ACE COMBAT ZERO THE BELKAN WAR

【えーすこんばっとぜろ ざべるかんうぉー】

ジャンル フライトシューティング
対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売・開発元 ナムコ
発売日 2006年3月23日
定価 7,140円
プレイ人数 1人(2人対戦可能)
廉価版 PlayStation2 the Best
2006年12月7日/2,800円
判定 良作
ポイント PS2三部作の集大成
プレイ傾向によって変化する展開
対戦モード復活
収集要素「アサルトレコード」
エースコンバットシリーズ

《よう、相棒。まだ生きてるか?》


ストーリー

ベルカ公国―かつての雄武国家。
1980年代、行き過ぎた国土拡張政策は公国を経済危機へと陥れる。

連邦法改正による国土縮小計画をもってしても未曾有の経済恐慌が収束することはなく、混乱に乗じて正統国家復古を掲げる極右政党が政権を獲得する。

1995年3月25日、元ベルカ自治領ウスティオ共和国に眠る膨大な天然資源発見の報を機に、ベルカ公国は周辺国への侵攻作戦を開始する。

「ベルカ戦争」の開幕である。

準備不足の各国は、伝統のベルカ空軍の前に敗走。隣接するウスティオ共和国は、数日でほぼ全土を占領下におかれる。

ウスティオ臨時政府は、残された第6航空師団を外国人傭兵航空部隊として緊急再編。オーシア連邦、サピン王国との連合作戦に一縷の望みをかける。
この戦乱化、あなたはウスティオ傭兵部隊へ入隊。そこで、「片羽の妖精」の名を持つ腕利きパイロットと出会う。
彼のTACネーム、"ピクシー"。

入隊間もない、1995年4月2日1249時、ウスティオ最後の砦、ヴァレー空軍基地にスクランブルが響く。
基地管制塔はベルカ爆撃機編隊の接近を確認。

要撃任務を託された二つの翼が今、戦線に舞い上がる。

※取扱い説明書より。


概要

『04』『5』に続いて発売されたPS2三部作最後の作品。
『5』で語られたベルカ戦争を舞台としている。即ち時系列としては前作、前々作よりも過去に位置している。
プレイヤーはウスティオ空軍の傭兵パイロット“サイファー”となってベルカ戦争を体験する事になる。

作中に登場する単語には一部共通項があり、ベルカ絶対防衛戦略空域B7R(通称「円卓」)、化学レーザー兵器「エクスキャリバー」、Wizard・Pixyといった各機のコールサインなど“アーサー王伝説”が裏のモチーフとなっている。

作品カラーは情熱的な赤となっている。メニュー画面の色はシリーズでは珍しく黄色。

誇り高いエースパイロットたちが織り成すドラマ描写と、数々の名言に溢れているのが特徴。


特徴(兼評価点)

システム

  • ASG(エーススタイルゲージ)という本作独自のシステムが導入されている。これはプレイヤーの戦闘に対する志向を表す物で、“イエローターゲット”を撃破したか救援要請を完遂したかで変化する。イエローターゲットは攻撃してこない敵の事で、それを見逃し続けたり救援要請を完遂し続ければ“ナイト”、容赦なく片っ端から撃破し救援要請も無視していけば“マーセナリー”、どちらも程々に抑えれば中庸の“ソルジャー”と変化し、それによって無線内容や登場する一部の敵エース部隊(後述)が変化する様になっている。
  • 特殊兵装の選択が復活。
  • 前作と違い、今回の僚機はピクシーこと“ラリー・フォルク”が乗るF-15ただ一機(後半にはピクシーに代わり“PJ”が乗るF-16が僚機となる)。ただし2連続でミサイルを撃つ様になり、敵の撃破率は上昇している。
    • 僚機に対する指示も改善されており、分散行動時に対空・任意・対地と細かく行動が指定できる。
    • 尚、僚機は如何なる指示を出されてもイエローターゲットを攻撃しないが、僚機が撃破した敵のスコアも加算される。
  • “対戦モード”も復活。
  • 撃破したエースパイロットのプロフィールを閲覧できる“アサルト・レコード”というモードが実装されている。
    • 国籍・人柄やその後の歩みまでも窺い知る事ができる。その総数実に168。これを集めるのも楽しみの一つ。
    • 中には、難易度エースにしか登場しないエースパイロットもいる。前作と関わりのある人物だったり、ファンサービスを意識した人物だったりと、やり込みに挑むプレイヤーを楽しませてくれる。
  • PS2三作目だけあって画質は最高レベル。ワイドテレビにも対応している為大画面でやると迫力満点である。
  • また、セーブデータのオートロード機能が実装されたのも本作から。

