキシステム) | 
| 原語版開発元 | ICOM Simulations | 
| 発売日 | 1989年9月29日 | 
| 定価 | 6,200円 | 
| 判定 | バカゲー | 
| ポイント | 恐怖の即死バカゲー 異様なテンションの主人公
 トラウマ級のホラー演出
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| ケムコアドベンチャーシリーズ ディジャブ/シャドウゲイト/悪魔の招待状
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概要
ケムコローカライズADVシリーズ最終作。前2作品と同様、海外のMacintosh向けに開発されたアドベンチャーゲームシリーズ「MacVentureシリーズ」の一作である『Uninvited』のFC移植作。
ファンタジーRPG風の世界観だった前作『シャドウゲイト』から打って変わり、現代を舞台にしたホラー仕立ての世界観で進行する。
ストーリー
気を失っていた主人公が車中で目覚めるところから物語は始まる。
主人公は姉と共にドライブをしていたが、何者かが突然視界を横切り、事故を起こしてしまったようだ。
姉の姿はない。車を出ると、目の前には大きな洋館があった。あねはこのなかにいるのだろうか?
誘い込まれるようにして中に入った主人公は、姉の姿を求めて館をさ迷う。
しかしそこは異形の怪物が徘徊する悪魔の館だった……。
特徴
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ストーリーの導入部分の通り全体の雰囲気はホラー寄りであり、魔物や亡霊と戦う展開になる。
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洋館の外には、唐突にウィザードリィの迷宮を彷彿とさせる迷路(実は墓地?)がある。ゾンビの群れとの固定エンカウント地点が存在するため、本格的にマッピング作業が必要であったりする。
バカゲー要素
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前作『シャドウゲイト』と同様、主人公がムダに個性派。
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口調が幼く、姉を「お姉ちゃん」と呼んで慕っている。自分の事を少年とも言っている。しかし冒頭の車のシーンでは主人公の目の前にハンドルがあるが、まさか運転していたのだろうか。
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説明書のストーリーでは、一人称は「私」で、姉を「姉さん」と呼んでいるのだが。
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元のパソコン版では同行していた相手が歳の離れた弟で、主人公は(多分)成人男性である。前2作と異なり、主人公の人物像や背景設定が特に語られない(≒物語上重要ではない)ので、思い切った改変が行われたのかも知れない。それならそれで運転席に座らせたままというのはどうかと思うが。
 
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テンションが妙。
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館に入ってひとりでに扉が閉まるシーンで「そりゃないぜ!!」
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客室のカーテンを見て「へやと おなじ いろあいの カーテンだ。オッシャレ!!」
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セルフを調べれば「ぼくだ。こんなところに ひとりぼっちでいる ぼくは せかいいち ふこうな しょうねんだ。」
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迷路を探索中に「ああっ!! いきどまりだ。いいかげんに しろよなーっ!!」
 
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「きみも すこし やすんだら?」「このあいだに トイレでも いったら?」など、ゲーム外のプレイヤーの存在を意識したメタ発言を自然に吐く。
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プレイヤーの指示に逆らって「へっ へっ へっ!! ぼくは いま はんこうきの まっただなかなんだ。わるいケド キミの いうことにばかり つきあってもいられないんだよ」などと言う事も。
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実はこれがひそかに即死トラップに対する警告/ヒントを兼ねており、無視して同じ指示をし続けると本当にゲームオーバーになる。
 「キミのせいで ぼくは しぬんだ。まあ せいぜい もう1かい やりなおしてくれよ」とゲームオーバー直前にプレイヤーへ恨み言を言う場面もある。
 
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本シリーズはゲームオーバーになってもすぐ復活できるのだが、その際のセリフは妙なテンションとメタ発言の両方が最大限発揮されている。
 「なーんちゃって・・・。こんなことで へこたれる ぼくじゃないヨ!!
 コンティニューで もう1ど チャレンジしょう!!」
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ここの「チャレンジしょう」はゲーム中の表記ママである(「よ」が小さい)。
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ちなみにゲームオーバー画面に登場する血塗られたドクロは化け物どもの世界の使者らしく、呪われたアイテムの誘惑に負けるエンドだと本当に主人公の目の前に登場してくる。
 
