この記事ではAC『がんばれ運転士!!』とCS移植版である『電車でGO! 旅情編』を併せて紹介します。



がんばれ運転士!!

【がんばれうんてんし】

ジャンル 電車運転シミュレーション
対応機種 アーケード
使用基板 Type-Zero
発売・開発元 タイトー
稼動開始日 2000年10月
判定 スルメゲー
ポイント シリーズ唯一の路面電車主体作
操作性の徹底再現
それゆえに複雑化した運転方法
電車でGO!シリーズ

概要

『電車でGO!』シリーズの旧筐体における最終作にあたる作品。
前作から大きく方向転換して路面電車主体の作風となり、観光案内などといった一見さん向けの要素も採用。
3Dポリゴンで描かれた沿線風景などは更に強化され、操作系統も収録路線の雰囲気に合わせて自動空気ブレーキ操作を再現したものに変更された。
そのため、マスコン・ブレーキ・ドアスイッチ等、筐体に改造を施す必要があり、コンバージョン自体も大掛かりなものとなった。従来作との互換性が無くなったゆえに出回りも少なく、現存している筐体は『電車でGO!3 通勤編 ダイヤ改正』に次いで少ない。


ゲーム内容

初級と上級は操作説明、中級とプロ級は観光案内が用意されている。

『のんびり運転』
基本操作からして、従来作と大幅に異なる動作を要求されることを考慮してか、それらのレクチャーを受けることができる難易度である。減点項目もさほど厳しくないため、複雑な動作が苦手なユーザーはこちらプレイしよう。

初級「電GO!とは、まったくちがう!」

  • 扉扱いやアナウンスなどの基本操作を練習するための難易度。そのため、操作するときに差し掛かった際に簡易レクチャーが表示される。セレクト画面での表記からも、高難易度・特殊な操作体系を危惧視していることが窺える。

中級「基本を踏まえて楽しく運転!」

  • 初級のルールをそのままに、今度はレクチャーが表示されない中で運転していく。停車成功後の観光案内でコーヒーブレイク。

『ほんもの運転』
この難易度では、江ノ電なら制限速度、伊予鉄ならポイント操作が追加される。また停止位置の判定がシビアになるなど、その他減点項目が増加する。
また、一気にフルノッチで加速しようとするとブレーカーが飛び、減点を喰らうシチュエーションも追加されるため、起動加速時は1段ずつゆっくりマスコンを入れ、細心の注意を払いながらプレイする必要も発生する。

上級「プロへの道は厳しい!」

  • ステップアップして本物の運転を練習するための難易度。中級まででは課せられなかった減点対象に関するレクチャーが入り、操作とルールをさらに熟知することがこの難易度の主目的である。

プロ級「いよいよ本番!」

  • 全ての操作とルールを説明なしでこなしていく、シリーズ従来作に則った難易度。「上級をクリアーしないと運転できません」と書かれているが、カード媒体などの記録手段のないゲームなので、クリアしなくてもプレイ自体は可能である。
    プロ級は信号停止線・停止位置・速度制限までの残り距離が出ず、停止線判定上でのみ表示が出る。更に停止位置の合格範囲は±0mだけとなる。

収録路線と車両

江ノ島電鉄

  • 鎌倉から江ノ島を経由して藤沢に至る、全国的にも知名度の高い路線。下りの藤沢→鎌倉を収録。
    • 車両は100形108号車(愛称:タンコロ)。ただしゲーム難易度を選択する画面上で扉スイッチを押しながらスタートボタンを押すと300形を運転できる。

伊予鉄道

  • 愛媛県松山市を走る鉄道。市内線5系統の松山駅前→道後温泉を運転できる。
    まれに続行運転*1に近いイベントが起こる。上一万の手前で、本町六丁目方面行きの先行列車の発車を待つ、というもの。
    • 車両はモハ50形の1形式のみ。リリース当初の主力車両。