ミッション

  • ミッションは全18。『04』と同じぐらいである。
    • 但しステージによっては3つある作戦から1つを選ぶ物もある。その選択肢や敵エース部隊の変化(後述)も入れるとミッション総数は30+SPミッション(おまけ)にもなる。
  • 本作のミッションは『04』『5』と比べて全体的にテンポが良い。『04』では時間制限ミッションにより必然的にプレイ時間が長くなり、『5』ではイベントの発生を待たなければならない場面が多かった。本作はこのようなミッションがほとんどなく、TGTを全滅させればすぐクリアとなる。
  • プレイヤーの印象に残りやすい高評価なミッションが多い。
    • 『04』の“ソラノカケラ”にも引けを取らない大空戦“B7R制空戦”はその代表格の一つ。本作の山場となる名ミッションである。ここでサイファーが、畏怖と敬意を込めて"円卓の鬼神"と呼ばれるようになる。
    • 物語の転換点となる"臨界点"では、前作で語られた「7つの核の起爆」が描写される。画面越しに核の恐ろしさが伝わってくる演出が印象的。
    • 幾つかのミッションは『5』と同じ場所を舞台としている。前作をプレイした人間には嬉しい演出。
    • 最終ミッション" ZERO "はシチュエーション・演出・BGMの相乗効果もありシリーズ屈指の出来と称えられ、ファンの間で伝説となっている。
      + ネタバレ
      • ミッション中盤で行方不明になったはずのピクシーが架空機ADFX-02モルガンを駆り、サイファーの前に立ちはだかるという衝撃的な展開。
      • モルガンが搭載する超兵器を打ち破り、最後は正面切ってミサイルを撃ち合う(ECMにより、前方以外からの攻撃を受け付けないため)ことになるが、この「正面からの一騎打ち」は、まさに決闘と呼ぶに相応しいものである。
      • この決闘は、発射されて空へ昇っていく新型核ミサイルを尻目に、刻一刻と迫る制限時間の中、世界の命運をかけて2機の戦闘機が戦うという大変盛り上がる内容となっている。
      • ミッション中のピクシーの台詞は非常に印象的で、中でもミッション終了間際の《撃て、臆病者!》《撃て!》はシリーズ屈指の名言。

機体

  • F-14、F-15、F-22、Su-37などといった基本所は引き続き登場。今回はF-1、J-35Jといった玄人好みの機体が追加されている。
  • 『04』『5』のデータがあるメモリーカードを使用すると隠し機体である『04』のX-02、『5』のADFX-01が早い段階から使用可能(データが無くても条件を満たせば使用できる)。
  • 機体・特殊兵装は恒例の通りミッションで稼いだ資金で購入する。今回は『2』以来久々の“傭兵”という設定なのでシステムとも上手くマッチしていると言える。

エースパイロット

  • 今作には超兵器以外にもボスクラスの敵が登場する。それが、計11部隊もの敵エース部隊である。
    • 今作を象徴するこれらの敵は『04』『5』と比較して空戦機動がかなり改良されている上、特殊兵装も使ってくる。その為、過去作と同じ感覚で戦うと苦汁を舐める事になる。空戦の歯応えではシリーズ屈指の出来。
    • 低難易度にもかかわらず、歯応えがありすぎて初めて敵エース部隊と戦う事になるミッション3で「詰まった」というシリーズ初心者の声が聞かれた程。
  • ミッション間に挿入されるムービーはすべて実写となっている。外国人俳優が演ずるエースパイロットに当時の思い出をインタビューという形で語ってもらう方式である。
    • 主人公との戦いが人生の転機となった者、追われる身となった者、只空を愛する者とエースたちの実情も様々。感動間違い無しの最後は一見の価値在り。
    • 登場するエースたちは実に個性豊か。性格のみならず、使用機体やその塗装、エンブレム、戦術は様々で、それぞれで全く異なる魅力を持つ。
  • SPミッションでは特定の条件を満たす事で『04』に登場した“MOBIUS(メビウス)”の名を冠したF-22と戦う事ができる。
    • 出現時には、本来の対戦相手であるエース部隊を一瞬で全機撃墜するため、インパクトは抜群。
    • その機動たるや人外の域に達しており、やり込みの相手として申し分ない強さを誇る。敵エース達が子供に見えてくるレベルの途轍もない超機動は必見。
    • 一度に大量のミサイルを発射してくる上、すれ違った時の風切り音が大きく、プレイヤーの恐怖心を大きく煽ってくる。

