高橋名人の冒険島
【たかはしめいじんのぼうけんじま】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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ハドソン
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発売日
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1986年9月12日
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定価
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4,900円
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配信
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バーチャルコンソール 【Wii】2008年1月15日/500Wiiポイント 【WiiU】2014年9月24日/514円
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備考
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GBA『ファミコンミニシリーズ』第二弾(2004年5月21日発売)
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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何やっても死ぬ高橋名人 「ゲームは1日1時間!」「無茶言うな!」 クリアは至難の業
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ワンダーボーイ/モンスターワールドシリーズ
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高橋名人関連作品シリーズ
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概要
言わずと知れたファミコンを代表するアクションの1つ。当時、「16連射」で一世を風靡していたハドソン社員の高橋名人を主人公に据えた作品。
石斧を持った原始人ルックの高橋名人が、キュラ大王に攫われた恋人のティナを助け出すため、冒険島を駆け抜けていく事になる。
本作の半年前にリリースされたセガ発売・ウエストン制作のアーケードゲーム『ワンダーボーイ』の主人公を、高橋名人にキャラ変え移植した作品である。
ウエストンから正規にライセンス許諾を受けた上でハドソン自身が開発しており、本作の内容は『ワンダーボーイ』にほぼ忠実なものとなっている。
しかし、当時の日本国内では原作の知名度が低かったことやファミコンブームの高橋名人の人気もあり、本作がオリジナルと思い込んでしまっていた人も少なくない。
ゲーム内容
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全部で8つのエリアで構成
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1つの「エリア」毎に4つの「ラウンド」で構成されており、森や海や洞窟などを突き進んで行くことになる。エリアを問わずラウンド4では、森を越えてボス「キュラ大王」に挑むという仕様になっている。
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各ラウンドには、チェックポイント(数字の付いた看板)がいくつか設置されており、ミスした際には、最後に通過した看板付近から丸腰(武器なしの状態)でリトライとなる。ゲームオーバー後にコンティニュー(後述)を行った際には、そのラウンドのスタート地点からリトライできる。
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バイタリティのゲージ
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画面上部に「バイタリティ」と呼ばれるメモリのゲージが表示されており、時間経過で徐々に減っていく。これが全て無くなるとミスになる。
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ラウンド道中で、フルーツやミルクを取得するとバイタリティが回復する。
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タマゴ
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ラウンド道中に落ちている文字どおりの「タマゴ」である。武器を2発当てるか蹴飛ばすかすると、割れて中から主にアイテムが出現する。
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最初から出現しているタマゴには、基本攻撃手段である「石斧」が入っている事が多く、石斧を既に持っている場合は「スケボー(後述)」「ミルク(バイタリティ全快)」「花(フルーツ取得時の得点が2倍になる)」「ハニー(一定時間無敵)」にそれぞれ変化する。スケボーが出るタマゴを、スケボーに乗った状態で割るとミルクが出る。たまに石斧が無くても花やハニーが出るタマゴもある。
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マイナス効果の「悪魔ナスビ」が入っているタマゴも存在する。ナスビが名人にまとわりつき、その間はバイタリティがすごい速さで減少し続け、バイタリティゲージが2メモリまで減るとナスビが去っていく。
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そのままでは見えない「隠れタマゴ」もある。撃った武器が消える箇所がそのありかを示しており、そこでジャンプするとタマゴが出現する。
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中身は「マジカルファイヤー(武器が炎に強化され、岩などを破壊できる)」→「レッドミルク(バイタリティ全快+最大値4メモリ増加)」→「ジュエル(2000点)」×3個→「としゆきくん(1UP)」の順になる。
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もし石斧を持っていなかった場合は、マジカルファイヤーが飛ばされレッドミルクが出る。レッドミルクを取った後、石斧を取ってもマジカルファイヤーが出るのはジュエル3個を取った後になる。
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ボーナスステージ
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特定のラウンドにはボーナスステージが存在する。入り方は以下の2種類。
