RAY CRISIS
【れいくらいしす】
ジャンル
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2D縦スクロールシューティング
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対応機種
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アーケード(G-NETシステム)
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販売・開発元
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タイトー
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稼働開始日
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1998年
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備考
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後にWindowsとプレイステーションに移植
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判定
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良作
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レイシリーズリンク RAY FORCE / RAY STORM / RAY CRISIS
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未来世界、人々は全世界を結ぶニューロネットワークシステム"Con-Human"の管理の下に栄華を極めていた。
しかし、増え続ける人口をさばくための望みであった「外惑星への移民計画」は計画に適合する惑星が発見されなかったことで事実上凍結され、代わりに同時進行していた「衛星セシリアへの移民計画」が中心となった。
"Con-Human"は新たな人類存続の手段を問い続けることになるが、その方法が欠落しているというパラドックスは、徐々にその思考を歪んだものへと変化させていく。
それから20数年後。機械神経学者レスリー・マクガイアは、クローン人間を"Con-Human"に接続して「有機体と無機体の整合性理論」の実験を行っていた。
しかし、実験途中で突然"Con-Human"は接続を拒否し、クローンの意識体をネットワーク内に取り込む。
"Con-Human"は実験の過程で、人類存続の方法として人類と機械との「融合」に新たな可能性を見出し、クローンの意識と機械との「融合」から発生した擬似生命を守るべき種と判断、即ち「人類排除(人体と意識の分離)」という手段を選択したのである。
レスリーはニューロネットワークとの接続媒体「Wave Rider」を使用し、暴走を食い止めるために自らネットワークに侵入した。
彼は疑似画像化されたネットワークの世界でクローンの意識体を発見するも、その意識体は新しい生命種として、自己保存のために最後の砦たる"Con-Human"の非常用プログラムまでも侵食し始めていた。
果たして、この暴走を止められるだろうか? それとも…?
運命の分岐は、すぐそこまで来ている…。
もし運命が変えられるなら過ちを犯さずに済むのだろうか?
その時が分かったとして正しい判断を下せるだろうか?
何度やり直したとしても、運命を変える事など不可能なのかもしれない…
しかし、そこに生きた証だけは違うと信じたい。
概要
~少女の行為はもう終わったのか~
タイトーのシューティングゲーム『レイシリーズ』の第三作目。シリーズ最終作であると同時に、第一作『レイフォース』の前日譚でもある。
『レイシリーズ』はタイトー音楽チーム・ZUNTATAのTAMAYOが手掛ける名曲の数々や、STG界に新風を齎した「ロックオンレーザー」、STG史の中でも際立つ悲しく美しいストーリー、ゲームの背景で「魅せる」手法などなどの、「斬新かつカッコいい演出やシステム」でシューター達を魅了してきた。
そして新たな要素を多数盛り込み、タイトーは新たな「RAY」をゲームセンターに送り出したのである。それこそがレイクライシスであった。
基本システム
~99%じゃ駄目だ、100%じゃなきゃ駄目なんだ~
プレイヤーは「Wave Rider(WR)」を操作し、「Con-Human」の非常停止システムへの接触を目的としてステージをクリアしていく。ステージは全5面で、最終ボスを倒した後に特定の条件を満たしていれば隠しボスが登場する。
基本システムは前作『レイストーム』がベースとなっており、ショット・ロックオンレーザー・ラウンドディバイダー(所謂ボンバー。前作のスペシャルアタックに該当)の3つの攻撃を駆使して戦い抜く。
ロックオンレーザーは多重ロックを重ねるほどに得点倍率が増加。また、単一の敵に最大までロックして発射すると、高威力・広範囲の爆風が発生するハイパーレーザーが発射される。
ラウンドディバイダーは前作と同じく1ゲージ制。ロックオンレーザーで敵を撃破するとゲージが溜まり、満タンになると一度だけ使用可能になる。
なお、前作にあったショットとロックオンレーザーが共用ボタン化+スペシャルアタックが1ボタン発動になる「Autoモード」は廃止された。
以下、本作独自の要素、変更点について列記する。
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<プレイ経過の保存>
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TAITO G-net基板はプレイヤーデータを記録出来る。現在主流のカード記録型ゲームの先駆け……と呼べるかもしれない。
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プレイ時にプレイヤーネームとパスワードを記録し、以降のプレイではそれをゲーム開始時に入力する事でプレイヤーのデータを認識、ハイスコアや経験したマップパターンを記録しておくというもの。
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後の『テトリス ザ・グランドマスター3 -テラー インスティンクト-』(TAITO Type X)にも同じ形式が採用されている。
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<3つの機体>
