この記事では1997年3月に稼働開始したアーケードゲーム『電車でGO!』とVer.UP版の『電車でGO!EX』、およびその据置機・パソコン移植版を取り扱います。
電車でGO!
【でんしゃでごー】
電車でGO!EX
【でんしゃでごーいーえっくす】
対応機種
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アーケード
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使用基板
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JCシステム
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発売・開発元
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タイトー
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稼動開始日
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無印
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1997年3月
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EX
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1997年9月
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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ありそうでなかった電車運転ゲーム プレイヤーに不利に働きまくるゲーム性 一時的ではあるがブームを巻き起こした
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電車でGO!シリーズ
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概要
通称『電GO!』。
タイトーが1996年に開発、1997年に正式リリースされた専用筐体を使用した電車運転ゲーム。
後に隠し路線を増やし、バグ修正したバージョンアップ版『電車でGO!EX』もリリースされた。筐体に差異はなく、画面上の表記でのみ判別可能。
キャッチコピー「運転手はキミだ!」をはじめ、3Dポリゴンで描かれた沿線風景、運転台をリアルに再現した専用筐体も大きな話題に。
当時は音楽館の『Train Simulator』くらいしかなかった「電車の運転」を適度にデフォルメしたゲームとして成立させ、より身近にした。その結果、本作はゲーマーだけでなく鉄道ファンや一般の家族連れをゲームセンターに通わせ、電GO!ブームを呼ぶことにもなった。
しかし、その中身はとんでもなく難しく熟練を要するゲームだった。
ゲームの説明
ゲーム筐体
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205系電車の運転台を模しており、基本的なデバイスの「マスコン」「ブレーキ」「警笛ペダル」、ゲームと連動して動くメーター類の「速度計」「知らせ灯」「ブレーキ圧力計」が搭載されている。ハード製作にあたり、鉄道模型用の「ECS-1コントローラー」を購入・分解して研究されている。
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プレイヤーから見て左のレバーが「マスコン」。車でいうアクセルに相当する。5段階の強さがあり、ブレーキを解除した状態でこれを手前に倒すと加速する。
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右のレバーが「ブレーキ」。これを回すと減速。ブレーキは解除+9段階の強さがあるが、最高段階は「非常ブレーキ」であり、指示が無い時に一定速度以上で使うと減点。ただし停止後に使う分には減点はない。
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「知らせ灯」はドアの開閉を示すもので、ドアが閉まると点灯する。点灯していない状態でマスコンを入れると減点。家庭用版ではゲーム画面内に表示される。
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足元には警笛を鳴らす「警笛ペダル」がある。「警笛鳴らせ」の地点では、これを使って鳴らさないと減点される。鉄橋の前など特定ポイントで鳴らすと「隠し警笛」として持ち時間が加点されるが、逆に鳴らし過ぎるとこれまた減点である。
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また、座席には振動バスシェーカーが搭載されており、レールの継ぎ目を渡る時に振動する。
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なお、50インチプロジェクターのDX筐体では、画面の大きさに合わせてメーター類以外の操作系スペースが通常のSD筐体よりも拡大されており、操作感覚がわずかに異なっている。
ゲームの進行
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規定のクレジットを投入後、スタートボタンを押してゲーム開始。
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プレイしたい路線を選択する。
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ローディング後、列車紹介の後に運転開始。なお列車紹介はスタートボタンでスキップ可能。
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初級路線選択時のみ、マスコンとブレーキの役目、大まかな操作のやり方が表示される。これもスキップ可能。
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最初に30秒の持ち時間が与えられ、全区間走破すればクリア。
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途中で持ち時間が0になってしまったらそこで「時間切れ」。規定のクレジットを投入すればコンティニューとなり、前の停車駅から運転再開できる。コンティニューしなければゲームオーバー。
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スコアを更新すればネームエントリー。
運転の大まかな流れ
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原則ダイヤに沿って電車を走行させ、到着予定時刻に合わせて駅の停止位置に停車させる。
「ダイヤに沿って」という点が重要で、遅れるのはもちろん、ダイヤより早く到着しても注意信号45km/hのペナルティが発生し、結果としてダイヤの大幅な遅れが生じてしまう。
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プレイヤーは「持ち時間」という点数を持っており、駅への到着が遅れたり、好ましくない運転をしたりすると徐々に減点されていく。逆に、駅に正確に停車させたり、良い運転をしたりすると加点される。
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停車の際は、停止位置の前後数メートルの間の「合格範囲」に止めることで停車扱いとなり、評価に移る。手前で止まってしまった場合は合格範囲まで列車を進める必要がある。行き過ぎてしまった場合は停車した時点で評価となる。
+
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加減点項目
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項目
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条件
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増減秒数
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持ち時間が増えるプレイ
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停止評価Good!