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撃った武器が消えるが、ジャンプしてもタマゴが出ない箇所があり、その付近で待機していると、ボーナスステージ行きの雲が画面下部から出現する。
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特定の隠れタマゴから出てくる「鍵」を取っていると、本来下に落ちるリフトが上に上がり、ボーナスステージへと運んでくれる。
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ボーナスステージでは、ジャンプ台を乗り継ぎながらフルーツをたくさん取る事ができ、取得時の得点も高く設定されている。そして、入った時と出た時にバイタリティが一定値まで回復するようになっている。
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各ラウンドに1つずつ「ポット」が置かれていて、取ると1000点入り、クリア後のバイタリティ加算得点が2倍になる効果(ポットボーナス)がある。
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通常はラウンド内に浮いているが、エリア2-ラウンド4からはポットが岩や敵に化けて姿を隠すようになり、触れると正体を現す。この場合は、バイタリティは減らない。
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獣人の「コヨーテ」
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赤い花が咲いている場所では、獣人の「コヨーテ」が後ろから突進してくる。しかも、武器を撃つとジャンプするものもいる。
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武器を1発当てると一瞬動きが止まり、体色が変化してまた走り出す。武器を2発当てると倒せるが、敵が自分より右にいる時に(つまり1度かわして背後から攻撃)トドメを刺すと、ファミコンのコントローラが出現し、取得すれば1000点入る。
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ボス
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各ラウンド4の最後では、専用BGMとともにキュラ大王とのバトルになる。バウンドする火の玉を投げて攻撃してくる。弱点は頭部であり、エリア毎に耐久力及び移動速度、攻撃頻度が異なる。
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攻撃は単調でバイタリティによる時間制限も無くなるため、ラウンド道中の凶悪さに比べれば難易度はかなり低いと言える。
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倒すと破壊された頭部に代わる新しい顔が現われ、飛んで次のエリアに逃げ去っていく。全部で8つの顔を持っており、エリア8-ラウンド4にいる大王の頭部を破壊すると、大王の身体が落とし穴に自ら落ち、その後エンディングとなる。
評価点
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タレントゲー及び移植作として上出来
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一般的にタレントゲーといえば「クソゲーの温床」というイメージが付きまといがちだが、本作はアーケードで稼働していた『ワンダーボーイ』のシステムを流用する事によって、非常に良質なタレントゲーが実現する事になった。
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また、アーケードからの移植作という方向から見ても、純粋な移植度でいえばかなり質は高く「ファミコンで遊べるワンダーボーイ」として遜色のない出来となっている。
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良好な楽曲群とステージのバリエーション
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BGMは残念ながらワンダーボーイから全曲差し替えられている(後述するMSX版では使用されている)が、いずれもノリ・雰囲気共に良い楽曲が作曲担当の竹間淳によって揃っている。
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メインテーマとも言うべき森、ゆったりとしたリズム帯が特徴の海、ダークで怪しいキュラ大王の砦、フルーツが全く出現しない区間が存在し、プレイヤーに焦りを抱かせるような山など、多くのラウンドBGMが、単調なリズムの曲で統一されている原作と比べて魅力的に映るラインナップと言えるだろう。
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骨太な難易度
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後述の「問題点」の部分と被る点だが、序盤だけはまだ(チュートリアル的な意味で)ほどよい難易度に収まっている。エリア1-ラウンド1のゴール看板手前のガケにある隠れタマゴから出てくる「ハチ助」を取ることで無限コンティニューが可能になるなど、導入部分はそれなりに作り込まれている模様。
問題点
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基本攻撃手段「石斧」がパワーアップアイテム扱い
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石斧をタマゴの中から回収するまで、一切攻撃ができない。タマゴは必ずしもチェックポイントの直後に設置されているとは限らず、そのようなチェックポイントから始めると、狭いステージの中多数現れる敵を全部避けて進まなければならなくなる。そのため、要所でミスをするとクリアへの道のりが非常に困難になってくる。
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中には1ラウンドを通して石斧の設置すらされていない、もしくは対キュラ大王戦直前まで石斧が入手できないラウンドもあり、そこでミスすると攻撃手段なしで突破しなければならず、後述のコンティニューを多用してもクリアがかなり困難になる。
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デメリットだらけのスケボー
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スケボーに乗った状態だとスピードアップするが、後退や停止ができず細かなコントロールが利かなくなるため実質強制スクロールと言える。そのまま穴に落ちたり、敵の固まっている場所へ突っ込んでしまったりと戦況を不利にしてしまう事が多い。「スケボーには乗らないほうが無難」とまで言われるほど。
