ダーウィン4078
【だーうぃん4078】
ジャンル
|
縦シューティング
|
対応機種
|
アーケード
|
販売・開発元
|
データイースト
|
稼働開始日
|
1986年
|
判定
|
良作
|
概要
対地対空を撃ち分けるゼビウス系縦STG……の皮をかぶった、独特なシステムと前衛的なアートワークを備えた独創的なSTG。
「進化」や「退化」する自機が特徴。
システム
-
基本的には対空・対地を撃ち分ける
ナムコの『ゼビウス』同社『ミッションX』や『ザビガ』『B-wing』方式の縦シューティング。
-
各ステージの最後に居るボス敵「ペータエフ」を撃破するか逃げ切ることでステージが進行する。全16ステージのループゲーム。
-
「進化」によるパワーアップ制。自機は、特定の敵を倒すと出現するEVOL(Eと書かれたアイテム)を取ることにより進化する。
-
ちなみに自機のデザインは、生物を意識したであろう曲線の多い斬新なものである。
-
進化していくに従い自機は大型化していく。見た目のみならず当り判定も同様に大きくなるが移動速度も増し、全体的に動きの速い敵や敵弾とハイテンポな戦いを繰り広げられるようになる。
-
形態に応じ対空ショットも総合的には強力なものに変化していく。先述の大型化のデメリットを打ち消して余りある強さを堪能できる。
-
但し、総合的にみると前段階より貧弱になってしまう場合もある。
-
対地ショットは進化によっては一切強化されないため、強力な形態に進化して空中物を軽くあしらえるようになっても地上物は撃ち漏らさないよう丁寧な対処が必要となる。
-
敵弾を受けると、一部の状態を除き一気に最弱状態まで退化してしまい、最弱状態で敵弾を受けるとミスになる。なお敵の体当たりや、体当たり扱いになる敵の攻撃に対してはどの状態でも即ミスとなる。
-
退化の際は、それまでの形態変化を逆再現しながら変化していく。よって段階が進んでいるほど退化アニメーションも長くなる。
-
退化アニメーション中は攻撃は行えないものの完全に無敵。退化中に敵に体当たりして倒すこともできる。
-
また、一定時間経過で強制的に1段階退化してしまう。EVOLを取る事で形態維持の時間を延ばす事が出来る。
-
但し、通常は時間経過による退化は下から2段階目の「BEAS」止まりであり、最弱形態の「PISTER」になることはない。
-
「突然変異」も幾つか用意されている。
-
特定の進化段階で特定の条件(退化後にEVOL再取得など)を満たすと、突然変異と呼ばれる別体系へ進化する。
-
一部の突然変異状態は、敵弾に接触しても退化しなくなる。
-
だが、突然変異は時間経過による退化が一気に最弱までパワーダウンしてしまう場合がある。こちらもEVOLを取れば時間が伸びる。
-
通常進化系
-
PISTER:最弱形態で前方に小さな弾を発射する。判定は最小だが移動速度は遅く、この形態のまま生き延びる事は難しい。
-
BEAS:ミス後を含むスタート時はこの形態から始まる。やや大型化したPISTERで前方に小型弾を発射する。時間経過による自然退化の最低ラインがここ。
-
BASUM:左右真横方向にも弾が撃てるようになったBEASといった形態。サイドショットはそれほど活躍の機会が無い。
-
SHARRU:前方に小型のエネルギー弾を発射する。この弾は貫通性を持ち、敵にヒットすると左右45°方向へ分裂して飛ぶ。弾の判定は小さいが火力は向上している。
-
MISEAVE:自機左右に小型のウィングが付き、BEASのショットを三連装で発射できるようになる。ここで初めて攻撃判定が横に広がり扱いやすくなる。連射は必要だが進化の未熟な中ではペータエフにも抵抗できる形態。
-
TWIPET:MISEAVEの変化形態で小型V字の弾を三連装で撃ち出す。撃ち出された弾は一旦停止し、VがΛへと反転しつつ加速して飛んでいく。置き撃ちが可能になる一方、遠くへの射撃にタイムラグが生じるようになる。
-
