美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負
【おいしんぼ きゅうきょくのめにゅーさんぼんしょうぶ】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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新正工業、バンダイ
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開発元
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トーセ
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発売日
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1989年7月25日
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定価
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5,800円(税別)
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判定
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バカゲー
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ポイント
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変な選択肢&バッドエンド 原作イメージぶち壊しのバカ展開 アンキモ、アンキモ、アンキモ!
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美味しんぼシリーズ 究極のメニュー三本勝負 / DSレシピ集
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概要
人気グルメ漫画『美味しんぼ』を原作とするコマンド選択型アドベンチャーゲーム。
主人公・山岡士郎の意味不明な言動、珍妙でおかしな選択肢、理不尽なバッドエンドの数々から、FCを代表するおバカアドベンチャーとして知られている。
ゲーム内容
タイトルの通り全3章構成で、第1章・第2章は原作のエピソードをアレンジしたもの、第3章は本作オリジナルのエピソードになっている。
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第1章
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「究極のメニュー」にフォアグラを入れようとする食通たちにケチをつけた山岡は、1週間以内に「フォアグラよりももっとうまいもの」を用意することになった。
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第2章
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接待で出された料理に激怒した京極万太郎に対し、チャンスが欲しいと進み出た山岡は、彼の持つルノワールの絵を借りるために、もう一度京極を接待することになった。
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第3章
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京極の接待に成功した山岡は、京極から知り合いのラーメンチェーンの社長のために「究極のラーメン」を作って欲しいと頼まれる。初めは興味がないと断った山岡だが、そこに現れた海原雄山にケチをつけられ、「究極のラーメン」作りに挑むことになった。
いずれも『美味しんぼ』ではおなじみの展開だが、以下のトンデモ成分が最初から最後までにまんべんなくちりばめられてしまったために、とてつもない電波シナリオになってしまった。
バカゲー要素
概要で述べた通り、『美味しんぼ』の作風に沿わない変な言動・選択肢・展開が多い。
アンキモ、アンキモ、アンキモ!
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ネタバレ注意
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第1章の中盤、「フォアグラよりもうまいもの」を調べるうちにアンキモに行き着いた山岡は、情報を得るためにアンキモを出している小料理屋を訪れるのだが…。
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店を覗こうとすると、彼を不審者と勘違いした警官が登場する。
そこで現れる選択肢が、原作自体に戦闘要素がみじんもないにもかかわらず「たたかう」「にげる」「じゅもん」の3つ。
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「にげる」を選ぶと警官に回り込まれて三択に戻され(何度も選んでいれば逃げられる)、「たたかう」を選ぶとこちらの攻撃は外れ、警官から10000ダメージを受けてゲームオーバー。
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「じゅもん」を選ぶと山岡が「アンキモ、アンキモ、アンキモ!」という謎の言葉を発し、警察に逮捕されてゲームオーバーになる。
『美味しんぼ』の世界観とまるで合わないこの展開は、本作を象徴する迷場面として人々の記憶に刻まれることになった。
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この場面での正解は「「店の前にシマアジが落ちている!」と嘘をついて店の主人を誘い出し、情報を聞き出す」。これもこれで相当変な展開である。
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やまおかは、とつぜん、よのなかがイヤになってしまったようです。
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ネタバレ注意
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山岡がアンコウ漁の名人とともに海に向かっていると、アンキモを洗うために持ってきた酒を漁師が欲しがる。
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ここで酒をあげすぎると酒がなくなってゲームオーバー。
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だからといってあげないでいると、気が乗らないと言い出して次の日に出直すことになり、これを何日も繰り返すと約束の日に間に合わなくなってゲームオーバー。
手に入れたアンコウを調理する時も正しい手順をほぼノーヒントで選ばなければならない。選択肢は変なものばかりで、ゲームオーバーになる理由がどれもこれもバカバカしい。
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「なぐる」→山岡の腕の骨が折れてゲームオーバー
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「たたく」→アンコウがグシャグシャになって食べられなくなりゲームオーバー
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「めったぎり」→どこがアンキモか分からなくなってゲームオーバー
