バトルファンタジア

【ばとるふぁんたじあ】

ジャンル 対戦型格闘ゲーム
対応機種 アーケード
使用基板 Taito Type X2
販売元 タイトー
開発元 アークシステムワークス
稼働開始日 2007年4月26日
判定 なし
ポイント 2.5次元による新時代の格ゲー演出
高額な基板価格が仇に


概要

ヒロイックファンタジーを下地にした幻想的な世界観をもつ新規タイトルの格闘ゲーム。
開発はGUILTY GEARシリーズでお馴染みのアークシステムワークス。
従来の2D格闘ゲームのゲーム性を保ちつつ、3次元コンピュータグラフィックスで製作されており、海外における技術的評価も高い。


特徴

  • 和製ロールプレイングゲーム風の温かみのあるファンタジー世界観が特徴。
    • 体力はHP・パワーゲージはMPゲージとして示される、数字でのダメージ表記がある、各キャラにRPG風の装備品やレベルが設定されている、などなど。
      • ただし、あまりシステムとしては生かされていない。例えば、HPは低いキャラだと2000、多いキャラだと6000と差が激しいが、最大HP量に比例してダメージは増減する。一応数字どおりHPの高いキャラは体力も高いのではあるが。
  • グラフィックはHDによる3Dだが、イラストを意識したようなシェーディングがかけられている。
    • カメラの使い方の他にも、「女性キャラに対して投げがスカートめくりになる」といった3Dならではの演出も個性的。
  • アークシステムワークスといえば代表作『GUILTY GEAR XX』を想起されるが、本作は複雑なシステムが無いシンプルな格闘ゲームとなっている。
  • 特徴的なのが専用の5ボタン目を使った「ガチ」というシステム。
    • 有り体に言えば『ストリートファイターIII』のブロッキング。専用のボタンを使う点では『月華の剣士』にも近い。
      • この他にも通常投げの入力が弱パンチ+弱キックの同時押しだったりと『ストIII』を参考にした点が見られる。
    • レバーを前に倒してガチを入力すると「ガチドライブ」という相手を弾き返す専用の攻撃が発生する。
  • また、「ヒートアップ」という任意で一定時間パワーアップできるシステムがある。
    • ヴァンパイアセイヴァー』のダークフォースのように各キャラ個性的な内容。中でもワトソンのヒートアップは研究により強力なコンボが発見され、『GGXX』または『北斗の拳』のアークとしての片鱗が垣間見える奥深さがある。