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減点項目に引っ掛からずに停止位置0m停車を成功させる。
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3秒
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停止評価Great!
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減点項目に引っ掛からずに停止位置0mと定刻±2秒停車を成功させる。
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連続達成回数+5秒
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隠し警笛
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保線作業員、トンネル、鉄橋などの標識のない特定ポイントで警笛を鳴らす。
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2秒
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踏切事故回避成功
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踏切事故回避に成功する。
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5 or 10秒
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ボーナスゲーム
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機関車と貨車の連結ゲームに成功する。貨車に与えた衝撃が小さいほど多く加点。
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最大10秒
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持ち時間が減るプレイ
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車内信号無視
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※上級のみ 知らせ灯が消灯している状態でマスコンを入れる。
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-10秒
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遅着
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到着時刻に遅れると1秒ごとに減点。
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-1秒
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速度制限無視
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速度制限を超過する。ベルが鳴るが強制停車はない。 速度制限の標識は本作では「山陰本線丹波口駅出発後の制限60」「東海道本線京都駅と高槻駅出発後の制限35」のみ。
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-20秒
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信号無視
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減速信号が現示されている信号の次の信号を通過した時点で45km/hを超過している。 減点の後にATSで強制停車。
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-15秒
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警笛過剰
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不必要な場所で約30回警笛を鳴らす。
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-5秒
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標識無視
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警笛吹鳴標識を無視する。
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-5秒
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急制動
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25km/h以上で非常ブレーキを一定時間以上使用する。使用時間は累積される。
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-10秒(初級) -15秒(上級)
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踏切回避失敗
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踏切で立ち往生している車に激突する。
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-10秒
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出発信号無視
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いつまで経っても発車しない。いわゆる遅延プレイ対策である。
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-5秒
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停車時評価での減点項目
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駅構内再加速
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駅構内に入ってからマスコンを入れる。
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-10秒
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駅進入速度超過
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「場内進行」の喚呼が行われた時点で構内制限速度を超過している。 基本的には75km/hであるが、一部駅ではもっと低い。
