SIMPLE1500シリーズ Vol.31 THE サウンドノベル
【しんぷるせんごひゃくしりーず ぼりゅーむさんじゅういち ざ さうんどのべる】
ジャンル
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サウンドノベル
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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D3パブリッシャー
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開発元
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オー・パーツ
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発売日
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2000年7月13日
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定価
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1,500円(税別)
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象) |
配信
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ゲームアーカイブス:2010年3月10日/300円
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判定
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なし
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ポイント
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無難な出来ではあるがボリュームは少なめ 『PANDORA MAX』の陰
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SIMPLE1500シリーズ
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概要
D3パブリッシャーによる廉価版ゲームシリーズ『SIMPLE1500シリーズ』の1作。
収録シナリオには「
闇
き森の果て」というタイトルが付いている。
ストーリー
主人公・高橋誠一(名前変更可)は、ガールフレンドの吉崎結衣(変更可)を迎えに行く為、彼女が家庭教師をしているという山深くの元条邸へ車を走らせていた。
途中で同じく元条邸へ行くという横柄な関西弁の社長とその秘書、今日から元条邸で働くという新人メイドを同乗させて巨大な屋敷である元条邸に到着した。
だが、主人公の乗っていた車は不運にも館のメイドが野犬を追いかけて撃ったライフルの銃弾でパンクさせられてしまい、やむなく主人公とヒロインは車の修理を待って屋敷に泊まることとなる。
しかし、その夜から屋敷では奇怪な出来事が次々と発生する…。
登場人物
+
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長いので折りたたみ
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高橋誠一(名前変更可)
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本作の主人公。久しぶりにヒロインから手紙が届き、彼女を迎えに行くため元条邸を訪れた。
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吉崎結衣(名前変更可)
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本作のヒロインで、主人公の友人。半年前から元条邸の家庭教師として住み込みで働いている。
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権堂(ごんどう)
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関西弁の中年男性。会社社長であり、元条邸を売ろうと企む三輪隆司に招かれ、下見のために秘書と共に館にやってきた。館を買い取って新たにテーマパークのシンボルにしたい模様。
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長江里恵(ながえ りえ)
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権堂の有能な秘書。凛とした顔立ちでやや派手気味だがプロモーションの良い美女。
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堀切しのぶ(ほりきり しのぶ)
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家政婦協会から派遣されてきた新人メイド。高校生ぐらいの見た目でツインテールの明るい少女。
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元条真彩(げんじょう まあや)
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元条家の双子の姉。快活で勝気な性格の美少女。外見は彩乃とそっくりだが、性格は真逆。
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元条彩乃(げんじょう あやの)
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元条家の双子の妹。常に曇りがちな表情で人見知りな性格だが、芯は結構強い。
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元条朔子(げんじょう さくこ)
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元条家当主である老婆。双子の祖母。厳格な性格で、家柄や体裁を重んじている。
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三輪隆司(みわ たかし)
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双子の叔父。双子の亡くなった父親の弟であり、元条邸に居着いている居候。金にがめつい性格で、双子からは嫌われている。朔子に無断で権堂に館を売り飛ばす話を進めようとしている。
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榊(さかき)
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元条邸の執事を務める初老の男性。雑務や料理など館のあらゆる事をこな優秀な人物で、元条家の人間に忠実に尽くす。
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千晶(ちあき)
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元条邸に仕えるメイド。常に無表情で感情を表に出さない冷静な人物。長身で、女性にしてはかなり力持ち。
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元条香穂子(げんじょう かほこ)
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双子の母。夫の隆征(たかゆき)を亡くして心を病み、部屋に閉じこもっているらしい。
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特徴
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オーソドックスな横書きのサウンドノベル。
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シナリオはホラー要素も若干入るが、基本的にミステリーに分類されるシリアスなもの。
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効果音としての叫び声を除いてボイスは無し。
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一部に展開の大きく変わる選択肢があるため、一本道ストーリーではない。
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主に、館に秘められた謎に巻き込まれるオカルト系ルートと、館で殺人事件が起こるサスペンス系ルートに大別される。
