Tom Clancy's Rainbow Six
【とむ くらんしーず れいんぼーしっくす】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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Windows98~XP プレイステーション ニンテンドウ64(海外のみ) ドリームキャスト(海外のみ)
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発売元
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Red Storm Entertainment シスコンエンタテイメント(日本語版)
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開発元
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Red Storm Entertainment
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発売日
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【PC】1998年8月21日 【PS】1999年11月23日(北米) 【PC/PS】2002年6月13日(日本語版)
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判定
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良作
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ポイント
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『レインボーシックス』第一作目 シビアでリアリズム溢れる突入作戦 自由度の高い事前準備パート 表現はまだまだ簡素
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トム・クランシーシリーズ
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ストーリー
西暦2000年 2月7日
激増した国際テロリズムに対処すべく、世界各国から集められたエリート多国籍特殊部隊『レインボー』が結成されてから一年。
長官の『シックス』ことジョン・クラーク率いる先鋭たちは、ヨーロッパをはじめとした世界各地で発生するテロ活動の阻止に取り組んでいた。
同じころ、行き過ぎた環境保護を唱える『フェニックス・グループ』が台頭し、施設襲撃や人質を取るといったテロ行為に手を染めていた。
フェニックス・グループの痕跡を辿ったレインボーたちは、彼らが秘密裏に行っていた恐るべき実験と新たなテロ計画、そして黒幕の存在を察知。
開催が迫る2000年のシドニー・オリンピックを巡り、レインボーは総力を結集して巨大な陰謀に立ち向かっていく。
概要
同名小説『レインボーシックス』と同時展開された、特殊部隊による突入作戦を描くタクティカルシューター『Rainbow Six』の第1作目。
ブリーフィング、プランニング、突入の3つの段階で表現された、軍事シミュレーター的なゲームプレイを特徴としている。
開発を担当したのは原作者トム・クランシー氏直々に設立した会社であるRed Storm Entertainment。
後に多種多様なトム・クランシー監修作品を制作するRed Stormだが、ボードゲーム調で関連の薄い『Politika』を除けば本作が一番最初の軍事タイトルとなっている。
エンジンは独自開発された内製のものを使用している。
ゲームシステム
基本操作
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ゲームパートでの操作はFPS形式。F1キーを押すことで一応TPS視点としてもプレイ可能。
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アローキーで移動、マウスで視点移動、spaceでインタラクト、右クリックで駆け足、shiftで忍び足。
武器はクリックで発砲、Ctrlでズーム。数字キーで武装切り替え。deleteでリロードを行う。変わった配置だが、オプションでキーコンフィグは可能。
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仲間の指示はQWERキーで行う。仲間たちの行動パターンは現場で指示を出すのではなく、事前に全てプランで指定しておくスタイル。
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insertキーを押すことで操作中の部隊のRoE(Rules of Engagement)を切り替えることができ、戦い方を指示したり人質を護送したりすることができる。
ゲーム進行
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ブリーフィング(説明)、プランニング(作戦立案)、突入の3つの段階に分けて行われる、特殊部隊を指揮するストラテジー要素の強いFPS。
プレイヤーはテロリストの起こした事件に対し、事前の情報などから状況を判断して適切な作戦を立てる必要がある。
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ミッションは全16個。それぞれにきちんとしたバックストーリーが用意されており、世界各地を題材としながらも緩やかな連続性がある。
一部ミッションは防護服を付けたり、出撃メンバーに制限があったり、前回出撃したメンバーが出撃できなかったりといった制限が設けられることも。
ブリーフィング
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作戦に関する情報を仕入れ、それによりメンバーを選抜して装備を選択するパート。
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長官ジョン・クラークの内容説明やアドバイザーの助言、ニュース記事や背景情報などを聴いたり、読んだりすることができる。
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メンバー選抜画面では最大8人(一部ミッションでは制限あり)のメンバーを選び、装備する武器を選択する。
例えば発見を避けたい屋内戦の場合はサプレッサーの付いたMP5サブマシンガンを使用したり、野外で交戦距離が広い場合はM4やM16などの威力が高く射程の長いライフルを装備したりといった形。
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恩恵はさほど多くないが着用するユニフォームも変更でき、迷彩柄を変えたり防護服を着たりといった自分好みのアレンジを加えられる。
