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サガ フロンティア2 - (2020/12/08 (火) 05:32:57) の編集履歴(バックアップ)


サガ フロンティア2

【さがふろんてぃあつー】

ジャンル RPG
対応機種 プレイステーション
メディア CD-ROM 1枚*1
発売・開発元 スクウェア
発売日 1999年4月1日
定価 6,800円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 1ブロック使用
レーティング CERO:A(全年齢対象)
※アルティメットヒッツ版以降より付加
周辺機器 DUALSHOCK、PocketStation対応
廉価版 スクウェア ミレニアム コレクション:2000年6月29日/3,800円
PS one Books:2002年3月20日/2,500円
アルティメットヒッツ:2006年7月20日/1,500円(全て税別)
配信 ゲームアーカイブス:2008年12月10日/600円(税5%込)
判定 良作
ポイント サガ8作目かつサガ フロンティア第2作目
前作と異なりロマサガ系の中世風世界観に
発売当時は不評だったが後に再評価
サガシリーズリンク


概要

  • サガシリーズ8作目にしてサガ フロンティアシリーズの第2作目。
    • サガシリーズ全体の傾向として基本的に世界観も全て毎回異なるため、『サガ フロンティア』というタイトルを引き継いだものの前作とは大きく異なるゲームになっている
    • 今作の舞台はサンダイルという術至上主義がまかり通る中世風の世界。前作がGBサガ系のごった煮世界観だったのに対し、本作はロマサガ系の中世風世界観に戻った。もちろん世界観の繋がりは全くない。
  • 世界観変更に伴って作曲家が伊藤賢治氏から浜渦正志氏に変更され、曲調も随分と落ちついたもの・神秘的なものに変わった。

特徴

ヒストリーチョイス

  • 本作の最大の特徴であるシナリオシステム。プレイヤーは、世界地図上に示された歴史上のイベントを選択することでシナリオを進める。
    • イベントの内容は様々で、パーティでの探索行もあれば「コンバット」という擬似的な戦争シミュレーションもあり、プレイヤーの介入できないエピソードを見るだけのものもある。1つのイベントを終えると次の時代のイベントが世界地図に現れる。
    • あるイベントが時間的にも地理的にも遠く離れた後代のイベントに密接に関わったり、歴史の表と裏を思いがけない形で繋いだりといった展開もある。
  • シナリオは国家間の戦争や政治の流れに大きく関わる表の歴史を描いたギュスターヴ編と、関わるキャラクターのほとんどが平民や冒険者で歴史書には記されない裏の歴史を描いたウィル・ナイツ編の2つに大きく分かれる。
    • スタート時に選択できるのは上記の二人だけだが、シナリオが進行し時代が移り変わると、彼らの子孫や後継者などがプレイヤーキャラになる。以前の主人公たちは引退したり死亡したり以後の動きがはっきり語られなくなったりする。
      • 子孫・後継者だけでなく前のシナリオの仲間キャラや敵が主人公をする外伝的なシナリオも多数ある。
      • このような主人公交代はロマサガ2の感覚に近いが、この作品のキャラクターは汎用キャラではなく全て固有の人格と設定を持った生々しい人間たちである。生まれも育ちも、該当シナリオに関わる理由も様々。
      • つまりサガ フロンティアが大勢の主人公たちを一貫して操作することによりシナリオのバラエティの広さを追求したのに対して、この作品は歴史の裏と表という2つのシナリオの軸に複数の主人公を時代時代に交代させることで物語の深さを追求した作品といえる。
    • ギュスターヴ編は術が使えないために国を追放された王子ギュスターヴが母親や友人の支えによって成長し、やがて自ら国を興し覇者となる王道的なサクセスストーリー。ギュスターヴが表舞台を降りてからも、彼の後継者争いやその混乱に乗じた策謀などが描かれ、CMのキャッチコピー「主人公の死。そこから本当の物語は始まる」の通り、シナリオはさらに複雑に展開してゆく。
    • ウィル・ナイツ編はディガー(遺跡発掘者)として仕事をしながら父母の死の真相を探り復讐を遂げようとする初代主人公ウィルことウィリアムと、彼の志を共有するナイツの子孫たちの物語。オープニングでは15歳の少年であるウィルは、主人公が息子のリチャード(リッチ)を経て孫娘のヴァージニア(ジニー)に交代した最終シナリオでも、全ての元凶と決着をつけるため85歳という高齢で参戦する。
  • このシステムのおかげで自由度が低下した反面、シナリオはサガシリーズ最高とする声もある。
    • ただし、このゲームのシナリオは(意図的にだが)不明瞭であり、描写や説明が少なかったり謎を残した部分が多く、不満の声もある(詳しくは『賛否両論点』で後述)。