DODOK:ここで三連装から単装に戻り、攻撃範囲が縮小する。中型の貫通エネルギー弾を発射する。エネルギー弾の威力は高めで、ペータエフとも撃ち合える。
-
ZUGAU:二連装ミサイルを発射する。ミサイルは自機の左右移動に追随して左右に動く「ワインダー方式」のため癖が強い。更に火力も低めで、ある程度進化の進んだ形態ではあるがペータエフに対しては不利。
-
KUES:両サイドに大きなウィングが付き、ウィング先端から貫通性のあるレーザーを発射する。真正面に隙はあるが火力は高く、攻撃力不足に悩まされる相手はほぼ居なくなる。ここから自機の判定が目立って大型化する。
-
SHASUEM:KUESの変化形態でウィング先端から火炎弾を発射する。相変わらず真正面には隙があるものの、発射形態の違いから総合的な隙が減っており、火炎弾も高威力で扱いやすい。
-
ZUGOGA:ZUGAUの強化型で八連装ミサイルを発射する。しかしミサイルは8発まとめて1発の判定で貫通しないため縦深攻撃力が無く火力自体も控えめ。攻撃に幅があるので脆い雑魚相手には強いが、高次進化形態にもかかわらずペータエフには不利。
-
GYASHARRU:通常進化最終形態。SHARRUの強化型でヒットすると左右45°方向へ分裂する大型リングレーザーを発射する。被弾判定も最大だが攻撃力は非常に高くペータエフも瞬殺できる。癖が無くシンプルに強力。
-
突然変異系
-
LAYSPER:SHARRUから時間退化後にEVOLを取得すると変異する。BASUMの変異型で前方に見えない攻撃と左右へ電撃弾を発射する。見た目はユニークだが特に強みは無く、進化の袋小路でもあり攻略上でこれに進化する利点はない。時間退化した場合BASUMに戻る。
-
SUPPRATE:唯一EVOLと関係なく、地上物や低空を飛ぶペータエフの上げる噴煙に触れると変異する。そのせいか球体の左右に三角錐が付いたような形状で、他の如何なる形態とも似ていない。そこそこの威力をもつ丸い中型弾を前方180°の範囲へ一発ずつ方向を変えつつ発射する。敵の通常弾に対して無敵という強烈な特性を備えているものの、ショットが散漫過ぎて効果的な攻撃が難しく実用性は低い。こちらも進化の袋小路な上、時間退化した場合PISTERになってしまう。
-
突然変異系(DEAM系)
-
MEASA:前方にBEASと同様の小型弾と射程の短い火炎放射を発射する。DEAM系変異の入口で、この系統は通常進化系に比べ細長く機械的な姿が特徴。KUESからZUGAUに時間退化後にEVOLを取得することで変異する。
-
MALTO:前方の狭い角度へ丸い弾をバラ撒く。SUPPRATEと異なり攻撃の密度が高くかつ扇状に攻撃できるため比較的扱いやすい。
-
SEAS:二連装の非常に細い貫通レーザーを発射する。KUESと異なり自機の幅が狭いため、攻撃に幅は無いものの正面の隙が無くなっている。レーザーの威力も高く扱いやすい。
-
DEAM:DEAM系変異の通常最終形態。相変わらず細長い姿だが攻撃の際は電撃状の翼を左右に発生させる。ショットも丸い貫通弾を撃ち出し、それが左右に電撃の翼を発生させて飛んでいくものになっている。GYASHARRUより僅かに火力が劣るものの実用上はほぼ遜色無く、GYASHARRUと並ぶ強力な最終形態。因みに地面に映る影はDEAMのものではない…
-
BLACK DEAM:逆進化形態。DEAMの状態で敵の通常弾を被弾するとPISTERを通り越してこの形態に変異する。黒い悪魔とも蝙蝠とも取れる、他の形態とは全く異なる生物的な姿をしている。前方へ非常に威力の高い自機の分身をバラ撒く攻撃と敵の通常弾に対する無敵という性質を兼ね備える最強形態で、なってしまえばほぼ一方的に敵を蹂躙できる。一方で時間退化すると一気にPISTERになってしまうという脆さも抱えている。
-
EVOL取得だけでは時間退化をしのげない区間がきちんと設けられており、攻撃力が高すぎて気絶させた敵との合体による退化抑制もほぼ不可能なため、この形態を維持し続けて楽々クリアは事実上出来ないようになっている。