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選んだメンバーは、ブルー、レッド、グリーン、ゴールドの最大4つのチームとして分けることができる。
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1チームは最大4人まで配属でき、4人組の2チームや2人組の4チーム、或いは単独行動するひとりチームなどある程度自由に入れ替え可能。
プランニング
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編成したチームを配置し、マップ上に線を引いて行動パターンを決めるパート。
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チームを動かすには『ウェイポイント』と呼ばれるマーカーをぽちぽちと入力していく必要があり、基本的に敵の良そうな場所を一筆書きでなぞっていくことでそれに沿ってチームが動いていく。
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敵がいると思われる場所は十字マークで表示される。黄色十字は恐らくいる場所で、赤十字は確実にいる場所。また、救出すべき捕虜は緑色の点で表現される。
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ウェイポイントを描いて歩かせて勝手に敵を倒させる方法の他、ウェイポイント自体に別の命令を付与することも可能。
『GOコード』を付与するとそのコードをプレイヤーが発令するまでウェイポイント上で待機してくれたり、『フラッシュバン』を付与すると閃光弾を投げ込んでくれたりする。
突入作戦
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決定したプランを基に、実際の作戦に挑むパート。
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操作する主人公は決まっておらず、自由に切り替え可能。操作しているチーム以外のメンバーは、事前に用意されたプラン通りに行動する。
敵味方共に現実に即しており、非常に撃たれ弱い。倒れた味方は戦死扱いとなり、それ以降のミッションでメンバー一覧から消える。
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基本的に敵を殲滅する、捕虜をスタート地点へと護送する、爆弾を解除するなどの目標を達成すればミッションクリア。
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反対に味方が全員死亡する、捕虜が死亡する、ターゲットが逃亡するといった出来事が発生するとミッション失敗となる。
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途中セーブなどを行うことはできないが、隊員が死亡するなどしても何度でも再戦・プランの立て直しが可能。
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基本的にどのミッションも味方を全員生還させつつ目標を達成すべく、突入とプランニングを繰り返すのが通常の遊び方となる。
評価点
徹底したリアリズム
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数発の被弾で死ぬ緊張感あふれる展開や、瞬発力を問われる銃撃戦などは実戦さながら。
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「レインボー」自体は架空の組織だが、98年当時のGIGNやデルタフォースなどの特殊部隊を参考にした装備構成には時代相応の説得力がある。
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実は、モーションキャプチャに際してトム・クランシー経由で銃器メーカーであるヘッケラー&コッホ社のトレーナーを招いている。
その結果として大げさでない当時のリアルな動きを再現することができ、臨場感アップに一役買っている。
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ゲームプレイと同様に、シナリオもまたリアリズム重視。
大使館爆破テロなどが大々的に報道された時代というのもあり、現実の社会問題を反映した展開が見所となっている。
試行錯誤の楽しい突入ルート考案
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事前に予測されたおおまかな敵配置をもとに、独自の突入方法を考えていくのも本作の重要な楽しみ方のひとつ。
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完璧に立案されたプランは、プレイヤーが何も操作せずともNPCだけで全ての目標を達成する。結果に不満な時は何度でもリトライ可能なのも嬉しいポイント。
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熱中したプレイヤーの中には数分で終わる作戦を完璧にするため、何時間もプランを練るといった声も挙がるほど。
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プランに名前を付けて任意でセーブ/ロードすることもでき、複数のプランを検討してみるといったことも簡単に行えるようになっている。
賛否両論点
やっぱり高い難易度
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文章量や情報量が多く、慣れるまではかなり敷居が高い。
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また説明不足な点や不親切な要素も多く、プランニングと突入のパートも何度も失敗することを前提としているためちゃんと遊ぶには根気を要する。
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銃や装備などは現実に即しているが、それゆえ実際の特殊部隊知識がある程度求められる。
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サプレッサーの意味、閃光弾の有効性、ショットガンの使い道、カモフラージュの意義などは本編内で説明されないため、分かっていないと活用できず苦戦することも。
簡素なグラフィック
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当時の他のタイトルと比較してもグラフィックはかなり簡素で、バグも多め。
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FPSパートで武器グラフィックが表示されなかったり、キャラクターモデルがかなり粗雑だったりとクオリティが怪しい。
