THE KING OF FIGHTERS 2002 UNLIMITED MATCH
【ざ きんぐ おぶ ふぁいたーず つーさうざんどつー あんりみてっど まっち】
ジャンル
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対戦格闘アクション
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対応機種
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プレイステーション2 アーケード Xbox 360(Live Arcade) Windows(Steam) プレイステーション4
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メディア
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【PS2】DVD-ROM 1枚 【AC】SYSTEM Y2 【PS4】BD-ROM 1枚
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発売元
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SNKプレイモア 【PS4】SNK
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開発元
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【AC/PS2】SNKプレイモア 【PS4/Win】Code Mystics
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発売日
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【PS2・オリジナル】2009年2月26日/5,280円 【PS2・闘劇ver】2010年6月24日/2,932円 【PS4・パッケージ】2021年4月15日/2,980円
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稼動開始日
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オリジナル:2009年7月9日 NESiCA×Live版:2011年1月24日
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配信
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【360】XboxLIVE ARCADE:2010年11月3日/953円 【Win】2015年2月27日/1,480円 【PS4】2021年2月9日/1,980円
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判定
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良作
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THE KING OF FIGHTERSシリーズ
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概要
『KOF』シリーズの第9作目である『2002』のリメイク。
リメイクであると同時に、前年に発売された『'98』のリメイク作『'98 ULTIMATE MATCH』('98UM)に続くUMシリーズの第2弾でもある。主な略称は『2002UM』。
ただし後述するように大幅な追加要素や調整が入っているため、ほぼ新作といっても過言ではない。
『2002』のリメイク作品としては、過去に実質リメイクである『THE KING OF FIGHTERS NEOWAVE』が存在したが、今回はそれとは異なり改めて作り直したもの。
なお、本作の登場に伴い、リメイク元の原作『2002』は区別として、主に「無印『2002』」、一部からは「元祖『2002』」「旧『2002』」とも呼ばれるようになった。これは『'98UM』の原作の『'98』も同様。
※本ページ内でも以降は便宜上、リメイク元の原作『2002』は、基本的に「無印(『2002』)」と記載しています。
特徴
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本作はまず最初にPS2にて家庭用版を発売し(初期版)、のちにバグチェックと少々のバランス調整をしてアーケード版を稼動、更にアーケード版を元に『闘劇 ver.』をPS2で発売(兼廉価版でもある)、という経緯をたどっている。基本的にこれらのバージョンに大きな相違はないため、本項では全て一緒に扱い、バージョン固有の特筆点ではその都度それを特記する。また闘劇verを含め『家庭用』と一括。
機種
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ゲームバランス
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背景
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ボスキャラ使用
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チャレンジ/エンドレス
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アートギャラリー /カラーエディット
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無印2002
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PS2/初期版
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PS2初期版独自
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3D
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O(隠し)
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O
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O
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O
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アーケード基板(Y2版)
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アーケード
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2D
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PS2/闘劇ver.