 
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全体的にギャグ要素が強めで面白いセリフが多い。あちこち調べると色々コメントしてくれる。
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「(人形について)にんぎょうだ。 あっ たんにんの せんせいに にているぞ!!」
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「(浴室について)すげえっ!!だいりせきの よくそうだ!!」、「げえっ!!だいりせきの せんめんだいだ。ごうかだな。」
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「(突然現れた後ろ姿の女性について)いまどき はやらない ながい ドレスをきた おんなのひとだ。よっぽどあしのかたちに じしんが ないんだな。」
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「(テーブルについて)ふるい テーブルだ。 あんな ちいさなドアから よく こんなおおきなものが はいったな。」
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「(教会の十字架について)ふるぼけた きぼりの じゅうじかだ。こんなものを たいせつに まつっておくなんて しんぷさんは よっぽど ケチなひとだったんだな。」
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(ゾンビについて)「こいつらは ゾンビの しゅうだんだ。ゾンビいがいの なにものでもない。あきらかに ゾンビだ。だれが なんといっても ゾンビだーっ!!」
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主人公以外にも、ホラーらしからぬコミカルな見た目と口調のポヨポヨ、ストレートに攻略アイテムを要求するブルーデーモンなど、化け物達はその外見に似合わず妙に個性的な連中が多い。どれも会話だけならまだ無害なので、ぜひとも話を聞いてみると良い。
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ゾンビは言葉を話すばかりか、「おいでよ!! こっちへ おいで!! わしら ゾンビには しけんも がっこうもない。うらやましかろう。おまえも きょうから なかまになるんじゃ!!」と主人公を誘ってくる。
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ゲームオーバー時に出てくるドクロも出現イベントでは「ねえさんは きっと しんでるさ!!」「かんしん かんしん」など、その悍ましい見た目に反してどこか口調が軽い。
 
 
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ホラー作品らしからぬ変なアイテムや呪文が多い。以下は一例。
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「ノーゴースト」
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幽霊を退治する薬。館の幽霊に悩まされていたある人物が使っていたものと思われるが、便利な品があるものだ。ビンにフタがついているので、使う前にはきちんと開けよう。
 
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「クモとりスプレー」&「クモ」
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クモとりスプレーはクモを弱らせる溶剤が入ったスプレー。クモ専用。捕まえたクモはおばけを驚かすのに使う。
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このおばけの人は敵の放った毒グモによって命を落とし、化けて出てしまったという過去がある。クモで死んだ人の霊をクモで追っ払うとはひどい話である。当のおばけも話を聞かない奴だが。
 
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「オフロデブクブク」
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屁をこく呪文。ルートの都合上かならず習得する事になるが、クリアには必要ない。どころか、
演出を見る以外に使い道がない
。
 
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ちなみに、本作の呪文はすべて8文字構成で統一されている。ゲーム序盤で4つの呪文を覚えるのだが、他の3種は
 「アナデオネムネム」「マケマケシッポポ」「イトマキマキマキ」である。
 イトマキはミノタウロス以来の伝統的な迷宮脱出方法だからまだいいとしても、他の呪文は…。
 
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妙な死にざまも健在
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前二作同様に主人公は妙な行動ですぐに死んでしまう。もちろん死に際の妙なセリフも健在。
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ゲーム開始直後、車の中でいろいろ調べているとガソリンタンクに引火して車が炎上し死亡。
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斧などの刃物系アイテムをセルフに使うとふざけている内に手が滑って死亡。
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お風呂の水で部屋を溢れさせて天井にあく穴に上った後、もう一度穴に戻ると入水して死亡。
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正体不明のアーモンドの香りがするおいしい薬を2回飲むと死亡。…シリーズ恒例(?)の服毒自殺だが、薬の正体を考えると色々と危ない。
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なお、黒い方の薬は飲むと1発で死亡してしまう。
 
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今作の場合、死亡する選択肢を選ぶと即座に専用のピンチの時に流れるBGMに切り替わる。そのせいで何度も死にまくっていると、そのBGMが普通に使われるシーンでも身構えてしまうようになる。
 
