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風のクロノア door to phantomile - (2021/07/13 (火) 12:41:31) の編集履歴(バックアップ)


風のクロノア door to phantomile

【かぜのくろのあ どあ とぅ ふぁんとまいる】

ジャンル アクションゲーム
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 ナムコ
発売日 1997年12月11日
定価 6,090円
廉価版 PlayStation the Best for Family
1999年11月18日/2,800円
配信 ゲームアーカイブス
2011年7月6日/600円
その他 PS2『ナムコレクション』に収録
2005年7月21日/3,990円
レーティング CERO:A (全年齢対象)
※ゲームアーカイブス版より付加
備考 Wiiリメイク版に関する記事はこちら
(なし判定)
判定 良作
風のクロノアシリーズリンク

概要

1997年にナムコが発売した横スクロールアクションゲーム。以前に『ワギャンパラダイス』を手掛けたチームによって開発された。
発売当初はあまり注目されていなかったが、その深みのあるゲームシステムや各演出から、隠れた名作として高く評価されている。


あらすじ

人々が見る夢が全ての原動力となる世界「ファントマイル」。風の村「ブリーガル」に住む少年クロノアは、ある日不思議な夢を見る。
それは近所の丘に何かが墜ち世界が闇に包まれる悪夢…いつもは目覚めると忘れるはずの夢だが、なぜかその夢だけは覚えていたのだ。

そんな夢から目覚めたクロノアは、直後に丘に何かが墜落したのを目撃する。夢と同じ風景がどうしても気になったクロノア。
自身の幼馴染で相棒でもあるリングの精ヒューポーとともに、ちょっとした冒険気分で丘に出かけたクロノアであったが、
この墜落は世界を再生する力を持つ歌姫レフィスを捕らえ、世界中の夢を悪夢に変えようと企む魔王ガディウスの仕業であった。

ガディウスの企みを知ったクロノアとヒューポーはその計画を阻止すべく、ファントマイルの国々を駆け巡る大冒険に出かける。


特徴

  • 地形や背景は3Dポリゴンだがキャラクターは基本ドット絵という、3D化全盛期の作品としては珍しい横スクロールアクションゲーム。
    • 横スクロールを基調としつつ、3Dならではの奥行きと立体感を活かした空間構成となっており、移動するにしたがってカメラアングルが自在に変化していく。
      建造物などの空間も全て立体で描写されているので、建物の外周に沿って通路を進んだり、リフトやゴンドラが奥や手前に動いたりする。
    • キャラクターの向きにも奥と手前の概念があり、奥や手前の敵に攻撃する、ステージ奥にあるスイッチを動かすなどの立体構成を活かしたギミックが多い。
  • 主人公クロノアの持つリングの力で「風だま」を発射し敵を膨らませ、捕まえて投げるというのが基本アクション。方向キー以外のボタンはジャンプとリング操作の2つしか使わない*1
    • 捕まえた敵を踏み台にして2段ジャンプすることもでき、ジャンプした際に真下に敵を蹴飛ばす。これを利用しないと倒せない敵や到達できない足場もある。
      • 雑魚敵は捕まえて投げる毎に画面奥や手前から出現して適宜、補充されるため、敵を投げる必要がある場所で敵をムダに倒してしまって詰むということはない。
  • 全面クリア後のセーブデータで再開するとステージセレクトが可能になる。
    • また、各ステージに存在する悪夢に囚われた住人たちを全て救出すると、エクストラステージが解禁される。1周目で全員救出できなくてもクリア後に残った全員を救出すればOK。
      • エクストラステージは既存のステージ内にある分岐点の先に存在し、エクストラステージを制覇するとサウンドテストモードが解禁される。

評価点

シンプルで取っつきやすい操作

  • 星のカービィ』(敵を吸い込んで吐き出す)や『ヨッシーアイランド』(敵を飲み込んで卵にして投げる)を髣髴とさせるようなわかりやすい操作で、ゲーム初心者でもすぐにとっつける。
    • 複雑な操作は全くないが、それでも十分と感じられるように丁寧に作りこまれており、目立ったバグやロードもなく、ストレスを感じることなくプレイできる。
    • ゲームシステム面での主張があまり強くないのも、世界観の印象を強く残すのに一役買っているだろう。
  • ステージの難易度も低くアクションに手馴れた人には物足りないかもしれないが、オーソドックスで人を選ばないお手軽なもの。総じて難易度自体は非常にバランスよく調整されている。
    • ライトユーザーでもとっつきやすい内容であり、世界観やストーリーを味わうのにちょうど良い塩梅と言える。
      だからといって極端にぬるいわけでもなく、序盤から終盤にかけて徐々に難しくなっていき、謎解きやアクションにも応用が必要になっていく。