キャラクター

  • キャラクターは11人+隠しキャラ1人。全体的に線が柔らかく、ほのぼのとして可愛らしさがあるデザイン。
    • 声優陣はキャリアの浅い新人や、実力は確かだが有名ではない中堅が揃う。中には石渡太輔氏の名前も…。
      • 有名な声優だと”パーマン一号”三輪勝恵氏や”ブタゴリラ”龍田直樹氏といった名前が。恐らくそういった世界観を狙ったのだろう。
+ キャラクター一覧
  • ウルス(CV:安西英美)
    • 主人公。四英雄の一人「白銀の騎士ダイナ」の息子である17歳の少年。世界を救うために旅を続けている。
    • 武器はチェンソーじみた改造武器「バシリスク」。
    • 途中で消える飛び道具、対空技、突進技2種と、ソル・バッドガイを彷彿とさせる必殺技を所持している。
      • 性能はかなり異なる。
    • ヒートアップは必殺技の強化。
    • クラスは「闘士(ウォリアー)」。
  • マルコ(CV:岩崎恵美子*1、今野宏美(ストーリーモード))
    • ウルスの弟である9歳の少年。ちびドラゴン「チャーシュー」と共に家を飛び出した。
    • 武器は父親の剣「ダイナソード」。
    • 飛び道具、対空技、突進技と揃ったオーソドックスな性能。
    • ヒートアップするとチャーシューが援護してくれる。
    • クラスは「戦士(ファイター)」。
  • オリヴィア(CV:大河内雅子)
    • 薔薇の小国「ローゼリア」の王女。17歳。
    • 武器は大旗「ハートオブエタニティ」。リーチは長め。
    • ヒートアップは鳩による追加攻撃付与。セットプレーが強力に。
    • クラスは「プリンセス」。
  • アシュレー(CV:三浦祥朗)
    • 元ローゼリア王族近衛兵。オリヴィアの守護者。21歳。
    • 武器はなし、装備は服のみと軽装。相手をかく乱する戦い方が得意。
    • ヒートアップは突進技の強化と2段ジャンプ。
    • クラスは「元ロイヤルガード」。
  • セドリック(CV:阪口大助)
    • 王立僧侶学校に在籍するエリート学生。マルコに巻き込まれて旅に出る。16歳。
    • 武器は ドロップキック モーニングスター。
    • 隙の少ない飛び道具と無敵対空を持つ溜めキャラ。某アメリカ軍人を彷彿とさせる。
    • ヒートアップは必殺技の強化。
    • クラスは「王立神学校学生(アコライト)」。
  • ワトソン(CV:三輪勝恵)
    • 四英雄の一人。魔法王国の王立天文台長にして「預言者」。年齢不詳。
    • 杖と大きい帽子とケープを装備したうさぎ*2。かわいい。
    • 特定の技を当てることで技性能を上げられる固有システム「レベルアップ」を持つ。
    • ヒートアップは必殺技の強化と詠唱コマンド追加。詠唱を3回成功させることで強力な必殺技を放てる。
    • クラスは「王位天文台長(マスターウィザード)」。
  • こより(CV:庄司宇芽香)
    • 冒険者の店「小寄亭」の看板猫娘。19歳くらい。
    • 動きが早く、さらに全キャラで唯一空中ダッシュ可能。
    • ヒートアップ中はさらに2段ジャンプとチェーンコンボが追加される。
    • クラスは「看板娘(キャットウーマン)」。
  • フリード(CV:石渡太輔、山本圭一郎(ストーリーモード))
    • 飛行艇を操るキャプテン。27歳。
    • CVをGUILTY GEARシリーズでお馴染みの石渡太輔氏が担当している。
    • 武器は右手のフック。某ボクサーばりの突進戦法が得意。
    • ヒートアップは分身付与。必殺技を撃ったときに少し遅れて分身が同じ技を繰り出す。
    • クラスは「キャプテン」。
  • フェイス(CV:藤本たかひろ)
    • 復讐のガンマン。恋人の仇を追い求め、孤独な旅を続ける。30台前半に見える。
    • シリアスなストーリーに反して外見も動きも色物なキャラクター。
    • 武器は二丁拳銃。にもかかわらず得意な間合いは近接戦。
    • ヒートアップは射撃。遠距離攻撃が可能になる。
      • ちなみにフェイスの遠距離攻撃はヒートアップ中とゲージ技のみ。
    • クラスは「復讐のガンマン(ガンスリンガー)」。
  • ドンバルブ(CV:龍田直樹)
    • 四英雄の一人。今はなきドワーフ帝国の王。55歳くらい。
    • 投げキャラ。鈍重だが技のリーチは長く、投げの威力も強力。
    • ヒートアップはスーパーアーマーと投げ技追加。
    • クラスは「ドワーフ王国元王様(フォーマーキング)」。
  • デスブリンガー(CV:今村直樹)
    • 「黒き前兆」と噂される暗黒の騎士。「終焉をもたらす者」を捜し求めている。
    • 武器は巨大な大剣「アビスブレイド」。
    • リーチ・攻撃力・守備力に優れるが、技が大振りでゲージの使い勝手が悪い。
    • ヒートアップは専用技の解禁。効果時間中に剣の攻撃を3回当てることで発動する。
    • クラスは「闇の眷属(ダークミニオン)」。
  • オディール&ドクロッド(CV:大河内雅子(オディール)、家弓拓郎*3(ドクロッド)、根本幸多(ストーリーモード))
    • 2007年6月に開放された隠しキャラ。
    • オリヴィアそっくりな魔人形「オディール」と、 やたら2ch語を喋る 闇の杓杖「ドクロッド」のコンビ。
    • 必殺技は「回る」モーションの技が多く、技名もバレエ由来。
    • ヒートアップは必殺技の強化と2段ジャンプ。
    • クラスは「闇の眷属(ダークミニオン)」。
  • ジ・エンド オブ デスブリンガー(CV:今村直樹)
    • ラスボス。CPU専用キャラ。

評価点

  • 革新的なビジュアル。
    • 当時の最新基板であるTaito Type X2を使用し、美麗なグラフィックを実現している。
    • さらに、3Dポリゴンで作成されたキャラを2Dゲームに落とし込む、いわゆる「2.5次元」を採用。 3Dを生かした迫力ある演出は業界内でも高く評価された。
      • 後の『ストリートファイターIV』にも影響を与えている(英文ソース)。
      • また、アークシステムワークスが後年に発表した『GUILTY GEAR Xrd』のグラフィックが高い評価を受けたのも、本作などでの下積みがあってのものだと再評価する声も見られている。
      • それまでドット絵キャラで使われていた、右向き・左向きのキャラ画像を左右反転で済ませる技法を初めて3Dキャラに採用したのも本作だとされている。
  • 初心者への敷居の低さ。
    • システムはシンプルにまとまっており、コンボも一部キャラを除いて短いため、比較的覚えることは少なめ。
      • キャラ毎に個性的な能力があるヒートアップ等、やりこみ要素は存在する。
    • ガチシステムの存在もあり、立ち合い・読み合いが重視されるゲーム性となっている。