バトルシステム

戦闘システムは、閃きや連携といった旧作のシステムを引き継ぎつつ、変更や新要素が加えられている。ちなみに「見切り」は廃止されている。

  • 連携システム
    • 前作よりも演出は抑えられているが、新たに敵との連携が可能になった。通常は最大4連携のところを、敵が自身に使う特殊能力を利用した5連携が可能。
    • 連携数が増えるほどダメージも伸びる。これは後の作品にも引き継がれた。
    • 味方の素早さに関係なく、任意でキャラごとの行動順を設定できるため、少し計算すれば狙った連携を出しやすくなった。
  • デュエル
    • 敵と1対1で戦う戦闘方法。斬る・払う・炎・音*2といったコマンドを組み合わせて行う。
    • お供モンスターが出てこない、参加しない他メンバーのHPが回復する、技・術を効率よく習得できる(下記)等の多数のメリットがある。反面、ゲームオーバーになり易い、参加者しか成長しない等のデメリットも存在。
    • 行動を特定の順序で選択すると技・術・術技が発動することがあり、発動すれば習得できる(合成習得)。これにより閃きや学習よりも技・術の習得効率が高い。デュエルでしか習得できないものもあるが、閃きでしか習得できない・閃きの方が習得しやすいというものも多数存在しており、閃きの重要性を損なうような事にはなっていない。
    • 相抜け・タイムリーアクション・カスタムアーツといった独自のシステムが存在しており、「構える」や「身を守る」等のコマンドにもそれぞれ効果がある。ただし、要素が多い割に作り込みが足りず、あまり意味のない仕様もある。
  • 学習
    • 戦闘中(デュエルでも可)に術系統(アニマ)を使用すると、戦闘終了後に未習得の合成術を習得するシステム。ただし無制限に学習できるというわけではなく、各キャラクターごとに学習できる合成術の種類とその要件となる術系統の種類との組み合わせが予め決まっている*3。術の中には学習でしか習得できないものが存在する。
  • 年齢の影響
    • 本作ではバトルによる成長とは別に年齢により能力値が変化する。
    • 若年のうちは生命力に溢れ、LP(ライフポイント)の最大値が高い。大人になると力強さが強調されタフになる。老いが始まるとHP、LP、WPといった肉体面は脆くなるが精神面の代表であるJPは強化され続ける。
    • 長期にわたってバトルに参加するキャラは多くはないが、15歳~86歳とゲーム中で最長の活躍を見せるウィルは、これらの変化を顕著に確認できる。
  • 術システム
    • 術を使う際には、その源であるアニマを引き出せる装備や環境が必要になる。装備は攻撃力や防御力だけではなく、引き出せるアニマも考えて整える必要がある。
      • 代わりに、術系統同士で相反するシステムが廃止された*4ことで、装備の組み合わせ次第では1人で全ての系統の術を扱えるようになった。
    • 鉄や鋼といった金属装備は攻撃力・防御力に優れるが、アニマを持たず術の触媒にならない。また、アニマを阻害する性質があり術力が低下する(反面、術による干渉を弱めるため術防御は上がる)。この設定はギュスターヴ編のシナリオにも強く関わっている。
  • 装備は耐久制
    • 本作ではGBサガシリーズのように、大半の装備に使用回数が設定されている。
    • 装備は敵や宝箱などからアイテム所持数を圧迫するほど手に入り、装備を使い切るとチップという換金可能なものが手に入るため、使い捨てが基本。「クヴェル」という使用回数が無限の装備や、使い減りしない金属装備も利用できる。
  • LPシステム
    • 旧作に比べて、各キャラの持つLP(ライフポイント)の重要度が高まっている。
    • 前作までは戦闘不能に陥る度にLPが減少し、ゼロになったキャラは離脱・使用不能という仕組みだった。今作では単に戦闘不能となった場合にはLPが減少しないが、LPが減少する局面は増えている。また戦闘中キャラのLPがゼロになっても、戦闘後に1だけ回復するためキャラが使用不能にはならなくなった。
    • 前作までとは異なり、戦闘終了後のHPは最大値の1/4までしか回復しない。また戦闘以外でHP回復術は使用できない。今回は、戦闘不能になっていなければ毎ターンの行動前にLPを1消費する事でHPを全回復できる。LP消費回復を行ったターンも、行動に制約を受けることはない。
    • 技・術を使用するためのポイント(WP・JP)が0になっても、LPを消費して使用できる。
      • なお、術と体術はLPを消費して繰り出すと通常よりダメージが増加する。そうそう狙って使えるものではないが、最大ダメージの連携を狙うやり込みなどにも使用された。
    • 今作はLPを削りながら行われるバトルであり、ボス戦は「パーティーキャラのLPが尽きるまでにボスを倒せるか」がポイントである。常にLP残量に気を配る必要がある。
  • ロールシステム
    • 各キャラにロールという役割を割り振ることで、戦闘時に独自の効果が発揮される。
    • 「鉄砲玉」は最速で行動できる、「スカウト」は戦闘開始時に味方の陣形が崩れにくくなる、「術強化」は術による攻撃効果が上昇する、など。
    • うまくロールを割り振れば戦闘の難易度を劇的に下げることができる。
    • ただし、問題点に記されているように、設定ミスで効果がないもの、効果が表記と異なるものが 過半数 を占めており、粗が目立っている。
  • その他
    • 戦闘の進行状況・優劣によって「見逃す」「停戦交渉」「敗走する」等が出現することがあり、敵を全滅させずに戦闘を終了させることが可能になった。
      • どれが出現するかはこちらと敵のHPの状況で変化。成功確率はこちらが有利な状態なものほど高い。
    • 前作にも言えることだが、敵味方の配置がわりとバラバラになる仕様。したがって、敵を包囲したり、味方がバラけたり、逆に敵に囲まれたりするいろいろなシチュエーションがある。陣形をきちんと組めない反面、扇型・円型・直線などの範囲攻撃の使い勝手が高く、また局面によって範囲が大きく変わるため、どこでどう使うかが後のシリーズより大切。

