高橋名人の冒険島IV

【たかはしめいじんのぼうけんじまふぉー】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ハドソン
開発元 ナウプロダクション
発売日 1994年6月24日
定価 5,800円
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント ファミコンの歴史を締めくくったのは高橋名人
豊富なアイテムを用いた自由探索型にモデルチェンジ
多彩なミニゲーム
初代要素は最強要素に神格化
高橋名人関連作品シリーズ


概要

1994年6月に発売された、ハドソンの高橋名人を主役に据えたアクションゲーム『高橋名人の冒険島』シリーズのファミコン最終作。
III』は『II』を踏襲した順当な続編だったが本作はシステムが一新された新作らしいものとなっている。
主体はアクションながら、キーアイテムを回収したり、それによって行動範囲を広げるRPG的な要素も持っている。

また本作は1983年に発売されたファミリーコンピュータの最後の公式ソフトとなった。


ストーリー

高橋名人が恋人ティナや仲間たちと楽しく暮らす平和な島アドベンチャーアイランド。
ある日、空から現れた怪しい影が仲間の恐竜たちを次々とさらってしまい、残ったのは名人とティナだけ。その者に島の動物たちは洗脳され、島の地形も変わってしまった。
名人はティナを家に残し残ったわずかな仲間たちとともに島の平和を守るために冒険に出るのだった。


内容

  • これまでとは打って変わって、ステージクリアだったスタイルから一転しキーアイテムにより行動範囲を広げて、そのターニングポイントが実質的なエリアクリアとなるような形式になっている。
    • 具体的にはキーポイントになるアイテムは特定のミニゲームをクリアで入手したり、特定のエリアボスを倒したりして、行く先を邪魔している障害物を破壊出来たり、恐竜仲間を助け出してそれにより行動範囲を拡大していく形式。
    • また行動範囲の拡大は既存で行けるエリア内にも、怪しげなオブジェクトがあってそれを何らかの形で除去する格好で道を開いていく形になる。
    • そのため、アイテムさえあれば基本何処に行くのも自由。
      • ただしエリアボスのいた部屋のみ倒した後は破壊不能な壁に閉ざされて二度と入ることはできない。
  • アイテムはスタートボタンでサブ画面を開いて切り替える。スペシャルアイテム(後述)を使用するのもサブ画面で行う。
    • 切り替え自体はいつでも可能で、これまでのように取ったその場で強制切り替えではなくなった。
  • 初作品から続いていたバイタリティ制は廃止となり、体力がライフ制となり一撃即死から脱却。初期は2で、アイテムで増やすことができる(後述)。
    • 代わりに1ミスで即終了。
      • 一応、後述の「ハニー」を持っていればその場で復活できるが1つしかストックできない。
  • 随所にミニゲームがあり、それに勝つことでウエポンアイテムやスペシャルアイテムを獲得できる。
    • 基本は特定のキーアイテムだがそれを既に持っていると回復系や消耗品のスペシャルアイテムに変わる。
    • だがミニゲームを行うにはそれに対応したアイテムを持っていないとできないものもある。
    • ミニゲーム開始前に、「ドレミフルーツ(後述)」のストックは根こそぎ奪われてしまうが、この時持っていた数によって、時間が長くなったりミニゲーム中の名人のパワーがアップしたりとミニゲームを有利にできる。
  • 最初は名人の家からスタートし、そこから冒険に向かう形になる。
    • 家に帰ってくるとベッドがあり、そこで寝ることでライフが全快状態になる。ベッドは2つ並んでおり右側はティナ用なので名人が使えるのは左のみ。
      • そのタイミングでパスワードが発行され、同時にメモリ内セーブも行われる。
      • 名人がやられると、家の前に戻ってきてこのメモリ内セーブした状態から再スタート。一度も寝ていないと初期状態に戻される。
    • ゲームスタートやベッドから起きて家を出ると、ヒロインのティナが見送ってくれる。やられて戻ってくるとティナが起こしてくれる。
  • スコアの概念は完全に廃止となった。
  • 高橋名人のグラフィックも、それまでの作品からグッと若返ったような少年っぽい風貌になっている(因みに名人は当時35歳)。
  • ジャンプ台は双葉のような形になっている。
    • しおれた双葉は使えないが、後述のアイテム「水鉄砲」の水を当てることで本来の形に戻り、ジャンプ台として使えるようになる。
  • 今までバイタリティをゴッソリ奪い去る厄介な隠れキャラとして猛威を振るった「悪魔ナスビ」が廃止。
    • しかしそれはアイテムとしての話で、キャラ自身は本作ではラスボスに昇格して登場している。
  • 恐竜キャラは全員前作から続投で登場している。
    • ただしトランプマークのカードで出現するのではなく各エリアに捕らわれており、そのボスを倒すことで乗ることができる。
    • 助けた恐竜キャラは家からすぐ下に降りて左の先にある「ディノ・ハウス」に待機しているので、そこから連れ出せる。
      • もちろん帯同できるのは1体のみ。
    • 1体も助け出していない状態ではディノハウスに続く道は破壊不能な大きな岩で閉ざされている。
    • 攻撃や地形適応など基本的な能力はこれまで通り。
    • 一発被弾する(ノッシー以外が水に触れた場合含む)と今まで通り消えてしまう(代わりに名人はダメージを受けないのも今まで通り)が、もう一度呼びに行くことで何度でも連れていける。