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アーケード
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3D
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O(隠し)
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O
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O
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O
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XBLA
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アーケード
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2D
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O(隠し)
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O
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NESiCA×Live(アーケード)
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アーケード
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2D
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Steam(Win)
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アーケード
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2D
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O(デフォルト)
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O
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PS4
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アーケード
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2D
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O(デフォルト)
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O
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上記をまとめると「最初のPS2版初期版のみ、以降に発売or稼働したバージョンとゲームバランスが違う」「PS2版の2作のみ無印『2002』の家庭用ネオジオ版を同時収録、ステージ背景が3D仕様でアートギャラリーとカラーエディットもあり」「家庭用全般はチャレンジモードとエンドレスモードを搭載」「アーケード版はボスが使えない」となる。
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PS2版初期版と闘劇ver.にはセーブデータの互換性はない。隠しキャラの解禁もそれぞれ別途に必要(出現条件自体は同じ)。
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ちなみに、PS2版闘劇ver.は、SNKプレイモアが発売した最後のPS2用ソフトにもなった。
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Steam版では隠しキャラクターが最初から全てオープンされている他、後にアップデートでオンライン対戦のネットコードにロールバック方式を実装した事でラグが大きく改善され、更に後のアップデートにて多人数対戦ロビーと観戦機能が実装されている。
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PS4版は上記のSteam版と同等の内容。後にパッケージ版も発売されている。
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『'98UM』に続きネオジオ博士(顔出しの多い一社員)プロデュース。
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なおこの『'98』と『2002』という選出は、2作ともストーリーの存在しないいわゆる「お祭り」作品であり、同時にその優れた対戦バランスからユーザーにずっと親しまれてきた、という共通点がある。
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お祭り作品のリメイクとしては『'94 RE-BOUT』もあり、これらお祭りタイトルの各原作は全て4年置きである。
+
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参戦キャラクター
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無印『2002』からチーム構成やチーム名が変更され、メンバーが入れ替わっているものも多い。
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17チーム51人・エディット専用1人+隠し2チーム6人+家庭用限定8人
無印『2002』未登場の復活キャラクターは
太字
、うち家庭用無印『2002』で復活登場済みのものは
下線
チーム
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メンバー
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日本チーム
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草薙京
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二階堂紅丸
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大門五郎
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餓狼伝説チーム
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テリー・ボガード
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アンディ・ボガード
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ジョー東
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龍虎の拳チーム
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リョウ・サカザキ
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ロバート・ガルシア
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ユリ・サカザキ
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怒チーム
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レオナ・ハイデルン
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ラルフ・ジョーンズ
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クラーク・スティル
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サイコソルジャーチーム
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麻宮アテナ
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椎拳崇
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包
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韓国チーム
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キム・カッファン
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チャン・コーハン
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チョイ・ボンゲ
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女性格闘家チーム
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不知火舞
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キング
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藤堂香澄
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美少女格闘家チーム
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李香緋