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前作の自機と似た性質のWR-01RとWR-02Rに加えて、新機体のWR-03が登場。
いずれも「癖がなく使いやすい」「強力だが癖がある」「非常に使いやすいがスコア稼ぎをしようとすると苦行」と、一長一短の性質を持つ。
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性能詳細
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機体名
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ショット
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ロックオンレーザー
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ハイパーレーザー
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ロックオン数
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スコア倍率
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補足
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WR-01R
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ワイドショット (広角範囲攻撃)
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ホーミングレーザー (多段同時攻撃)
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広範囲爆撃
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5~8箇所
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最大256倍
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無し
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WR-02R
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ツインレーザー (前方残像攻撃)
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サンダーレーザー (順行追尾型攻撃)
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広範囲爆発攻撃
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8~16箇所
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最大256倍
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サンダーレーザーは 追加ロックオン可能
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WR-03
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ホーミングミサイル (全方位誘導攻撃)
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フォトントーピード (連続光子魚雷攻撃)
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未搭載
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8~24箇所
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最大255倍
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隠し機体
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機体名
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備考
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WR-01R
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スコア倍率が256倍になった・ショットがより拡散するようになった等、前作のR-GRAY1から大きな調整が入った。 ロック数が少ないため高倍率を狙いやすいが、ロック→発射のタイムラグが長く、大編隊には押し潰されやすい。 ハイパーレーザーも同様だが、前作よりも使い所が多くなっている。 長所と短所を明確にされ、WR-02Rに負けず劣らず稼げる性能に調整されている。
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WR-02R
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性能的には前作のR-GRAY2とあまり変わっていない。 ショットは青白い切れ目のない一点集中型のツインレーザー。効率よくダメージを与えられるが範囲が狭く使いにくい。 サンダーレーザーは移動しつつ攻撃できて使いやすいが、ロック数が多いので高倍率を狙うにはそこそこ熟練が必要。 ハイパーレーザーはロック数の多さ故に発動しにくいが、その威力は折り紙つき。前作と比べ攻撃範囲が向上している。 WR-01Rと比べると使いにくさは否めないが、やはり流れるように効率よく攻撃できるというアドバンテージは大きい。
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WR-03
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本作で新規に追加された、極めて異彩を放つ性能の機体。 ショットは全方位型のホーミングミサイルとなっており、遠距離から安全に攻撃が可能。 レーザーである光子魚雷は、ボタンを押しっぱなしにすればカーソルを合わせるだけで発射する。 ヒット数=スコア倍率(魚雷を当てる毎にスコア倍率が1倍ずつ上昇する)なため倍率上昇は非常に緩やか。 最大の255倍を狙うのはミスが許されない、ハイパーレーザーもなく、稼ぐのは苦行。 ただ長時間255倍をキープできる故に一番可能性がある機体でもあり、現在01R、02Rを抑えトップだったりする。 一見ベストエンディングを見るためだけの機体に思えるが、アーケードでの解禁状況は相応に厳しい。