BGM

  • 『04』以降のフルオーケストラも健在だが、今作ではフラメンコの要素が取り入れられている。熱く掻き鳴らされるギターと激しくビートを刻むカスタネットのパーカッションがストーリーに情熱的な色取りを添えている。
  • 最終ミッションのBGM“ ZERO ”は、エースコンバットシリーズ史上最高の名曲として有名。和製ゲーム音楽屈指の評価と人気を誇っており*1、かっこいいゲームBGMの定番とされる。作曲者である小林啓樹の最高傑作とも言われている。
    • 本作のメインテーマでもあるため、アレンジされた曲が本作のあちこちで流れる。
    • 一部異なるが“ZERO”のコーラス部分は“The Unsung War”を使用している。これをプレイしてから『5』の最終ミッションをプレイするとコーラスの歌詞の意味が理解できる。
    • 最終ミッションのみならず、PVやOPムービーにも使用され、これらも大きな話題を呼んだ。素晴らしいゲームOPムービーとして名高い。
  • "ZERO"以外では、初陣を飾るBGM"GLACIAL SKIES"、敵エース部隊との戦闘を盛り上げる"CONTACT","THE ROUND TABLE","THE DEMON OF THE ROUND TABLE"、前述の"B7R制空戦"に使用されるロック調BGM"MAYHEM"が高評価。

賛否両論点

システム

  • 僚機は機体が予め決まっている為、選択できるのは特殊兵装のみ。
    • 好意的に見るならば、僚機のキャラクター性を維持できていると言える。
    • 機体を統一させたい、僚機に特定の機体を使わせたいと考えるプレイヤーはもどかしい思いをすることになる。
  • イエローターゲットを設定したことによる弊害。
    • 仕様上レーダーで敵の耐久値が分からなくなった。「もう少し工夫してほしかった所」という意見もあれば「あっても無くてもどっちでもいい」という意見もある。
    • マーセナリー以外を目指している場合、イエローターゲットの誤射に注意しなければならない。範囲攻撃型特殊兵装を使っている場合はなおさら。

ミッション

  • 一定時間内に得点を稼ぐタイプのミッションでは、得点数が一定以上で即クリアとなる仕様となっている。
    • 目標達成・殲滅完了後も待つ事がなくなりスピーディーになった。
    • 反面、「制限時間内にどれだけ撃破するか」といった遊び方ができなくなっている。
  • 超兵器“フレスベルク”があまり活躍していない印象。ミッションの初めでプレイヤーの基地を奇襲したと思ったらそのミッションであっさり撃破される。しかもこのミッションは放っておくとフレスベルクがすぐに戦域を離脱してしまう為、どの道ゆっくり戦いを堪能できない。もう少し猛威を振るう描写があっても良かった所。
    • これに反省してか、のちの”エースコンバット6”では「フレスベルクの完成版」と言える“アイガイオン”が登場、大活躍する。

ストーリー

+ ネタバレ
  • 描写が不足している関係でピクシーの行動に説得力が欠ける。彼はストーリー後半で反体制テログループ“国境なき世界”に加担しプレイヤーと敵対する。以前は《血で血は止められない。理想で空を飛ぶと死ぬぞ》とPJを嗜めておきながら、自分は「国家という枠組みを消し去り全てをゼロからやり直す」という理想を掲げて敵対するので矛盾が否めない。
    • 只、製作側が「自分が理想を掲げている事に気付いていないピクシー」を狙って描いたのかもしれないし、事実ベルカ都市部での戦闘を経ておかしくなり始め、最終ミッションでは上述の理想を掲げながら最後には《撃て、臆病者!》と叫びながら撃墜されるなど、無線から色々察する事はできなくもない。
      • また、『04』等では終盤の目的だった“首都奪還”が序盤で行われ、以後プレイヤーに与えられる任務は核兵器査察と称した敗戦国ベルカへの侵攻・破壊(民間施設含む)となるなど、ピクシーの“国境なき世界”加入やベルカの自国内核起爆の理由について察する材料は決して皆無ではない。
      • ちなみにゲームクリア後にアサルト・レコードを見ると彼が他ならぬベルカ出身である事が分かり、故郷が蹂躙される事に心を痛めていた心情も理解できる所はある。
      • 以上の理由から一概に批判はできない。
  • ベルカ戦争が舞台という事で『5』で語られていた“ジャック・バートレット”や「おやじさん」こと“ウォルフガング・ブフナー”のエピソードが語られると見られていたのだが、殆どストーリーに関わらない。ステージ上のユニットとして登場するだけである。「ベルカがいかにして自国内で核を起爆させるという凶行に至ったのか?」という経緯もゲーム上では殆ど分からない。