雰囲気を大事にするゲーム

このゲームで何より重視すべきは世界観とシナリオである。本作に多くのファンを作り、名作と評された要因がここにある。

  • 世界観を大事にする姿勢と丁寧なつくりの演出面。
    • 例えば、登場人物の話す言葉は「るぷるどぅ」「わふぅ」等といったこの世界の独自言語「ファントマイル語」が使われており、プレイヤーは字幕で意味を理解する事となる。
      キャラの発する言葉に役割はないかというとそうではなく、意味をあえてわからないようにすることで悲しみや怒りが普通の日本語よりも顕著に表現される他、
      声優の演技力の高さも相まって場面場面のキャラクターの感情が強く訴えかけてくるため、キャラの掛け合いに現実臭さを感じることもない。
      • プロの声優はクロノア・ヒューポー役の渡辺久美子氏・瀧本富士子氏*2のみで、それ以外のキャラはほぼ開発スタッフなのだが*3、独自言語により違和感無く溶け込んでいる。
      • スタッフクレジットでも現実感を排する為か、ボイス担当の欄は一切登場せず、前述のプロ声優の2名も未掲載としているほど徹底されている。
    • グラフィックもカラフルながら優しいタッチで描かれており、主人公クロノアを初めとする喋る動物風のキャラクター達はもちろん、
      幻想的な月の国、滝や湖面の美しい水の国といったファンタジーもの定番のステージと相まって、まるで童話の世界を冒険しているかのような臨場感を得られる。
      • そこかしこで登場する雑魚敵「ムゥ」といった敵キャラ達ですら、通常時の細かな仕草や風だまで膨らんだ姿までも可愛くデザインされている。
        ただし可愛いだけに終わらず、終盤は各舞台設定に合わせた少々不気味またはグロテスクな雑魚敵や、醜悪な容貌を持ったボスも多くなっていく。
    • ステージのことを「ビジョン」と呼び、ゲームオーバーを「ビジョンオーバー」と呼ぶ点なども現実を感じさせない雰囲気作りに拘っているといえる点である。
  • 世界観を大切にした音楽
    • ファンタジー調の幻想的な色合いと、民族調の旋律が混じったようなオリジナリティ溢れる風味で、主張しすぎることなく世界観によく溶け込んでいる。
      単体の曲としても名曲が多く、4番目のボス戦のテーマ『baladium's drive』はシリーズでも屈指の人気を誇る*4
      • 本作の2ヵ月後に発売された公式サントラもスタッフの拘りで圧縮無しのマスター音質で収録されており、2019年時点で定期的な再販もされている。
    • 同じBGMでも建物の中と外、ステージのギミックの変化に合わせて主旋律の音量が変わる、全く違う曲に即座に切り替わる、
      ステージ内に捕らわれた各ステージの住人を助け出すことでマップ画面のBGMのパート数が増えて賑やかに変化していく……と、音楽を用いた演出も目立たないながら秀逸。

シナリオの評価(ネタバレ注意)

序盤の展開はとてもオーソドックスなものだが、中盤以降は登場人物が死亡する描写があったり、別の登場人物の正体が明かされたりと重い内容や意外性のある展開も入ってくる。
終盤は単なる王道と思わせない比較的シリアスなテイストとなるのだが、それ以上に何よりもファンの間で語り草にされているのが、その衝撃的なエンディングである。