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<ステージ選択システム>
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導入部となる第1、ラスボス戦の第5ステージ以外は、以下の5ステージの中から3つがある程度ランダムに組み合わされてルートを形成する。
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また当時のSTGとしては珍しく、継続プレイによってステージセレクト機能を解禁すれば、自分でルートを125通りに選択できる。同じステージを複数回選ぶことも可能だが、後の方に選択された面ほど難しくなる。
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ステージ詳細
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ステージ名
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領域名
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ステージ内容
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ボス
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INTELLIGENCE PART
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知能領域
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昼の都市
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Pro-tor
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MEMORY PART
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記憶領域
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高空
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Sem-frey
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EMOTION PART
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感情領域
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砂漠
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Sem-slut
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CONSCIOUSNESS PART
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意識領域
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水中
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Sem-loke
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CONSIDERATION PART
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思考領域
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夜の都市
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Pro-tor
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<侵食率システム>
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WaveRiderは常にCon-Humanからの侵食を受けている。これは画面右上の「侵食率ゲージ」で表現され、ゲーム中は常に(最終ステージを除き)増加し続ける。敵機が画面内に存在している状況では増加量が多くなり、敵機を逃がすと更に大きく増加する。反対に敵機を撃破することで低下し、ロックオンレーザーで纏めて破壊すると大きく減少できる。
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100%になったその時点で、強制的にほぼ最高難度状態の表ラスボス戦に移行し、勝利してもバッドエンディングとなる。ただし、80%を超えるとゲージ減退率が高い敵が頻繁に出現するようになるため、意図的に狙わなければまず100%にはならない。
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5面終了時の侵食率は、AC版では隠しボスの出現条件になっている。
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侵食率が高いほど難易度は低くなるが、その場合侵食率100%のペナルティを常に覚悟せねばならない。
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侵食率に応じてボス撃破時などの得点ボーナスも決定する。基本的には低いほどボーナス点は増えるが、90%以上に引きつけてもボーナスは高くなる。
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ちなみに、データ蓄積の特典であるステージセレクトや隠し機体の解禁は隠しコマンドでそのプレイに限り一時解禁できる。当然ながらこのコマンドの存在は厳重に伏せられており、公開されたのは発売から相当経過してからだった。
評価点
~生命の風が吹く場所~
プレイアビリティの改善
