ぐわんげ

【ぐわんげ】

ジャンル 弾幕シューティング
対応機種 アーケード
販売元 アトラス
開発元 ケイブ
稼働開始日 1999年
判定 良作
ポイント アクション要素が強い陸戦弾幕STG
和風ホラー + グロテスクな世界観
グロ要素と特殊な操作は賛否両論
長い時を経て家庭用移植が実現
「戦車出せ!」
ケイブSTGシリーズ


概要

怒首領蜂』『エスプレイド』に続くケイブ製の縦弾幕STG。
室町時代を舞台に、独特な操作で式神を操りつつ進む純和風陸戦型STGである。


特徴・評価点

  • 8方向レバー+2ボタン操作(ショット、八相弾(ボム))。筐体によってはショット連射ボタンが付けられているものもある。全6面。
  • 画面上方を前方とする縦スクロールを採用しているが、部分的に上を向いたままの横スクロールになる箇所がある。
  • 怒首領蜂シリーズや『エスプレイド』などと同じく井上淳哉氏がデザインを担当している。
    描き込まれた和の風景は美しく、猫蜘蛛や壺姫などの妖怪は生々しく恐ろしく、そしてグロい。
    • 徹底して横文字を使わない和風演出で、ボムは「八相弾」と、ゲームオーバーは「夢の終わり」と表される。ネームエントリーの文字選択画面が「いろは歌」になっているのは、本作くらいであろう。
    • 戦車にこだわるIKD(池田恒基)氏らしく、この世界観であっても多彩な木製戦車が登場する。車体を大八車のように引く人間や発射ギミックなどのグラフィックも見ていて楽しい。
  • 『怒首領蜂』以降のCAVEの弾幕STGにならい、本作もショットボタンの押し方で切り替わる二種類のショットを基本としているが、その形式が少々特殊。
    • 他のゲームにおいては「通常ショット(攻撃範囲が広く高速で動けるため、大量の雑魚敵を薙ぎ払うのに向く)」と「低速レーザー(攻撃範囲は狭く、移動も低速になるが威力は高く、弾幕を潜り堅い敵を潰すのに適している)」の二種類が用意されているが、このゲームで低速レーザー操作を行った場合「式神」という特殊な存在が攻撃を行う。
    • ショットボタンを押し続ける間は式神が出現し、その状態では式神を本来の移動速度で操作+自機は低速に左右移動となる。
      • 式神本体で敵に触れている間はショットの代わりに式神の位置に高威力な爆弾を投下し続ける。
      • 式神本体で敵弾に触れている間は、敵弾がしばらく紫色になって速度が大きく低下する。
        さらに爆弾攻撃で何らかの敵を倒すと速度低下状態の敵弾もすべて消滅する(=式神で敵を倒せば式神の近くの弾が消える)ため、攻防ともに有用な攻略の要となっている。
  • 弾幕STGとしては珍しく、自機は空を飛ばずに徒歩で移動する。そのため民家や壁などは越えられず、スクロールも障害物に合わせて縦横に変化する変則スクロールとなっている。ショットも障害物に阻まれてしまうため、地形越しに攻撃やアイテム回収ができる式神がここでも重要になる。
    • このシステムを活かして、最終ステージでは四方八方から鬼の姿の雑魚が迫ってくる文字通りの「鬼ごっこ」区間がある。
  • 残機制とライフ制の合いの子のような変則的なシステムになっている。
    • 式神攻撃中は本体にバリアが張られて、被弾してもライフが少し削られるだけで済み、ライフゲージ1区切り分のダメージが蓄積すると1ミスとして扱われる。
    • 一方、通常時の被弾は即1ミスとなる。
    • 低速移動時に防御力が上がり、多少の被弾は許容されるという意味でやや敷居は低くなっている。ただしミスに至らない被弾をした際の無敵時間は非常に短いため、状況によっては連続被弾によりあっさりミスという事態も普通に起こる。
      • 体力回復回数は(マス目を超えない小回復アイテム、1マス回復の機会ともに)多め。特に最終ステージでは中盤に3ライフ全回復アイテムがあることもあり、ケイブシューとしては比較的余裕のある部類。
  • スコアシステムもやや独特。敵の撃破ではなく各種の銭を拾うことでコンボ数が増え、左上のドクロゲージが切れない限り維持される。
    • 銭はショットで敵を倒すと出てくる他、前述の式神で弾消しを行うと弾が銭に変化して自動回収される。そのため基本的には積極的に式神を使って弾を消して行くことになる。
      • 一方で、ショットで敵を倒した方が基本点が高い銭を落とすため、弾が少ない地帯やザコが大量に出てくる地帯ではショットを優先的に使って稼いた方がよく、スコアアタックでは使い分けが重要となる。
    • さらにドクロゲージとコンボがどちらも十分に溜まっていれば、ショットを撃ち込むだけで小銭が発生するようになる。コンボはステージ間で引き継がれるため、規定のコンボ数に達したらゲージとコンボが切れない限り常に銭アイテムが降り注いでくるようになり、非常に賑やかで爽快。(そして画面が見づらい)
      • ドクロゲージは銭の出現か式神攻撃の命中で増加する。つまり敵を倒さずショットを当てているだけでは減少してしまうため、ゲージ維持のために式神攻撃を当てて上昇させる必要がある。
      • ボス戦で稼ぐには特に「式神攻撃を少し当ててゲージを上げ、下がるまでの一瞬だけショットで小銭を稼ぐ」行程を繰り返す「きざみ撃ち」というテクニックが要求され、「式神の出し入れによって小刻みに自機の速度が増減する」という現象により奇妙なプレイ感を楽しめる。