コンバット

諸侯同士の戦争を表現したSRPG式の特殊バトル。ギュスターヴ編で4回ある。
敵軍と自軍(プレイヤー側)に分かれ、マス目状のフィールドに配置された4人1組の自軍ユニットを動かして戦う。

  • 敵軍ユニットに接触すると、ユニット同士でバトルが開始される。
    • このバトルは特殊で、1ターンだけ戦い、ターン終了時にユニット内の合計HPが高かった側の勝利となる。敗北したユニットは退却するが、退路が塞がれていたり、4人全員が戦闘不能になった場合はそのユニットは消滅する。
  • コンバットでは「防衛ラインへの侵入」などの敗北条件を敵軍に満たされぬよう警戒しつつ、「大将ユニットの撃破」などの自軍勝利条件の達成を目指していく。
  • ユニットを構成しているのは、基本的に敵味方ともにコンバット専用の汎用(名前無し)兵士キャラ。
    • ステータスは低く固定で、使用できる技も初期レベルのもののみ(プレイヤーは汎用兵士キャラの装備品、技に干渉できない)。
  • 自軍ユニットに別シナリオで育てたキャラを使えるなど、プレイヤー側に有利なコンバットが多いが、最後のコンバット「サウスマウンドトップの戦い」は本作屈指の難関と評されている。

2周目からのゲーム内容と引き継ぎ要素

+ クリア後要素のため格納
  • エンディング後はクリアデータを作成することができ、クリアデータではいくつかの要素をクリア時から引き継いだままのニューゲームが可能になる。
  • 2周目ではヒストリーチョイスが変化し、全てのシナリオが最初から自由に選択可能になる。いきなりラストバトル突入も可能。自由度が増して以前のサガシリーズらしいフリーシナリオ的な遊び方ができるようになる*5
  • 強力なアイテムやロールを所持しているキャラのいるシナリオだけを選択して、効率よくパーティーを強化していく進め方が可能になる。また、習得していた技・術が全て最初から使用可能になっている(アイテム類やキャラクターの能力値は引き継がれない)。
    • 引継がれるのは良いことばかりではなく、モンスターの「学習レベル」という要素もある。これはプレイヤーが特定の攻撃を使用することで上昇し、モンスターの使用してくる攻撃の種類が増えるというもの。

