移植元の『ZONE OF THE ENDERS』と『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』に起因する評価点・問題点は当該記事を参照。
PS4/SteamのVR+4K対応版『M∀RS』についても『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』の記事へ記載。
ZONE OF THE ENDERS HD EDITION
【ぞーん おぶ えんだーず えいちでぃー えでぃしょん】※THEは発音しない
ジャンル
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ハイスピードロボットアクション
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対応機種
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プレイステーション3 Xbox 360
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発売元
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コナミデジタルエンタテインメント
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開発元
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コナミデジタルエンタテインメント (小島プロダクション) High Voltage Software
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開発元(廉価版)
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ヘキサドライブ
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発売日
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2012年10月25日 PlayStation 3 the Best版 / DL版価格改定:2013年7月25日
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定価
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【PS3/360通常版】 通常版:3,980円、限定版:8,980円 コナミスタイル特別版:9,980円 【PS3廉価版】2,480円
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配信
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【PS3】3,480円 → 1,980円 【360】3,600円(2,440マイクロソフトポイント) 【PS3単品版】1,000円×2本
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レーティング
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【PS3初版のみ】CERO:D(17才以上対象)(後述) 【PS3廉価版/360】CERO:C(15才以上対象)
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判定
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劣化ゲー
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判定(パッチ2.00)
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改善
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良作
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ポイント
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「最悪のHD移植」と「最高のパッチ」という両極端な作品
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ZONE OF THE ENDERSシリーズ ZONE OF THE ENDERS / Z.O.E 2173 TESTAMENT / ANUBIS ZONE OF THE ENDERS ZONE OF THE ENDERS HD EDITION / ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS
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概要
『メタルギア』シリーズを手がける「小島プロダクション」スタッフのPS2初進出作『ZONE OF THE ENDERS』と、その続編として「隠れた名作」として評価されていた『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』をHDリマスターした移植版。
720p・60fps対応を謳っていたのが、発売当初の出来は酷いものであった。
PS3では廉価版の発売と共に『ANUBIS』をパッチにより大幅に改善し、ほぼ文句なしの良作に仕立て直された。
問題点
後に改善された問題点
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『ANUBIS』における処理落ち
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ほとんどの場面で処理落ちが発生しており、PS3版は平均20~30fps、360版でさえ平均40fpsという有様。
そもそもPS2版の時点で60fps対応であった。
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ダッシュ、ブレードコンボなどの基本操作でさえ処理落ちする。
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オブジェクト数を減らすようにカメラを動かしたり、ロックオンを無力化・自機を透明化させるサブウェポン「デコイ」の使用などで、ようやく30fps超過となる。
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つまり自機テクスチャさえもが処理落ちの一因であり、技術力・テストプレイの不足が否めない。
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名実共に「ハイスピードロボットアクション」として評価されていた『Z.O.E』シリーズの移植には、致命的な問題点である。
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単なるフレームレート低下ではなく処理落ちのため、ボタン入力がズレる、タイムアタックで時間が歪むなどの弊害も起こる。
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『Z.O.E』でも大型ボス戦などで処理落ちが見られるものの、『ANUBIS』ほどではない。後述する改善評価点から省みると、グラフィック描写エンジンの違いに起因するものと考えるのが妥当か。
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『ANUBIS』の一部テクスチャ・エフェクトの劣化