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-超過した速度分
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オーバーラン
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停止位置を2m以上越えて停車する。
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超過分×-2秒
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運転評価
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運転を終了した後に表示される最終的なスコアである。本作での項目は以下の通り。
「不可」→「可」→「良」→「優」の順に評価が上がり、すべて満点を取ると100点になる。
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【力行・惰性の使い方】
力行と惰性走行がきちんと行えているかを評価。詳細は不明だが、むやみにマスコンの入切を繰り返すと減点される傾向がある。
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【ブレーキの使い方】
非常ブレーキはもちろん、B8などの過剰なブレーキ操作を行っていないかを評価。
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【停止位置の正確さ】
停止位置にきちんと合わせて停車したかを評価。
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【信号・標識を守る】
信号やその他標識をきちんと守れているかを評価。
収録路線
難易度は「初級」「上級」の2段階のみ。「上級」では雨が降ってブレーキの効きが悪くなる区間がある。
最初から選べる路線として初級1つ、上級3つの計4ダイヤが収録されている。隠し路線はいずれも「上級」である。
隠し路線は、決められたコマンド操作をすること選択できる。
+
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最初から選べる路線
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【初級】山陰本線 キハ58系普通 亀岡→嵯峨嵐山・丹波口→京都
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スタッフの一人が学生時代に利用していた思い入れから収録された路線。
嵯峨嵐山駅に着いた後、丹波口駅までの運転を省略する演出が入り、このダイヤでは嵯峨嵐山駅から丹波口駅までは運転できない。
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電化前の旧線時代を再現しているため、タイトルに反して運転するのは電車ではなく気動車。気動車ゆえに車両の性能は劣悪で、特に加速力が低い。
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初級ながら車窓はのどかな田園風景に始まり、保津峡の自然溢れる景観から、トンネルを抜けて京都市街へと移る見どころの多い路線。
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最初の区間では(一応)チュートリアルが表示されるほか、どの区間でもいくら早着しても注意信号が点灯しない。
保津峡駅後に1か所注意信号が出るが、これは「信号制限に対してのチュートリアル」の意味合いが強く、無条件で出現するものである。
【上級】山手線 205系普通 渋谷→東京
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おそらく日本一有名な路線。本作では内回りで運転。実際の山手線はATCで信号制御されているが、ゲームでは色灯式信号機が採用されている。
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全体的に駅間が短く、構内制限速度予告が一瞬しか表示されないため、速度の出しすぎには要注意。
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この路線のみ、大きく早着すると注意信号とは別に25km/h制限の徐行標識が設置される。こうなると定着が非常に困難になってしまう。
【上級】東海道本線 221系快速 京都→大阪
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本作唯一の快速運転ができる路線。なお「○○駅通過」の表示こそ出るものの、後発作品と違い通過時刻とそれによる加減点は設定されていない。
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高速走行と駅通過の爽快感が特徴だが、3駅目の長岡京駅まで各駅停車なので、ある程度停車スキルがないと快速運転は楽しめない。唯一120km/hに到達できる上に加減速性能も最も良いため、慣れてしまいさえすれば無茶の利く路線でもある。
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ちなみに実際の同区間の快速は山崎駅を通過しない。早朝に停車パターンの違う快速があるが、これもまたゲーム中のものとは異なる。
【上級】京浜東北線 209系普通 品川→横浜
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初期出現の中では最も高難度の路線。基本駅間が長く、ダイヤも余裕が少ない。実際の京浜東北線は山手線同様にATCで信号制御されているが、やはりこちらもゲームでは色灯式信号機が採用されている。
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+
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隠し路線
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【上級】山陰本線LONG キハ58系普通 亀岡→京都
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コイン投入後、マスコンを5、ブレーキを非常に入れて、スタートボタンを押すと選択可能。
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「初級」では運転できなかった嵯峨嵐山駅から丹波口駅までが運転できる。上級扱いだが全区間余裕があり、早着しても注意信号が出ないのでクリアは容易。
【上級】東海道本線EXTRA 221系普通 高槻→大阪
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コイン投入後、マスコンを5、ブレーキを解除に入れて、警笛を踏みながらスタートボタンを押すと選択可能。
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こちらは普通列車での運転となっている。快速の時とは違って余裕が無い駅が多くなっており、一部駅の構内制限速度も変則的になる。
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+