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前作のロックオンレーザーは、敵機以外ではミサイルと一部のオブジェクトしかスコア倍率が掛からなかった。本作では、ミサイル・機雷・炸裂弾など一撃で破壊できるもの全てにスコア倍率が掛かる。わざと敵に機雷を出させたり、ボスのミサイル弾幕にハイパーレーザーを合わせてスコアを稼ぐ……といった稼ぎが可能になった。
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更に、アイテムを出す赤い敵は素点が通常の敵の2倍になっており、よりロックオンの順番を考えた攻略を楽しめるようになっている。
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ロックオンレーザー及びラウンドディバイダー(ボム)にも仕様変更が入り、より扱いやすくなった。
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前作まで固定式だったレーザーのロックオンサイトは、自機が画面の一番手前にいる際にさらに下に移動し続けると画面手前へ引き寄せられるようになった。ハイパーレーザーは異なる高度の敵機を巻き込めるようになり、自機の攻撃範囲は格段に上昇した。
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ラウンドディバイダーは不評だった前作の「前方爆撃攻撃」から「全方位攻撃」に変更され、更に敵弾を巻き込む事でより多くの得点を稼げるようになった。一瞬で何桁もの得点が加算される様は爽快。
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ハイパーレーザー、ラウンドディバイダー共に、これで敵を倒した際には稼いだ得点の合計が画面左上に別途表示されるようになり、合計得点の確認が容易になっている。
アイテムキャリアーの導入
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倒すとアイテムを3つ落とすアイテムキャリアーが、ステージ内に2~3機出現するように設定されているため、ミス時の立て直しが容易になっている。
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キャリアーは本体の耐久力があえて高めになっており、WR-01Rだとハイパーレーザーを狙う事が、WR-02Rだと高倍率を狙うためのロックオン数を稼ぐ事が可能。これもロックオンレーザーの性能を引き立てている要因といえる。
強化された演出
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更にダイナミックになったカメラワークとエフェクトは、前作『レイストーム』をも超える素晴らしい完成度。
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ボスを取り囲むように体力ゲージを表すリングが表示されたり、敵を撃破した瞬間に敵弾が飛散したりと、細かな部分のギミックも向上している。
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本作は2面に選ばれたステージ種類によって、ボス撃破直後以外で最終面までひとつなぎにアレンジされた曲が流れる。
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楽曲そのものは前作までと比べるとやや癖があるが、世界観やストーリーに非常にマッチしており、いずれも評価は高い。『ラベンダーの咲く庭』・『生命の風が吹く場所』・『司教は言った「それは奇跡じゃない」』・『童話の消えた森(Complete Version)』など、名曲を挙げればキリがない。
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とくに「生命の~」はゲームミュージックでの到達点の一つとも言われる。4面目でのボス戦(特に「Pro-tor」)へのシンクロ具合は鳥肌モノで、魅せプレイの際によく「1コーラス(?)聴かせて欲しい」のリクエストがある程。
泣きメロでもないが、楽曲配信のレビューで「(4面ボス戦は)泣きそうになる」なんてのもある。
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『レイフォース』の売りの一つであったシームレス演出が復活した。『フォース』と『ストーム』のそれぞれを高次元にまとめた、演出系STGの1つの完成形と言ってもいいだろう。
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BGMは4曲ともボス撃破時の無音に合わせて3分割されているが、演出として違和感なく機能している。
ファンサービス
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一部のBGMやボスが『レイフォース』のそれに酷似しており、ストーリーの繋がりを感じさせると共に懐かしさを感じさせる仕様となっている。
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特にラスト表ボスの"dis-Human"は、外観・SE・攻撃パターンと『フォース』のラスボスを踏襲した箇所が多い。
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『レイストーム』の敵も一部が登場しており、『ストーム』を意識した背景も多い。
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隠しボスを倒すと見る事が出来るベストエンディングでは後半で『フォース』を知っていると感動できる展開が用意されている。
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シリーズを意識した本作の演出は、シリーズ過去作をやりこんだプレイヤーほど強く実感させられることだろう。
賛否両論点
~聖母マリアよ、二人を何故別々に?~
複雑なストーリー
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前作までは『窮地に陥った地球人類が、最新鋭戦闘機に命運を託す』という王道の内容だった。
本作のあらすじを要約すると「暴走したコンピューターを食い止めるため、電脳空間に飛び込む」ものになっており、そしてそこまでの背景は前作同様複雑。中でも本作の設定はゲームプレイはおろか、設定資料集を見ても理解が難しいものとなっている。