-
DEAMの時に地上に映る影はBLACK DEAMのものという演出が施されている。
-
敵との合体。
-
一部敵に一定ダメージを与えると気絶状態になる。気絶した敵に接触すると合体でき、対地攻撃を一定時間強化する事が出来る。
-
合体中は時間切れでの退化もしなくなるが、合体そのものに制限時間がある。
-
ある程度進化した自機では気絶前に倒してしまうので、パワーアップしていると合体が困難になる。
評価点
-
やはりデコゲーと言うべきか、独特な進化システムゆえに1度プレイしたら二度と忘れられない強烈なインパクトを持つ。
-
微生物をモチーフにした敵デザイン、生物を意識し拍動もする斬新なデザインの自機が進化によって形態がめまぐるしく変化する、他に似たものの殆どない独特な雰囲気の背景グラフィック等、見た目にも楽しめる。進化の際の変形表現は一見の価値あり。
-
また、特定条件で変化できる異質な形態「BLACK DEAM」は、デザインからして他の形態とは全く違い、蝙蝠や悪魔を髣髴とさせるものとなっている。攻撃方法も異質で圧倒的。
-
全体的に難易度は高いが、「退化中は無敵」「EVOLは大抵纏めて出てくる」「進化形態の自機攻撃力が非常に高い」「残機がたまりやすい」事も相まってバランスが良く、何度かプレイすればすぐに上達できる。
-
進化系の分岐や時間退化という仕様による戦略性の高さ。
-
短時間で最強になれる通常進化系で進むか、被弾に対する保険を兼ねる突然変異系で進むかがまず選択に挙がるが、後述の様にただそれだけではない。
-
通常進化系は単純には強くならず、一部にペータエフに不利な形態が挟まれている。特にGYASHARRUから一段階退化したZUGOGAは判定の大きさもあり高次進化形態にそぐわないほどペータエフに不利なため、ボス前で退化してしまうと苦戦する。
-
突然変異系(DEAM系)も単純に被弾に対する保険&実質無敵化による進行ブーストにはならない。限界までBLACK DEAMを維持した場合、EVOLがしばらく出ない区間をPISTERで生き延びる事を迫られる可能性が高い。BLACK DEAMになっても意図的に早めに退化しての立て直しを考慮する必要がある。
-
KUESから時間退化してZUGAU、そしてMEASAへというこちらもペータエフに不利な形態をとる必要があるため、最強形態になるまで時間がかかるだけでなくDEAM系へ分岐させる事それ自体にもある程度リスクがある。
-
何処となく寂寥感漂うメインBGMは「特別好き」と言う人は少ないが「何故か聞きたくなる」と言う不思議な魅力を持つ。
-
作曲者は「明るい曲」を意識したらしいが、人工物を想わせるものの人の存在や生活を感じさせないエリア、一つの巨大な建物とその窓が延々続くがやはり人の存在を感じさせないエリアなど、特有の映像表現もあって明るさより寂寥感の方が強く感じられる。また一部のエリアでは別のBGMに切り替わるが、そちらはより寂寥感や重さが強いものになっている。
-
ちなみにメインBGMはループする毎にメロディの一部のキーが少しずつ上がっていき、一定まで上がると今度は最低のキーになりそこから再び上がっていくという変わった作りになっている。
-
基板にサウンドテスト機能は無いのだが、クレジット投入後のスタート待ち画面(本来無音)でメインBGMを垂れ流しにできるバグ技があるため存分に堪能する事も可能。
-
この曲は続編の『スーパーリアルダーウィン』でもアレンジされたものが使用されている。
問題点
-
いわゆる「死に覚えシューティング」なので、途中で挫折すると高難易度のイメージしか残らない。但し、昨今のシューティングにありがちな「パワーアップ状態やプレイ時間等によるランク上昇」といった要素がないので、そこが唯一の救いとも言える。
-
どれだけ進化しても敵の体当たりで即死であり、体当たりや体当たり扱いの高速攻撃を行ってくることもプレイヤーを遠ざける要因になっている。