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EX限定の隠し路線
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【上級】山手線EXTRA 205系普通 渋谷→東京
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コイン投入後、マスコンを5、ブレーキを非常に入れて、スタートボタンを押すと選択可能。
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最初から雨が降っているうえ、品川からは雪となりブレーキ性能が更に悪くなる。そもそも最初の雨の時点で通常の山手線の雨よりもブレーキ性能が低い。
【上級】京浜東北線EXTRA 209系普通 南行品川→横浜
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コイン投入後、マスコンを5、ブレーキを解除に入れて、警笛を踏みながらスタートボタンを押すと選択可能。
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「山手線EXTRA」と同様に雨の状態から開始され、川崎からは雪が降り始める。こちらは通常の京浜東北線の雨より僅かにブレーキ性能が悪い程度。
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評価点
貧弱な基板ながらもできる限り再現された環境
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使用基板は『サイドバイサイド』と同じ「JCシステム」だが、実は当時のタイトー製シールプリント機『写してちょ!』の基板をベースにポリゴンを使えるようにしたもので、当時から微妙な性能であった。
そのため、当時の他の3Dグラフィックゲームと比べて明らかにグラフィックが貧相なのだが、それでも再現できうる箇所は手を抜いておらず、知っていれば実際の路線を運転した感覚になれる再現度の高さである。
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電車の挙動もリアル。4つの路線ごとに車両性能が異なっており、鉄道ファンでも納得できる。
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対向列車がこれでもかというほど登場するのも大きな魅力。特急列車や貨物列車、並行する私鉄の電車、さらにはブルートレインやドクターイエローまで登場するというこだわりっぷりである。
プレイのハードルを下げるアレンジ
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長すぎる駅間やトンネルが短縮されている、ATS確認やワイパーなどの煩雑な操作が省略されているなど、意図的にデフォルメされている箇所もある。後述のプレイヤー不利な改変ばかりが取り上げられやすいが、こうしたアレンジはユーザーフレンドリーであるといえる。
予算をかけたと豪語するだけあるコンパネ
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製作者が進んでプロモーションを行なっていた中で盛んに宣伝されたコンパネの作りは妥協の無い代物。サイズ感は実物そっくりで、両手にハンドルを持てば究極の運転士気分である。
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コンパネ周りに関してはかなり営業部門と衝突したらしく、「スイッチ類を汎用ボタンにしろ」といった圧力がかかったと開発者がエピソードを語っている。
賛否両論点
運転手とアナウンスの棒読みボイス
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車掌のアナウンスなどはスタッフが担当しており、それもクセのある棒読みである。
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ただし『2』以降の声優によるボイスを「わざとらしい」と考えるファンもおり、棒読みなのはむしろ現実感があるという意見もある。のちには「このボイスでなければ『電GO!』らしくない」と賞賛する声も出るほどになった。
問題点
非常に高難度なゲームシステム
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多くの鉄道ファンやファミリー層をゲーセンに読んだ本作であるが、実際は非常に高い難度を持つパターンゲーである。
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停車位置にどれだけ正確に止まれるかというルールは、極端に言えば「チキンレースをゲーム化したもの」である。
初見ではそもそもどれくらいの速度で走ればいいのかが掴みにくい。チュートリアルやインストラクションカードの類も抽象的で、事前に攻略法を知らなければクリアはまず不可能。下手に速度を出せば駅に止まれずオーバーランで大幅減点、逆に速度を下げすぎるとダイヤに間に合わず持ち時間がどんどん削られる。この部分が克服できるようになってからが本番であり本作の醍醐味なのだが、その前に挫折する人が続出してしまった。
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停車周りも不親切な点が目立つ。駅進入速度は駅の到着直前に突如表示されるうえ、路線・駅ごとに値が異なるという難しさ。駅構内再加速に関しても、初心者は停止位置より手前に停止してしまうことが多いため再加速せざるを得なくなる。オーバーランや延着の減点もあり、相当の慣れがなければ減点無しで停車を終えることは難しい。せめて前者2つがなければだいぶマシだったが…
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こういった減点項目の多さの割に、加点項目は「隠し警笛」「停止位置にぴったり電車を止める」の2つと、上級での「踏切事故回避」「ボーナスゲームに成功する」の最大4つ。
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隠し警笛は多少見当がつくとはいえノーヒント。停止位置ボーナスも慣れなければとても取れるものではない。
事故回避はそもそも大幅な早着が必要なうえ知らなければ回避は難しく、失敗すれば持ち時間が減点される。ボーナスゲームについても終盤にようやく挑戦のチャンスが与えられるうえ、これまた慣れが必要なもの。
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初級の山陰本線では力行・惰性走行に関しては詳しくチュートリアルが出るものの、停車に関しては「ブレーキを操作して停止位置に停車!」と表示されるのみでノーヒント同然。
役に立たないアドバイス
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これだけの高難易度にもかかわらず、ゲームオーバー時のアドバイスはかなりいい加減である。言っていることは間違いではないのだがあまりにも抽象的であり、冷やかし・煽りのようにすら見えてくる。
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それに加え、コンティニューしなかった場合は