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『レイフォース』に繋がる以上は仕方がないことだが、エンディングはどれもほとんど変わりのないマルチバッドエンド。
実験的すぎるBGM
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評価点でもあるが、癖の強いBGMは発売当初「ついて行けない」という意見も多かった。当時の批判意見の一つに、「BGMは同じ音が延々流れ続けるだけ」というものがあったが、その指摘は的外れというわけではない。主に槍玉に挙げられるのが「ラベンダーの咲く庭」のメロディと「女の子にはセンチメンタルな感情はない」の金属音。「女の子に~」は、3面目道中のパーカッションも同様に指摘される事がある。
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メインの四曲ともブレイクビーツ、ドラムンベース、ミニマルテクノ色を前面に押し出しており、長時間同じフレーズが繰り返され続けるクラブミュージック調となっている。サントラを買って聞き込んでみると実はもの凄いスルメ曲であることが分かるのだが、ゲーセンでちょっと聞いたくらいで良い評価を下すのはそもそも無理な話である。
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比較的理解しやすい曲は表ラスボスとエンディングくらいか。
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「生命の~」と「女の子には~」のBGMがラストには最高潮になるのだがそこはまだ4面ボスであり、表ラスボスdis-human戦では無い。裏ボスもいるので難しいのだが、最高潮の所はラスボスが良かったの声も、AC版ダライアスバーストの全ステージぶっ通しBGMが出た時に比べられた事もある。
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初回プレイで出やすい「ラベンダー~」を最初に聴くと、これまでのレイの楽曲から離れすぎて戸惑い、また3面以降も同じ様なメロディが続く為にシームレスシンクロというよりも環境音楽と捉えてしまうプレイヤーも多かった。
問題点
~自分で撰んだ拷問~
実験作として
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多くの実験的要素は、シリーズ通してのファンに受け入れられたとは言いがたかった。これが『クライシス』を前二作より下に位置付ける一因でもある。
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(厳密にはゲーム内ランクとは別値だが)侵食率システムはランクをも変化させるため、攻略パターン構築を非常に難しくしている。これにステージセレクトのランダム要素も合わさり、シューター達はパターン構築に手間取ると共に、パターンをがっちり固めていく方向性だった前二作との違いに戸惑った。
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ステージ数が前作から減少、更にそのうち2つはボスが同じということで「面数の少なさでゲームの印象が薄い」「インカム重視」などとの批判が上がった。
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『フォース』は全7、『ストーム』は全8ステージ。『クライシス』は「全」7(隠しボスをカウントすれば8)種類のステージがあるが1プレイで遊べるのは5ステージである。しかも、そのうちの1面目はほぼイントロ状態。5面目はラスボス対決と感覚的には全3面。
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ただし、フォースの時点で猛攻が続くのに7ステージ(2エクステンドのみ)、ストームに至ってはエクステンドが無いのに8ステージだった為、難易度的には丁度良いかもしれない。
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当時のタイトーの役職者の一声の影響力が大きすぎて、直営店だけでなくゲーム開発にも「1プレイ(最長想定で)3分にしろ」等、難題を課す状態。その結果が『Gダライアス Ver.2』であり、『レイクライシス』である。難易度ではないが、『Gダライアス Ver.1』が1プレイ200円だったのもその所為。
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システム面の強化やステージの密度の高さを見れば分かる通り、本作はシリーズ中最もスコア稼ぎを重視したゲーム性になっておりそれが好評なのだが、やはりコストパフォーマンスの縮小を惜しむ声は多かったようだ。「理解はできるが納得はできない」といったところか。
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データ保存システムはそこそこ好評だったが、記憶領域が64人分と意外に少なく、超えた場合は古いデータから削除されてしまう問題があった。
その他
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3DSTG共通の問題として、敵弾の視認がやや難しい。本作ではグラフィックやエフェクトが向上したせいで、『背景やエフェクトに紛れた敵弾(敵機)に当たる』という現象が慣れるまで多発しやすい。
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『レイストーム』と同じくハーフトップビューの作品であるため、やはり独特の操作性が難易度を上げている節がある。
総評
~天使の爪痕~
ゲームに影響を及ぼすバグもなければ、STGとして致命的な点がある訳でもない。演出・グラフィック・システムなど大半の面では前作を大きく越えている。
それゆえ、単体で見れば『クライシス』は間違いなく名作と言えよう。しかし『レイ』の冠を背負うには、少しパンチが足りなかった(あるいは、パンチが別ベクトルに過剰だったとも言える)。
タイトーが用意した実験的要素が失敗に終わり、ファンにあまり受け入れられなかった。これが本作に「前作以下」という評価を与えてしまった最大の原因だろう。
だが、タイトーは、スタッフはよく頑張った。名作の冠を背負う事がどれだけ大変か、ゲーム業界を知る人間なら分かる筈だ。
数々の実験的要素も、納得はされなかったものの、批難はされなかった。「新しい事に挑戦しようとしたタイトーの姿勢」が評価されたためであろう。~
余談
~童話の消えた森~
面構成について