評価点
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前作『シャドウゲイト』同様、個性的なテキスト。
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『様々なコマンドを調べて返ってくるテキストの反応を楽しむ』という、当時の海外製テキストADVの作風が引き継がれており、妙に味わいのあるテキストや主人公の個性などに面白みがある。
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キレのあるローカライズも健在。どうやって死ぬかを試しながらいろいろなアクションを試すのが楽しい。
 
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ギャグ要素が強いがホラー部分にも決して手を抜いてはいない。
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上述のギャグ風のテキストの数々が笑える一方で、グラフィックやBGMや一部のテキストにガチでおどろおどろしかったり生々しかったりするものが多い。
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化け物に襲われる際は化け物の顔のアップが映し出される演出が多く、その顔がコミカルさのかけらもないおぞましい物ばかりなのでかなり怖い。
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こうして殺害された後に「なーんちゃって(ry」なので色々と微妙な気持ちにしてくれる。
 
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BGMも全体的にホラーテイストで、前二作と比較してもおどろおどろしく気味の悪い曲が多い。
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今作では敵を前にした時など死が迫っている時には緊張感を煽るBGMが流れる。この曲が流れるシーン全てにゲームオーバーがある訳ではないが、逆に言えばゲームオーバーの危険性のあるシーンでは必ずと言っていいほど流れるため、法則性(=ここで死ぬ可能性がある)が分かるとこの曲を聴くだけで背筋に冷たいものが走るようになる。
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一方、女幽霊やチビオニ出現時のような明るい曲も存在する。尤も、前者はそれで油断すると何倍もの恐怖を味わう羽目になるが。
 
 
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フラグ立ての難しさや大量のダミーアイテム、すぐ即死などの特徴もこれまでと変わっていないが、謎解きのヒントは比較的多めに配置されている。
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過去二作品と同様に重要なアイテムは捨てられないので、片っ端から要らないアイテムを捨ててしまえばかなり選択肢を絞れる。
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唐突に殺されるポイントはあるが、たいていの場合は直前に何らかの警告が入るので理不尽な死は減っている。落ち着いて考えながらプレイすれば死亡回数は前二作に比べるとぐっと少なくなる。
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一見、ふざけているような死亡テキストだが何故ゲームオーバーになったのかのヒントが含まれていることもある。
 
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完全なハマりポイントが存在しない。
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当時のこういったADVでは、必要なアイテムがない、時間制限を過ぎている、といった状態でセーブするとどうやってもクリア出来ないセーブデータが出来てしまったりしたが、本作ではその心配はない。試行錯誤しながら確実に進められるので、初心者にも優しく遊びやすい作り。
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持っているといずれ死んでしまうトラップアイテムも存在するが対処が可能になっている。
 
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たいまつは存在しないので、『シャドウゲイト』のように火や本数を気にする必要は無く、ゆっくりと探索ができる。
 
賛否両論点
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前編を彩るギャグ要素とのギャップあるホラー演出
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前述したようにホラー部分の演出にも手抜かりは無いのだが、はっきり言うとギャグ要素の数々を以てしてもぶち壊すどころか緩和することすらできなかったほどのレベルである。
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先述の通り、化け物のグラフィックはとにかくリアルで恐ろしげであり、ゲームオーバー時のテキストも「肉を引き千切られる」「全身の皮を剥がされる」など生々しく痛々しいものばかり。
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ゲームオーバー時に毎回表示される血塗られたドクロも、前作の死神が可愛く見えるほどリアルで恐ろしい。その後の「なーんちゃって(ry」とのギャップが緩衝材となっているが、それでも慣れないうちは怖い。
 トラップアイテムを持っていると、一定回数行動する度にこのドクロが語り掛けてくるのだが、何の予兆も無くいきなり現れるので非常に心臓に悪い。
 