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PS2と比べ色鮮やかでなくなっている、発色が変わってしまっている箇所がある。
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ベタ塗り的な建造物に縞模様が出ているだけでもマズいが、画面を赤く染めるアヌビスのバーストショット、空間を歪めて出現するベクターキャノンなど、見せ場にも影響が出ている。
改善後も変化なし
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非HD化ムービー
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『Z.O.E』のムービーのレンダリング(描画処理/略称レンダ)はリアルタイムレンダでなくプリレンダが多く、人間も含め全編3Dとなっているのだが、ムービーはHD化されていない。
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プリレンダは「動画データの再生」(事前収録)、リアルタイムレンダは「ゲーム内3Dモデルをそのまま動かす演出」で大きく異なる。
(PS2時代では)諸事情からプリレンダの方が多かったが、リアルタイムレンダはゲーム本編から繋ぎ目なくイベントが開始・終了され、テンポを損なわない利点がある。
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『Z.O.E』はプリレンダの方が多いぐらいの比率、それもPS2基準のゲーム本編で作られたムービーなので、HD版のゲーム本編に全く追いついておらずムービーだけ極端に画質が下がる。
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ロボット出撃はリアルタイム、コクピット内の会話~カメラが遠景に引いてロボットが映し出される演出はプリレンダ、のようにシーンの途中で画質が変わってしまうことも。
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また、当時の3DCGの技術的問題や流行から、画風・表現としても今見るには厳しい。人肌や衣服まで、作り物のような・ロボットのようなテカテカとした光沢を持っている。
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しかし、プリレンダムービーをHD化する場合、モデルの高画質化・モーションデータの変換ないし再制作……ほぼイチからの作り直しに等しい作業量が必要なので、致し方ない点もある。
『デビルメイクライ HDコレクション』等、他社HD化タイトルでも同様の問題点を抱えているものは少なくない。
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『ANUBIS』のムービーは2Dのアニメだが、同じくHD化なし。
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また、本編の会話シーンでのイラストと色合いが異なる。特にケン・マリネリスについて顕著。
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とは言っても、アニメを作り直すのは『Z.O.E』の人体3Dを作り直す以上に無茶な話である。『Z.O.E』ほど違和感があるわけでもない。
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新たに作られた『Z.O.E』『ANUBIS』選択前のOPムービーには、ゲーム本編のプレイ映像と、ゲーム本編でリアルタイムレンダリングになるムービーが挟まれているが、それらはHDで作り直されている。
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電子説明書の扱いづらさ
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PS3準拠であれば、プレイ中に読むことができるが、今作は『Z.O.E』『ANUBIS』タイトル選択画面からしかマニュアルを開けない。プレイを中断して読む場合に不便。
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同様の仕様は同社の『メタルギアソリッド HD エディション』でも存在している。
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メニューの扱いづらさ
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『Z.O.E』においてメニューをSTARTボタンで開いた後、項目を選択しているとSTARTボタンでメニューから抜けられない。
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一度、×ボタンでメニュートップに戻ってからSTARTボタンを押さなければならない。
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セーブデータをロードしなおしたい時は、いったんソフトを終了しないとならない。
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「違法な配信やダウンロードはやめましょう」の警告画面からのコナミのロゴからのやり直しとなり飛ばせないため時間がかかる。
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ゲームセレクト画面はそれぞれのゲームタイトルトップにしかない。
また、ゲームセレクトに戻ると、同様に「違法な配信やダウンロードはやめましょう」の警告画面からのやり直しとなり飛ばせないため時間がかかる。
評価点
改善前から評価されていた内容
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グラフィック
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ロボットやエフェクトの3Dは、元々がPS2タイトルの中でも高水準であった為、720pに対応しても、引き伸ばしは感じさせない。ただし、問題点で先述した変色などは除く。
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ロボットの各所にはコーションマークが施されており、PS2では潰れて模様や落書きのようなものにしか見えなかったが、本作では描き直されている。
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サブウェポンのアイコン等のUIグラフィック、『ANUBIS』のコクピット内通信グラフィックの表情やコンソールも、HD準拠で描き直されている。
PS3での改善後に評価された内容
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PS3版の『ANUBIS』パートについては"the Best"に際して改善された。初代は描写エンジンを変えたことによって処理落ちは改善されている。
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発売から半年以上経った2013年5月2日、小島プロダクションのネットラジオ(27分ごろから)で突如本作が話題に挙がる。
本作の製作事情と低評価について触れた上で、PS3版の修正パッチ・修正ROM発売、ダウンロード版配信による2作の分売化の予定が明らかになった。
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そして7月25日、"the Best"発売と共に、ついにパッチを配信。