問題点

システム

  • プログラムミスなのか、PJが対地攻撃を行わない。
    • PJ機の特殊兵装3つの内、2つは対地兵装である為、実質PJがまともに使える特殊兵装は1つだけと言う事になる。
      • 逆に言えば「空に集中してくれる」ので、この特性さえ分かっていれば「対空兵装にして空を任せ自分は対地」という戦術を取る事もできる。
  • ASGシステムの不親切な仕様。
    • ソルジャーを目指す場合、イエローターゲット破壊数を調整する必要がある。
      • 特に、"真のソルジャーエース"の勲章を獲得する場合、ゲージの丁度真ん中になるように調整しなければならず、綿密に計算されたプレイを心掛けなければならない。
      • また、ゲーム後半ではイエローターゲットが少なくなるので、調整が難しくなる。
    • キャンペーンモード開始時にエーススタイルを選択できない。
      • エーススタイルによる登場ネームド機および無線の会話内容の変化はミッション1でも発生するため、キャンペーン開始時点より特定のエーススタイルでプレイしたい場合は、予めキャンペーンモードで調整し、引き継ぎプレイを行う必要がある。
      • フリーミッションでの調整は不可能なので、これも不便。
      • フリーミッションでは各ミッションがエーススタイル別に用意されているため、ミッション内容の変化を確認・体験すること自体は容易ではあるが、ムービーも含めた一連のストーリーとして体験するにはやはりキャンペーンを周回プレイする必要があるといえよう。
  • 前作で問題だったロック切替機能が改善されていない。一応、その対策と言える新機能"ボアサイト"によって、任意の目標を選択できるようになってはいる。
  • メニューの文字色が黄色
    • HUD風表示のメニュー画面は『04』からの伝統だが、作品ごとにイメージカラーがあるようで、文字色が異なる。今作では黄色。
      • そのため他の色より可読性が低い。当時はまだブラウン管もそれなりに現役だったことを考えると読み辛かっただろう。
    • 現時点(※『7』が発売された時点)では他にシリーズ作で黄色を用いている箇所はダメージ表示(30~50%辺り)しか無く、可読性が低いことは分かっていて使用したものと思われる。

ミッション

  • 1周当たりのボリュームが『04』『5』と比べて減った。
    • 数は『04』と同じだが、ゲームテンポの良さ故にどのミッションもすぐ終わってしまいやすく、尚更ボリューム不足と感じやすい。
    • 『5』のシナリオの充実感に慣れたプレイヤーは、割とすぐ終わるキャンペーンモードに肩透かしを食らいかねない。
  • 無線の中に音量が小さかったりノイズで聞き取り辛い物がある。字幕も『5』より一回り小さくなっている。
  • ステージのクリアランク評価が従来の難易度別の他、エーススタイル別にもなっている。全難易度・全スタイルを全ミッションSランクで埋めようとした場合、各難易度で各ミッションを3回プレイしなければならず(分岐ミッションはスタイルの違いがないので1回で良い)、計18周という長大なプレイとなる。

総評

空の戦士達の生き様を描いた独特の渋い作風がファンの心を掴んで離さない名作。
"ZERO"を始めとするフラメンコを多用した情熱的なBGMと最終ミッションの演出は、現在でも語り草になっている。
1周当たりのボリュームの低下などの欠点こそあるが、歯ごたえのある空戦を満喫できるゲームコンセプトを中心に高く評価されている。
本作を「一番好き」と主張するファンは多く、『04』『5』と共にシリーズトップクラスの人気を誇っており、HD化などを望む声は強い

余談

  • 採点に疑問が持たれている『ファミ通』では、何故か「チュートリアルが無い」と言う理由で減点されている。
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最終更新:2022年08月07日 03:36

*1 NHK-FMの『今日は一日“ゲーム音楽”三昧』やゲーム音楽コンサート『PRESS START』に採用された実績がある(後者は2度)。海外の経済誌『フォーブス』が2012年に行ったビデオゲームサウンドトラックのランキングでは3位を獲得した。某ゲーム音楽ランキングでは、第1回の頃から必ず上位にランクインしている。