ルール

ゲームの進行順

  • 【1】コインを入れてスタートボタンを押す。
  • 【2】路線を選択する。
  • 【3】難易度を選択する。ブレーキを操作することで、『電車でGO!3 通勤編』同様、時間帯を選択することができる。
  • 【4】規定の区間を走行する。運行中のライフの減算はリアルタイムに行う。
  • 【5】全区間走破するか、途中でライフがゼロになった状態でコンティニューをしなかった場合は、運転評価がされた後にゲームオーバー。
  • 【6】記録を更新した場合はネームエントリー。

今作では以下の点が新規に追加されている

  • 持ち時間制に代わってライフ制を採用。
  • 「手動加速制御(HL方式)」を操作系統に採用している。1段ずつノッチを入れて加速する手動加速。
  • ブレーキ操作に「直通空気ブレーキ」を採用。ブレーキ動作と緩めに独特の操作を要するため、慣れるのには熟練を要するだろう。
  • Gセンサが導入された。センサが赤に達すると急ブレーキとして減点される。
  • 扉開閉スイッチを操作してドアの操作を駅毎に行わなければならない。
  • 発車直後にスタートボタンを押してアナウンスを手動で行わなければならない。江ノ島電鉄では到着前にも行う。
  • 到着時刻には秒数が設定されていない。定刻より1分以内に止まれば減点にならず、早着ペナルティは一切なし。
  • 停止線をわずか1cmでも超えた場合は減点になる。
  • 併用軌道区間の信号機に残り時間ゲージが表示されるようになった。

評価点

全体的な難易度緩和と路面電車向けのバランス調整

  • 今作では従来の持ち時間制から一新。シリーズで初めてのライフ制が導入された。また、全体的にライフの減少量も従来のような極端な減少はせず、特定の動作をした時に一定量しか減少しないようになっている。この仕様は後に『FINAL』に引き継がれた。
  • 他に難易度の下がったことがわかりやすい要員として、『名鉄編』に収録された路面電車路線の美濃町線のような、運ゲー要素が発生しても問題ないような調整をされた点がある。路面電車は信号待ちなどによる交通状況による遅延が発生しやすいのが常であるため、そこに「定刻より1分以内の遅延であれば減点にならず、早着ペナルティは一切ない」というルールを設ける形で解決した。

ほっこりするグラフィック群

  • 今作ならではの独自要素として、各駅ごとに用意された現地取材と資料に応じた観光案内が存在している。中級とプロ級で表示されるため、運転に慣れたユーザーに対しての、ちょっとしたコーヒーブレイクとして機能している。
  • 路面電車ならではの交通量の変化や道路上でのアクシデントが描画され、行き交う乗用車がリアルで動いたり、更には駅などにいる人間が3Dポリゴンで描写されており、静止しているだけでなく歩行する描写があるなど、『通勤編』の描画を応用した面も。
  • 文字にポップ体を多用したり、発車前の駅表示にガイドマップの要素を加えたりと、お堅い感じを減らす工夫も見られる。

音声関係

  • 実は音声関係はACながら中々リアルに再現されている。ブレーキを加圧・減圧中はずっとエアの音が鳴り続け、加圧・減圧が終わったら音が止まる等かなり凝っている。
    • 伊予鉄道ではドアブザーが再現されている他、トロコン*2の操作音が「それっぽい」音となっている。
    • 江ノ島電鉄では発車合図のブザーまで再現。更に乗務員音声は当時の現役乗務員を登用している。
      • 電車でGO!旅情編は本作の移植版に当たる作品だが、これらのリアルな音声は再現されなかった。

賛否両論点

恐ろしいほどに複雑な操作系統

  • 本作の醍醐味であると同時に煩わしさを増大させている要素である。従来通りの操作ができるモードや、更に難易度緩和されたモードは存在しないため、下記動作を事実上強制されるということである。
    • 今作で追加された「ドア開閉」「車内アナウンス」操作だけでも、油断してしまえば忘れてしまいがちで、車内アナウンスに至っては予告と言える予告がないため、終始うっかりミスとの闘いとなる。もっとも車内アナウンスに関しては極端な話、駅到着前にボタン連打すれば確実ではあるが。
    • 自動空気ブレーキの操縦は大変厳しく、現業の運転士でも慣れるまでひと踏ん張りを要するという代物。本作でも少し入れても普通にGセンサが機敏に動くため、過去作で言うブレーキを2~3段動かすような感覚で入れようものなら一気にGセンサを振り切ってしまい、減点されてしまいかねない。そもそも最初のうちは、単純にどれだけ入れたらどうなるか、と言った感覚を掴むだけでも一苦労だろう。