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四条雛子
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メイ・リー
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ジョンチーム
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ジョン・フーン
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麟
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矢吹真吾
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マスターチーム
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ハイデルン
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タクマ・サカザキ
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鎮元斎
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八神チーム
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八神庵
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マチュア
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バイス
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'97スペシャルチーム
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ブルー・マリー
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ビリー・カーン
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山崎竜二
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オロチチーム
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七枷社
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シェルミー
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クリス
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K'チーム
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K'
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マキシマ
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ウィップ
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エージェントチーム
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セス
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ヴァネッサ
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ラモン
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ネスツチーム
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クーラ・ダイアモンド
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アンヘル
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フォクシー
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クローンチーム
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KUSANAGI
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草薙京-1
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草薙京-2
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エディット専用
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ネームレス
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裏オロチチーム(裏)
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乾いた大地の社
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荒れ狂う稲光のシェルミー
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炎のさだめのクリス
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KOF2000Ver.(裏)
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裏タクマ
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裏ロバート
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裏ケンスウ
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ボス(家庭用のみ使用可)
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クリザリッド
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クローンゼロ
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オリジナルゼロ
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イグニス
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オメガルガール
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家庭用追加ボス
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ギース・ハワード
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ナイトメアギース
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ゲーニッツ
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※裏オロチチーム以外の隠しキャラは一部家庭用版のみ解禁に条件が必要。
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※家庭用も含めた無印『2002』登場メンバーはほぼ全員出ているが、K9999 と ツキノヨルオロチノチニクルフイオリ のみ未参戦。
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評価点
対戦ツールとしてバランスがよく名作とされる無印『2002』を元に、以下のようなリメイクがなされている。
キャラクター選出
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キャラクターの大幅追加。
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アーケード版だけを比較しても、無印『2002』では通常使えるキャラクター43人と、ラスボスでありプレイヤーはACで使用不可能なオメガ・ルガールの計44人であった。
本作はプレイアブルキャラクターが58人(うち裏キャラが6人・無印未登場キャラが16人)に増加。これは格闘ゲームとしては最多クラスのキャラ数であり、元々チーム戦前提のKOFシリーズでも史上最多にわたる人数を誇るものだった。
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さらにボスキャラクターの5人および、家庭用限定でボスとともに使えるキャラの3人(うち1人は裏キャラ扱いのボス相当)が存在し、最大で計66人が収録されていることになる。
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AC版に登場するキャラクターに関しては、ボスも含め『'99』から『2001』までの一連のストーリー、通称『ネスツ編』で登場したキャラクターが1人を除いて全員共演を果たした。加えて、本作初出の完全新キャラクターも1人登場(詳細は後述)。
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ネスツ編で期待の新星として華々しく?登場しながらもあっさり欠場したイケメン三枚目ジョン・フーンや相撲美少女の四条雛子、それ以前の作品からネスツ編まで通して登場していながら無印出場が叶わなかった人気キャラのキングや矢吹真吾が復活。