+ 終盤の重大ネタバレ注意
  • 数々の出来事を乗り越え、ファントマイルの伝説とされた月の国「クレス」に辿り着いた2人。避難してきた月の国の女王の前で、ヒューポーは自らの正体をクロノアに明かす。
    • ヒューポーは自らが月の国の王子であり、クロノア達にはとある『訳』があって姿や身分を偽っていたこと、ただその『訳』は「今はまだ話せない、きっと後でちゃんと話すから!」と話す。
      戦況がガディウス達に傾いている危機的状況で、ヒューポーはクロノアに「もう少しだけ」の協力を懇願する。クロノアは「僕達、子供の頃からの親友だろ!」とそれを快諾するのであった。
  • ようやくガディウスの元に辿り着いた2人。クロノアを『悪夢の力を受けぬ異の夢』と呼ぶガディウスは、自らをも犠牲にし悪夢の化身「ナハトゥム」を生み出し、歌姫レフィスに憑依させてしまう。
    しかしクロノアとヒューポー、そしてファントマイルの人々の決死の行動により、ナハトゥムは完全に倒され、憑依させられていたレフィスも無事に救出され、ガディウスの計画はどうにか阻止された。
    • その後、クロノアは風の村に戻り、妙に塞ぎこんでいるヒューポーと他愛の無い会話をしていた。様子を心配するクロノアに対し、ヒューポーは突然「君は本当はこの世界に存在しないんだ!」と叫ぶ。
      困惑するクロノア。ヒューポーは更に語った。クロノアの正体は、この世界の崩れた夢のバランスを救うため、ヒューポーにより呼び出されニセの記憶を植えつけられた『この世ならざる夢』であると。
      そのため、ガディウス達によって荒れた世界がレフィスの再生の歌によって本来の姿を取り戻すと、この世ならざる場所から来たクロノアはこの世界から去らなければならないのだ。
      「嫌だ!どこにも行くもんか!」と否定するクロノア、「僕だって!!」と現実を認めたくないヒューポーだったが…レフィスは再生の歌を歌いだし、辺りにはクロノアを飲み込まんとする暴風が吹き始める。
      元々が偽りの記憶であったとしても、いまやクロノアとヒューポーは強い絆によって結ばれていた。再生の力に逆らおうとする2人だが、クロノアは吹き飛ばされてこの世界から追われてしまう。

……という切ないラストだが、『悪夢の力を受けぬ異の夢』『この世ならざる夢』とはつまり『現実世界のプレイヤーの夢』である。
最初からずっと細かい部分までファントマイルらしさ、現実要素の排除を徹底していただけに、最後の最後でメタ視点を大きく出したことで多くのプレイヤーを驚かせ、そして感動させた。
ゲーム開始時のデータ作成時に最初に行うプレイヤーの名前の登録がここで初めて意味を成し、そしてプレイヤーは最後の最後でその意味を知ることになる。
まさに下記のディレクターが語った通りの「ゲームならではのストーリー」である。

本作のディレクター・吉沢秀雄氏が自らのTwitterで明かしている開発秘話(まとめ)によると、開発当時「ゲームのストーリーは雰囲気作りのためのおまけ」という風潮が業界にはあり、
それに対する疑問から「ゲームでしか描けないストーリーを作りたい」と考え、開発初期にオープニングとエンディングを思い付き、それにシナリオを肉付けしていったのだという。


問題点

  • ボリュームが少ない。慣れてしまえば5、6時間程度でクリアできる。
    • 総じて難易度は低めの設定だが、スイッチの起動などには多少頭を使わないとなかなか起動できずタイミングもややシビア。
    • クリア後の隠しステージも一つしかなく、即死トラップは多いが難易度はそこまで高いとは言えない。
  • カメラアングルが見難い角度に変化してしまう箇所が少なからずある。
  • 重要人物のじっちゃんの存在が薄い。
    • ゲーム内では序盤に少しだけ登場し中盤にて再登場したかと思えばすぐに退場してしまった。また、それ以降EDまで誰も一切触れて来ない。
  • 稀にあることだがいきなりタイトル画面に移ることがありOPデモを見ることができない。
    • OPデモを見たい人にとってはタイトル画面を合計3度見るか再起動するかの2択になり面倒くさい。
    • 当然だが開発会社(ナムコのこと)は必ず表記される。

総評

ハードなゲーマーにはボリューム不足と感じられるが、単純な操作と易しめの難易度により幅広い層を取り込めた作品。
さらに緻密に練られた世界観とストーリー、そしてそれらをしっかり踏まえた演出は多くのプレイヤーを虜にした。

近年ではハード性能の向上などもあって「プレイできる映画」と言えるような3Dグラフィックや世界観などの演出も重視するゲームが非常に増えたが、
とても限られた性能であるPS1でゲームならではのストーリーと演出を打ち出した本作はいわゆる「雰囲気ゲー」の金字塔と言っても過言ではないだろう。