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1面目は同社のシューティングの『マスターオブウエポン』と同様の短い導入部分、その後シャッフル面を3つ繋げて2~4面、その後表ボス「Dis-human」戦だが、Dis-humanは「Self part(自我領域)」でその前のエラー画面がFunction Part、つまり1面目と同じ。
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繋ぎにしか見えないが、構成的にはラウンド扱いで「最終ステージ」。その最終ステージが「エラー」となって「最終決戦」に移行、Dis-humanが現れるというメタ的演出である。裏ボスのインフィニティがいるが、あくまで最終決戦はDis-humanの担当となる。
タイトーG-NETの弊害
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レイクライシスだけの事ではないが、ソフトウェア供給に使われている「G-NETカード」が「書き換え可能」「安価で新作を供給」を売りにしていた為に、発売されて暫く過ぎた頃、新作に入れ替える目的でかなりの数が回収されて書き換えられてしまった。
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カードを随時供給ではなく書き換えする事で安価に新作導入出来る事は効率は良いのだが、おかげで大半のレイクライシスがこの世から消えてしまった。
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何に書き換えられたかは不明だが、『サイヴァリア』や『式神の城』等の名作シューティングに生まれ変わったのならまだしも、巡り巡って『ナイトレイド』になったりしたのなら…
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なお、このG-NET基板は、大々的に発表されたにもかかわらず、リリースされた作品の大半がパズルゲームで市場では尻すぼみ気味だった。ドリームキャストベースのNAOMI基板が世に出ようとしていた時期であるのに、PS1互換の上位にとどめたシステム基板だったことも一因と思われる。
レイクライシスの着メロ
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当時、タイトーのケータイサイトにて様々なゲームの着メロが配信されたが、今作の着メロも作られている。他のゲームならともかく、今作は1曲平均15分もある実験的すぎる楽曲を着メロにする為にメロディを細かく分割、それぞれ別商品として販売された。
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例えば「生命の風が~」の場合、1面道中、2面道中、2面ボス、3面道中…と分割されている。
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「生命の風~」はまだ良いが「女の子に~」の3面道中等とても着メロになり得ないパートまでも作られ、それはもう苦労の後が見える。これを集めて一つにし、「着メロアレンジ」を作るファンも現れた。
ZUNTATA版ストーリー
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タイトーが前日譚として設定した公式のストーリーとは別に、TAMAYOがサウンドトラックに掲載したいわば『ZUNTATA版ストーリー』がある。
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TAMAYOの思い描くレイクライシス
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主な登場人物は「宇宙空間における生態系の変化」を研究する科学者レスリー・マクガイアと、その娘ドナ。レスリーは自分と同じ科学者の妻を外宇宙探査の事故で亡くしており、彼女が唯一レスリーに残したのが、人工授精で宇宙船内で生まれたドナである。
しかしドナはある時から、まるで亡くした妻を思い出させるような奇妙な行動を取り始める。精神の病を疑ったレスリーはドナをある大学病院のスーパーコンピューター「WAID」を使った精密検査にかけることにした。
しかしその三時間後、WAIDは突如世界のネットワークに侵食を開始。彼女はWAIDに取り込まれ意識を失ってしまう。
だがそれは事故などではなかった。ドナが自身の持つ「電脳世界へのダイブ」能力を用い、意図的にハッキングを仕掛けたのだ。彼女の目的、真実の片鱗を知り、ドナの目的をおぼろげながら推理したレスリーは、同じくダイブ能力を持つ電脳警察の青年の力を借り、ドナを電脳世界から奪還することを決意する……。
この背景には、宇宙船の事故でただ一人生き残り、ドナを出産したレスリーの妻の思惑があるのだが、その思惑は正直電波を若干帯びていると言われることも。機会や興味があればぜひサントラを入手して読んでみて欲しい。
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移植版
プレイステーション版
発売・開発元
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タイトー
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発売日
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2000年4月20日
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価格
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5,800円
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備考
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『The ダブルシューティング』収録版:2001年10月25日/1,500円 ゲームアーカイブス:2008年07月09日/600円
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判定
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良作
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AC版稼働から約2年後に家庭用移植版が発売された。が、ほぼベタ移植として好評だった『~ストーム』とは異なり、多くの変更が行われている。
G-NETシステムの基板スペック自体がPS1の上位互換であるため、完全移植は物理的に不可能であり、多少の劣化は致し方ないと言える。