賛否両論点

  • 純和風の世界観を美しく表現したビジュアル面は高品質。しかしこれはキモくてグロい妖怪達もまたリアルに表現してしまっており、ここは好みが大きく分かれるところである。
    • 蜘蛛の体に猫の顔という醜悪な妖怪が八本の足をザカザカと動かして迫ってくる猫蜘蛛、最初はお城に車輪の付いた和風巨大戦車だがダメージを与えると外壁が壊れて巨大な一つ目の顔面がむき出しになる獣社(けものやしろ)、そして何よりタイトルネームを飾るラスボスの第一形態ぐわんげ様は筆舌に尽くしがたいグロキモさ。公式サイトの敵キャラ一覧でも見ることができるが、耐性のない方が見るのはとてもオススメできない。
      • 『ぐわんげ様』の見た目や攻撃はとてもグロく、後の『ドラッグ オン ドラグーン』の敵(通称:ダンシングベイビー)先取りとも言える。多くのプレイヤーにトラウマを植え付けた。
    • 背景も色んな意味で手を抜いておらず、生贄として斬首された人間の死体や巨大妖怪に上半身を食いちぎられた牛の残骸など、事あるごとにプレイヤーの肝を試してくる。
      • この徹底したキモさ、グロテスクさは合わない人はとことん合わないが、おどろおどろしくも美しい高品質なグラフィックに対する評価の声も高く、良くも悪くもプレイヤーに強い印象を与えた事は確かであろう。
  • 独特なシステム
    • 上述した通り、本作は類を見ない個性的なシステムを取り入れており、それらを楽しめるかどうかでも評価が大きく変わる。
    • 基本的にはケイブシューらしい弾幕ゲーであり、パターン構築と弾避けスキルは基礎として求められる。そこに式神を使いこなす特殊な操作が加わるため、従来の作品にはなかった新たな難しさへの対応も求められる。
  • ゲーム中では詳しく語られないが、背景設定がかなり陰鬱。
    • 例えば自キャラである人間と式神には、「式神を宿すと人間は精気を奪われ1年で死に至る」という設定がある。自キャラとしてシシン・力王、賀茂源助・麒麟丸、柊小雨・八飛車の3コンビを選択できるが、シシンと力王は互いに利用する関係、源助と麒麟丸は互いを消し去ろうと狙う関係、小雨と八飛車は心を通わせているが小雨の命を救うために八飛車が死を覚悟しているという関係である。
    • シシンは人喰いの鬼神である力王をある目的のために身に宿して、自らの延命のためにも人を襲い続けている。言ってしまえば殺人鬼である。
    • 敵方にも悲劇的な背景を持つ者が多い。ラスボスの尼魏主とぐわんげも、どちらかと言えば不幸な運命に翻弄された立場と言える。
    • こうした設定は前述の公式サイトで語られている。物語が暗く重いこと自体は問題ではないが、好みの分かれやすい点とは言えるだろう。