問題点

  • 高額な基板価格。
    • アーケード用の基板は非常に値段が高く、オペレーターに導入をためらわせた。
      • 本作は2台セットで50万円もかかる。ちなみに、GGXXACは2台セットで20万円以下。
      • せっかくの完全オリジナル新作にもかかわらずプレイできる環境は少なく、対戦が盛んな場所となるとさらに限られてしまった。
  • 強キャラ周りに問題点が多い。
    • セドリック
      • ボタンによる溜めコマンド(いわゆるターンパンチ)の「St.ドロップキック」という必殺技が非常に強力。約8秒ほど溜めてから使うと、威力高い・発生早い・突進速度速い・ガードされて隙無し・ヒット時追撃可・通常投げなどから確定などやりたい放題の性能。
    • ドン・バルブ
      • このゲームでは「ジャンプ移行中に投げ無敵が無い」という、格ゲーのセオリーを覆すような仕様になっている。そのため、起き上がりに必殺投げ(いわゆるスクリュー)を完璧なタイミングで重ねると、投げ抜けも不可能なので確定ヒットしてしまう。
    • アシュレー
      • 稼働して早々に永久コンボが発覚し、動画サイトなどに情報が拡散した。
      • 上段ガチドライブ→ヒートアップ発動→浮いた相手にジャンプ攻撃→立Cで相手をお手玉 という割と簡単にできてしまうお手軽コンボであったことも問題に。
    • なおこれらの問題点は家庭用に移植される際に修正され、PS3/360及び現在稼働中のNESICA×Liveの対戦は良好なバランスで楽しむことができる*4
  • ラスボス戦の仕様。
    • ラスボスであるジ・エンド オブ デスブリンガーはHP32765、被ダメージ1桁という化け物じみた能力を持っており、真っ向勝負ではほぼ撃破不可能。
    • ゲージを消費してヒートアップすることでまともにダメージが通るようになるがノーヒントである。
  • 説明不足なストーリー。
    • 王道RPGのような世界観が一つの特徴である本作だが、アーケード版だけではストーリーも設定を匂わす程度でいまいち理解できない部分が多く、キャラクターや世界観の魅力をあまり引き出せていない。
      • 家庭用移植の際にストーリーモードが追加されたことにより、かなりの部分にフォローが入っている。

総評

総合的に見ると格ゲーとしての出来は十分で、それ相応に楽しめる一作と言っていい。
グラフィックなど作り込みも確かで、少数ながら現在も根強いファンも存在している。

しかしながら、これまでアークシステムワークスが築き上げてきた『GUILTY GEAR』というブランドに対して本作は完全新作である事と、2.5次元による演出のために高性能・高価な基板を採用したことによる出回りの悪さが目立つ。
また、幅広いユーザー層を狙ってデザインされたであろうゲームシステムと、対象年齢が低めで好みの分かれるヒロイックファンタジー的世界観との相性も疑問視される。
高い技術力と気合を入れた作り込みが裏目に出たうえ、企画段階からの微妙なズレゆえに格ゲーファンを振り向かせるには至らなかったという、とことん惜しい作品である。


余談

  • 2008年5月29日にPS3とXbox 360への移植版が発売。ストーリーモードとオンライン対戦機能が追加されている。
    • 追加されたストーリーモードはなかなか凝っており、バトル前に非常に長い掛け合いがフルボイスで行われる。さらに負けた場合にもこれまた長い掛け合いがフルボイスで行われる。
    • 全キャラクターに表・裏の2つのストーリーがあり、特定のキャラ相手の時に特定の条件を満たすことで裏ストーリーに分岐する。
  • 2011年7月6日にNESiCA×Liveで配信された。過去のアーケード版そのままではなく、家庭用版のバランス調整が反映されている(ストーリーモード等は未収録)。
  • 2015年7月7日には、SteamのDL専用ソフトとして『Battle Fantasia -Revised Edition-』が発売。
    • ゲームバランスはアーケード最終版(NESiCAxLive版)をベースに、家庭用の追加モードも全て収録されている。オリジナルサウンドトラックも無料DLCとして配信。
    • 配信当初は不具合がいくつか存在したが、2015年11月25日の「TK patch 1.01」アップデートで修正され劇的に改善されている。

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最終更新:2024年03月29日 11:34

*1 本作のディレクター・キャラクターデザインを担当した開発スタッフ。

*2 正確にはうさぎのような種族「フォルモサ族」。

*3 本作の開発スタッフの一人。後年『GUILTY GEAR Xrd』シリーズのメインプログラマーを務める。

*4 家庭用版では、修正前のバージョンの対戦も可能。