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*探偵 神宮寺三郎 未完のルポ
【たんてい じんぐうじさぶろう みかんのるぽ】
|ジャンル|アドベンチャー|CENTER:&amazon(B000069SY4)&amazon(B000069SXS)|
|対応機種|PlayStation&br;セガサターン|~|
|発売元|【PS/SS】データイースト&br;【PS普及版】メディアリンク&br;【GA】ワークジャム|~|
|開発元|データイースト|~|
|発売日|【PS/SS】1996年11月29日|~|
|定価|【PS/SS】5,800円|~|
|廉価版|【PS普及版】2000年12月7日/1,500円|~|
|配信|ゲームアーカイブス:2009年1月14日/600円|~|
|レーティング|CERO:C(15才以上対象)((ゲームアーカイブスで付与されたレーティングを記載。))|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|ご無沙汰だったハードボイルドADVの復活&br;ちょっと迷走気味|~|
|>|>|CENTER:''[[探偵 神宮寺三郎シリーズ]]''|
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#contents(fromhere)
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**概要
探偵物のコマンド選択式アドベンチャーゲーム『神宮寺三郎』シリーズの5作目。~
前作から6年の歳月を経て発売。FCから一世代飛び越えての次世代機(当時はPS/SS)対応ということで、ファン待望の一作であった。
キャラクターデザインはシリーズ恒例の寺田克也氏だが、ゲーム中のビジュアルには関与していない。
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**ストーリー
神宮寺探偵事務所に、どこかの鍵が同封された謎のエアメールが送られてくる。~
差出人は、神宮寺の飲み仲間のジャーナリスト・池上康明。意図のわからない突然の手紙に困惑する神宮寺だったが、~
後に池上が「とある新興暴力団」について調査していたと判明する。
時を同じくして、ムルソン共和国レムチャ村に滞在していた駆け出しのジャーナリスト・与野恭介は、~
日本のODAに端を発する環境破壊が引き起こした悲劇的な現実を目の当たりにしていた。~
そして与野は、ムルソン共和国と日本の間に存在するもう一つの「黒い関係」について知る事となる。
-シナリオ自体はファンによる持込みである。これが切っ掛けとなり、シリーズ復活につながった。
----
**特徴
-OPデモやゲーム中のグラフィックは、セルアニメ調の絵柄で描かれている。この路線は、シリーズ全体を通して本作のみ。
--一部のシーンにはムービーが挿入され、キャラクターボイスも使用されている。
-プレイヤーキャラクターはシナリオ進行に合わせて、「神宮寺・洋子・熊野・与野」の4人から選択する。同一時間軸の異なる視点で一つの事件を追っていくというザッピングシステムを採用しているが、それぞれの行動がそれぞれのシナリオ間でリンクしている訳ではない。
--例えば、洋子シナリオで「神宮寺がピンチを救いに来る」というシーンがあっても、その時間帯における神宮寺シナリオでそういったイベントは発生しない。
--シリーズ共通の名物コマンド「タバコすう」は、神宮寺専用のパーソナルコマンドとして続投。他の主人公を選択した場合はそれぞれ「髪さわる」「ヒゲいじる」などに変わる。
-ゲーム中に使用するコマンドは、シーンに応じて必要なものだけが取捨選択される。
--例えば、その場に自分以外誰もいないシーンでは、およそ必要性のない「話す」コマンドは画面に表示されない。
--以前から導入されていたシステムだが、今作での絞込みはかなり親切で、通常時のコマンドはだいたい3~5種類くらい。
-手帳機能が追加。それまでのストーリーの簡単なまとめが自動的に記録されていき、アイテム画面で選択すると参照できる。
-調査の過程で、カーチェイスや捜索などの簡単なミニゲームが挿入される。
-本編とは別扱いのおまけ要素として「謎の事件簿」が追加されている。
--ここにはミニ推理ADVやクイズなどのショートシナリオが収録されていて、本編よりも更にデフォルメされたミニ神宮寺とミニ洋子が司会進行を担当している。
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**評価点
-システム
--シリーズのシステムの地盤が概ね固まった。後継作品は、本作のシステムに改良を加えながら作られていく。
---コマンドの絞込み機能のおかげで、詰まる局面はほとんどなくテンポ良くストーリーが進む。
----
**賛否両論点
-シナリオ
--過去作品と比べると「社会悪」を突っ込んで描いた部分の多いシナリオだが、流れとしてはいつも通りの神宮寺である。ただ、メインである臓器移植関連のネタは、時事問題としての鮮度が若干落ちてしまっていた感があったようだ。
---シナリオについては、正規のスタッフではなくファンが書いたものであるため、致し方ないとも言える。