当初は外注移植を考えていたが、これまで過去にタイトーのAC作品の家庭用移植を担当してもらった外注会社全てに断られたという理由からやむなくタイトー自社での移植となった。
AC版からの変更点
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2人プレイ不可・ステージ間にローディングが挿入されBGMの中断が増えた・ボスのHPゲージといった一部エフェクトの削除など、演出面では劣化を強いられることになった点が多い。ロード画面は「次の領域への接続」と表現している。
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各エンディングも内容自体はアーケード版と同じだが、細かい演出面で異なる部分が多い。
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敵機の配置やゲーム性など、演出以外の部分はほぼ忠実と言っていい。
追加要素
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ACでの隠し要素「WR-03」がデフォルト解禁。それに代わる新たな隠し機体として、『レイストーム』の主役機であった「R-GRAY1」「R-GRAY2」が追加。Wave Riderとの差別化がされており、ファンからの受けは上々。
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R-GRAY1のハイパーレーザーは薄緑色の広範囲爆発型。持続時間は短いが着弾までのタイムラグが大幅に軽減されており使いやすい。
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R-GRAY2のハイパーレーザーはブラックホール。威力は非常に高いが、WRのものと比べると範囲がちょっと狭い。
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R-GRAY系列のスペシャルアタックは前作と同じ前方爆撃。範囲は狭いが威力は桁違いに高くなっており、しかも真ボスからの反撃を受けないというメリットがある。
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ロックオンサイトを画面下に寄せることができないためやや使いづらいが、WRよりも移動速度が早く調整されている。ショット・レーザーの性能はWRと同じ。
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前作の家庭用と同様、アレンジモードとしてスペシャルモードを搭載。こちらも本編とは違った面白さが好評。
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本モードではステージセレクトなどが存在せず、収録された全8ステージを順番に攻略するという、AC版の不満点を解消した構成になった。
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侵食率が100%になっても最終ステージにいきなり飛ばされる事はないが、100%になっている間はスコアが1秒あたり6万点減少するペナルティが課せられる。
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自機はショット・レーザー共に常にフルパワーアップ状態。アイテムは侵食率減少と1UPエクステンドの2種類で、同じ種類をとり続けることでスコアアップ。特定条件を満たすとスコアが2倍になるアイテムが出現する事もある。アイテムキャリアーや敵機の他に、ボス撃破時にも多数のアイテムが出現するようになっている。
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コンティニューは不可、途中で全滅した場合は記録なし。
前作家庭用の13機モードを発展・難度緩和させたかのようなゲーム性になっており、ノーミスで稼ぐか、残機に余裕をもたせるかという攻略の幅広さが実に面白い。
一見初心者向けになったように見えるが、7-8ボスは相変わらず熾烈。VERY HARD設定も視野に入れた調整がされている。
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スペシャルモード専用の新規BGM『.BLUE -地球に棲む日-』『安置 -Antithese-』も評価が高い。
その他
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前作家庭用のようにステージ別の難易度設定はできなくなったが、残機は最大9機まで設定可能。コンシューマーのプレイヤー層に配慮したのか、AC版では厳しかった真ボス出現条件も大幅に緩くなっている。
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ポケットステーションで遊べる「POCKET RAY」が付属。低解像度ながらも、レイフォースの雰囲気を再現している。さらに、クリア後のデモではあのエンディングも…
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クリア特典として、本編でスペシャルゲージが自然増加するオプションが解禁される。
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一人プレイ専用になったためか、自機のカラーチェンジが可能になっている。アーケード版の赤、青に加えて緑、黄色の4種類。
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サウンドテストが搭載されている。高クオリティのZUNTATAサウンドがいつでも聴けるのは地味ながら嬉しい配慮。中にはBGMテストだけで聞ける、レイシリーズファンへのサービス的サウンドも収録されている。この曲は後にタイトークラシックス版でもタイトルBGMとして収録された。
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前作と抱き合わせた廉価版『SIMPLE1500シリーズ Vol.75 The ダブルシューティング』も発売された。
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ただしこちらでは容量の都合上「命の風が吹く場所」と「女の子にはセンチメンタルなんて感情はない」の2曲がカットされており、人によっては「ゴミ」と称される『~ストーム』の移植版よりも評価が低い。
Windows版