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ただしプレイヤー自身が事件の謎を解明する等の要素は特になく、選択肢による行動で館を探索し、それに応じて成り行きに身を任せるスタンスである。
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オカルトルートについても、明確に霊的な存在が出てくるのは一部のバッドエンドのみで、基本的にはほぼ人間の手による犯行である。
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人物のグラフィックは、『かまいたちの夜』的なフォーマットを用いたシルエット描写となっている。
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性別で色が塗り分けられており、男性キャラは青いシルエット、女性キャラは赤いシルエットで表示される。
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セーブはどこでも可能で、セーブ容量は1ブロック1個。
評価点
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オカルトルート、サスペンスルート共にそれぞれのテキスト量はそれなりにある。
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シナリオも特に破綻しておらず、緊迫した雰囲気を保った終始シリアスなものである。
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それぞれの解決ベストエンディングも、一応はハッピーな終わり方となりつつもホラー風味な解釈もできる余韻を残したものとなっている。
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主人公とヒロインの名前は苗字と名前をそれぞれ分けてフルネームで自由に付けられる。
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登場人物の台詞を判別しやすい。
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主人公は地の文と同じ白文字、他の男性キャラは青文字、女性キャラはピンクの文字で塗り分けられている。
問題点
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バックログはあるもののフローチャートやテキストスキップ機能はなくユーザビリティに乏しい。
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表示速度を最高の「激速」に設定すれば1ページ分を一度に表示できるので若干楽にはなる。
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選択肢の数があまり多くない。ボリュームも、分岐を全て見ればある程度は補完されるが、結局メインシナリオは2本のみであるため物足りない。
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息抜き要素・隠し要素やオマケ機能などもなく、少々寂しい。システムオプションは表示速度と振動のみ。
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エンディングはバッド的なものも含め全11種類(オカルト7種、サスペンス4種)とやや少なめで、たとえ早期に事件が起こらないまま終了しようが、主人公が死ぬ明らかなバッドエンドであろうが、いずれも共通のスタッフロールが強制的に流れる。しかもこれは飛ばせず、最後に「終」の文字が出たらそのままタイトル画面に戻されてしまう。
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クリアデータは保存してくれない為、セーブデータは要するに途中までのしおりの役目でしか無い。当然、全てのエンディングを見たところで新たな隠しシナリオなどが出現するわけでもないのでモチベーションに欠ける。
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サスペンスルートでは事件を解決する終わり方が2種類あるのだが、その一方は大団円と見せかけた流れから唐突にバッドエンドを思わせる急展開となっている。
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該当の分岐条件はかなり序盤に存在するため、因果関係が分かりづらい。また、もう一方の解決EDも厳密にはハッピーと言えない内容である。
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CGや音楽のパターンも少ないことから、演出性についてもあまり満足いくものではない。
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主人公は年齢・職業など設定らしい設定が一切語られない為、要するにどういう人物なのかがさっぱりわからない。
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せいぜい「ヒロインとは付き合っていないが好意を抱いていた」「車を運転できる年齢だ」という程度。そこまでシンプルにしなくても…。
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展開によって迷路に挑むことがあるのだが…。
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移動には「北に行く」「東に行く」「西に行く」「南に行く」等の選択肢が出るが、選択肢を見れば分かる通り東西南北の指定であり、進行方向を向くのではなく常に北を向いている状態で移動することになる。
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しかも似たような地形(北と南しか行けない通路)では、場所が違うにもかかわらず「北には道が続いている」「南にも道が続いている」等のそっけない内容で全く同じ背景画像・文章と選択肢になる為、マッピングするか手元にマップがないと現在どこをどう進んでいるのかが分かりづらい。
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ハッピーエンドに向かうにはこの迷路の踏破が必須となっているのだが、出口までの距離がかなり離れておりゲーム中に道順などのヒントも一切ない為、自力で攻略する場合は地形をメモしてひたすら進むしか無い。
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特定ポイントに迷い込むとその付近から二度と脱出できなくなってしまう無限ループの罠がある。また、東西南北が誤植でおかしくなっている箇所もある。
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なお、迷路を長い間さまよっていると酸欠状態で倒れ、そのままバッドエンディングになる(上記の11種類のEDの1つ)。上記の無限ループポイントに迷い込んだ場合は実質的にこのエンディングが確定する…のだが、酸欠までの選択肢の回数にはかなりの余裕があるため、このEDを見たい場合はひたすら連打するだけの作業となる。
総評
いかにも初期のSIMPLEシリーズ、この一言だろう。
話自体は悪くないものの、実質的にはメインシナリオが2本しかない為、ボリュームは少ない。
とはいえ、初期の他のラインナップは『THE 将棋』『THE リバーシ』等、「そのゲームが出来ればそれで良い」という作品ばかりだった。
その為、シナリオや設定が気に入るかどうかで評価が分かれるであろう本作は、他と同列には語れないのだが…。
余談
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そんな話題にも存在感にも乏しい本作だが、意外な出生の秘密がある。実は本作は、かの『学校であった怖い話』シリーズに関わったスタッフが作ったものである。
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シナリオは『晦 つきこもり』『鬼神降臨伝ONI』『ONI5 隠忍を継ぐもの』のメインライターである早川奈津子氏。スタッフロールには、『学怖』『晦』の開発スタッフと同じ名前が幾つも並んでいる。
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スペシャルサンクスには、かの「風間の中の人」も。さらに、悲鳴のSEが『晦』のそれとまったく同じ。
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この前年に、パンドラボックス社長である飯島健男氏の言い出した『PANDORA MAXシリーズ』に反対して同社を退社したスタッフが開発したらしい。
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しかしあちらは良くも悪くも話題にはなったのに対し、こちらはそもそも話題にならなかった。開発スタッフの心境はいかばかりであっただろうか…。
最終更新:2022年08月22日 16:00