問題点

  • 式神展開中の操作が非常に難しい。
    • 式神展開中は自機の移動が左右の低速移動のみに制限される。一方で式神はレバーを入れた方向に大きく移動するため、式神を敵に貼り付ければ自機は動けず、弾避けのために自機を動かせば式神は敵から離れてしまう。そんな癖の強い操作性に慣れることにまず苦労する。
    • 式神で触れることで敵弾を低速化できるが、触れ損ねた敵弾は通常速度で飛んでくる。式神展開中は自機も低速化しているので、式神を引っ込めて回避すると今度は敵弾が通常速度になる。自機での攻撃と回避、式神での攻撃と防御(敵弾低速化)を常に、かつ適切に使い分けねばならず、その操作の難しさと煩雑さは、STGというジャンルにおける最高峰と言っても過言ではない。
    • あまりの操作難度の高さに、製作者自らが「免許ゲー」と評したほど。その難しさに燃えたプレイヤーもいたものの、単に難しいだけではなく、「弾幕STG」と「2キャラを1人で操作させる」ことの食い合わせがあまりにも悪く、洗練されていない点は否めない。
  • ゲームの仕様上、式神展開を長時間続けることが有利になるが、爆弾の爆風で様々な凝った演出が見えにくくなってしまうことが多く、折角の世界観を堪能しにくい。
    • これは井上氏も失敗点として挙げており、以降のケイブシューでは爆風をやたらと出すようなエフェクトは極力抑えられている。

総評

世界観もゲーム性も癖の強い作品だが、拒絶する人はとことん拒絶し、ハマる人はとことんハマる作品。ケイブシューの中でも他にはないシステムを多数取り入れた異色作と言えるだろう。


余談

  • 制作コンセプトは、第4回 和風美と怖さについて(キャラデザを担当した井上淳哉氏のサイト)にて語られている。
    • プログラマーが「戦車だせ! 戦車!」とぼやいていたらしいのはその筋では有名な話。
  • 有名クリエイターにも本作を愛する人物は多い。
    • 初音ミクを初めとしたVOCALOIDシリーズの絵師:KEI氏は本作の大ファンである(特に巫女の自機キャラ:柊小雨がお気に入りとか)。
    • 和風弾幕STGシリーズ『東方Project』を手掛けるZUN氏は自著の中で本作の演出を高く評価している。
  • ちなみに本タイトルの「ぐわんげ」とは最終面である獄門山の神(ぐわんげ様)による「ぐゎんげぐゎんげ」という鳴き声から。不吉らしい。
  • 本作は最初「ずずり」というタイトルにする予定であった。
    • 「ずずり」って何? それに答えられる者は誰もいない(スタッフ含めて)。どうもジュース「ごくり」から閃いたらしい。
  • 公式サイトの設定やエンディングを見ると、すぐに分かる設定上の矛盾点が多い。STGというジャンルの性質上、特に気にすべき問題ではないのが救いではあるが…。
+ エンディングのネタバレ含む
  • 「尼魏主を倒して式神を滅ぼせ」と言われて旅立ったはずの小雨が、エンディングでは「尼魏主を倒すことで式神が 自動的に 消滅する」ことを知らなかったともとれる言動をする。
  • ラスボス「尼魏主」は、「北条氏の末裔」で「幕府に追われ」「妖怪として四世紀生きた」。鎌倉幕府の滅亡は1333年。そこから四世紀ということはどう短く解釈しても1600年代。ゲームの舞台は室町時代末期とされているが、とっくに江戸時代である(1603年~)。
  • 井上淳哉氏のデザイナーとしての手腕はゲーム業界外でも高く評価されているようで、NHKのテレビドラマ「大江戸もののけ物語」や映画「妖怪大戦争(2005年版/2021年版の両作)」それぞれで妖怪デザインに起用されるなど、ゲーム以外の映像作品にも活動の場を広げている。
  • 独特な式神システムだが、1990年にUPLより発売された『宇宙戦艦ゴモラ』に、細部は違うもののよく似たシステムがあった。本作が参考にしたかどうかは定かではないが。

その後の展開

  • アトラス販売ということもあって移植は絶望視されていたが、2010年11月10日にXbox LIVE ARCADEでDL配信された*1。レーティングはCERO:C(15歳以上対象)。
    • このXBLA版はAC版の完全移植に加え、イベント限定稼働の高難易度バージョン通称「青版」とシステム変更バージョンの「360モード」を収録しており、これ1本で本作を全て遊びつくせるようになっている。
    • 縦画面モードや他のSTGと同程度のオプションも完備されており、ほとんどパッケージソフトと変わらないながら安価とお得な内容である。
    • 360モードは左スティックで自機移動、右スティックで式神移動、ショットと式神攻撃の併用可能・ 敵弾の低速と弾消しが全画面に及ぶ ・道中に低耐久の敵が出現し続けるなど、2スティックパッドと式神システムをピックアップしつつ全体的な難易度を下げたモード。
最終更新:2024年07月09日 11:42

*1 後方互換に対応しておりOne/XSS/XSXでもプレイ可能。