-
更に言うと当たり判定が「自機より一回り大きい」という点もこれに拍車をかけている
-
敵弾の撃ち方に癖がある。
-
自機が遠いほど高速で、近ければ低速な弾を撃つという癖のある撃ち方をしてくる。ただ単に距離を取っても安全にはならない。
-
時代を考慮すると仕方ない面もあるが、収録曲数は少ない。
総評
「進化」を軸に、ゲームシステムも見た目も独特なものを構築している一品。
自機も、既存の生物に囚われない独特な「進化」を見せてくれる。
なにぶん古いアーケード作品であり、直接の移植も長年下記のMSX2版しか無く、プレイ手段が限られていたが、
アーケードアーカイブスによって触れる機会が増えたので興味が湧いたら是非この世界に触れてほしい。
移植・続編など
-
MSX2にハドソンが移植している。但しスプライト機能の強くないVDPなのでキャラクター表示は単色。
-
また、ハドソンによるPCエンジンへの移植版が制作されており、完成までこぎつけたものの諸事情でお蔵入りになってしまった。
-
2021年7月15日には『アーケードアーカイブス』シリーズとしてPS4およびSwitchに移植された。アーケード版の忠実移植はこれが初となる。
-
続編として『SRD スーパーリアルダーウィン』が1987年に発売された。
-
グラフィックが格段に向上しているが、難易度がとんでもなく上がっているため覚悟が必要。前作との大きな違いは、プレイヤーミス時に取得した数だけ進化した状態から復帰できる「DNA」アイテム、プレイヤーの攻撃を当ててる間は動きが止まる「黒EVOL」アイテム、各面のボスを倒すと当たり判定のない自機の分身である「繭」が追加されている点である。
-
進化形態や突然変異もリニューアルされており、前作のブラックディームに相当する「ゴートディーム(GOAT DEAM)」は地上攻撃や溜め撃ちが可能になったりとそこそこ強化されている。
-
MDにて、アレンジ移植作品『ダーウィン4081』(1990年、セガ)がある。
-
内容は本作(4078)と『スーパーリアルダーウィン』の良いところを折衷している。当たり判定の緩和等ゲームバランスも厳しすぎない方向でかなり練られ、完成度はシリーズ一ではないだろうか。
-
シリーズ作ではないが、本作の進化要素システムの応用作として、同社がACでリリースした横スクロールアクション『アクトフェンサー』がある。
余談
-
タイトルについている「4078」については、実は突然変異系進化のヒントが盛り込まれているといわれている。
-
アーケードアーカイブス移植に際して、本作を作った古川とも氏が当時の事をツイッターで語っている。その中から一部抜粋。
-
本作は氏が二十歳の時に入社試験で作ったゲームで、それをそのまま発売してしまったとの事。
-
入社試験で作ったゲームなので、「最低限動かせたらOKと言うレベル」かつ「基板に乗せるメモリーが最低容量」なのが災いし、ボスキャラは1個しか出せず。自機だけでも全容量の6割を消費する程だった。
-
分岐や進化はなけなしの隙間にデータを押し込み、弾のデータも新たに作れないためブラックディームは自機そのものを弾にしたとの事。
-
本社での会議には通常進化のみの仕様書を見せ、その後「内緒で分岐や突然変異を入れたもの」を社内お披露目で見せた。お披露目後に企画課長から文句を言われたものの『驚かせてこそゲームじゃないの?』と氏は返した。
-
「鼻先ギリギリで躱した満足感を与えたい」と言う理由から、自機の先端3ドットは敢えて当たり判定を入れていない。
…等々、氏の尖った作風がこの作品を生み出したと言えるのかもしれない。
-
PCエンジン開発中に性能評価の目的でダーウィン4078がハドソンにより移植された。あくまでテストプログラムであり製品化はされなかったがデモ用としてショーに展示されたことはある。
最終更新:2021年12月15日 22:10