「だめだこりゃ」と言わんばかりの呆れた表情で両手を掲げる
、という仕草を取ることもあって、人によっては腹立たしく感じることも。
デモ画面詐欺
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タイトルデモには3Dポリゴン化されたスーパービュー踊り子や各種新幹線、果ては機関車のDD51など鉄道好きには「おっ!」と思える車両が出るが本編で運転することはできない。
タイトルデモだけ見れば物凄いモード数とツボをおさえたセレクトだが、事前に情報を知らなければゲームスタート後の路線選択でその少なさにガックリくる。
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なおこれらの車両はほとんどがのちの続編で運転できるようになった。
ダイヤ選択が不親切
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後の作品と違い、本作のダイヤ選択画面は「路線名」「使用車両」「難易度」が書かれているのみで、運転区間や種別などプレイ内容が把握できない。特に隠し路線の「東海道線EXTRA」などは、何が違うのか選択してみないと分からない。
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また、山陰本線に初級が1つあるのみで他は全部上級である。
難しさは大して変わらないが、新規プレイヤーにはハードルが高く感じられる。
現実との乖離
リアルな挙動とは裏腹に現実の鉄道と異なる点も多いことも特徴。先述の通りハードルを下げるようなアレンジもあるのだが、逆にプレイヤーの不利に働くものが多い。
理不尽な遅れに対するスタンス
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本作では1秒遅れるごとに持ち時間が1秒ずつ減点されるルールである。もちろん遅れはない方が良いのだが、現実では混雑や天候による性能悪化など列車が遅れる要素が山ほどあり、1分程度の遅れなら日常茶飯事。踏切事故以外の各種アクシデントが実装されていないゲームと言えばそれまでだが、それでも1秒でも遅れたらアウトはいくらなんでも厳しすぎる。
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この点は長きにわたって本作の難度を上げていた要素の一つだったが、『山陽新幹線編』以降段階的に緩和が図られていった。
意味合いが大きく異なる鉄道信号
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注意信号が点灯した際のダイヤへの影響が大きすぎる。
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ディップスイッチ設定の難易度次第では3秒早着するだけで注意信号が出る。本作はダイヤに余裕が無い駅も少なくなく、注意信号を守ったら10秒近く遅れたということもしばしば。
つまり信号を守った結果ゲームオーバーになるという、現実の鉄道には通じ難い状況が発生する。もし本作と同等のルールで現実の鉄道が運転・運営されていたとしたら、運転士達は早々と匙を投げるだろう。
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なおこの早着秒数は「累積」であるため、上記のケースでは1秒早着を3回連続やらかしてもアウトである。
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早着秒数はジャスト定刻か遅着するとリセットされるため、攻略本では「早着して注意信号を喰らうぐらいなら数秒遅着したほうがマシ」とすら書かれる始末。
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本来、鉄道における注意信号とは、大雑把に言えば前を走る列車との間隔調整のためのものであり、ダイヤそのものを調整するためのものではない。~当然、現実の鉄道においても注意信号による遅延は、その列車の乗客が納得するかどうかは別問題としてもやむを得ない理由のため、基本的に咎められることではない。
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次回作である『高速編』以降では信号が変わる早着秒数が多少緩和されたり、数秒程度の早着なら減速信号(70km/h制限)で済む等、多少の対策がなされたが、根本的な問題は『FINAL』まで引きずることになった。
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さらには本作のみ信号の位置がグラフィックで描画されていないため、どの辺りまでに減速すればいいのかがなかなか掴めない。実は本作は注意信号に変わる可能性のある信号が決まっており、信号機自体も一定間隔で設置されているのだが、普通にプレイしている分にはまず分からないだろう。
以上の点から分かるように、本作はそれこそ現実の鉄道をも上回るガチガチのパターン化を要求しており、その実は「''現役のプロですら初見ではクリア不可能な、トレインシミュレーターに似た別物’’」といっても過言ではない。ここを「アーケードゲームとしての味」と割り切れるか、それとも「これは本物の電車ではない」と拒否してしまうかで、本作に対するスタンスは極端に分かれてしまう。
とはいえ、ゲーム性うんぬんを抜きにしても、実際にない不当な難易度上昇に繋がってしまっている点は、擁護しがたいものがある。
総評
今までにありそうでなかった「列車の運転士を題材としたゲーム」を、普段はゲームセンターに行かない一般大衆をも巻き込み広めた、伝道師的な作品である。その功績は非常に大きく、一時的ではあるが爆発的なブームを巻き起こしたのは確かである。
かの「ゲーム批評」でも「東京駅地下のゲームセンターに、スーツ姿のらしからぬ客達が和気藹々と、『進行~!』の音声に合わせ指差し確認のなりきりプレイは異様だが微笑ましい」と紹介されたことをはじめ、現在でも「名前は知っている」人が数多く存在しているほどにまで全国で影響を及ぼした。
しかしゲーム自体はライト層には手に余るほどに不親切で、アーケードゲームであることを差し引いても非常に高難度であった。後発作品では段階的に改良が行われるものの、一般層に敷居が高いのはそのままで、人気の沈静化が進んでいくことになる。本格的なシミュレーターを求めない鉄道ファンからは多大な支持を受け、現在でもコアなファンが多数存在する作品とはなったが、総合的な評価としては「難しすぎた」と結論付けざるを得ないだろう。
2019年6月26日に『電車でGO!!』にて『無印』の『復刻版』が同時収録されたが、一部要素が収録されていないため、求めるものによってプレーしたい方を選ぼう。
余談
謎の電気機関車
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タイトル画面の電気機関車は、カツミという会社が販売していた鉄道模型であることが判明している(参考)。
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ちなみにこの機関車のナンバープレートは「EB10」となっているが、実在したEB10形とは似ても似つかない形をしている(EH10形の金型を流用したため)。
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『64』以降のタイトル画面は本物の鉄道写真となった。