評価点

世界観

  • 基本的には中世風のファンタジーだが、アニマと呼ばれる術力や魂の概念といったファンタジー的な設定の上に術至上主義とする社会とその革新が描かれる。独特な文化を細部まで表現した世界観は高く評価されている。ストーリーはもちろんの事、歴史の移り変わりとともにバトルシステムや武具といったプレイヤーが関与する部分の大半にその文化が反映されている。
    • ジャケットに描かれている折れた鉄の剣に象徴されるように、「鉄の武具」が本作のメインストーリーにおいて重要な役割を担っている。
      + ネタバレ注意
      • 作中の鉄器は「所持していると術力(=アニマ)を妨げる」ために世間では異端な存在であった*6。しかし、アニマを持たない術不能者であったギュスターヴは鉄の強靭さに着目し、金属製武具で武装した術不能者の軍隊を編成する。その結果ギュスターヴは帝王に上り詰め、物語中盤以降は鉄の素材自体が世間に評価されていくという革命的な展開となり、実際に店頭に金属製武具が並んでいく。*7
      • パッケージにも描かれている「ギュスターヴの剣」は、ギュスターヴが少年時代に初めて鉄製の短剣を造ったときから理想として胸に描き、後に彼自身の手で造られた鉄の武器である。作中では彼の力の象徴として描かれ、彼がそれを超えることを目指した火炎剣ファイアブランドと並んで「世界最強の剣」と言われている。
        • 一方で、生物のアニマを喰らい時代の闇に暗躍していた生きたクヴェルであり最終ボス「エッグ」にトドメを刺す事になるのもこの剣である。エッグは物語終盤でギュスターヴを名乗る男を操り紛争を引き起こしながら暗躍していたが、最終的にはギュスターヴの正統である男(名も読みを変えて継いでいる)によって、血筋と同じく受け継がれていた鉄の剣でトドメを刺されるという展開となり、歴史を俯瞰して見てきたプレイヤーにカタルシスを与える。
        • エッグと相討ちするかのようにこの剣は折れてしまうが、もはやこれからの時代には無用のものとして、ジャケットの絵の通り草原に捨て置かれる*8。ギュスターヴが築いた時代もここで終わりを告げ、人々が次代へと歩んでいくことを暗示して、物語の幕が引かれる。

グラフィック

  • 水彩画調のグラフィックは美しく、画面を落ち着きのあるものに仕上げている。
    • 砂漠に聳え立つ散水塔、氷と人工物が組み合わさった寒冷地の遺跡、琥珀色の映える虫の住処、うら錆びた古代の巨大橋脚など冒険の舞台のシチュエーションが浪漫に満ちていることもあって終始幻想的な雰囲気を味わえる。

BGM

  • 作曲家は旧来の伊藤賢治氏から浜渦正志氏に交代。発売当時は懸念の声もあったが、実際の作中の音楽は非常に質が高く、現在では批判の声は殆どない。
  • 作中の曲は主として3種類のメロディしか使われておらず、特定の旋律を変奏させつつ複数に渡って多用する事で、統一感を生み出している。
    • 一例として一般的な町で流れる曲と、通常戦闘曲で同じメロディが使われているが、趣が完全に異なっており違和感が全くない。
      全く同じメロディでも、様々な楽器を使用し、曲調を工夫する事で、シチュエーションに応じた幅広いバリエーションを持たせている。
  • これは氏の「連続するシーンで異なるメロディを流す事への違和感」から生まれた産物で、氏がゲームへの造詣が深い事も要因となっている。
    • 勿論これ自体は他作品でも行われる比較的一般的な手法だが、本作の場合は50を超えるBGMに徹底してこの手法が使われているのである。
      FF等、複数作に分かれてアレンジといった形ではあったものの、一作品内でここまで大胆に行ったのは本作以外にあまり例がない。
    • ちなみに氏は次回作『アンリミテッド:サガ』でも作曲を担当しており、作品自体はあまり評価されなかったが、BGMは高評を得ていた。
  • こうして作られた各BGMは、ゲーム全体との調和もさることながら、単体の「音楽」としても十分に聴き応えのあるものとなっている。
    • 特に戦闘曲は伊藤賢治氏とは方向性が異なるものの、通常戦闘曲だけで5種類も用意される等、世界観との調和も相まって評価は高い。

