メダル・オブ・オナー (2010)
【めだるおぶおなー】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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プレイステーション3 Xbox 360 Windows XP~7
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発売元
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エレクトロニック・アーツ
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開発元
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シングル:Danger Close Games マルチ:DICE
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発売日
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2010年10月21日
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定価
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【PS3/360】7,665円 【Win】6,980円
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廉価版
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EA BEST HITS 2011年10月13日/2,980円(税別)
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レーティング
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CERO:D(17才以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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現代が舞台の新生『MoH』
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メダルオブオナーシリーズ
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概要
『メダル・オブ・オナー』シリーズの1作。
海外ソフトのシリーズ初代作品『Medal of Honor』と同じタイトルではあるが、ここでは2010年に発売されたものを指す。
舞台を第二次世界大戦から現代へと移し、「Tier 1」と言われる米軍の中でも精鋭の兵士達による実際にあった戦いを描く。
マルチプレイの開発は、『バトルフィールド』シリーズで有名なEA DICEが担当している。
アフガニスタンの危険な戦場での特殊任務に身を置くTier 1オペレータ達。
彼ら真の愛国者達の知られざる戦いが今語られる。
特徴
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開発元とゲームエンジンはシングルキャンペーンとマルチプレイで異なる。
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シングルキャンペーンの開発元はDanger Close(旧:EA Los Angeles)、マルチプレイの開発元はEA Digital Illusions CEとなっており、シングルゲームエンジンにはUnreal Engine 3を使用、マルチプレイのゲームエンジンにはEA DICEが開発したFrostbite Engineを使用している。
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舞台は第二次世界大戦の時代から現代のアフガニスタンへと移った。
評価点
グラフィックの美麗さ
シングルプレイ
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実際の特殊部隊の体験談をもとに作られており、ライバルの『CoD』シリーズのようにシネマチックな展開ではなく淡々としていながらも戦場の緊迫感をひしひしと感じさせるリアルさがある。
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ストーリーのベースとなったのはSEALsが関わったアナコンダ作戦の一部であるタクルガルの戦いである。
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Tier 1の主人公オペレーター「ラビット」のモデルはタクルガルの戦いで奮戦したネイル・C・ロバート。
ゲームデザイン
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当時のFPSとしては普通の部類にはなるが、操作性や日本語訳等は非の打ち所がない及第点の出来。
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アシスト機能や味方NPCからの弾薬の補給システム等、細部でライトユーザーにも配慮がされている。
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カジュアル寄りゲームながらも銃を打つ感触や反動はしっかりと撃ってる感じが出ている。
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銃声などはシリーズを通して好評なサンプリングのため、リアルで安っぽい音ではない。
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ダッシュからのスライディングやプローン(覗き込み動作)など、操作が複雑化されるためにカジュアル作品では削除されがちな動作など細かい動作が使いやすく実装されている
賛否両論点
旧作とはあまりにもかけ離れた作風
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シングルプレイのストーリー面でも引き合いにだされる『CoD:MW』シリーズと比較して、地味目でインパクトがない。
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旧作シリーズ同様に一本道展開であるものの、そちらは起伏のある戦争映画的な展開であるのに対して、こちらは海外のノンフィクションドラマやドキュメンタリー的な展開なので淡々と進む都合上、場面場面でやらされている感が強い。BGMも『CoD』のようにテンポの激しい映画音楽的なBGMが全く採用されない点も場面場面の盛り上がりを感じさせない点を助長させる。