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十字ボタンの左押しで減速はできるが、いずれにせよ後退や停止は不可能であり、プレイヤーにとってゲーム進行が有利に働くとは言いがたい。
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スケボーの消滅と引き換えに、1回だけダメージを防いでくれるというメリットは一応ある。しかし即座に後続の敵と接触してミスになったり、これまたそのまま穴に落ちたりする事も珍しくない。
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さらに「常に前進し続ける」という仕様上、隠し要素(隠れタマゴやボーナスステージ)とかなり相性が悪い。
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なお移植元の『ワンダーボーイ』では、隠れタマゴに該当するフィーチャーは石斧を当てても出現したため、スケボーありでも幾分まともなプレイが可能だった。
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もっとも、石斧とスケボーに関しては多くの続編でも引き継がれている点でもあり、シリーズ通しての課題にもなっている。
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後半以降の難易度がクリア不能なほど鬼畜
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前述通りコンティニューは「ハチ助」を取る事で可能となっているが、あまりにも難易度が高いため「ハチ助」の入手は必須と言える。ある意味救済措置とも取れる。
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とくに後半エリアは、初見殺しのオンパレードとなっており、あまりの凶悪な難易度のために残機がいくらあっても足りない。
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特に本作の難易度を大きく引き上げているのがバイタリティによる時間制限であり、少しずつ画面スクロールして現れた敵を順番に倒していく…などという手を取っていては、後半は丸っきり時間が足らない。
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初見殺しで済むようなところはコンティニューすればいい分まだ全然よい方で、倒すべき敵だけを倒し邪魔にならない敵は時間のムダなので放置する最善策を取り、なおかつなるべく止まらずに最短経路を進んでギリギリ制限時間に間に合うような箇所も多く出てくる。
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アイテムが入手できるタマゴですら前述の通りスケボーが使い物にならないのに加え、後半ではやっとタマゴを見つけたと思えばほぼ死亡確定のデメリットアイテムである悪魔ナスビだったり、避ける方が難しい位置に悪魔ナスビが置いてあって実質障害物になっていたり、といった仕様でプレイヤーの心を折りにくる。
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その極みが、エリア8-ラウンド3終盤で出現する通称
「3匹のコウモリ」
の鬼畜さであり、もはや
プレイヤーの間にて伝説と化している。
ただでさえ飛び移るのが困難なリフトをジャンプで渡り続けながら、一瞬のタイミングを狙って斧を投げないと後半のコウモリが倒せず即ミスとなる。
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本作はよほど極めたプレイヤーでもない限り、1時間以内のクリアは不可能である。当時、高橋名人が「ゲームは1日1時間」と語っていたが、そういう意味でお子様向けのゲームと言えるかどうかはかなり疑問である。
総評
アーケードで展開していた『ワンダーボーイ』のキャラクターを高橋名人に差し替えた事により、ファミコン少年たちの心をつかんで、そのアクションゲームの代表作に上り詰めた一作。
それは裏を返せば、多くの少年少女たちが鬼畜難易度の毒牙にかかったことを意味する。とりわけ後半エリアの難しさは、誰もが首を傾げるだろう。
現在、往年の名作たちが続々と復刻配信・移植されており、その中には場所を選ばずセーブできたり、難易度を下げる機能が追加されたものもある。
そういった形で本作をプレイする機会が訪れたならまだしも、ネームバリューだけで手に取るのは控えるべきだと言わざるを得ない。
もっとも現在はネットで攻略法が公開されているので、腕の立つゲーマーは、挑戦してみてもいいかも知れないが……。
その後の展開
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『高橋名人』と『ワンダーボーイ』の両作品は初代こそほぼ同一内容であったが、その後の両者は全く別の進化を遂げシリーズ化されていく事になる。
『高橋名人』は初代同様に、バイタリティが無くなる前にゴールへ向かうタイプが大半を占める。
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ファミコンでは、合計4作発売された。
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前作から5年後の1991年4月に発売された『高橋名人の冒険島II』は、基本要素を引き継ぎながら難易度はややマイルドになったものの、新たに4匹の「恐竜」に乗って戦う事も出来るようになったり、ボス戦も豊富に用意されたりと、マップ上のルート分岐などの新要素が追加された。
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その翌年の1992年7月には、よりアイテムやステージのバラエティが増した『高橋名人の冒険島III』が発売。さらに2年後の1994年6月には、ライフ制やパスワードを導入してシステムを一新してかなり遊びやすくなった『高橋名人の冒険島IV』が発売され、これが公式ファミコンソフト最後の作品となった。
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『IV』について、「ファミコンソフト『桃太郎伝説外伝』を出した後、ファミコンソフトはもう出す予定が無かったが、1994年の1月頃に営業が「まだファミコンって売れてるから今出したら売れるんじゃないか」と言うので、2ヶ月で作った」と高橋名人が述懐している。この作品は、現在のところ下手なファミコンソフト以上のプレミアム価格で取引されている。
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また、本作を下敷きにしたスピンオフアニメ『Bugってハニー』も放映された。
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さらに、ファミコンで『高橋名人のBugってハニー』としてゲーム化(1987年)もされた。