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意外どころでは『'99』にだけ出ていたクローン京-1及び京-2が再参戦している。このため草薙京のコンパチキャラが本人含めて4人もいることになるが、この人選はネスツ編に登場するキャラクターは絶対に漏らさないという意思表示とも言える。
これらクローン京のチームは『'99』ストーリーで表舞台を降りて隠しキャラ化した草薙京の代替であるとともに、「旧バージョンの京を使いたい」というファンの要望に応えた要素も兼ねているため、京-1は『'95』を基本に『'96』の技を加えているなど、過去作を意識した性能が設定されている。
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また無印では草薙京とKUSANAGIは同じチームに入れて使用する事が出来なかったが、本作ではそれぞれ独立したキャラになったお陰で、どちらも同じチームに入れての使用が可能となっている。
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ロバート・ガルシア/タクマ・サカザキ/椎拳崇の3人にも『2000』ベースの裏キャラクターが追加。ロバートはいわゆる「タメキャラ」で、拳崇は超能力が使えない時のスタイルになっている。タクマは表が性能が大きく変更された無印ベースなのに対して、裏はそれ以前の性能がベースとなっている。
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ボスキャラクターに関しては、到達時の条件に応じて、前述したネスツ編の各作品に登場する中ボス及びラスボスの計4人のうち1人が再び立ち塞がることとなる。さらに別の条件を満たしていると、先程のボスを倒した後に、無印でラスボスだったオメガ・ルガールが隠しボスとして登場する。
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その一方で家庭用無印『2002』で追加されたキャラクターのうち2~3人(ゲーニッツ、ギースとナイトメアギース)はネスツ編に登場すらしていなかったため、本作AC版ではプレイアブルではないばかりか敵としても登場せず、家庭用限定のおまけ要素的な参戦に留まっている。
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以上、参戦キャラクターを総括して言えるのは、ネスツ編の総まとめとしての本作という側面である。これはそもそも無印『2002』がそういう要素を帯びており(その筈であり)、リメイクに当たって『2002』の価値を拡大したものといえる。
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KOFシリーズ本編は基本、複数タイトルを跨いで進行する一連の「ストーリー作品群」と、ストーリーがないおかげでストーリー上で死亡及び消滅したキャラクターなども出せるまとめとしての「お祭り」作品、という流れになっている。つまり『'95』~『'97』で描かれたオロチ編のお祭り作品『'98』と同様に、『'99』~『2001』で描かれたネスツ編のお祭り作品『2002』ということである。
しかし、『2002』はオロチ編とネスツ編の集大成という形をとっていたため、ネスツ編初登場や通しで登場していたキャラクターが選出されず、ボスもネスツ編と無関係なオメガ・ルガールのみであった。
要するに、2002は本作『アンリミテッド・マッチ』によってようやくネスツ編単独としての総まとめとして完成した、とも形容できるのだ。これは『'98』及び『'98UM』の関係にも同じことが言えるが、それは当該項目に委ねる。
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そしてキャラ選出において最後に、本作唯一の新キャラクターであるネームレスは、ネスツの改造人間。彼の声は現在も多数の作品で活躍中の小野大輔氏が演じている。
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このキャラクター、言わば本作の「顔」として設定されたものだが、その性能は『2001』及び無印『2002』に登場したK9999とほぼ同一。一部使いづらい通常技がいくつか書き直され、使い勝手は向上している。
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K9999は端的に言うと大友克洋氏作のマンガ『AKIRA』の主要キャラクター「島鉄雄」に台詞や動作などが極めて酷似しており、権利上問題があることは直接的でないながらSNKプレイモア側も認めるほどの代物だった。公式サイトや書籍で顔イラストが掲載されていない、などの扱いを受けていた。
ゆえに、要は大人の事情から代替として生まれたのがこのネームレスということになる。
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ちなみにK9999は後の『THE KING OF FIGHTERS XV』において、性能や挙動はほぼそのままキャラ名をクローネンと変更し、技名や台詞から『AKIRA』要素を排除して再登場している。このクローネンは炎を扱えるなど自分の力をK9999時代よりコントロールできているという設定になっており、技の演出が若干ネームレスに寄せられているが、逆にネームレス本人のほうはソシャゲを除く『2002UM』以外のシリーズでは未登場である。
対戦バランス
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システム及びキャラクター性能の大幅調整。
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「全キャラクターの体力/ジャンプまでの動作/緊急回避性能の均一化」「通常投げ外しの弱体化」「MAX発動時すべての超必殺技がどこでもキャンセルできる」「タメ技はMAX発動時、タメなしでどこでもキャンセル可能」などの調整によって、システムレベルで各キャラクターの性能の平均化調整がなされている。
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キャラクターの性能も大幅調整されており、新技も多く追加。無印『2002』では強キャラクターとされたビリー・カーンやチョイ・ボンゲやキムもきっちり調整を受け弱体化されている。またお手軽と言えないが猛威を振るったアンヘルの永久連続技なども当然削除。その他、変更点に関しては多すぎて枚挙に暇がなく、全キャラクターがその影響を受けている。
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無印もう一つの新要素である上位必殺技「MAX2」もテコ入れされた。性能やコマンド入力が特殊すぎて少々使いづらく、いまひとつ戦術に組み込みづらかった存在だが、本作では性能やコマンド入力を使いやすく調整され、使用機会が条件に見合っていないキャラクターに関しては当該技を普通の超必殺技へ格下げし、新たなMAX2を追加した。
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また演出面も発動時にキャラクターの顔のカットインがあらわれ、終了時に背面の特殊背景がガラスのように割れる、という流れとなって強化されている。
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以上、抜本的な調整がなされた本作であるが、そのゲームバランスはKOFシリーズの過去作と比べても極めて良好であると言える。無論、その中でキャラクター間の強い弱いは存在するものの、全体を破綻させるほどの要素は存在しない。多くの追加要素を盛り込みながらも、公平に見てバランスの良かった『2002』の美点を継承している断言して構わないであろう。
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CPU専用及び家庭用のみのボスだが、『'99』のボスキャラクターであるクリザリッドは、エンド・オブ・エデン(MAX版超必殺技)をフルヒットさせることが不可能で、最初の火柱とその後の突進攻撃のどちらかしか当てられないという残念な仕様だったのだが、今作では改善されフルヒットさせることが可能となっている。
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優れたキャラバランス
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前述の通り、テコ入れされてさらに完成度が向上したシステムバランスに加えて、キャラバランスも先程のキャラ選出に記したように、元々キャラ数を多く抱えているKOFシリーズ中最多を誇るキャラ数だが、それでいてバランスもそこそこ良好。
勿論人間の仕事である以上、キャラの間で強弱の差はあるものの、対戦が成立しない程の組み合わせは存在せず、元々システムも整っており、何よりキャラ数を考えたら奇跡とも言える。
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強いと言われるのは以下のキャラクター。
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目玉キャラであるネームレスはゲージさえあれば小技から即死までゆける火力の評価が高い。3番目の大将として有用である。
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ネスツ編の主人公であるK’は意地を見せて?か、技構成のバランスがよくどれも高性能。文句なしの最強キャラと言う声も。
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藤堂香澄はジャンプ攻撃の性能が極めて高く相手を崩しやすい。またコンボ火力が高い。接近戦は鬼の一言。
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この2キャラにクーラ・ダイアモンドもしくはキングを加え「4K」と称される。4キャラともゲージ依存の低さから先鋒か中堅向けで、この4人のうち2人からネームレスに繋ぐのが定石といえる。
尚、闘劇覇者はK'とネームレスに加え弱点が多いとはいえハメ能力の高い雛子を起用し、ベスト8から決勝の2人目まで雛子で8タテという偉業を残した。すもうパワーにはまいったな!!
