メダル・オブ・オナー ウォーファイター
【めだるおぶおなー うぉーふぁいたー】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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プレイステーション3 Xbox 360 Windows XP~8
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発売元
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エレクトロニック・アーツ
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開発元
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Danger Close Games
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発売日
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2012年11月15日
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定価
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【PS3/360】7,665円 【Win】6,688円
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レーティング
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CERO:D(17才以上対象)
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判定
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なし
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メダルオブオナーシリーズ
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概要
『メダル・オブ・オナー』シリーズの作品で、現代戦シリーズの1作目である『メダルオブオナー (2010)』の続編。
ミッションの内容については、前作と同様にTier 1 オペレーターが実在の出来事を元にシナリオを書き下ろして作られており、中には映画化された事件と同一のものも含まれている。
グラフィックなどは『バトルフィールド3』のFrostbite2エンジン譲りで非常に美麗だがバグが非常に多い。
評価点
ミリタリー描写のリアルさ
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元デルタフォースの隊員であるラリー・ヴィッカーズ氏が開発に携わっており、前作よりもリアリティが増した描写はミリタリーマニアにも大評判。
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銃の正規刻印やボルトリリースの起き上がり、機関銃のオーバーヒートとジャムクリア、スナイパーライフルを構える際に帽子を外す動作、海から上陸したSEALs隊員が銃のチャンバーから水を抜く動作、ブリーチングをする際、ドアを蹴飛ばすのか蝶番をショットガンで吹き飛ばすのかバールを使っててこの原理でこじ開けるのか選ぶことができたり、敵から拾った武器は別のFPSのように完全に今持っている武器を置き換えるのではなく、一時的に拾っているだけで弾切れ、もしくは武器の切り替えを行うと投げ捨てる等、2012年当時としては革命的と言える様なリアルな描写が多い。
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また、操作キャラの所属する部隊によって同じ銃でも撃ち切りのリロードモーションが微妙に変わる差別化もなされている他、銃の迷彩も『CoD』シリーズのように現実感の薄い派手な物が少ない為、それらに慣れているプレイヤーには地味に感じる可能性があるが、リアル要素としては満点である。
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本作の為に実銃が提供されている他、現役のDEVGRU隊員に取材を行っている(参照)。
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本作以降は徐々に銃を実名で出すことがゲーム業界で憚られるようになっていった為、ある意味では一つの到達点に達していると言える。
ドラマ性が増したストーリー
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前作は全体的にやらされてる感が強い印象があったが、今作ではよりドラマチックさが増しており、戦争映画のような体験ができるようになった。終盤のシナリオ「ラビットの為に」は、前作をプレイしたプレイヤーであれば号泣必至である。
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なおキャンペーンの一部は前作と同様に実話を基にした内容となっており、マースク・アラバマ号乗っ取り事件といった映画化された有名な事件もベースとなっている。
使いまわしだった前作から大きく改善されたマルチプレイヤー
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前作は『BFBC』シリーズの下位互換と言える出来だったが、今作ではマルチとシングルでのエンジンが同じであるため前作のような全く別物という現象は起きていない。
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前作では役職がライフルマン、スペシャルオプス、スナイパーの3つしかなくキャラの個性や武器の種類もかなり乏しかったが今作では榴弾が使えるアサルター、近接特化のデモリッション、狙撃特化のスナイパー、索敵特化の特殊部隊、補給兼弾幕特化のヘビーガンナー、強装弾が使えるポイントマンと6種類に増え、それぞれの役職に12の特殊部隊と武器のバリエーションがある上、銃もかなりカスタムができるので個性に欠けるということは本作にはない。
問題点
とにかくバグが多い
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前作同様バグが多く、進行不能になるものも存在する。
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序盤の狙撃ステージにてロケットランチャーの兵士を狙撃するのだが、当たっていなくても味方NPCが「命中」と言ってしまい、そのまま延々とセリフを繰り返して進行不能になるなど。
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マルチプレイヤーではコンシューマー版だと効果音が音ズレする、何故か敵がバディになる、銃のモデリングが消える、ヘビーガンナーがLMGのバイポッドを立てた状態でサイドアームに切り替えると視点が胴体のモデリングの中にめり込んでバグってしまうなどの不具合が発生する。
マルチプレイヤーのバランスが悪い
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EBR、AK-103、M240といった高威力の銃が強く、それ以外の銃で撃ち合えば一方的に負けてしまう。