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舞台も一貫して、煤けたアフガンの山岳地帯がひたすら続くために変化に乏しく感じられてしまう。山での戦いが多いので尚更である。
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本作は、戦場におけるリアルな一兵士の視点を目指した作品として作られた。特殊作戦という性質上日のあたらず、対テロという明快かつ大きな最終目標がない非正規戦闘を描いた事による弊害が生じている。よく言えば硬派だが、悪く言えば地味。
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基本的にどこそこに敵テロリストの集団がいるので掃討しろ、味方が危ないから支援しろというのを繰り返すので、物語全体の起承転結がわかりにくい。サスペンス要素やテロを指揮していた指揮官との追跡や攻防などのストーリー展開を加えていれば盛り上がるのだが。
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ただリアルさを重視しただけというだけあって、あまりにも現実離れしたような突飛すぎる展開等はなく、臨場感や緊迫感などはあるのでストーリー自体は決して低質なわけではない。
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旧シリーズではプレイヤー単独でナチスの潜水艦基地に単独で潜入に破壊工作を行って大立ち回りを行いながら脱出したり、少ない味方たちでジャングルの四方からバンザイ突撃でなだれ込んでくる日本兵達をなぎ倒す等、「戦場の英雄」というテイストで描かれていた。
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これは本来、最初期の『CoD』シリーズが目指していた方向性である。「一兵士」としてのリアルな戦場を描写したいがために立ち上げられた『CoD』が近年ではヒーロー然としたキャラクター描写に変わっているのに対し、「戦場の英雄」を描いていた本作の方が「一兵士」の物語になっているのは何とも皮肉な巡り合わせである。
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本物の戦場描写という点ではコンセプトに偽りはないが、それをカジュアルテイストのゲームでやってしまっているので、ライト層には訴求できず、リアルさを求めるコア層に対しては期待はずれというチグハグな形になってしまっている。
NPCの挙動
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味方AIは優秀で、強制進行場面を除けば大体において敵を一掃してくれる。というかイベント以外で大体死なないので、敵の数が多すぎたり難しい場面は任せて良いくらい。
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一方で敵AIがお粗末で、棒立ちだったり数に任せて突撃してくる動く的だったりとあまり手強さを感じない。
Tier 1モード
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シングルプレイを早くクリアして高スコアを目指すモード。
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シングルの会話などが省略され、ひたすらステージの敵を排除して進むのでサクサクと進み、純粋に銃撃のみを遊ぶことができる。
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後述する様に一部に強制進行などの展開があるのとボリューム自体がそれほど多くないのでそれほどやりがいがあるかと言われれば疑問点がつく。人によっては蛇足ではないかとの感想もある。
問題点
シングルプレイ
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少ないボリューム。半日もあればクリアできてしまう。
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細かいバグもやや多い
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途中のステージで敵機関銃手を倒す小目標があるが、その敵が死なないバグが高い確率で発生する。チェックポイントまで辿り着いたら自動セーブされる仕組みになっており、発生した場合ミッションを一からやり直す羽目になる。
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過剰なスクリプト演出
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旧作もスクリプトを多用しているものの、映画的な演出としての一環として効果的に使われていた。
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本作の場合は事ある毎に特定の操作を要求される場面がある為に作業感が強い。
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字幕がない。日本語吹き替え音声はあるが、同社の『バトルフィールド』シリーズですらシングルにはあるのだから、やはり字幕くらいつけてもよいのではないか?
マルチプレイ
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エンジンが異なっているのもあるが、根本的にBFBCシリーズからの使いまわしである。
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銃器のモデリング、一部リロードモーションは完全に使いまわされている。
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シングルプレイヤーではAKの種類が拘られている上に残弾数によってボルトの動く音が変わる、1ステージしか登場しないM4のショートモデルをわざわざ作るレベルの細かい作り込みがされていたり、撃ち切らない状態でリロードすると薬室に1発入るといったリアル要素が存在するが、こちらはBF1942レベルで銃器の種類や兵科は少ない上に銃声も合成音とリアル要素は完全に撤廃されている。登場する銃器の中にはBFBCのMP443を流用して塗装のテクスチャを貼っただけの物をTariqという別の銃と言い張るなど、フルプライスのゲームの割に低予算で作られたBF1943と同レベルの流用を行っている。
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ただし、BFBCと比べるとすれば銃器モデリングの左右反転がない、拳銃のスライドが最後まで後退してきちんと薬莢が出るといった点はリアル要素として評価できる。