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逆に弱いといわれているのは乾いた大地の社、メイ・リー、ヴァネッサ、マキシマ、チャン・コーハン辺りと言われるが、それぞれ固有の強みは十分にある。
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また、現在では修正されたため完全に蛇足になるが、最初に発売されたPS2版初期版では壊れ気味なほどに大門やユリの評価が高かったが、アーケード版以降ではしっかりと下方調整が入っている。
演出面
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背景、BGM、キャラクターイラストの完全刷新。
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『98UM』とは違い、背景は総リメイク。無印『2002』における「浮いた」ものを全て捨て、きちんとキャラクターグラフィックとマッチするものとなっている。
各ボスのステージもきっちりとリファインされており、クローンゼロとイグニスステージについては元ステージの建造物デザインを活かしつつカメラアングルや戦闘位置が変更され、実質完全新規となっている。
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PS2版2作品ではほぼ全て新規の3Dステージになっている。それ以外のアーケード版やXBLA版、Steam版、PS4版ではステージが2Dレンダリングに変更されたが、ネームレスの専用ステージ、および一部のステージの別バージョンが追加されている。
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BGMも音色・音質ともに批判が多かった無印のものから、新BGMや過去作BGMの新アレンジに全て差し替えられている。無印に比べ性能が向上劇的に向上したハードのおかげで音質向上・豊かな音色が使えるようになったことも伴って、ユーザーからはおおむね高評価。特にイグニスの新テーマである『Save the Universe』はRPGのボス戦かと思わされるほどの壮大な曲調を誇る。
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本作のBGM担当は、歴史的にSNK~SNKプレイモア作品のBGMを手がけていた社内サウンドチームである「新世界楽曲雑技団」によるものではなく、当時音楽制作会社のツーファイブに所属していた浅井真氏、小西輝男氏、福田康文氏が手掛けている。
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キャラクターイラストは癖の強い無印のノナ氏のそれから、ヒロアキ氏による過去作のイメージを引き継いだそれに変わっている。ノナ氏のイラストはクオリティそのものは高いもののかなり極端なデフォルメやアレンジが多く、歴史あるタイトルのユーザーにとっては受け入れがたいものがあるという批判が多かった。それに比べ、ヒロアキ氏は画風も今風かつ癖が抑えられており、ユーザーからの反発は少ない。
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以上、演出面で本作は紛れもなく良くなっていると言える。本Wikiにある無印『2002』の記述を見てもらえばわかるが、これらの要素こそが『2002』に対する大きな批判点であったのだ。これを全て刷新してきたSNKプレイモアは、即ち『2002』の悪評判を十二分に把握していたということであろう。これは『2002』の欠点を克服した、と言える。
その他
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PS2版2作品ではオリジナルである無印『2002』の家庭用ネオジオ版がそのまま収録された「ネオジオモード」が存在している。詳細を後述するK9999ももちろん使用可能。
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このネオジオモードはXBLA版やWin/PS4版では省かれている。
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あくまでネオジオ版の再現であるため、PS2単体版無印『2002』の追加キャラクター5人はこちらには登場しない。
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家庭用ではトレーニングモードなど家庭用格闘ゲームには普通に搭載されるモードの他、指定された条件をこなすチャレンジモードなどがある。
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PS2版2作品のみ、本作や『2002』のイラストを鑑賞できるギャラリーモードや、カラーエディットも収録されている。
まとめると、キャラクターの選出では『2002』の価値を拡大し、調整面では『2002』の美点を継承し、演出面では『2002』の欠点を克服した良リメイク――それが本作である。