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「HD EDITIONがPS2版と並ぶためには一つ欠けている物がある。スペックを最大限に引き出すためのプログラムだ。」
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本作のパッチを製作したのは株式会社ヘキサドライブ。パッチ適用後は『ANUBIS』の起動直後に同社ロゴも表示されるようになる。
当時作品のファンを公言するプログラマーによるパッチ解説記事は、専門用語の多用でやや難解ではあるが、ビジュアル的にも技術的にも興味深い。
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描画エンジン入れ替えの決断、スタッフロールにパッチ製作スタッフのクレジットを入れる時間すら惜しむ執念によって、容量588MBのバージョン2.00表記という大規模なクオリティアップが施されている。
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自然数(小数点より上)の繰り上がるバージョン表記は大幅な機能の追加、ゲーム的には「大型アップデート」にあたる。2013年当時としてはバグの修正やDLCでのキャラクター追加程度が主であり、極めて異例。
主な特徴
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1080p対応
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720pからさらに高画質化。黒っぽい背景に白っぽいロゴが並び、文字がぼやけやすいメニュー画面の時点でも影響を受ける。
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60fps対応
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本来想定されていた60fps仕様を実現。PS2版でも処理落ちを起こしがちだった「荒野乱戦」「圧縮空間」でも善戦している。
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ジャギー/ギザギザの軽減(アンチエイリアス適用)
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ホーミングレーザーをはじめ、ロックオンカーソルやリングレーダーといった、本作で特徴的な「線」の表現が更に鮮明になっている。
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グラフィック向上、エフェクト追加
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縞模様の削除、PS2版に近い色彩・エフェクトを再現した。
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被写界深度(ピンボケ)の追加
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奥行きのあるイベントムービーが迫力・臨場感を増した。
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2Dマップ書き直し
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単純にワイドに引き伸ばされていたマップをレイアウトごと変更、ワイド表示に対応させ、PS2版マップと同様の表現を可能にした。
総評
「再起動 (REBOOT)」というキャッチコピーを引っさげてきたものの、その再起動を待っていた旧来のファンには不安を与えてしまった。
さらに「名作」「ハイスピードロボットアクション」というフレーズに惹かれた新規のファンにも期待外れであった、と言わざるを得ない出来。
しかし、PS3版はパッチ適用により、スピードの復活だけでなく、グラフィックも今まで以上のHD化が実現され、完成度を取り戻した。
思わず投げ出してしまった人も、悪評を聞いて触れられなかった人も、今一度手に取ってもらいたい。
ただし、360版は「PS3版ほど処理落ちが酷くない」ということでパッチ制作は見送られている上、価格改定もされていない。本作に興味があっても、360版は残念ながらオススメできない。
その他
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『Z.O.E』と『ANUBIS』を総括したサンライズ制作の新規アニメオープニングが収録されている。ただし、内容はほとんど『ANUBIS』のものとなっている。それでも『Z.O.E』時代のレオの勇姿
とケンの素っ裸が見られるのは高評価。
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『ANUBIS』は増補版『SPECIAL EDITION』をベースとした移植だが、こちらで追加された別バージョンの裏オープニングムービーだけは未収録。
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PS3初版には『メタルギアライジング リベンジェンス』体験版の先行ダウンロードコードが付属。同年12月13日から一般配信を開始。
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この為、PS3版のみレーティングがCERO:D(17歳以上対象)となっている。『Z.O.E HD』本編の表現に差異は無く、廉価版には『MGR』体験版が同梱されない為、360版と同じCERO:C(15歳以上対象)に緩和されている。
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「『メタルギア』シリーズの体験版セット」というのはオリジナルの『Z.O.E』とも同じである。
開発・製作について
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本作の開発を担当したHigh Voltage Softwareにとって、PS3での開発は本作がほぼ初めて、なおかつ通算で5本目の開発タイトルである。
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同時期に『メタルギアソリッド HD エディション』が発表され、本作に先行して発売されている。
こちらはHD化に定評のあるBluepoint Gamesによるもので、発売後も好評を博しておりパッチ適用前の本作とは対照的である。
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本作のパッチ開発を担当したヘキサドライブは、本作と同時期の2012年11月1日に発売された『大神 絶景版』の開発(移植)を担当しており、仮に当初から本作のオファーがあっても、小規模開発会社での並行作業は難しかったと思われる。
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あちらも名高い名作であり、本作はパッチ配信という後手を取ったものの、かつての名作が2本とも次世代機に遜色なく移植されたのは怪我の功名と言えよう。
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この時のスタッフはその後Cygamesに移籍し、そちらでも2018年にPS4/Win版の再々リマスター『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS』を手がけている。同作についてはPS2版記事の参考記述として掲載。
最終更新:2024年08月14日 20:20