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BGMも恐怖感を掻き立てるホラーチックなものが多く、ギャグ要素が多いからと言って侮ると(精神的に)痛い目に遭う可能性が高い。
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子供がプレイしようものならトラウマものであり、とてもギャグ部分を楽しむ余裕はないであろう。本作がバカゲーで済んでいるのは、ギャグ部分が辛うじて目立ってくれたからに過ぎないのだ。
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また、ギャグ要素でホラー要素を和らげるといえば聞こえはいいが、上述の通りギャグとホラーのギャップが激しいため、「ホラー要素を含んだコメディADV」なのか「コメディ要素を含んだホラーADV」なのか、どっちつかずな感も否めない。
 
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やや死にパターンが足りない
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本作も十分に変なゲームではあるのだが、やはり前作の火かき棒を何の疑いもなく左胸に突いて自害するしんのゆうしゃが偉大すぎたせいで若干、物足りなさを覚える部分がある。
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また、しんのゆうしゃの場合は「シュールで間抜けな死にざまを生真面目かつ詩的な語り口で述べる」というギャップがバカバカしさを際立たせていたのに対し、本作の主人公はそもそもの性格や口調がひねくれているため、変な死に方のインパクトがやや薄れている。普段のセリフもしんのゆうしゃと比較するとウケ狙いが過度な印象も否めない。
 
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死ぬ前に警告が入る事が増えたので難易度は下がったが、妙な辞世の句を吐きながら理不尽に死にまくっていた前作と比べると死にゲーとしての魅力を少し損なってしまったように見える。
 
問題点
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前二作からコマンド選択時のカーソル移動の癖が改善されていない。
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死亡時もその場復活できる親切設計ではあるが、場所によってはかなり戻される事も。
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ラスボスとその前の敵に負けた場合、前のマップまで戻されてしまう。どちらも「いどう」では簡単に移動できず、長い演出やイベントを経ないと再戦できないのでやり直しが面倒である。
 
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『シャドウゲイト』で存在した「ヒントボタン」自体は削除された。ちっとも役に立っていなかったが…
総評
パッケージの雰囲気からごく普通にホラーアドベンチャーを期待した人はさぞかし困惑した事だろうが、前作と同じくいろいろな場所を探索したりアイテムを手に入れたりして、主人公の愉快なリアクションを楽しむゲームである。過去作の小ネタなどから、作り手の旺盛な遊び心も窺える。
インターフェースの面倒くささや謎解きの難しさはシリーズゆずり。また、相変わらず多彩なバリエーションで何度も何度も主人公は死ぬ。それももはや様式の1つであり、プレイヤーの入力に対する反応が豊富という意味ではむしろ良点ともとれる。
ただ、それなりにバカゲー要素は強いのだが、怖いシーンの曲・テキスト・グラフィックなどは笑って済ませられるほど軽くはない。
まじめに分類しようとすると扱いに困るゲームである。
余談
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随所に前作や前々作の要素を含んだファンサービス的な演出がある。
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ゾンビ迷路にはいくつか墓石があるのだが、その中にディジャブの主人公「エース・ハーディング」やシャドウゲイトのラスボス「ワーロック」の墓が存在する。
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シリーズもので主人公や敵の墓が出てくるというのはよくあるパロディ・シチュエーションだが、しんのゆうしゃに倒されたワーロックはともかく、ディジャブのエースもゲームオーバーになると「永遠に土の下に眠るハメになってしまう」のでややブラックジョーク気味。
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ちなみに墓石を叩くとその墓の持ち主がゾンビとして蘇るのだが、彼等も例外ではない。しかも話しかけるとちゃんと自己紹介してくれる。
 
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館内のゲームルームにある蓄音機を「つかう」とシャドウゲイトのメインテーマが流れ出す。
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ラスボス「デーモン」に負けると配下(ゾンビやブルーデーモンなど本編に登場した怪物)をけしかけられるのだが、その中に1体だけ作中には登場していない怪物・死神がいる。デーモンの配下だったのか…。
 
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一方、NES(海外仕様FC)でも本作が発売されたが、テキストはこの日本版を逆翻訳している他、酒やアフリカ顔飾りのグラフィック、十字架や磔、五芒星の宗教絡み、首狩りや目玉飛び出しのグロ表現が修正されている。
最終更新:2024年08月13日 04:20