批判の余地がないわけではないが、まずもって各要素が少なくとも及第点に達した、隙のない作品であることは間違いない。これはKOFシリーズの中でも比較的珍しく、名作とされた『2002』をリメイクするというスタッフの心意気が十二分に感じられる出来となっている。
賛否両論点
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『2002』自体のゲーム性
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当然ではあるが「どこでもキャンセル」「クイックMAX発動」等でコンボ要素に重点を置いたゲーム性は変わっておらず、やはり好みは分かれる。
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しかも本作は無印『2002』からどこでもキャンセルがさらに強化されており、特に「必殺技から(MAX)超必殺技へキャンセルして出す」行動がMAX発動の成否問わず、スーパーキャンセル扱いになっていてゲージが余分にもう1本必要になっていた無印とは異なり、本作はMAX発動中ならば前述のキャンセル行動もどこでもキャンセル扱いになった点(=キャンセル分のゲージを消費する必要がない)が大きい。
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このため、特にゲージが最大5本まで溜まる大将メンバーに置くキャラは、ゲージフル活用によるどこキャンコンボでかなりの火力を引き出せるキャラを選ぶのが定石とされており(主にネームレス、裏タクマなどが該当)、かつそのようなキャラではどこキャンコンボの練習が必須と言われているせいでより敷居が高くなった傾向が強い。
一応本作は無印とは異なり、MAX超必もMAX2もMAX発動を経由しないで出せるようになったが、その場合は未発動の代わりにさらに1本のコストが追加されて結果ゲージが計3本も必要になってしまうため、やはりMAX発動とコンボを絡めてそれらのゲージ消費技を出せるか否かでは当然ゲージ効率において大幅に差が出てきてしまう。
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とはいえ、無印もそうだが、超必なら必殺技からのキャンセルでさえなければ発動の成否問わずゲージ1本で済む上、それ以外にも各種ガードキャンセルやクイック緊急回避と、ゲージの使い道は様々なものが用意されているし、どこキャンやクイックMAXとの相性の良し悪しは各キャラの間で大きく分かれているのもそのままではあるものの、逆に言えばどこキャンやクイックMAXとの相性がそこまで良くないキャラは覚えることが少ないとも言い換えることができる上にそのようなキャラが決して弱いとも限らない為、必ずしもどこキャンとクイックMAXが絶対の存在とは限らない。
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本来の想定通りの性能となった荒れ狂う稲光のシェルミーの「УНМЭЙ НО Я (運命の矢)」
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無印では落雷の時点で両者共にロックが解けていたためお互い共にギリギリ緊急回避が可能で、さらにオリジナルでは攻撃範囲が画面の左右どちらかだったが、今作では回避不可能になり相手か自分のどちらかをサーチして必ず命中するようになった。
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本来想定された「ギャンブル技」にきちんと修正され、一か八かで相手に大ダメージを狙えるようになったが、結果として知識があればギャンブルから逃げられるという利点は消えた。
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また、MAX2の使用条件のひとつが自身の体力減少時であるため「1/2の確率で自分に当たれば即死」というリスクの高い技でありながら、相手に当たった時のダメージは4割程度のままで据え置きであるため、使い所の難しいロマン技であるという点は変わっていない。
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なお、本作ではこの技で最後の相手をK.O.すると特殊勝利メッセージが出るという要素が新たに追加されている。
問題点
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最初にPS2で出た初期版では、致命的でないながらも目立つバグが多数存在し、対戦バランスを破綻させている性能を持ったキャラクター(特に大門とユリ)もいた。
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これはその後アーケード版やPS2の闘劇ver以降の移植版では概ね修正された。
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ただしバグに関してはその後も修正されていないものがある。返す返すゲームを破綻させるほど致命的ではないのが救いか。