バトルシステム

  • 本作のバトルシステムは非常に戦略的な物となっており、システムをしっかり理解すれば幅広い遊び方が可能。
    • 解析が進み、インターネットで情報が得やすくなった現在では多彩なやりこみが行われている。

ユーザーインターフェイス

  • 本作ではL1=武具装備画面、R1=技装備画面、R2=ステータス画面となっており、メニュー画面を経由せずに任意の画面を呼び出せる。クイックセーブも一瞬。
    • また、他のゲームでは殆ど見られない特徴として、本作では右スティックでもキャラクターやカーソルの移動ができ、片手での操作が可能となっている。

賛否両論点

シナリオ

  • ヒストリーチョイスによって一世紀近い歴史を辿る壮大なシナリオではあるが、説明・描写が不足しており、評価は分かれている。イベント内容やキャラの台詞を注意深く追うことで見えてくる事柄もあるが、アルティマニアや設定資料集を当たらなければ補完されない事柄も多い。
    • 発売当初、シナリオについては否定的な意見が多かったが、上記の性質から後にある程度再評価された。一方で、別売の書籍でやっと穴が埋まるような作りへの否定意見も根強い。「考察の楽しみを残している」という評価も、「プレイヤー置き去り、投げっぱなし」という評価も、どちらも不当なものではない。
    • 特に、キャラクターの描写に関しては、途中からゲーム中での登場が一切無くなって「あのキャラはあの後どうなった?」と思ってしまう脇役キャラが多い。ただし、この点に関しても関連書籍などを読むことでその後が補完できるキャラはいる。
    • 一部の事件は、最後まで真相が明らかにならず謎のままに終わるため、好みが分かれる。
    • 過去のシリーズ作品よりも配慮は窺えるが、シリーズ伝統の粗雑な言い回しも見られる。
  • 本作のシナリオシステムは、従来の「特定の場所に任意に行く事で発生させる」ではなく「用意されたシナリオをある程度好きに選択できる」という形であり、従来作と同感覚では遊べない。
    • 基本的に世界各地を自由には移動できず、そのシナリオ内で定められた場所を動ける。時代や場所が違うので1つの事件をこなしている間に別の事件に関われないのは仕方ないが、同じイベント中でも場所を移動してしまうと直前の場所に戻れなかったりする。
    • これにより、回復手段が限られる上にボスラッシュがあるラストダンジョンでは苦戦を強いられる。特にラスボスはとてつもない強敵であるため、事前情報がなければまず最初からやり直す羽目になる。

戦闘

  • 前作と比べてバトルスピードが遅くなり、ド派手なエフェクトの技やダイナミックなカメラワークも殆ど見られなくなった。
    • PS本体のメモリ容量が足りない関係*9でエフェクトは変えざるを得ず、連携がテンポ良く出来なくなってしまったらしい。
    • ただしド派手エフェクトは好評ではあった半面、演出の長さを問題として指摘されることもある*10。今作では全体的にエフェクトが簡素になったことで演出時間も短くなっているため、結果的に前作とさほど変わらないテンポでプレイすることは可能である*11
      • 今作のバトルエフェクトはBGMと同様で前作のような派手さはないものの、今作の幻想的世界観とマッチしている。
  • 前作で好評を博した連携は条件が厳しくなり運用がやや難しくなっている。前作では連携によってバトルが簡単になったことを悔やむスタッフの声があったため、本作はスタッフの意向通りとも言えるが、プレイヤーには賛否両論である。
    • 前作では最強技同士でもバンバン連携可能など特にアタマを使わなくても適当に技を選択していれば連携を楽しむことが出来たが、今作ではどの技術からどの技術に繋がるのかというのをしっかりプレイヤーが把握している必要がある。しかしうまく運用できれば連携のダメージ補正は前作よりも大きく、今作ではパーティメンバーが4人にも拘らず5人の前作よりも高いダメージを叩き出せてしまうような連携が可能。
    • 前述のメモリ容量の問題でテンポ良く出来なくなった代わりに、前作と違って連携の初めにどこまで連携が成立しているのかわからないようになっており、「次の技は繋がるのか繋がらないのか」というような”焦らし”や”緊張感”を演出している。特に2→3人目の連携の間は絶妙である*12
    • 結果的にこれらの「狙って連携を作る」「焦らし」「リターンが大きい」という要素が絡み合い、前作のようなひたすら爽快感の高いものとはまた違った快感を得ることが可能なシステムとなった。
    • 強力な技術同士をつなぐために、間に中堅の技術を挟み込むようにして連携する必要があるため、そういった中堅の技術が今作では終盤まで活躍できる。
      • ちなみにデュエルにおいても「身を守る+3コマンド技」という戦い方が有効なため中堅技が死に技術になりにくい点に拍車をかけている。
  • シナリオの都合で、使用キャラは次々と代わり、最後には使用できないキャラが多い。キャラのストーリー面での掘り下げは旧作より深いが、好きなキャラを自由に選んで戦闘できない、育成の自由度が低いことに否定的な意見もある。
    • ゲーム自体は、技・術は共有で初期状態のキャラでも連携を活用すれば大ダメージを与えられる等、あまり育成をしなくても進められる設計にはなっている。しかし高を括ってロクな育成をせずにゲームを進めると、ラストダンジョンを筆頭とした強力なボスで詰まってしまう危険性もある。
    • とはいえ資質や成長率に差はあるものの、従来作同様に全員を剣士にしたりといったことも可能であるため育成の自由度は基本的に高いまま(ただし最終パーティでも一部キャラが体術が使えないことや、とある術がどうやっても学習できないという問題があるが…)。
    • 育成をしなくても常に適切な強さのキャラクターが使用できるため、ゲーム進行がスムーズで、制限プレイやRTAがやりやすいというメリットとされることもある。