ライフを回復させる手段

  • 本作でライフを回復させる方法は「0m停車を4回決める」のみであるが、0m停車に成功しても音や演出が入る訳ではないため達成したかどうかの判別は難しい。
    • 更に合格範囲に入ると残り距離が消える仕様であるため、狙ってライフを回復するのは厳しいものがある。

やや特殊なオーバーラン判定

  • がんばれ運転士!!では駅停車時の合格範囲が、手前は最大4m(難易度によって変化)、オーバーに関しては一律0mで固定。オーバーラン側の判定が過去作より厳しくなり、5mオーバーランすると急停止する仕様となった。
    • 過去作は0m以外の合格範囲内の停車だと持ち時間が増えない上に総合評価も減点される仕様だったが、本作はハイスコアアタックでもしない限りは合格範囲内の停車でも特に問題ないため、意図的な調整と思われる。
  • 信号停止線に関してのオーバーランは非常に厳しく、1cmでも超えた時点で即時減点、急停止する仕様となっている。こちらに関しては手前に止まるペナルティが全くないので、ゆっくり落ち着いて止めることで対処可能。

問題点

やはり発生した現実との乖離

  • ゲームシステムやデバイスとの折り合いを付けるためか、一部現実と乖離した要素が散見される。
    • 江ノ島電鉄ではワンマン運転を一切行ってないのだが、今作ではワンマン運転扱いとなっている。駅到着前にもアナウンスを行わないといけない点からも、理不尽な難易度上昇に繋がってしまっている。
    • 同路線で速度制限が度々出現するが、何故かグラフィック上に速度制限標識が一切描画されていない。特にプロ級では速度制限の場所も完璧に覚えないとクリアは困難。
      • 一部駅で列車交換をする場合、「遠方減速(制限65)→場内警戒(制限25)」で駅に進入するはずであり、ナビゲーションでもその旨の案内が出るのだが、ゲーム中では「遠方進行(制限無し)→場内警戒(制限25)」となっており、矛盾が発生している。 尤も50km/h台で加速が止まる為、65km/hなんて出せないが。
    • 伊予鉄道は路線バスと同じ押しボタン式で、乗客がいるか降車客がいる電停にしか止まらない(厳密には一時停止するが)のだが本作では再現されておらず、必ず各駅に停車しなければならない。
      • いちおう各電停につき1人は乗客がいるため、運行上の矛盾は発生していない。

その他の問題点

  • 路線が2つしか選べず、隠しコマンドを知らないと車両も選択不可能。ゲームシステムが大きく変化したとはいえ、初代にすらバリエーションで劣るのはいただけない。
  • 観光案内の表示時間が短い。時間内に文章と写真を両方見ようとすると入試並みの速読力が求められる。

総評

シリーズ初の路面電車主体作品ということもあり、観光案内などを採用するなど、全体的な雰囲気をのどかなものに一新。従来比で丁寧なチュートリアルを設けたことにより、一見さんでもある程度の操作を体得できる程度までに難易度を低下させた点は、ゲームとしては特筆に値できるだろう。
しかし、自動空気ブレーキの調整の難しさを筆頭に、停止位置のシビアさと言った根本的な難しさもあり、不安定とまでは行かずとも人を選ぶ出来栄えに落ち着いた。
人気が落ち着いて久しい時期に稼働したこともあり、これ以後2017年11月7日に『電車でGO!!』が稼働開始するまで、アーケードの系譜は長きに渡って休眠状態に移行するに至った。