--一応ハッピーエンドではあるが、完全解決とは言えない形でエンディングを迎える(実際、作中での事件の実行犯が逃げおおせている。この実行犯、オープニングで人相は明かされるのだが、ゲーム中では名前だけしか出ない。しかも以降の作品に出る気配もない)。
-人物の台詞を表示する際のSEがなんだかポワポワしていて脱力する。
-おまけ要素
--謎の事件簿自体は、試みとしては新しく、内容にも特に問題はない。
--しかし本編の雰囲気が過去作と比べて様変わりしてしまった影響で、「キャラ崩壊」などといったマイナスイメージで語られてしまいがちだった。
----
**問題点
-グラフィック
--アニメ調グラフィックはファンにとって相当不評だったらしく、本作以降では採用されていない。これ以外にも、捜査の要所で挿入されるミニゲームの出来が稚拙すぎたためか、以降のシリーズ作品ではもう少し本格的なものに差し替わるか、あるいはミニゲームで表現する事自体が取りやめになっている。
---ムービーやミニゲーム中に当時の流行である3DCGを用いたのも、「未熟な技術を安易に取り入れたよう」と批判された。
#region(画像)
|&image(Jrupo_02.jpg,width=220)出来が悪いわけではない。「合ってなかった」だけ|&image(Jrupo_03.jpg,width=220)しかし、尾行シーンのミニゲームの出来は本気で悪い|
#endregion
--ちなみにこの尾行ゲーム、ゲーム開始すぐに挿入されるものは、尾行対象がいないただの「散歩」であり、十字ボタンの上を押し続けるだけで終わる。~
その次に挿入されるものは画像の人物2人を追う形式ではあるが、後ろを振り返りもしないのでやはり十字ボタンの上を押し続けるだけで終わる。
-手帳機能は便利だが、ページが整理されていない。
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**総評
神宮寺シリーズに新しい風を吹き込もうとした意欲は感じられるが、それと引き換えに失ってしまったものもまた多く、評価は振るわなかった。~
特にグラフィック全般やミニゲームについては、本作以降のシリーズ作品が同じ路線を踏襲していない。~
そのことを考えても、シリーズを再出発するにあたって取るべき方向性を見誤ったと言っていいだろう。~
次回作『[[夢の終わりに>探偵 神宮寺三郎 夢の終わりに]]』は、ゲームシステムの骨組みや物語の見せ方などは本作と大きく変わっていない。~
だが、グラフィックや細部の作り込みに「神宮寺らしさ」を反映させる事で、高い評価を獲得した。~
本作はその成功例の陰に隠れた、世代交代期のほろ苦い思い出である。
*探偵 神宮寺三郎 未完のルポ
【たんてい じんぐうじさぶろう みかんのるぽ】
|ジャンル|アドベンチャー|CENTER:&amazon(B000069SY4)&amazon(B000069SXS)|
|対応機種|PlayStation&br;セガサターン|~|
|発売元|【PS/SS】データイースト&br;【PS普及版】メディアリンク&br;【GA】ワークジャム|~|
|開発元|データイースト|~|
|発売日|【PS/SS】1996年11月29日|~|
|定価|【PS/SS】5,800円|~|
|廉価版|【PS普及版】2000年12月7日/1,500円|~|
|配信|ゲームアーカイブス:2009年1月14日/600円|~|
|レーティング|CERO:C(15才以上対象)((ゲームアーカイブスで付与されたレーティングを記載。))|~|
|判定|なし|~|
|ポイント|ご無沙汰だったハードボイルドADVの復活&br;ちょっと迷走気味|~|
|>|>|CENTER:''[[探偵 神宮寺三郎シリーズ]]''|
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#contents(fromhere)
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**概要
探偵物のコマンド選択式アドベンチャーゲーム『神宮寺三郎』シリーズの5作目。~
前作から6年の歳月を経て発売。FCから一世代飛び越えての次世代機(当時はPS/SS)対応ということで、ファン待望の一作であった。
キャラクターデザインはシリーズ恒例の寺田克也氏だが、ゲーム中のビジュアルには関与していない。
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**ストーリー
神宮寺探偵事務所に、どこかの鍵が同封された謎のエアメールが送られてくる。~
差出人は、神宮寺の飲み仲間のジャーナリスト・池上康明。意図のわからない突然の手紙に困惑する神宮寺だったが、~
後に池上が「とある新興暴力団」について調査していたと判明する。
時を同じくして、ムルソン共和国レムチャ村に滞在していた駆け出しのジャーナリスト・与野恭介は、~
日本のODAに端を発する環境破壊が引き起こした悲劇的な現実を目の当たりにしていた。~
そして与野は、ムルソン共和国と日本の間に存在するもう一つの「黒い関係」について知る事となる。
-シナリオ自体はファンによる持込みである。これが切っ掛けとなり、シリーズ復活につながった。
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**特徴