バランス

  • 歴代サガシリーズの例に漏れず、難しいところは理不尽なまでに難しい。
    • 特にギュスターヴ編・ウィル編ともにラストシナリオは非常に難度が高く、シリーズ随一とも評される。双方ともプレイヤーがシステムを理解しきれていないと厳しい。
      • ギュスターヴ編のラストバトルであるコンバット「サウスマウンドトップの戦い」は味方側が極端な劣勢で、敵味方の戦力を常に把握しなければならない上に高度な戦略的判断が要求される。一応力押しの攻略法はあるものの、リアルラックが絡んでくる。
      • ウィル編は、ラストシナリオを始めた時点でもうラストダンジョン以外に移動可能な場所がなく、ラスダン内には回復ポイントもショップも無い為、補給が厳しくなっている。ザコは居るのである程度アイテム収集や育成は可能だが、LPに関しては回復アイテムを前もって用意していなかった場合、回復方法がない。しかもラスボスはLPを削る攻撃をガンガン繰り出して来る為、ラスダン道中でLPを大きく消耗&LP攻撃への対策が無い状態ではラスボスに勝つのは困難であり、最後になって「詰んだ」というプレイヤーは多い*13
      • 控えメンバー2人は、ラスダンに配置された中ボスの4体のうちどれかとデュエルで戦える(このデュエルに参加したキャラは離脱し、クリアまで使用できない)。ここで倒したボスに応じてラスボスの形態が減るが、ラスボス戦で強力な全体攻撃を使う形態や、全体石化攻撃*14を使う形態は倒さないと難易度が高くなる。
    • とはいえシステムを理解しきっていればどちらも100%攻略できるような絶妙なバランスになっている。この点は従来作(特にロマサガシリーズ)と何も変わっていない。
      • プレイヤーが学習していくことで攻略が楽になっていくことを意識した造りになっている。逆にそこを楽しめないプレイヤーにとってはこの造りはゲームとしての欠点になる。
        + 開発者インタビューにおける同趣旨のコメント

        (そういう倒し方とかを)覚えていくのがゲームだろうなと思いながら作ってるんですよ。
        ロープレって言うのはキャラクターを強くするんじゃなくて、プレイヤーが世界に入っていくこと。 この世界ではこういう技が使えるんだとか有効なんだということを覚えていくのが、 ゲームの中にどんどん入っていくという事で、 そこがゲームの中でファンタジーを描く意味合いとして強く推して行きたいところです。

        だから、とりあえず何か強そうな技を打ってたら勝つというんじゃなく、 プレイヤーが学習することで喜んで欲しい、みたいなのはあります。
        そこが喜べないようなつくりになってるとすれば、ゲームとしての(フロ2の)欠陥だと思うんですけど。

システム

  • 進め方によっては出てこなくなるシナリオが存在する。
    • ただしそれらはストーリーの本筋とは絡まない所謂キャラの掘り下げのためサブイベントのようなシナリオのためプレイできなくてもストーリーの理解には何の支障もない。
    • 時系列通りにプレイすれば全て見ることができる。