しかし、最初のフル3Dミリタリー作品というのもあってスケジュールの切迫、予算の問題なども抱えていたため、ある程度は仕方ないところではある。また、先述の通りモーションという点では拘りが見られる。
やけに難しい単独潜入ミッション
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通常パートは敵の本拠地に突入する内容だが、ミッション11のみ単独潜入を命じられる。
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敵が巡回する邸宅に忍び込むのだが、敵を倒してはならず、発見されてもゲームオーバー。邸宅内部も入り組んでおり、ルートを覚えるのがかなり難しくなっている。
問題点
おバカな味方AI
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味方AIはプラン通りの行動しかとらず、プランニング以外のことをさせたい時は自分で切り替えて操作するしかない。
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後の作品にように現地で仲間に指示を出す要素はなく、突入させたい時などは不便。
突入時のクリアリング動作も甘い所があり、方向を考えてウェイポイントを打たないと背中から撃たれて死ぬ場合も少なくない。
簡素すぎるチュートリアル
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一応チュートリアル要素も用意されてはいるのだが、内容は非常に限定的。
きちんと文章で教えてくれるのは各種基本操作と銃の撃ち方ぐらいで、突入のコツや人質の誘導方法などは一切説明されない。
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人質救出訓練を選択してもやりかたは教えてくれず、ただ敵と人質が配置された簡素なキルハウスに放り込まれるだけ。付属マニュアルが分厚いからといって余りにも投げやりな内容である。
リーン動作が無い
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左右に少しだけ顔を出すリーン動作ができず、また左右平行移動のスピードも異様に遅いため、カニ歩きで通路の先に顔を出そうとすると即座に撃ち抜かれて死んでしまう。
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一方、前進/後退の移動速度は早い。このため、前進キーを入力して死角に突っ込みながら撃つほうが却って安全に制圧できるという、ややリアリズムに欠ける動きを要求されることがある。
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本作時点では実装されなかったが、後の作品ではリーンやカバー動作といった遮蔽物を活かした戦い方を行えるようになっている。
総評
プランニングで行う奥深い戦略要素と、実戦で味わうシビアかつリアリズムに溢れる特殊部隊描写がミリタリーファンの心を掴んだ一作。
初期作品ということでシステムの不親切さやAIのおバカさ、グラフィックのショボさといった問題は抱えているが、それを補って余りある独自の魅力を持ったタイトルである。
地味ながらもドラマ的なストーリー展開も行われ、シリーズ最初でありながらも後のシリーズの基礎を確立している。
Red Stormは本作を皮切りにトム・クランシー氏監修のシビアでリアルな軍事ゲームを展開していき、ファンから篤く支持されることとなった。
発端となった本作もGOG.comでの復刻配信が行われており、入手だけなら気軽にできるようになっている。
余談
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家庭用機版とPC版の相違点
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北米ではプレイステーション、ニンテンドウ64、ドリームキャストにアレンジ移植された。
ニンテンドウ64版は気合でプランニングを実装している一方、PS版ではプランニングが排除され、PC版とは別物の3名で協力して行動する高難度FPSと化している。
またそれぞれの移植版は容量などの都合もあり、ミッション数がPC版に比べて減らされてしまっている。
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日本語版
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日本では2002年6月13日にシスコンエンタテイメントから「ワールドグレイティストヒッツシリーズ」の一環としてPC版とPS版が展開された。
ゲーム本編の日本語翻訳はされておらず、マニュアルのみ翻訳されている。
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拡張パック・続編
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1999年1月31日には本作の拡張パック『Eagle Watch』が発売された。ストーリーはなく、世界各地のランドマークで人質事件を解決する内容。
また、同年8月31日には続編『Rainbow Six: Rogue Spear』が発売された。
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復刻
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現在はレトロゲーム配信プラットフォームであるGOG.comにて復刻配信されている。しかし使用しているDirectXの古さや破損したままのデータ配布により現行OSではそのまま起動して遊ぶことはできず、プレイするには一工夫が必要。
また、かつてはPS StoreでもPS版が発売されていたが、現在は販売終了している。
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小ネタ
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宣伝写真として使用されているのは本作のために撮られた画像ではなく、1992年にヘッケラー&コッホ社が撮影したHK USP拳銃のプロモーション写真。
トム・クランシーの持っていたコネを活用して正式に使用許可を貰ったもので、初代レインボーシックスを象徴する画像として多用されている。
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本作で操作可能な隊員の一人であるドミンゴ・チャベスは、後のシリーズでも多く活躍する旧レインボーの隊長。
長らく主人公的な立ち位置だったが、『Vegas』では長官であるシックスの地位に昇格している。
また、同じく隊員として操作できるジェラルド・モリスは、『Siege』にて「デイモス」を名乗り暗躍する重要キャラクターのひとりとなった。
最終更新:2025年09月02日 23:22