派生作品
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SNK製クレーンゲーム『電車でGO!トレトレトレイン』、SANKYO製パチンコ『フィーバー電車でGO!』、キッズメダルゲーム『メダルゲッター!電車でGO!』、キッズカードゲーム『電車でGO! カードゲーム』、ドライブゲーム『電車でGO! おうちでうんてんしゅ』等々。パチンコは地味にヒット作となった。
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エレメカマシンの「キッズレール電車でGO!」のように、子供向けを分かってるのか疑問符のつく代物を輩出してしまったことも。このエレメカマシンは、スーパーのフードコートなどにゲーム機を置く事業のために作られたもの。内容は中に小さな模型の電車が走っている電車型のマシンに乗るというもので、動いている間はPS版のあのCM曲が流れていた。
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LCDゲームや、当時流行したポケットモンスターの「ポケットピカチュウ」に乗っかった歩数計「電車でPO!」まで発売された。
幻のゲーム「電車でGO! Nゲージ編」
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特別バージョンとして、実物の鉄道模型(Nゲージ)にカメラを搭載し、巨大なジオラマを走る『電車でGO! Nゲージ編』も存在した。『A列車で行こう』シリーズのコクピット視点を実写化したような構成で、ショーだけの展示で発売はされなかったが、イベントでたびたび出展された。
Nゲージのジオラマ空間を走らせ、立体交差等を駆使して数人同時プレイも可能という内容であったが、プレイ感覚も電車シミュレーションとしての再現度は別物。
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サイズは横幅数メートルに及び、当時のゲームで最大級とされるセガのメダルゲーム「ロイヤルアスコットスペシャル」よりも大きいかったことから、これがネックとなったともいわれる。
電車でGO!絡みの有名人
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真っ先に上がるのはイベントでよく呼ばれていた「元ベテラン運転士」の方であろう。
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広報課でもない、それも引退された方であったが鉄道ファンの為にと一肌脱いだ形。最初はオーバーランをしてしまう等残念な結果だったが、人知れず練習して「電車でGO!達人」とまで呼ばれる域にまで達した。
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芸能人ではタモリが有名。元々電車好きで知られていたが、このゲームの大ファンであると「笑っていいとも!」「タモリ倶楽部」などで公言し、度々『電車でGO!』と具体的な作品名も出していた。
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他にも石原良純や六角精児、加山雄三といった著名人もこのゲームのファンであると公言したことがある。
コンパネ周りの劣化
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この筐体は『電車でGO!!』以前のアーケード最終作『がんばれ運転士!!』まで使い回されたため、経年劣化によりメーター類のズレや故障が頻発し、「新作なのに筐体の劣化が反比例で発生」というパターンが各地で起きてしまった。
+
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実際の事例として…
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ハンドルが折れてただの棒になっている。
急加速、急ブレーキ等筐体に負荷のかかる遊び方をした結果折れてしまったのだろう。店舗によっては棒をあてがって補修していることもあった。
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知らせ灯が点灯しない。
電球切れを放置しているためと思われる。タイミングが合わないと減点されてしまうため地味に厳しい問題である。この場合、効果音を頼りに出発のタイミングを自力で判断するしかない。
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ブレーキが安定しない。
乱暴な遊び方をされたため電気系統がいかれてしまったのだろう。下の状態よりはマシだが、プレイには少なからず支障が出る。
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マスコンが5まで行かない。
こちらも乱暴なプレイによって故障してしまったものと思われる。この状態になると速度を出す必要があるダイヤが攻略不可能になる。
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速度計が動かない。または大きな誤差が生じる。
電気系統の故障を修理しなかったからであろう。相当慣れたプレイヤーでもなければプレイはほぼ不可能。
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実際の運転士は体感Gによって速度計を見なくても大体の現在速度が分かるのだが、ゲームではそうはいかず、速度を感じ取ることは困難。
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プライスマシン景品
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プライズマシン景品として、コンパネ上に存在している「懐中時計を入れる穴」のためだけの「電車でGO懐中時計」が直営店独占で大々的に展開された。しかし、のちに余程沢山余ってしまったのか、レンタル契約のボウリング場のクレーンゲーム等にも大量に導入されていた。
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懐中時計自体は当時のプライズアイテムの出来として、やはり「壊れやすい」のは仕方ないが、800円規制としては結構良いアイテムではある。
広告など
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この時期のタイトーお馴染みのちょっと恥ずかしい紹介POPについて。
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「業界初!」と大風呂敷な謳い文句がデカデカと書かれたPOPが筐体上部に貼られていた。アーケード業界初には違いないが、コンピューターゲームの歴史からみると鉄道シミュレーターとしては一番乗りではない。
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この頃のタイトーはちょっとしたことを前面に押し出し持ち上げる、こっ恥ずかしいコピーをつける傾向があった。
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発売前に地方営業所に向けて、本作の紹介ビデオが送られてきたが、せっかくの予算を注ぎ込んだコンパネは一切出さず、JCシステムのグラフィックが延々と流れるという内容に不安満載だったという声も。