-OPデモやゲーム中のグラフィックは、セルアニメ調の絵柄で描かれている。この路線は、シリーズ全体を通して本作のみ。
--一部のシーンにはムービーが挿入され、キャラクターボイスも使用されている。
-プレイヤーキャラクターはシナリオ進行に合わせて、「神宮寺・洋子・熊野・与野」の4人から選択する。同一時間軸の異なる視点で一つの事件を追っていくというザッピングシステムを採用しているが、それぞれの行動がそれぞれのシナリオ間でリンクしている訳ではない。
--例えば、洋子シナリオで「神宮寺がピンチを救いに来る」というシーンがあっても、その時間帯における神宮寺シナリオでそういったイベントは発生しない。
--シリーズ共通の名物コマンド「タバコすう」は、神宮寺専用のパーソナルコマンドとして続投。他の主人公を選択した場合はそれぞれ「髪さわる」「ヒゲいじる」などに変わる。
-ゲーム中に使用するコマンドは、シーンに応じて必要なものだけが取捨選択される。
--例えば、その場に自分以外誰もいないシーンでは、およそ必要性のない「話す」コマンドは画面に表示されない。
--以前から導入されていたシステムだが、今作での絞込みはかなり親切で、通常時のコマンドはだいたい3~5種類くらい。
-手帳機能が追加。それまでのストーリーの簡単なまとめが自動的に記録されていき、アイテム画面で選択すると参照できる。
-調査の過程で、カーチェイスや捜索などの簡単なミニゲームが挿入される。
-本編とは別扱いのおまけ要素として「謎の事件簿」が追加されている。
--ここにはミニ推理ADVやクイズなどのショートシナリオが収録されていて、本編よりも更にデフォルメされたミニ神宮寺とミニ洋子が司会進行を担当している。
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**評価点
-システム
--シリーズのシステムの地盤が概ね固まった。後継作品は、本作のシステムに改良を加えながら作られていく。
---コマンドの絞込み機能のおかげで、詰まる局面はほとんどなくテンポ良くストーリーが進む。
----
**賛否両論点
-シナリオ
--過去作品と比べると「社会悪」を突っ込んで描いた部分の多いシナリオだが、流れとしてはいつも通りの神宮寺である。ただ、メインである臓器移植関連のネタは、時事問題としての鮮度が若干落ちてしまっていた感があったようだ。
---シナリオについては、正規のスタッフではなくファンが書いたものであるため、致し方ないとも言える。
--一応ハッピーエンドではあるが、完全解決とは言えない形でエンディングを迎える(実際、作中での事件の実行犯が逃げおおせている。この実行犯、オープニングで人相は明かされるのだが、ゲーム中では名前だけしか出ない。しかも以降の作品に出る気配もない)。
-人物の台詞を表示する際のSEがなんだかポワポワしていて脱力する。
-おまけ要素
--謎の事件簿自体は、試みとしては新しく、内容にも特に問題はない。
--しかし本編の雰囲気が過去作と比べて様変わりしてしまった影響で、「キャラ崩壊」などといったマイナスイメージで語られてしまいがちだった。
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**問題点
-グラフィック
--アニメ調グラフィックはファンにとって相当不評だったらしく、本作以降では採用されていない。これ以外にも、捜査の要所で挿入されるミニゲームの出来が稚拙すぎたためか、以降のシリーズ作品ではもう少し本格的なものに差し替わるか、あるいはミニゲームで表現する事自体が取りやめになっている。
---ムービーやミニゲーム中に当時の流行である3DCGを用いたのも、「未熟な技術を安易に取り入れたよう」と批判された。
#region(画像)
|&image(Jrupo_02.jpg,width=220)出来が悪いわけではない。「合ってなかった」だけ|&image(Jrupo_03.jpg,width=220)しかし、尾行シーンのミニゲームの出来は本気で悪い|
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--ちなみにこの尾行ゲーム、ゲーム開始すぐに挿入されるものは、尾行対象がいないただの「散歩」であり、十字ボタンの上を押し続けるだけで終わる。~
その次に挿入されるものは画像の人物2人を追う形式ではあるが、後ろを振り返りもしないのでやはり十字ボタンの上を押し続けるだけで終わる。
-手帳機能は便利だが、ページが整理されていない。
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**総評
神宮寺シリーズに新しい風を吹き込もうとした意欲は感じられるが、それと引き換えに失ってしまったものもまた多く、評価は振るわなかった。~
特にグラフィック全般やミニゲームについては、本作以降のシリーズ作品が同じ路線を踏襲していない。~
そのことを考えても、シリーズを再出発するにあたって取るべき方向性を見誤ったと言っていいだろう。~
次回作『[[夢の終わりに>探偵 神宮寺三郎 夢の終わりに]]』は、ゲームシステムの骨組みや物語の見せ方などは本作と大きく変わっていない。~
だが、グラフィックや細部の作り込みに「神宮寺らしさ」を反映させる事で、高い評価を獲得した。~
本作はその成功例の陰に隠れた、世代交代期のほろ苦い思い出である。