ウエポンアイテム

主に名人が武器として使うもの。
恐竜キャラを帯同している時に使うと恐竜キャラは一旦消えるが使った枠に対応したトランプカードとして格納されるので、いつでもまた呼び出すことができる。

    • デフォルトの武器で、性能や弾道は旧来の石オノと同等。
  • ハンマー
    • 岩やつまづき岩を破壊できる。直接殴って攻撃もできる。
    • ミニゲーム「もぐらたたき」はこれがないとできない。
  • たいまつ
    • ハンマー同様振るだけの武器だが、暗い場所の燭台に向かって振ると火を灯せて明るくできる。
  • 水鉄砲
    • 弾道は骨とほぼ同じだがスピードで劣る。しおれた葉っぱに弾を当てると本来の形になりジャンプ台として機能するようになる。
    • 他に火のついたリフトに当てると火を消すことができる(火がついたまま乗るとダメージを受ける)。
    • ミニゲーム「的当て」はこれがないとできない。
  • スノーボード
    • 雪や氷のステージで滑らずに動き回れる。踏みによる攻撃も可能。雪や氷以外ではジャンプしない限り動けない。
  • 石槍
    • 頭上の丸太に突き刺して移動ができる。もちろん上と左右方向に突いての攻撃も可能。
    • ミニゲーム「風船割」はこれがないとできない。
    • 空中でさすことでゆっくり降りられその間の空中制御も可能。これだけは「ウエポンアイテム」に分類されていながら武器として使うことはできない。
  • ダイヤハンマー
    • ハンマーの強化版でダイヤロックを破壊できる。攻撃の威力でもハンマーより高い。
  • サーフボード
    • スノーボードの水上版で、水面を高速移動でき踏みによる攻撃もできる。水上以外ではジャンプしない限り動けない。
  • ブーメラン
    • 前作から続投で登場。連射はできないが威力が高く貫通性能有。
  • スケートボード
    • もはや恒例の平地を高速移動できるアイテムだが本作ではちゃんと止まることができるようになった。
    • 同時にスノーボード、サーフボードの陸上版ポジションでもあり、踏み攻撃ができる。
  • 石オノ
    • 旧来のデフォルト武器ながら本作では最強の攻撃力。弾道は初期装備の骨と同じ。

スペシャルアイテム

1つずつストックできて、いつでも使える。

  • ハート
    • ライフをハート1つ分回復。
  • くすり
    • ライフを全回復。
  • かえるのお札
    • どこからでも家に帰ることができる。
  • プテラのタマゴ
    • マザープテラ*1から貰える。台座に置くことができ、その状態で使うと置いた台座の地点までワープできる。
  • コンパス
    • 3Dマップで自分の現在位置を確認できる。
  • ハニー
    • ライフが尽きて倒れた時、その場で復活できる。

その他アイテム

基本的に取ったその場で効果が出るもの。

  • ドレミフルーツ
    • 8つ集めるとライフがハート1つ分回復する。
    • 他にミニゲーム時にこれのストック個数により名人のパワーがアップしたり制限時間が伸びたりする。
    • ナシやバナナ、ブドウなど様々なバリエーションがあるが効果は同じ。
  • ミニハート
    • ライフを1つその場で回復できる。
    • ライフを全回復できる。
  • ボンバー(爆弾)
    • 拾って投げると爆発し画面内の敵を全滅させる。何故か名人はダメージを受けない。
    • 出しっぱなしにしておいても一定時間経過で爆発しその効果が発動する。
  • スター
    • 10秒間無敵になり、その間は体当り攻撃が有効になる。
  • ハートの器
    • ハートの最大所有数(ライフ最大値)が1つ増える。
  • ハートのかけら
    • 上記「ハートの器」の半分の形で、見た目通り2つで「ハートの器」1つ分の効果になる。
    • 1つ取っている状態の時は画面下でストックされる。