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ちなみにこのプロモーション映像はサイドバイサイドとカップリング?であった。サイサイもあの汚いJC画面を延々と見せるもので、なかには予告で店頭上映しても「流せば流すほど売上が下がる」とまで言われる始末であった。
ゲームタイトルのうんちく
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今までに無い類のタイトルの付け方ゆえに、当時の雑誌では「キャッチーなタイトル」と評された。しかし、「電車でGO」というタイトル自体はこのゲームが出ること遡って1980年代に既に登場している。
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サエキけんぞう氏率いる「ハルメンズ」の楽曲のタイトルに、まんま「電車でGO」という曲がある。カバー曲も複数出されており、それなりに有名な楽曲である。
電車でGO! (CS)
【でんしゃでごー】
電車でGO!EX (CS)
【でんしゃでごーいーえっくす】
ジャンル
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電車運転シミュレーション
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対応機種
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プレイステーション セガサターン Windows
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発売元
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PS
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タイトー
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SS
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タカラ
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Win
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アンバランス
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開発元
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タイトー
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発売日
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PS
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1997年12月18日
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SS
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1998年10月1日
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Win
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1999年4月23日
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価格
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共通
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6,090円(税込)
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廉価版
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PS
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PlayStation the Best 2000年8月5日/4,800円
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SIMPLE1500シリーズ Vol.103 THE 元祖電車運転士 ディースリー・パブリッシャー発売 2003年1月30日/1,500円
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Win
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新価格版 発売日不明 3,980円
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爆発的1480シリーズ 2001年12月7日/1,480円
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判定
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PS/SS
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劣化ゲー
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ゲームバランスが不安定
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Win
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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PS
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ブームでミリオンヒットを記録 多彩なおまけ要素 隠し路線全カット
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SS
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劣化移植でグラフィックが台無し ハードを考慮しても劣悪なグラフィック
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Win
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移植度は非常に高い おまけ要素が未収録 廉価版はリプレイ機能あり
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電車でGO!シリーズ
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SIMPLE1500シリーズ