余談

  • 当時、百貨店玩具フロアでの電車イベントにてNゲージやプラレールの豪華な展示に混じって何故か見かける事が多かったのが本作。当時多くの百貨店玩具フロアとタイトーの営業部門で取引があった事によるもの。
    • しかし、多くの所で希望されたのは電車でGO!だったのだが*3、既に電GO3からほとんどが本作にコンバートされていた為に叶わなかった為の設置。

電車でGO! 旅情編

【でんしゃでごー りょじょうへん】

ジャンル 電車運転ゲーム

対応機種 プレイステーション2
Windows
発売元 PS2 タイトー
Win アンバランス
開発元 オフィスクリエイト
発売日 PS2 2002年7月25日
Win 2003年6月5日
定価 PS2 7,140円
Win 6,500円
廉価版 PS2 TAITO BEST
2004年12月2日/3,300円
Win 本格的シリーズ
2006年1月13日/1,980円
判定 なし
ポイント ゲーム性改善でより初心者に優しく
路線が2つ追加
観光案内が大幅増
快適な操作には専用コン推奨

概要(旅情編)

『がんばれ運転士!!』の事実上の家庭用移植作。内容が大きく変わったからか、あるいは電GOシリーズだと分かりにくかったからか、タイトルは全く別のものとなっている。

AC版からの変更点

追加路線

京福電鉄

  • 正式名称は「京福電気鉄道」。「京都」と「福井」を合わせた社名で、本作ではその京都側である通称「嵐電」の嵐山本線・北野線を全線収録。
    • なお福井側の路線は本作発売の翌年に廃止されている。詳細は余談項に譲る。

函館市交通局*4

  • その名の通り函館市に路線を持つ鉄道。5系統・2系統共に全線、また隠しダイヤで五稜郭公園前始発・終点の区間運転や、駒場車庫への入出庫も運転できる。
    • 雪が降ることがあるため、車両性能の低下を考慮する必要がある。

なお京福電鉄と函館市交通局が全線の上下線が収録されたのに合わせて、江ノ島電鉄の上下全線と、伊予鉄道も環状線・市駅線・松山駅前線・本町線と全線収録となった。
また各路線毎に季節が決められており、伊予鉄は春、江ノ電は夏、京福電車は秋、函館市電は冬となっており、沿線の風景もそれぞれ各季節をモチーフにしている。
江ノ電や函館市電で時間帯を夜に設定すると一部区間で花火を見ることが出来るなど、粋な演出もある。

その他の変更点

  • 難易度調整の簡略化と一部ルール変更
    • ゲーム内容そのものの難易度は「のんびり運転」と「ほんもの運転」の2種類のみとなった。
      • オプションにも難易度の項目があり、初期持ち点数や持ち点数の増減量などが変動する。
    • オプションでアナウンスとドア開閉をそれぞれオートに変更可能。マスコンとブレーキ、警笛以外の操作が必要無くなり、従来の電GOに近い内容にできる。
      • これにより江ノ電や後述の坊ちゃん列車、函館ハイカラ號は事実上のツーマン運転でプレイできるようになる。
  • のんびり、ほんもの共に案内表示は出なくなったが、代わりにそれぞれの入門編がある。
  • 標準のPS2コントローラでの操作方法として、AC版の操作を再現した「空気式」と従来の電GOに近い「ワンハンドル電気式」の二種類が存在する。
    • 専用コントローラーの場合は旅情編用のみ空気式での操作となり、その他のコントローラーでは電気式での操作となる。
    • 電気式にした場合にはGセンサは動作しない。
  • 案内人キャラの追加と観光案内の方式の変更。
    • AC版では『3』と同様の鉄ちゃんが登場していたが、本作では会社ごとに案内役のキャラが登場。
+ キャラクター
  • 白石葉子(伊予鉄道)
    発車、オーライ!
    • デフォルトで表示される、黒髪ショートの女性。気さくに話しかけてくる明るい性格。 恐らく最も当たり障りのないマトモな子。
  • 七海ひかる(江ノ島電鉄)
    出発進行、ぴー☆
    • 茶髪で日焼けした肌の女性でその風貌は湘南のギャルそのもの。バカを装ってこちらをおちょくってくるお調子者。出発合図で変顔をする。
  • 西園寺美月(京福電鉄)
    出発進行!
    • 黒髪ロングの女性。しばしばウエメセになる姉御肌。
  • 山口風花(函館市交通局)
    はい、発車しまーす
    • 左に垂らした三つ編みが特徴的な、眼鏡の女性。唯一敬語で話しかけてくるなどお淑やかな性格。