パワーアイテム

  • P(パワー)
    • 名人の攻撃力が上がる。
  • J(ジャンプ)
    • 名人のジャンプ力が上がる。
  • D(ダッシュ)
    • 名人のダッシュ速度が上がる。

評価点

  • 全体的なマップの繋がりが秀逸。
    • これまでの「穴に落ちる」=「即死」ではなく、その先に違った世界があるなど探索する楽しみが豊富。
      • 下だけでなく上方向にも広い世界が広がっている。
    • BGMもそれに応じて細かく切り替わり、いずれもその場その場の雰囲気をしっかり醸し出している。
  • アイテムの数が豊富で、それぞれがその個性を持っている。
    • しかもウエポン系アイテムはすぐ試せる機会がある。
      • 恐竜の仲間を助けると、ウエポンアイテムが貰えて、その効果を利用して家まで帰れるショートカットルートへ導いてくれる。
      • 説明書を読んだだけではイマイチイメージがわかなくても、すぐにその特徴を試せるのは以降使いやすくなるので新設設計。
  • 冒険の自由度の高さ。
    • エリアボスの部屋こそ二度と入れないものの、これまでのエリアとつながった形で続いており、もう一度行きたいところはどこにでも行ける。
    • 家から離れていても「プテラのタマゴ」を置くことで、戻りのポイントを決められたり次回以降は道中を飛ばせる機能があるのも便利。
  • 前作譲りの大ボリューム。
    • 冒険本編のみならず、その長い冒険の気分転換になるミニゲームも多数搭載しているなど、ファミコンとはいえ最末期作品らしい充実した内容。
  • コンティニューはパスワード式ながら扱いやすい。
    • 前作のゲームボーイ版ほどではないものの、入力する文字は8文字と少なく、使われている文字種類も少ないため書き損じなどが起きにくい。
  • ファンサービス要素。
    • 初作品からずっと名人の看板武器として親しまれてきた石オノが最強武器になっていたりと昔からなじんだものが神格化するのは旧来のファンからすれば感慨深いものがある。

問題点

  • ドレミフルーツによる回復が割に合わない。大事な時にそんな雀の涙のような回復で失って台無しになることもある。
    • 8つも集めてやっとこ1つしか回復しないのは割に合わない。
    • 実際、ミニゲームではこれがないとだいぶ苦しい戦いを強いられるので、たかだかハート1つの回復のためにゼロになってしまうのは勿体ない。
      • また一発でハート1つ回復できる「ミニハート」がありそちらも入手頻度がそこそこ高いのも向かい風。
  • 連打系ミニゲームはシンプルなだけに、どうにもならないこともある。
    • 過去の『さんまの名探偵』のように、シンプルなだけに低年齢層などプレイヤーによってはどうにもならないことも。
      • 一応フルーツによる補助はできても、あくまで補助にすぎない。
  • スコアや残機制がない。
    • メモリセーブがお手軽とはいえ、残機があればそこから即リトライできた方が円滑だし、その1UP契機補助となるスコアもあった方がザコ戦などの意義も高まるだけに少々残念な部分。
  • 復活時の二度手間。
    • 名人がやられて家に強制送還されると、どんなにライフ最大値が高かろうがライフ2の状態でスタートすることになる。
      • 家の前での復活するため中で寝さえすればすぐ最大まで回復できるだけにデスペナと仮定しても意味がない。回復しないで再出発する必要はないので、いちいち寝直すムダな手間を増やすだけになってしまっている。
      • とどのつまり全快状態で問題ないため、わざわざライフ値2で復活する意味が感じられない。

総評

特定のアイテムさえあればどこでも行ける自由度の高さ、旧来通りのアクションの良さに加えて更に豊富なミニゲームなどボリュームでは文句なし。
選択できる豊富なアイテムとその使いどころのメリハリなどはしっかりと付けられており、長時間プレイでもだれにくい作りでパスワード式ながら文字数や使用文字は抑えられて扱いやすく中断・再開もお手軽なシステム。
個性豊かなお助け恐竜キャラなど過去作の良い部分は踏襲しながらゲーム性は全般的に新しくモデルチェンジして、伝統と革新を両立して融合がなされている。
「最後のファミコンソフト」の名目ばかりが注目されがちだが、それを抜きにしても堂々と名作を名乗れるほどで、家庭用ゲームの礎を築いたファミコンの大トリを名実ともに飾ったと言えるだろう。