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なおアニメでは高橋原人だが、『高橋名人のBugってハニー』では高橋名人と高橋原人どちらの呼称も使用されている。
移植・リメイク
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ファミコン版と同日にMSX版でも発売されている。
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タイトル・ゲーム画面のレイアウトが原作ワンダーボーイにより近付き、BGMも原作準拠となっている。また、最初から(石斧に代わる)武器・ブーメランを投げる事が出来るという変更点もある。
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しかし、キャラクター数の減少やグラフィックの劣化から、アーケード版と比較するとゲーム内容で見れば、ファミコン版の方が再現度が高く、MSX版は残念ながら「劣化移植」として扱われている。
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1988年に北米で発売されたNES版『Hudson's Adventure Island』では、キャラクターの高橋名人(原人)は「Master Higgins」(マスター・ヒギンズ)という名前に変更されている。
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1992年に欧州では『Adventure Island Classic』のタイトルで発売、パッケージイラストが『高橋名人の新冒険島』から流用されている。
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PCエンジンでは『高橋名人の新冒険島』(1992年)が発売された。こちらは第1作の正統進化と呼んでいい作品となっていた。
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スーパーファミコンでは『高橋名人の大冒険島』(1992年)、『高橋名人の大冒険島II』(1995年)の2作が発売された。
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前者は、ステージクリア方式で難易度は高めの作品である。後者は、RPG要素が強く付加されておりライフ制やセーブなどが実装され、遊びやすい作品に仕上がっている。
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ゲームボーイには、ファミコンから『II』と『III』の移植が行われている(1992年と1993年)。
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ゲームキューブとプレイステーション2では、ハドソンセレクションのタイトルのひとつとして3DCGでリメイクされた。
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かつてはWiiや3DS、WiiUのバーチャルコンソールでも配信されていた。
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ゲームボーイアドバンスのファミコンソフト復刻版シリーズ『ファミコンミニシリーズ』第2弾タイトル(2004年5月21日発売)の1つとして本作が移植されている。
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ゲームボーイアドバンス版ではセーブ機能を、バーチャルコンソール版では中断機能をそれぞれ利用すれば、「ゲームは1日1時間」を厳守しながらの攻略も不可能ではない(?)
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ゲームボーイアドバンスでは、上記のほかにハドソンベストコレクションの1つ『冒険島コレクション』に、IVまでのシリーズ全てが収録されたものも発売されている。
余談
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このゲームの難易度の高さを語る際に上がる話題として、CSで放送されている番組『ゲームセンターCX』でのエピソードがある。
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同番組で挑戦した有野課長は、そのあまりの難易度に苦しみながらプレイ開始から約11時間でエリア7-ラウンド1まで到達するものの、やむなくギブアップした。
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本番前、スタッフによる事前ロケハンでは、エンディングまで到達できなかったという番組史上初めての事態だったため、開始前に攻略本が支給されていた。
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その後、有野課長が挑戦失敗だった場合の視聴者にエンディング到達画面を収録する為に当時のADだった浦川が代わりに攻略する事になるのだが、実際の収録はほとんど缶詰と言うより監禁状態であり最終的にクリアに計28時間も費やした。
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この収録の模様は浦川の挑戦として番組終了時にエンディング到達までのダイジェストとして放送され、課長がギブアップしたエリア7-ラウンド1までは5時間で到達するものの、そこから先は1つの面のクリアに数時間かかるほど大苦戦し、とくに前述した「3匹のコウモリ」地帯のあるエリア8-ラウンド3は9時間かけてやっとクリア。なお、最終面となるエリア8-ラウンド4もかなり難易度が高いのだが、彼曰く「エリア8-ラウンド3に比べればまだ可愛いものだった」とのこと。
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彼は当時のスタッフ陣の中ではトップクラスの腕前を誇っていたにもかかわらず、ここまで苦戦したのだから、相当な難易度である事が窺える。
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レトロゲームの動画等で、ウエストンを「高橋名人の冒険島の開発元」とするコメントがまれに出てくるが、前述のようにあくまでウエストンはライセンス許諾をしただけに過ぎず、『高橋名人』の実際の開発には関わっていない。
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大本のベースとなった「原作『ワンダーボーイ』の開発元」ではあるのだが、それを元にした『高橋名人』の開発を直接行ったのはハドソンである。
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実際、ワンダーボーイ/モンスターワールドシリーズの生みの親で、ウエストンの社長でもあった西澤龍一氏が同人誌のインタビュー等でも直接本作の開発には関わっていないことを明言している。
最終更新:2024年06月20日 19:32