現在はPS1版の他、下記のPS2「ナムコレクション」、PS3・PSP・PS Vita用のゲームアーカイブスと、比較的容易にプレイすることが可能。
クロノアシリーズに興味がある方はもちろん、アクションゲームやファンタジー作品が好きな方も、ぜひ手に取りプレイしてもらいたい。


その後

  • 本作は口コミでファンを増やしていき、その高評価から1999年に携帯機のワンダースワンで外伝作品『風のクロノア ムーンライトミュージアム』が発売されてシリーズ化。
    2001年にはPS2でナンバリングタイトルの『風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~』が発売され、ナムコの看板作品の一つと言えるシリーズにまで上り詰めた。
    • 以後は下記のWii版まで、さまざまなハードで続編や派生作品が出ていたが、いずれも初代作である本作とストーリー上の直接的なつながりはない。
      もちろん『ムーンライト』『2』共に単体でいえば該当項目にある通り、本作同様に非常に丁寧に作られた名作であり、続編以降のファンも少なくない。
      『2』以降・『ビーチバレー』以降でキャラクター設定やデザイン変更が施されたこともあり、それぞれ本作と異なるパラレルワールド的な位置づけにもなっている。
      • 続編以降でクロノアのデザイン自体が変更されたこと、1作目の世界観・ストーリーに感動した層が多いことから、続編毎に好き嫌いが分かれる*5傾向にある。
    • 2012年にはバンダイナムコのウェブコミックサイト「ShiftyLook」にて、ありがひとし氏による完全新作の作品が無料配信されていた*6
      設定的にはシリーズ作品のほぼ全てを同一の世界線とした上でクロノアの新たな冒険を描いていたのだが、2014年に同サイトのサービス終了に先駆けて事実上の打ち切りに。
      • 2016年には旧ShiftyLookスタッフと吉沢秀雄氏の監修・ありがひとし氏のデザインによるアニメ映画化計画が発表されたが、こちらも2019年1月に制作中止となった*7
  • 上記のネタバレタブ内にも表記しているが、本作のディレクター・吉沢秀雄氏は、発売20年を経た2017年から自らのTwitterでクロノアシリーズの開発秘話を明かしている。
    まとめはこちらから。当然ながら本作のネタバレが有るため、クリア後の閲覧を強く推奨するが、当時のクロノア公式サイトで語られたものより更に深い開発秘話が読める。
    • 氏はナムコ入社以前、テクモにて『忍者龍剣伝』三部作、『ラディア戦記 黎明篇』などのディレクターを務め、クロノアシリーズにも幾つかの演出的要素が受け継がれている。
      『忍者龍剣伝』からは「オープニング・エンディングだけでなく、ステージ間にも入る本格的なカットシーン」、『ラディア戦記 黎明篇』からは「登場人物の名前」など……。
      • 本作のネタバレ無しで説明すると、本作は氏のゲーム創りの集大成的作品として、上記作品で培った演出をクロノアシリーズの世界観構築に活かしたとのこと。
  • ナムコ作品には他のナムコキャラがゲスト登場する事が半ばお約束となっているが、クロノアもその例に漏れていない。
    • 本作のヒットはナムコ内でも結構な反響があったようで、98年~2000年初頭までの出演数はPS1発祥のキャラにしてはかなり多かった。
      クロノアチームとは無関係な3Dゲームのチームから出演依頼がかかった際は、クロノアチームがモデルを新規製作した事もあったとか*8
  • 2005年にPS2で発売されたコレクションソフト『ナムコレクション』に、5作品の1つとして本作が収録されている。
    • 他のタイトル同様に内容はPS版のほぼベタ移植で、ごく一部のバグが修正されている。
    • ゲーム開始時にタイトル選択が必要なため起動にやや手間が掛かるが、ゲーム開始後はPS2のためロード時間は短く快適。
    • オマケとしてイラストや設定資料が閲覧できるギャラリーが収録されている(収録枚数はあまり多くない)。
    • リッジレーサー』『エースコンバット2』『鉄拳』『ミスタードリラー』も同時収録されているためお得感はある。
  • 2008年にWiiでフルリメイク版『風のクロノア door to phantomileが発売された。
    • こちらは原作で好評だった演出面の変更が賛否両論となった。詳細は別項を参照。