…というわけで、鉄ちゃんは登場しない。旧シリーズで鉄ちゃんが出てこないのは本作のみである。

  • 運転評価の合間に出ていた観光案内は上記のキャラクター達がフルボイスで案内するADV形式となり、バリエーションも大幅に増えた。

評価点(旅情編)

シリーズでも最大級となったボリューム

  • 大幅な路線・車両の増加
    • 4社17路線を上下線運転できる。路面電車のため1路線の距離は短めだが、運行系統の数では『プロフェッショナル仕様』をも遥かに上回る。
    • 車両も各社最低6種類は用意されている。伊予鉄道の「坊っちゃん列車」や函館市交通局の「函館ハイカラ號」といったファンのハートを掴む車両も登場。

ゲームシステムのさらなる改善

  • 初心者への配慮強化
    • 先述の通りアナウンスとドア開閉を自動化できるため煩雑な操作が必要なく、いい意味で過去作通りの電GOを楽しめる。
      • 更にワンマン運転を行わない路線・車両へこの設定を行うことで初心者に限らず本物志向のユーザーへもプラスへ働いている。
  • さらなる難易度低下
    • 減点は駅到着後のみ行われる形式になり、普通に運転する分には走行中にゲームオーバーになることはなくなった。
    • 併用軌道区間の信号の残り時間ゲージが改善され、赤から青に変わる分も表示されるようになった。がんばれ運転士!!では青と黄色から変わる分しか表示されなかった。100m手前にならないと表示されないので高速で走っていると減速が間に合わない場合もあるが、突然の赤信号によって減点される運ゲー要素は大きく改善されたといえる。
      • ただし意外なところに落とし穴も存在する(詳しくは後述)。
    • ダイヤについて、過去作同様に到着時刻が秒数まで設定されるようになったが、±15秒以内なら定刻ということになり、定刻運転ボーナスが付くようになった。
      • 定刻より60秒遅れて初めて減点という点、早着に関して一切お咎め無しな点はAC版と同様。

各社独自のシステムの再現度の高さ

  • 伊予鉄道は手動でポイント切り替えを行う箇所があり、間違った線路に転線してしまうと減点となる。また、坊っちゃん列車では乗務員が機関車を人力で転回する様子の表示や進路制御装置*5の昇降の再現もされている。
  • 江ノ島電鉄はAC版同様、駅によってホームの場所が左右変わるため開閉ボタンの使い分けが必要になる。また、必ず到着前アナウンスも行わなければならない。
  • 京福電鉄では山ノ内で降車客を安全に渡らせるために自動車信号を赤に変える様子が映し出される。三条口の鉄道信号起動操作も再現されている。
  • 函館市交通局では十字街のポイント操作の他、谷地頭手前の一時停止も再現。また、一部電停で信号切り替えの為のトロコン操作も再現。
  • また乗務員の喚呼や案内放送も各社によって異なる徹底ぶり。
    • 例えば発車の際江ノ島電鉄は「出発進行圧力よし」と喚呼し、出発信号機を持たない停留所扱いの駅では「発車。圧力よし」という喚呼になる。
    • 一方伊予鉄道の場合は一貫して「発車オーライ」と喚呼する。
      • そして坊ちゃん列車は機関士と機関助手の2人運転となっている為、機関士の喚呼に続き機関助手が復唱するというやり取りが聞けるのは感涙モノ。
      • 問題点にもなっているがツーマン運転の江ノ島電鉄や函館ハイカラ號はきちんと車掌の肉声放送になっている。
  • 運行経路を選ぶ画面では選んだ車両によって表記が変わってくる。
    • 例えば江ノ島電鉄の1000形や2000形は「下り 藤沢→鎌倉」と書かれた方向幕だが、108号車の場合「鎌倉」のサボが表示される。