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条件が厳しくなったエンディングとやや不親切になったCPU戦
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本作は各デフォルトチーム毎にすら専用エンディングが用意されていなかった無印『2002』とは異なり、各デフォルトチームは勿論、特定の組み合わせで見ることができる特殊エディットチームのエンディングも大量に追加されたのだが、そのエンディングを見るための条件が過去作より厳しくなってしまっており、特に同じリメイク作『'98UM』と比較すると顕著。
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その条件とは「各デフォルト及び特殊エディットチームで、隠しボスのオメガ・ルガールを倒す」というものだが、このルガールを出現させるための条件がかなり厳しく(「ノーコンティニューでかつラスボスの各ネスツボス戦勝利までに3ラウンド分までしか負けられない」というもの)、しかもルガールのアルゴリズムは超反応だが比較的パターンにハメやすく過去先より良心的難易度だった無印とはあまり変わっていないものの、各性能がかなり強化されているため(防御力が無印の彼やネスツボス勢よりもさらに硬くなり、通常投げが投げ外し一切不可に、なんでも判定が追加された技が多い、など)折角追加されたエンディングを見るだけでもかなりの苦労とプレッシャーを強いられる上に一回のミスで水の泡となってしまう。さらにルガール戦に限りコンティニュー不可。
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加えて基本的にネスツボス以外の各CPUのアルゴリズムは無印とは変わっていないものの、無印にあった、ボス戦手前以外のステージは2チームから相手を選択できた「CPUチーム選択」も廃止されてしまっている。このため無印である程度は苦手なチームを回避できたのも不可能になってしまい、よりルガール出現条件を厳しくしているとも言える。特に無印から3人とも超反応で強かった「'97(スペシャル)チーム」の強さは相変わらずなため、条件のためには避けたいところだが....。
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またラスボスであるネスツボス勢も、全体的に元の登場作よりは緩めの難易度であるものの、やはりボスだけあってそこそこの超反応と高性能を有しており、簡単という訳でもない。
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特にイグニスは元の『2001』とは異なり永久こそ使ってこないものの、新たに追加されたMAX2を使ってくることがあり、これがガード不能で回避も困難な上にCPU版は威力も絶大な為、終盤で逆転されて負けてしまうこともザラ。幸いネスツボスの出現条件は直前のステージ6のCPU3人目をどうフィニッシュしたかで決定され、MAX2=イグニス、MAX超必殺技=オリジナルゼロ、超必殺技=クローンゼロ、それ以外=クリザリッドとなっているため、MAX2以外で倒せばイグニスルートには進まないので、条件をしっかり把握しておけばイグニスを避ける事は簡単。戦ったネスツボスが誰かはルガール出現条件に問われない。
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無印『2002』はお祭り作品でありストーリーがなかったが、本作もエンディングまで特にストーリーは存在しない。そこで問題になってくるのが、オリジナルキャラクター・ネームレスの件となる。
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ネームレスは、参戦に至るストーリーや彼の解決すべき問題が詳細に設定されているものの、前述の通り本作をいかにやりこもうともストーリーは展開しない。つまり彼の行く末や恋人イゾルデの生死など、設定上張られた伏線などは作中で一切回収されず、肩透かし感は否めないのだ。
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本作以降のシリーズ作で回収されることを期待したいが、そもそもネスツ編は前述した通り無印以前に話が完結しており……微妙なところではある。
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後にモバゲータウン内において展開されたTHE KING OF FIGHTERS バトルフェスタ(サービス終了)にてネームレスの設定資料が公表され、その中でイゾルデの生死が判明した。その内容は「K'と同様に片手に炎を制御するためのグローブをはめているが、それはかつての恋人の変わり果てた姿である」というもの。
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家庭用限定の隠しボス扱いとなるキャラがネスツ編に全く関わっていないナイトメアギースであることに疑問を持つプレイヤーは多い。