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マップは少し走るだけで端にいける程狭い。チームデスマッチでは混戦になりがちで復活した瞬間に無防備な所を敵に突かれるのもしばしば。更に悪い事にリスポン地点固定ゆえに待ち伏せを受けやすい。
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また視界が開けたマップが多いので初期はスナイパーが猛威を振るった。開けた地形には迂闊に出ることが出来ない。
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これを受けてアップグレードで武器の命中率が全体的に下がった。しかし敵を殺し辛くなってしまう弊害が生じた。
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練られていないマルチルール
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Team Assault。チームデスマッチのことである。マップの狭さが災いして、有利な地形を集団で占領すると、篭り有利な事と併せて敵は的のような状態となる。地形破壊が同じFrostByteを使った『BF』シリーズ程ない分それが顕著。
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Combat Missionモード。攻撃側と守備側に分かれ、攻撃側は目標を達成することで試合を進行させ、守備側は敵を食い止め目標・陣地を守るのが目的。早い話が『BFBC』シリーズで導入されたラッシュモードとほぼ同じである。基本守りが有利なのもラッシュモードと一緒と欠点すらも同様。
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一部マップでは乗り物が登場する時点でもはや『BF』ではないかという声も上がっている。
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シングルとマルチプレイの操作体系が別物。シングルで出来たスライディングなどが出来ず、体を傾けての覗き込みのコマンドも使えない。ゲームエンジンが違うことに起因する。
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『COD』のキルストリーク(連続キル)の代わりに敵を倒すと支援ポイントを入手でき、量に応じてUAVやミサイルなどの支援を呼べる。弊害としてポイントさえあれば呼び放題なので、負けてる方はムザムザ敵に支援ポイントを献上して更に殺されるという悲惨な状況になりがち。
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シングル同様新鮮味がない。『BF』や『CoD』に掘り尽くされたネタの再活用に過ぎないとしか感じられない。
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マルチの総評としては完全に劣化BFBCとしか言えず、こちらをわざわざプレイするなら人口の多いあちらをプレイする方がいいとしか言いようがない。なお、次作の『メダル・オブ・オナー ウォーファイター』ではリアル要素も含めて大幅に改善されることとなった。
総評
特筆すべき評価点がないものの、総合的には及第点といった出来ではある。
操作のしやすさやグラフィック等で、光る点はあるものの、今までのメダルオブオナーシリーズとは毛色が違いすぎる上に、内容の中途半端さも否めない。
対抗馬の『CoD:MW』シリーズと比較しても、シングルやマルチの出来で見劣りし、グラフィックだけが辛うじて勝っている程度ではあるが、実際の戦場でのシチュエーションを主観で体感できるといった点は評価できる。
余談
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マルチプレイでプレイヤーがターリバーン兵に扮してアメリカ兵を殺害できることから米軍や遺族、関係国から批判を受けた。
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米軍の要請で基地内のゲームショップでは販売を禁止する要請が出された。ちなみに『CoD:MW3』等は普通に販売されている。
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時期的に『バトルフィールド3』の当初の発売予定と近いことから、DICEが関わっていることで叩き台として作られたのではという声も上がっていた。
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予約限定のリミテッド版(海外限定)には『BF3』のベータテスト参加権が同梱されていた。『BF3』のベータテストを釣り餌にした売り方も旧来のファンから反感を買っている。
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海外PS3のTier 1 Edition(欧州版)と北米の限定版にのみ『Medal of Honor:Frontline(邦題:『メダル・オブ・オナー 史上最大の作戦』)』のHDリマスター版が同梱されている。
その後の展開
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後にシングル開発元のDanger Closeは次作である『メダル・オブ・オナー ウォーファイター』発売の翌年にスタジオが閉鎖されてしまい、Danger Closeの開発部門にいたメンバーは、新しく立ち上げられたEA DICEのロサンゼルス支部(EA DICE Los Angels)へそのまま移籍し、『バトルフィールド4』及び『バトルフィールド1』の開発に携わっている。
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『ウォーファイター』以降は長らく途絶えていた『メダル・オブ・オナー』シリーズだが、2019年9月にVR専用タイトルである『Medal of Honor: Above and Beyond』が発表、2020年12月10日に発売された。
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開発は『Titanfall』や『Apex Legends』で知られるRespawn Entertainmentで、『CoD:MW』シリーズを開発するInfinity Wardの元スタッフによって立ち上げられた会社である。創設者の経歴をさらに辿ると『Medal of Honor: Allied Assault』を開発した「2015,inc」にたどり着く。
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この「シリーズの名を上げた開発チームの元幹部メンバーが立ち上げたRespawn Entertainmentが『メダル・オブ・オナー』をリスポーンさせる」というドラマチックな展開は、世界中のシリーズファンを歓喜させた。
最終更新:2024年03月13日 09:25