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「すてる」→「やまおかは、とつぜん、よのなかがイヤになってしまったようです」という迷台詞ともにアンコウを海に捨ててゲームオーバー
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ネコのまね
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ネタバレ注意
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第1章で美食倶楽部に行くと、散歩に出ようとした雄山に遭遇しそうになることがある。
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このとき山岡はネコの鳴きまねをしてごまかそうとし、雄山も「さすがの雄山もネコは料理できない」と高笑いをして行ってしまう。
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これと同じ展開が第3章にもあり、今度は「キリンのまね」「ゾウのまね」「バカのまね」「ネコのまね」と選択肢が4つに増える。ここでも「ネコのまね」を選ぶと雄山は気づかずに行ってしまう。(この場合は「ネコどもにも美食倶楽部の料理の奥の深さがわかると見えるわ」になる)
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この2つのイベントは美食倶楽部に用がないときに行けば何度でも見られる(一度見たあともう一度美食倶楽部に戻っても、出て行ったはずの雄山が律儀に現れてくれる)。
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「ゾウのまね」に至っては「な、なんと!!今のは、象の鳴き声ではないか。この辺に象がいるとは、この雄山、驚きだわい!!」と真に受けて驚く。
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問題点
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原作にそぐわぬおバカネタ要素の多さは上述の通りだが、そのどれもがゲームオーバーに直結する初見殺しになっており、非常に理不尽に感じられる。
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パスワードは選択肢ごとに表示させられるので、メモしておけばよいのだが、即死選択肢密集地帯でいちいちメモ&入力をしなければならないのも面倒である。その場コンティニューが出来るという点では『シャドウゲイト』や『AKIRA』の方がよほど良心的である。
評価点
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展開がおかしいのは主に第1章であり、第2章・第3章の展開はまともである。
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栗田ゆう子、海原雄山、東西新聞社の同僚、美食倶楽部の面々、料亭「岡星」の主人などおなじみの人々も多く登場しており、原作を完全に無視しているわけではない。
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グラフィックやBGMの質もFCとしては及第レベルであり、キャラクターも原作をよく再現できている。
総評
れっきとした原作もの、しかも真面目なドラマであるにもかかわらず繰り広げられるトンデモ展開には「どうしてこうなった」と言いたくなるが、独特の「味」がある。また、シナリオとキャラクターは原作をきちんと踏まえているため、キャラクターもののゲームとしては満点とはいかずともまずまずの及第点は言えるレベルである。
総じて、原作無視のクソゲーというわけではなくツッコミどころの多い「バカゲー」といったところであり、トンデモ展開を好意的に受け止められるならやってみて損はないかもしれない。
余談
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本作のシナリオは原作者自らが手がけたものだという噂があるが、真相は不明。
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第3章の内容は原作第8巻の冷やし中華の回(「スープと麺」前後編)に似ており、これが元ネタと思われる。
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第2章の展開は概ね原作通りであるが、岡星が米粒の大きさを一粒一粒揃えて炊くという描写は、後のエピソードが元になっている。どちらももてなしを題材にした話だけに親和性は高い。
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第3章では銀座に移動する場面がある。銀座は4つのエリアに分かれていてそれぞれ移動ができるのだが…
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実は最初の区画以外には行く必要がない。
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1つには辰さんがいて伏線っぽい会話をするのだが、特にその後に続くイベントはないし、他の2つにはイベント自体がない。
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何かやりたかったのかもしれないが没になったのだろう。
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『月刊少年ジャンプ』に連載されていた『われらホビーズ ファミコンゼミナール』というマンガのとある回に、本作をネタにしたものがある。同じ一ツ橋グループとはいえ、大丈夫だったのだろうか?
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流石にタイトルの一部が伏せ字になっていたが。同じようにネタにされたソフトは他に『AKIRA』がある。
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OPの「展覧会の絵」をはじめ、「エリーゼのために」「トルコ行進曲」などの有名なクラシック音楽がBGMに使われている。
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なぜか警官との戦闘場面には専用の曲が用意されている。
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『ゲームセンターCX』で取り上げられた際には、放送尺に若干足りないと判断されたのか、「バッドエンドコンプリート」という挑戦が追加された。
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この他にも2017年に行われた『RTA in JAPAN2』にて、何故かアンキモ!までの速度を競う「美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負シングルエリミネーショントーナメント」なる珍妙なイベントが行われた事もある。
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『究極のメニュー三本勝負』というタイトルであるが、2章のエピソードは元ネタ含め「究極のメニュー」とは全然関係ない話であったりする。
最終更新:2024年06月07日 15:07