その後の展開

  • シリーズ次回作はスーパーファミコンソフトの『高橋名人の大冒険島II』で前作『高橋名人の大冒険島』から3年越しの1995年1月3日発売。
    • 前作はファミコンシリーズ『II』の後ながら恐竜キャラが取り入れられていなかったように、この作品でも取り入れられていないが本作のシステムをよりアクションRPGらしく昇華したシステムになっている。
      • ただの原始人スタイルだけでなく剣、鎧、魔法とファンタジー要素を新しく取り入れ、お金や装備の概念も加わって一気に大胆なイメージチェンジがされ独自の魅力を放っている。
  • ゲームボーイアドバンスのベストコレクションの第6弾『冒険島コレクション』(2006年1月19日発売)は本作を含めたファミコン発売の4作品全部が収録されている。

余談

  • 本作では最初にティナがさらわれないのでティナが出迎えたり見送ってくれたりしてくれる。
    • そして上記の通りやられた後はティナが優しく起こしてくれるのだが終盤でティナがさらわれた後はプテラが上から岩をゴツンと落とす少々荒っぽい形で起こされる。
  • これ以降に発売されたファミコンソフトもあるにはあるが、いずれも任天堂非公認の同人ソフト。
    • 実は本作後には『早指し二段 森田将棋2』(セタ)が控えていたが、最終的にお蔵入りになってしまった。
      • なおこの作品は特殊チップ搭載によりファミコンでありながら32bitCPU相応の演算能力があったとか。
  • この当時は完全に世代交代が終わりファミコンは既に旧機種でゲーム業界は次世代機にあたる「CPU32bit+CD-ROM媒体ソフト」を標準とする第5世代ゲーム機が次々発表され(その一番手たる松下の『3DO REAL』は3月に発売済み*2)スーパーファミコンが標準レベルだったため今更ファミコンに手を出すメーカーはないだろうと裏をかいた戦略から「今、ファミコンのソフトを出せば数万本は売れるかもしれない」との目算で発売されたとのこと。
    • そのため急な事態ということもあって、開発期間や版権問題のクリアもしやすかった高橋名人が選ばれた。実際開発期間はわずか2ヶ月という当時としては異例の急ピッチで作られたようだ。
      • このように経緯自体はそんな大人の都合でしかないのだが結果として「ファミコンの最後を締めくくったのはファミコン初期のブームを牽引した高橋名人」というドラマチックなストーリーができたことになる。
    • たださすがに時代の主役はスーパーファミコンでゲームジャンルならばRPG、アクションにしても対戦格闘系アクションの全盛期だったことなど花形ニーズからは外れたものであったこともあり「数万本は売れる」というハドソンの目論見に反して売り上げは微々たるもので、現在ではプレミアソフトの代表格に挙げられている。
    • しかしながらテレビ東京系で放送されていたゲーム番組『スーパーマリオスタジアム』のコーナー「ファミコン王に挑戦*3」で勝者は好きなソフトを1本貰えるため、そのリストは毎回出てきており、スーパーファミコンやゲームボーイは新作が続々発売されラインナップが次々と変わっていったのに対し、ファミコンは以降、本作と『ワリオの森』『ゼルダの伝説1』『ファイナルファンタジーI・II』4通りで固定のまま1995年7月にファミコンソフト枠がバーチャルボーイソフト枠にまるまるすげ替えられるまで続いたため毎週その名を見る機会があった。
      • 誰も本作を含めファミコンのソフトがほしいと希望した者はいなかったが同番組は非常に人気で高視聴率だったこともあって、1年以上もの間毎回毎回名前を見る機会があったため存在自体は十分すぎるほど知られていた。
        上記番組の影響は大きく「後年になるまで存在すら知らなかったタイトル」となるとむしろ世代交代が完了した末期ながらも定期的に新規タイトルが発売されていた1993年発売作品(この年の新規タイトルは52本)の方が多いぐらいだろう。また1994年作品なら上記番組でプレゼント対象にならなかった『Jリーグウイニングゴール』(1994年5月27日発売・エレクトロニックアーツ)の方が当てはまるだろう。 1---
最終更新:2024年02月17日 12:06

*1 本作では食べすぎにより太ってしまい飛べなくなっている。

*2 とはいえ『3DO』そのものはハード自身が59,800円と目玉が飛び出るほど高額だった上にソフトは日本では受けの悪い外国のモノばかりで日本のゲーム市場のニーズにかすりもしないラインナップだったことで結果的に見向きもされなかった。同年11月セガサターン(セガ)・12月にプレイステーション(SCE)の32bit機2大巨頭が台頭してやっと次世代が始まったと言えるだろう(それでも市場の主役が交代したと言えるのは1996年後期頃)。

*3 ボックシングなどのタイトルマッチの形式で「ドクターマリオ」「マリオカート」など任天堂の対戦ゲームを対象として、それぞれに王者がおり、勝った者は王者として次回は挑戦を受ける立場となる(必然的に次回の出場権を得たことになる)。