問題点

  • 全部で28種類あるロールの内、設定ミスで11種が本来の効果を発揮しておらず、また4種の実際の効果が表記と異なっている。
    その殆どが「効果対象が敵/味方全体のもの」で、プログラムミスにより機能していない、または効果自体が設定されていない。
  • 滅多に起こる事ではないが、幾つかのシナリオで特定手順を踏み、その状態でセーブすると、ゲームが進行不可能になる事がある。
    • 「潜入!アレクセイ一味」というシナリオを、二周目以降かつそれに関わる別のシナリオを特定の進め方で選択すると、
      文字通り潜入を頼む相手がいなくなりゲームが進まなくなってしまう。二周目以降だし故意でないとまず起きない現象ではあるが。
    • 「あの空に虹を」というシナリオで、同シナリオクリアに必要なクヴェルを捨ててしまうと、ゲームが進まなくなってしまう。
      とは言えクヴェルを意図的に捨てるだなんて、世界観的にもゲーム進行的にもまずあり得ない事であり、大した問題点ではない。
    • 一方で、鉱山のマップに行くシナリオが2、3ある。最初のシナリオ「鉱山にて」では行動次第*15で鉱山の落盤に巻き込まれるというゲームオーバーが存在するのだが…
      • 問題はこのカウンターが、 他のシナリオでも生きていることがある ということである。つまり「他のシナリオで数年後に訪れて巻き込まれてゲームオーバー」ということが起こり得る
    • その他、シナリオ「最後のメガリス」にて、水の将魔を倒さずに獣の将魔を倒した場合にも進行不能になるといわれている。
  • 所持金はキャラ毎に独立しているため、特定キャラの操作時に資金を入手しても、以降にそのキャラを操作する機会がなければ無駄になる。
    • チップ・アイテムは全キャラで共有なので、事前に店で使い切り、それを戦闘や処分でチップに変換する等すれば無駄は出ない。
      しかし、チップへの換金やアイテムの処分が可能な町に立ち寄れるシナリオは限られる他、戦闘でアイテム耐久度を減らすのも面倒ではある。
    • 初見では主人公が交代するタイミングが分からないため対策が取りづらい。
  • 本作には倉庫のような施設や、「物を預ける」というシステムがなく、それでいて装備は普通に使い切れる数を大幅に超えて手に入る。
    • この豊富に入手できる装備品が、ゲームを進めるに連れてじわじわとアイテム欄を圧迫していき、最終的にはかなりキツキツになる。
      先述の通り処分(=チップへの変換)はいつでもできる訳ではないので、「利用価値の低いものから捨てる」という作業に悩まされやすい。
    • 道具欄が一杯の時に一度しか入手機会のないアイテムのイベントを進めてしまうと、道具整理の確認等もなく入手できずに進んでしまう。
      これが起こる状況は少ないものの、いざ起きてしまうとその周回中は取り返しが付かない。
    • また、敵からのアイテムドロップも道具欄が一杯だと発生しなくなるので、後半の貴重な戦利品を取り逃してしまう事がある。
      「持ち物がいっぱいで入手できなかった」等のアナウンスも表示されないので、道具欄にはいつも空きを作っておきたい。
    • 一応、町の中に(一部ゲストキャラを除き)それまでプレイヤーキャラとして使用したキャラの持ち物を回収してくれる人がいる。
      これを利用し、『離脱するキャラに予めアイテムを装備させ、必要に応じて回収する』という、倉庫的な運用方法も行えなくはない。
      とは言えこれも初見では知り得ない事であり、ある程度慣れないと何かと不便に感じやすい。
  • 武具の性能や表記について
    • 前作に引き続き属性防御は「斬打突熱冷雷光状」の8種類、かつ本作でも基礎的な【基本性能・術力増強・耐性】しか表示されない。
      上記8属性は確認不可能なマスクデータであり、特定属性への強弱をゲーム内で確認する方法はない。ちなみに攻略本にすら載っていない。
      こう書くと不便に思えるだろうが、本作は計算式がやや特殊であり、「強い防具かと思ったら実は弱かった」等の事態にはあまりならない。
      基本的に数値の高いものを装備すればいい他、本作はJPも防御力に影響するため、普通にプレイする分にはさほど困る事はない。
    • 従来作は革製防具や兜が打属性攻撃に強く設定されていたが、本作は序盤で手に入る一部を除き、そのような設定にはされていない。
      本作の場合は骨製防具が射属性に、石製防具が打属性に弱く、逆に特定の物理属性に強い防具は片手で数えるほどしか存在しない。
      一方で5種類の術法属性については、多数の防具に強弱が設定されている。恐らくJPが防御力に影響するための調整だと思われる。
      ちなみにこちらも不便に感じやすいが、本作は補助術が非常に強力であり十分にフォローできるため、大して困る事ではない。
    • 金属製防具は「高い防御力を誇ると共に術阻害効果を持つ」という設定だが、正直メリットとデメリットが釣り合っているとは言い難い。
      術阻害は自身や味方からの術効果も妨げる上に術力増強*16がなく、防御力も飛び抜けて高くはないため、結局非金属製防具に劣ってしまう。
      なお、金属製武器は非金属製武器と比較して非常に高い攻撃力を持ち、長短が釣り合っているため、選択肢の一つとして利用価値はある。
  • 武器系統の一つである「斧」は、それ単体で見るとさほど感じないが、他武器と比較すると途端に性能の低さが露呈する。
    • 「術技が一つしかなく性能も低め」「市販武器が弱い」「最強武器の攻撃力が全系統中最低」「最大JP修正値がどれも低い」等の欠点の他、
      状態異常技・回避技・反撃技・範囲攻撃・全体攻撃・クヴェルの全てがない…と散々な性能であり、プレイヤーからよくネタにされている。
      一応、クヴェルはないものの耐久度無限武器自体はあるのだが、その入手条件もやたらとレア。しかもさほど高い性能でもない。
    • 強みとしては「相変わらずの斬打属性」「全編を通じてドロップでツールを入手しやすい」「技の成長率がどの系統よりも高い」等が
      あるため、決して与ダメージは他系統に劣りはしないのだが…従来と比較すると不遇感は否めない。