その他

  • 視点変更機能の追加
    • フロントビュー→運転台ビュー→アウタービュー、の順に視点が変わる。
      運転台ビューでは運転台が割と正確に再現されており、速度計や空気圧、更にはマスコンやブレーキハンドルもちゃんと連動して動く。また古い電車では速度計が無い車両もあるが、それもしっかり再現されている。
  • 観光案内のボリューム増加
    • キャラクター関連のことはともかく、観光案内が大幅に増えたことは評価できる。

賛否両論点(旅情編)

  • 新キャラについて
    • 観光案内は女性キャラによるADV形式となったが、ギャルゲーのようなものに慣れているかどうかで評価が大きく分かれる。
      • 選択肢等があるわけではないが、こういった類の作品に触れたことがないと折角の観光案内を見るのが億劫になってしまうとの声も。
      • 一方で4人のキャラは方言属性+αを持っており、好みの層からの評価は決して低くない。
  • 函館市交通局の矛盾
    • 隠しで箱館ハイカラ號を運転できるが、そもそもハイカラ號は冬には運行されていない
      • 北海道と言えば冬のイメージが強いし、かと言って運行を忠実にしてハイカラ號が運転できなくなってしまうのは残念であるがゆえの矛盾なのかもしれない。
  • AC版から変わらずの独特な減点項目
    • 駅の停車合格範囲はのんびり運転かほんもの運転かによって300cmか100cmとなるのだが、合格範囲は全範囲0cmラインの手前となっている。
    • つまり、停止位置を1cmでも超えたらオーバーラン減点が取られ、即時急停車する仕様となっていて、他作品とは一線を画す。プロ2や新幹線編では難易度次第で31cm以上の過走でオーバーラン判定となるダイヤがあったが、1cmオーバーで減点はいくらなんでも極端すぎる。
      • 実際の鉄道では、いくらシビアな場合でも最低30cm程度は余裕を見ている。少なくとも停止位置目標を1cm超えたから停止位置を直す、なんてことはありえない。
    • ただし、路面電車ということもあり速度は控えめ、ダイヤも厳しくない事も多く、ちゃんと操作すれば合格範囲内に止めることは難しいことではない。
      更に合格範囲内に停車できればそれだけで持ち点数が加点されるため、駅への停車がゲームバランスを崩しているというわけではない。
  • 朝夜はまだしも、昼と夕方は時間帯の割に併用軌道において走行している自動車が現実に比べて少ないという指摘もある。
    • ただし下手に車を増やせばその分、後述の交通事故の危険が増えてしまう。ある程度妥協した雰囲気にせざるを得ないのも実情である。

問題点(旅情編)

ブレーキの難しさ

  • 専用コントローラーを用いない場合、PS2版でのブレーキの扱いは右スティックでの調整となる。
    • 右に倒すと加圧、左に倒すと減圧し、スティックの角度に応じて空気圧の量が変わる。ただしブレーキの応答性は非常に良く、スティックを右いっぱいに倒すと即座に空気圧が最大まで入ってしまい、急ブレーキの減点を受けてしまう。
      • 入門編では「ブレーキは浅い角度で小刻みに調整します」というアドバイスを受けられるが、実際に慣れるまでは時間が掛かる。
    • PC版ではキーボード操作の場合カーソルキーでブレーキ操作となるが、キー入力が最大加圧か最大減圧しか無い。このためチョン押しで調節するしかなく、PS2以上にコツが必要となる。
      • いずれにしろ、専用コントローラーなら思い通りの空気圧まで込める・緩める事が容易になる。旅情編を隈無く楽しみたいなら専用コントローラーの購入が必須。ただし発売からかなりの年数が経過していることもあり、専用コントローラーは価格が高騰しているので今から購入しようと思うと注意が必要。
  • この問題点は操作方法を電気式にすることで回避できる。本作の大きな特徴を殺すことになるが、どうしても受け入れられない場合は変更することを推奨する。