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2001年10月5日にサイバーフロントの廉価版シリーズ「PCゲームベストシリーズ」の第17弾として発売された。内容は640×480の表示に対応していることやHDDインストール必須のためローディングの待ち時間が(スペックにもよるが)短いことを除けばPS版のベタ移植。
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Windows版はPOCKET RAYの要素が存在しないことから、スペシャルゲージが自然増加/3倍速で増加するオプションは最初から搭載済み。
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その後2003年にはメディアカイトから、2005年にはソースネクストからも廉価版が発売された。
タイトークラシックス版
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2017年8月9日配信開始。対応ハードはiOS・AppleTV/Android。
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初の完全移植が謳われ、アーケード版で特徴的だったシームレスなゲーム進行がほぼ完全に再現されている。
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しかし配信開始から暫くの間、「BGMが不自然に途切れる」等の不具合が発生し、批判が相次いだ。
その後BGM等音響面でのアップデートが行われ、BGMを含めた演出面はアーケード版とほぼ遜色ない完成度となった。
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ゲームモードは「アーケードモード」と「リミックスモード」の2つを搭載。
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アーケードモードはプレイヤーネーム登録によるスコア等の記録要素も含めPS版に移植されなかった要素を再現している。
ただしレバー動作まで再現しているため自機の移動速度が固定になっており、従来の感覚を持ったままプレイすることになる。
前2作と同様アレンジBGMが追加され、今作では「ラベンダーの咲く庭」のアレンジバージョンを収録。アレンジ担当は現在のZUNTATAメンバーでもあった下田祐氏。
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リミックスモードは全てのエリアを通しでプレイするモード。BGMはPS版スペシャルモードのものを起用しているが、アイテムやルールはアーケードモードと同じのまま。
自機の移動速度は可変式となっており、操作性は良好だが、長丁場により高ランクの攻勢に晒され続けることになるため難易度が非常に高い。
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また、いずれのモードでも3号機「WR-03」が最初から使用可能だが、真ボス出現条件などの条件はアーケード版に準じており、R-GRAY系列機やスペシャルモードなどといったPS版の要素が存在しない。
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タイトル画面では、PS版のサウンドテストでのみ聴くことの出来たあの曲が流れる。
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PS版のシークタイムが無くなった為か、スペシャルモードの楽曲「.Blue」が数カ所「飛び」が発生している。ボス戦や面接続のちょうどプレステ版でローディングが入る箇所に発生している。.Blueがローディング前提で作曲されていたのがよく分かる。
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原作ではなくPS版からのベタ移植の為に最初からシームレスは不可前提で作られたからか、曲自体もひと繋ぎのぶっ続けというよりも.Blueの構成は「本来シークタイムの所で上手く繋げたメドレー」という形になっているがこれはこれで良曲というのは流石。ただし、レイクライシスのストーリーと音楽の意図的なベースラインから醸し出される「妖しさ」「偽りの青空」の印象はかなり独特な世界観。
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他のレイシリーズと違い、「プレイ内容を保存する」事で解禁する要素があるにもかかわらず、今作は機種変更で引き継ぎが出来ない。
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買取式のアプリでは多々ある事ではあるが、親会社のプレイ状況保存必須のドラゴンクエスト等は引き継ぎ可能な実装であった。
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Android版のみ2023年1月10日を以て配信終了。
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Android版はAndroid 9以降で処理落ちが頻発する問題を抱えていたが、修正が実施されることはなかった。
PS4/Switch/Steam版
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2023年3月9日発売のオムニバスソフト『レイズ アーケード クロノロジー』内の1作として収録。同年9月26日にSteam版が配信開始。
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オリジナル版の解像度をそのまま再現したモードと、ポリゴンモデルを高解像度化した『レイクライシスHD』の2バージョンが収録されている。
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シームレス進行は勿論、従来の移植版ではオミットされていた2人同時プレイまで再現されている。
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BGMはオリジナルとアレンジの2バージョンから選択可能となっており、アレンジでは1~4面のBGMがPS版の「.Blue」、5面が「安置 -Antithese-」になり、その他の各BGMは一部を除き、アレンジアルバム「rayons de l'Air」のものが採用されている。
余談だが、本記事見出しに付記された「少女の行為は~」などのフレーズは、全て本作で使用されたBGM名である。
最終更新:2024年12月27日 09:09