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一部の兵科が異常に強く、相手に効果音は聞こえど、姿を晒さずに一方的に敵の場所を索敵でき移動速度も速い特殊部隊や、強装弾を使用できる為に出会い頭の撃ちあいに勝ちやすく、威力の高いAKが使える上にサイドアームはショットガンを持っているポイントマン、サイドアームが強力で且つ胴体にヒットすれば一撃でキルできるスナイパーを使えば一方的に敵を嬲ることができる。
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マップによってはリスポーン地点に敵の射線が通る場所があり一撃でキルできるスナイパーを使うことで理不尽に狩られてしまったりリスポーン直後なのに瀕死、ということもしばしば。
完全にライバルと逆転したストーリー性
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戦場の一人の兵士の視点で作りたい、という理由で『MoH』の開発から抜けたスタッフが作った『CoD』シリーズは兵士が少人数で無双するような作風となり、本作は戦場の一兵士の視点になるという完全に作風が逆転してしまった。
終盤のとあるキャラの扱い
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前作から登場していたキャラが突拍子もなくあっさり殺されてしまう。
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前作から登場し、思い入れが多い人が多かった人気キャラだけにこの扱いはあんまりと言える。
ディティールが雑な箇所がある
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兵士のヘルメットに顎紐が無かったり、実銃ではチャージングハンドルが射撃と連動しないはずの銃が連動して動いている、キャンペーンのチュートリアルの際に操作キャラが持っている銃がAKにもかかわらずM4のマガジンを渡してくる、前作であれだけこだわっていたAKバリエーションが雑なキメラモデルに纏められる、AKのセレクターがリロードの際になぜかセーフティに入っている、グロックのスライドの後端の部分が撃った時連動して動かない、民間用フルオートシアピンが入っていない民間用銃器なのにフルオート射撃ができる、死亡した際に落ちる銃の迷彩がデフォルトカラーになる、強装弾から通常弾に戻した際の装弾数カウントにミスがある、キャンペーンに登場するモブNPCのマコ5とマコ7のモデリングがおかしく鼻と目が変形している、など。
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マップに固定された機関銃ならまだしも、サイドアームの弾薬とLMGの所持弾薬が無限というのも違和感が大きく緊張感が削がれる。
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また、マルチプレイヤーのシチュエーションも味方の特殊部隊同士が撃ちあっているのは違和感が大きい。
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プレイには支障がないものの、リアル描写を追求するならディティールにもこだわってほしかったという意見は多い。
誤訳が多い
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燃料タンク(tank)を戦車と誤訳する、艦橋(bridge)を橋と誤訳、極めつけは「This is US Navy. (こちらはアメリカ海軍だ!)」という警告の言葉を「これがアメリカ海軍だ!」と訳す等。また、キー設定では90度左に回転するキーの名称が「左にヨー」という一見意味不明な誤記がなされている。
字幕に切り替えられない
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この手のミリタリー系ゲームは臨場感を求めて英語音声日本語字幕でプレイしたいというプレイヤーも多いが今作は字幕に切り替えることができない。
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同じエンジンを使った『BF3』は切り替えることが可能だった為、『CoD』シリーズのようにエンジンの問題で切り替え機能が不可能というわけでもないはずなのに何故か本作には搭載されていない。
総評
評価出来る部分はかなり多いのだが、バグの多さとゲームバランスの悪さが相まってミリタリーを重視しないゲーマーからの扱いは劣化した『CoD』という残念な評価に終わり、マルチプレイヤーも発売数カ月で過疎ってしまった。
CS版ではPCと比べて画質がかなり粗く、スペック差故の処理落ちもあり、バグがさらに顕著であるため、PC版より評判が悪い。
本作の失敗により、開発元のDanger Closeは2013年5月、親会社であるEAの意向により『バトルフィールド』シリーズのデベロッパーであるEA DICEのロサンゼルス支部の設立直後、大半の開発人員がそちらに移籍する形でスタジオが閉鎖された。
シリーズ展開もRespawn Entertainmentが手掛けたVR作品『Medal of Honor: Above and Beyond』(Win)が出る2020年まで8年間シリーズが凍結されることとなった。
余談
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本作の為にラリー・ヴィッカーズ氏はオリジナルのカスタムM1911と制作しており、キャンペーンでダスティがPCの前に置いている他、マルチプレイヤーのデモリッションクラスのサイドアームとして使用可能。
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ゲームオリジナルの実銃が提供されるのは極めて異例であり、実銃が提供されたゲーム作品は後にも先にもこのゲーム以外には存在していない。
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本作の高品質な銃のモデリングは『BF4』に流用されている。
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本作で兵士が近接攻撃の際に振る斧はSOG Voodoo HAWKというものであり、キャンペーンのキャラであるブードゥーとたまたま被っている…と思いきや本作の為に作成された軍用トマホークである。
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他にも部隊章パッチ等も実際に使用できるものが制作されている。
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本作の製作の為に取材された現役のDEVGRU隊員の7名は機密漏洩で処罰を受けている(参照)。
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現在では2019年発売の『Call of Duty: Modern Warfare』といったさらにリアルさを強化したFPSも登場しているが、近年の銃や装備品の版権問題による架空ディティール化や現実感の薄いド派手な有料スキンを嫌うミリタリーマニアからは「最高傑作」と現在でも根強く愛されており、過疎なマルチプレイヤーも夜中であれば一部屋の半分埋まる程度には人が集まったりもする。現在リアル系FPSが台頭していることを考えると先見の明は確実にあったと言えるだろう。
最終更新:2023年06月27日 16:36