現実との乖離

  • 運転車両が大幅に増えて電気指令式ブレーキを採用した車両も運転できるようになったが、一律直通式空気ブレーキとなっている。またVVVFインバータ制御を採用した列車についても、主制御器は一律手動加速制御方式(HL制御)となってしまっており、それらの車両に対してもブレーカー落ち対策をしなければならない。
    • ブレーキに関しては設定を変えるか従来の専用コントローラーを接続することで、電気指令式で操作できるようになる。
  • 京福電鉄で鉄道信号の注意信号が出る場所があるが、速度制限が一切設定されておらず、何キロで通過しようと一切お咎めなしとなっている。
    • AC版の江ノ電では一部駅で警戒信号が出ていたのだが、旅情編では削除された。
  • 江ノ島電鉄線で若干の粗
    • 笛や発車ベルがドアを閉めた後に鳴る。AC版では出発信号が青になった直後にベルが鳴るというリアルな再現がなされていたのだが。
    • 江ノ電は全線単線であるが、終着駅でもないのに上下で速度制限が違う場所がいくつもある。
      • 例を上げると、鎌倉行きを運転した時、七里ヶ浜発車直後のカーブが制限20となっているが、藤沢行きでは同じ地点のカーブが制限15になっている。
      • 因みに藤沢行きでは画面上に速度制限標識が描写されているが、鎌倉行きではAC版同様グラフィック上に速度制限標識が一切描写されていない。
  • 函館市交通局の谷地頭停留所前の一時停止が何故かボーナス扱い。
    • 本来は急勾配の事故対策の為に必ず一時停止した上で谷地頭へ進入する運行をとっており、一時停止しないのは安全保安上問題がある行為である。
      • ただしこれは隠し警笛が無いがためにボーナス扱いにした可能性がある。

UI周りの劣化点

  • 駅までの残り距離が99m以下にならないと表示されず、初見ではどの位速度を出せば良いのかが掴みにくい。
    • さらに駅のすぐ手前に信号などがある場合はそちらの表示が優先される為、距離表示だけに頼っていると「交差点を超えたらいきなり残り50mと表示され、減速が間に合わずオーバーラン」といったことが発生しやすい。
      • 同じように函館市交通局の魚市場通り付近などの信号が連続する箇所では信号表示から停止線まで50m程度しかない箇所もあるため、急な信号変化に間に合わない場所もある。
    • 駅が見えた時点であらかじめ減速しておけばよいのだが、前方が確認しにくいアウタービューや夜の運転では難しく、信号の連続箇所についても事前に覚えておくしかない。
    • 一方、合格範囲に入ると残り距離表示が消える仕様は健在で、このせいで0m停車を狙ったらオーバーラン減点が取られるという事態が起きやすい。なぜ距離表示を消す必要があるのだろうか?
      • なお0m停車を決めると停止位置ボーナスが2倍になるが、0m停車判定は停止位置の手前25cm以内となっている。他作品で本作の次に0m判定が厳しい作品でも±30cm以内となっており、手前25cmのみというのは過去作のどれよりも厳しい。
  • 勾配の変化が表示されない。現実でも路面電車に勾配表設置義務はないが…。
    • 専用軌道区間ではグラフィックに勾配表が描画されているため勾配の変化がわかるが、併用軌道区間だと軌道の角度か速度の変化具合から判断するしかない。