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「ネオジオ博士のお気に入り」だという噂があるが、実際は不明。
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ギースは家庭用無印『2002』の追加キャラクターではあったが、当時は特にボス枠ではなかった。
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一応、同じく無印をベースにした作品である『NEOWAVE』の最終ボスもギースだったが、そちらは若い姿の方だった。
他にギースが最終ボスを務めたKOFはGBAの『THE KING OF FIGHTERS EX NEO BLOOD』もある。
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『2002』と比較するとK9999とツキノヨルオロチノチニクルフイオリ(暴走庵)が非参戦。
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このうちK9999は性能のみネームレスに引き継がれており、またPS2版のネオジオモードでも一応使用できる。
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暴走庵についてはレオナのように試合中に変身する案も考えられてはいたものの、「庵はレオナと違って制御できているわけではないので自ら暴走するのは不自然」といった理由や、ゲームバランスを考えた上で今作での参戦は断念されたとされる。
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PS2版二種類のネオジオモードでも当然登場しないため、『2002』版暴走庵が使いたい場合は無印PS2版かXbox版を買うしかない。
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また、前述の『NEOWAVE』の方に登場していた柴舟と若ギースも本作にはいない。もっともそちらは名目上別タイトルのため仕方ないと思われる。
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流用や改変による既視感が目立ち、雰囲気の明るすぎる通常戦闘背景
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確かに継ぎ接ぎや粗さが目立っていたせいで出来の悪かった無印より見違えるほどに綺麗になり、背景キャラもネオジオオールスターとなっているが、その多くは登場キャラのグラフィック改変や過去作の流用であり、シリーズに慣れ親しんでいる人ほど既視感を覚えやすい。
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特に日本・高校ステージが顕著なのだが、背景のちょっとしたモブもラモンやマチュアの勝利ポーズと同じような動作をしている。
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他にもADKキャラが節操無く配置されている点、お祭り作品であるせいかネスツ編がモチーフなのに全体的に大半のステージの雰囲気が明るすぎる点も指摘される。
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その一方クローン研究施設ステージなど、ボスステージ用の背景は総じて好評なリファインが行われている。このことから、通常ステージの明るい傾向は意図した構成であるともとれる。
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旧曲BGMのアレンジがオロチ編偏重気味
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新曲と、旧曲のアレンジ版の完成度も際立っている本作だが、後者の選曲は『'98』以前のオロチ編時代の曲が多く、「Tears」「Beauty and the Beast」などネスツ編の曲は意外と少ない。
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本作は一応ながらネスツ編モチーフの作品であるため、せっかくの機会なので用意して欲しかった要望もある。
総評
『2002』の評価点の受け継ぎや欠点の修正はしっかりと行われリメイクとして、またバランスも良好でキャラ数も多いことから一個の格闘ゲームとして、極めて高い水準でまとまった作品と言える。
同時に本質的には『2002』の特徴を受け継ぎ、またもっと俯瞰すれば紛れもなく『KOF』シリーズ中~後期のゲーム性の継承者であるため、どちらかといえば個人の好みの範疇で拒絶感のでるユーザーがいてもおかしくはない。
つまるところ、長寿シリーズである『KOF』にひとつ傑作が追加された――という評価が妥当であろうか。
対戦ツールとしてやりこむに足る格闘ゲームとして、今でも巷のゲームセンターや各々の家庭とオンライン、そして大会を舞台に、白熱した勝負が繰り広げられている。
最終更新:2025年02月03日 18:18