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概要(CS)
タイトー自身による移植作品。専用のコントローラーも同時発売された。PS版のみ、おまけで『サイドバイサイドスペシャル』の体験版が本編と同じディスクに収録されている。
ブームに加え、CMで初出した「ZUNTATA」による中毒性のあるテーマソング「電車で電車でGO!GO!GO!」等の販促もあって、PS版はなんと102万本の売り上げを記録した。
SS版とWinの爆発的1480版ではVer.UP版である『EX』をベースにした移植となっており、前者はタイトルが『電車でGO! EX』となっている。
評価点(CS)
PS版
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タイトー自身による移植度は高い。
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流石にちょっとした粗はあるものの、基本的な操作性やグラフィック等は、アーケード版と大差の無いレベルで移植されている。
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幸いにもアーケード版がそもそも低性能の基板を使用していたため、「劣化している」という印象は感じにくいか。
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解像度はあまり高くはないものの、実車の写真集やムービーなどの、おまけ要素も多彩である。以後の家庭用のシリーズ作品でも、このおまけは継承されている。
Win版
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移植作中では群を抜いてクオリティが高く、元のACよりも非常に快適にプレイすることが可能である。
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廉価版の爆発的1480版では『EX』での隠しダイヤに加えて『3000番台』からの逆輸入となるリプレイモードが搭載され、プレイの幅が広がった。
問題点(CS)
共通の問題点
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後の作品と異なり、各ダイヤをクリアしても特に特典がない。プレイ意欲の維持については各プレーヤーに完全に委ねられている。
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どのダイヤをクリアしたかも記録されないので、確認したい場合はハイスコアを見るしかない。まあ最大でも8ダイヤしかないので、覚えてろということかもしれないが…
PS版
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制作スケジュールに間に合わなかったのか、AC版にあった隠し路線が一切収録されていない。
このせいでたったの4ダイヤしか遊べないボリューム不足な作品になってしまったうえ、山陰本線の保津峡〜丹波口は(正規に)遊ぶ手段がなくなってしまった。明らかな劣化移植である。
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詳しくは余談で述べるが、山陰本線LONGは没データとしては存在することが確認されている。
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一方でレースゲームである『サイドバイサイドスペシャル』の体験版がおまけとして収録されているという妙なことになっている。
「電GOが難しかったから、おまけの方が楽しめた」と言う声もあるにはあるが、ゲーム本編と無関係な要素で重要な部分を削るのはいかがなものか。
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また、項目選択時のキャプションにも表記されているが、同体験版をプレイした後は、本編のハイスコアデータやゲーム設定が初期化される。そのため、本編の続きを遊びたい場合は再度セーブデータをロードし直す必要があり、手間がかかる。
SS版
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処理落ちはそこまで気になるレベルではないが、効果音やグラフィックの劣化等、ゲーム全体に渡る劣化が目に余る。
3Dを苦手とするセガサターンがプラットフォームである点を考慮しても、問題と言わざるを得ないレベルである。
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ドリームキャストで発売された『3000番台』はハード性能を生かした良移植であることに加えて、DC自体の発売が本作SS版発売のわずか1ヶ月後だったこともあったせいか「DCで出せば良かったのでは?」との意見もある。
Win版
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PS版で好評だったおまけ要素は未収録となっている。
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『EX』稼動後の発売にもかかわらず廉価版含めて無印版名義であり、通常版に限り『EX』で追加された隠し路線が一切収録されていない。後の廉価版『爆発的1480シリーズ』では収録されている。
総評(CS)
3つの移植版は一長一短というべき完成度である。
PS版はグラフィック・サウンド・プレイ感覚に関しては堅実な移植がなされており、その部分は良移植の部類に入るレベルである。非常に多彩なおまけ要素もうれしい。しかしAC版の隠し路線の未収録によって大幅なボリューム不足となり、原作の魅力を半減させてしまった。
SS版はクソゲーという程ではないにせよあまりにも劣化部分が多く、AC版の移植としてはおすすめできない。『EX』ベースの移植もWin廉価版で実現しているため、今から買う意義は無きに等しい。
Win版はACと同等かそれ以上のスペックを実現しており、非常に良好なパフォーマンスでプレーできる良移植作品である。惜しむらくはおまけ要素が一切収録されていないことであるが、廉価版では『EX』で追加された隠し路線も収録されているため、今から手に入れるなら間違いなくWin廉価版が良いだろう。
余談(CS)
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PS版のディスクを『モンスターファーム2』で再生させると、山手線の車両を模したデザインのモンスターが誕生する。
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PS版に山陰本線LONG(フル)が没データとして発見された。
改造せずに初級で始めて、プレイ途中で現在のダイヤ番号を変えて上級扱いにすると問題なくプレイできる。
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山陰本線LONG(没データ)のプレイ動画
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Win版はWindows 10/11でも一応動作するが、画面上部が隠れたり、グラフィックボードによっては背景の一部が正常に描画されないといった不具合が発生する。
Windows 8以降での動作状況については以下のサイトを参照。
最終更新:2024年07月28日 09:12