その他

  • 坊っちゃん列車が理不尽な覚えゲー
    • 坊っちゃん列車では発車時のアナウンスに加えて走行中の観光アナウンスも行う。しかし、ごく一部を除いてアナウンスを行う地点のヒントは皆無(のんびり入門のみ指示は出る)。これにより予習が必須の覚えゲーと化している。
      • 本来坊っちゃん列車はツーマン運転で、アナウンスも車掌の肉声で行っている。したがって現実であり得ない難しさを強制させる理不尽さが際立ち、問題点と評されることになってしまった。
      • オプションでアナウンス操作をオートにすることでこの理不尽さは解消される。むしろ現実の運転形態を加味するとオプション変更をした方がより実車に近くなる。
  • 併用軌道に於ける自動車
    • 名鉄編でもあったことだが、伊予鉄の併用軌道区間で自動車がいきなり右折したり信号のない交差点上で対向車線から併用軌道を横切ってくることがある。 ある意味実車再現と言えなくもない。 しかも線路上でいきなり止まることがあるため、為す術もなく自動車と接触して減点されてしまうことがある。
      • 一応、右折レーンを走っている、数百メートル手前から不自然な蛇行など前兆はあるのだが、そもそも本来、併用軌道では路面電車が優先である。また、対向車線に至っては前兆はない。
      • また京福電車や函館市交通局では、フロントビューで運転中に死角から自動車が飛び出して来て、目の前でいきなり停止するという理不尽なこともまれに発生する。
    • 何よりの問題点はこれらの発生に予告がない事に加え、非常ブレーキで停止しても急ブレーキ扱いで減点となる点であろう。即ち接触したら事故扱いで減点、急停止しても急ブレーキ扱いで減点されるため発生したら即減点確定という不親切なイベントとなっている。法律上の観点からしても路面電車の進路を妨害するのはれっきとした道路交通法違反であり、法律違反をしている自動車のせいで一方的に減点されるというのはあまりに理不尽な話である。
      • 更に自動車の接触判定も納得にいかないものであったり、自動車側から体当たりしてきたがために減点されるということもある当たり屋だろうか。
  • 天候のバリエーションが少ない
    • 基本的に晴れ一択。函館市交通局のみ雪(厳密には低確率で晴れる)で固定されており、運転途中での天候の変化は無く、他のシリーズであった雨や曇りは発生しない。
  • 隠し警笛が偏っている。
    • 本作は殆どの踏切に隠し警笛があり、高難易度でも警笛を鳴らしまくればボーナスが稼げるが、江ノ電ではその数が50と尋常ではない。京福電車も江ノ電ほどではないにせよ隠し警笛が多い。
    • 逆に併用軌道区間には坊ちゃん列車等の一部にしか隠し警笛が無く、函館市交通局に至っては隠し警笛が全く存在しない。
      • このため路線による難易度の差がやや大きくなっている。隠し警笛の多さに加え上述の接触事故が全く発生しない江ノ電が最も易しく京福電車も隠し警笛の多さからかなり易しい。逆に環状系統の一部区間以外併用軌道で加点の少ない伊予鉄道や、一貫して併用軌道区間かつ隠し警笛の無い函館市交通局が難しくなっている。

総評(旅情編)

煩雑な操作の省略や入門編の設定によって初心者への配慮もより明確となり、何よりボリュームが急増して長く楽しめる作品となった。
一寸も許されないオーバーランという厳しさやブレーキングの難しさなどは健在で、慣れるまでには時間がかかるという惜しい点もある。
ただし、電車運転ゲームでは珍しい「ワンマン運転」「自動空気ブレーキ車」というマニアックな要素を詰め込んだのは評価点でもあり、やり込む自信があるなら手を出しても惜しくない逸品でもある。


余談(旅情編)

  • 京福電気鉄道は旅情編発売の1年前、あの京福電気鉄道越前本線列車衝突事故を起こして運行停止処分を受けている。事故現場が嵐電ではないとはいえ、なかなか凄いタイミングに発売したものである。
  • 本作のCMは演歌歌手の氷川きよし氏が電車でGOを思わせる演歌を歌うという渋いものになっている。
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最終更新:2022年03月01日 22:44

*1 電車が2両以上連なって運転すること≠連結。路面電車の運行形態は電車と言うよりバスに近いため、先行列車に追いついてもギリギリまで車間を詰める

*2 トロリーコンタクター。路面電車は分岐器を操作するスイッチが架線に取り付けられており、パンタグラフでこれを操作する

*3 プラレールやNゲージが鉄道模型なので路面電車の今作よりテーマに合っている電車でGO!が求められていた。

*4 当時の名称。その後の改組により、2020年現在では「函館市企業局交通部」となっている。

*5 客車の屋根に着いているピューゲル状のもの。