総評

前作とは大きく異なった内容、壮大すぎてゲーム単体では説明不足気味なシナリオや、自由度が少ないシステムなどはプレイヤーから評価が大きく分かれたため、発売当初は評価は芳しくなかった作品である。
しかし色眼鏡を外してみれば、上質なBGMに美しい水彩画グラフィック、練り込まれたバトルシステム、難しくも魅力的なストーリー等、人を引き付ける大量の特徴・魅力を持った作品である。

発売当時はクソゲー扱いされるも後に再評価され、今では立派なサガシリーズ作品の一つとして評価されるまでにのし上がった本作は、偶然にも底辺から国を掴むというギュスターヴと同じ道を歩む事となった。
ややハードルの高い面もあるが、是非手にとって遊んでもらいたい良作である。


余談

  • 本作のアルティマニアにはオリジナル小説「Beender~終末をもたらす者」が収録されている。著者は前作の裏解体新書の「8人目の主人公になりそこねた男」やFFシリーズの攻略本に掲載されていた各種ノベルと同じくベニー松山。
    • オリジナルキャラである不老不死の剣士「ベエンダー」の視点から本編のシナリオをなぞっていく。本編で語られなかった部分の多くを補完し、キャラの掘り下げも行われており、評価が高い。
    • 但し、他の小説と同様にあくまで松山氏の解釈によるオリジナルストーリーであり、キャラの性格の意図的な改変や独自解釈も多い。ファンの中には「正史」「本編で語られなかった裏設定」と言う人もいるが、作中で語られた新設定や展開は全て小説独自のものである点に注意。
  • 他にも序盤のギュスターヴの少年時代を描いた漫画、終盤のジニー編を描いた小説も発売されている。
  • 2012年頃に「64交換バグ」と呼ばれるメモリ破壊バグが発見され話題となった。
    • 前提条件として「所持アイテムを武器か防具のどちらか片方で統一し64個集める」という手順が必要なため、意図して行わない限りはまず発生せず、発売から13年もの間ずっと発覚することはなかった。バグが発見されたのも特殊な縛りプレイが発端となったものである。
    • しかし条件が単純な割に、仕組みを理解して行えば思い通りのアイテムを生成したり、シナリオフラグを書き換えたりすることが出来るという、ゲーム性を大きく壊すとんでもないバグである。内容の詳細はここでは割愛するので、気になる人は各自検索してみるべし。
    • メモリを書き換えるバグであるため、当然ながら適切に行わないとフリーズや進行不能に繋がることも多い。使用は自己責任である。