この記事では、『電車でGO!3 通勤編』とそのバージョンアップ版『電車でGO!3 通勤編 ダイヤ改正』、およびこれらの据置機・パソコン移植版について記述しています。
電車でGO!3 通勤編
【でんしゃでごーすりー つうきんへん】
電車でGO!3 通勤編 ダイヤ改正
【でんしゃでごーすりー つうきんへん だいやかいせい】
対応機種
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アーケード
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使用基板
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Type-Zero
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発売・開発元
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タイトー
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稼動開始日
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無印
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2000年
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改正
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2000年10月
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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通勤列車主体の作品へシフト 強化されたグラフィック面 シリーズ最高の難易度との声も
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電車でGO!シリーズリンク
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概要
『電車でGO!2 高速編』の続編。サブタイトルが『通勤編』になり、収録路線もほとんどが通勤電車となった。
3Dポリゴンで描かれた沿線風景、運転台をリアルに再現した専用筐体も健在であるが、基板はType-Zeroに変更され、窓の半透明処理や扉の開閉などが再現されるようになった。
後に一部不評だったダイヤを改正したバージョンアップ版の『電車でGO!3 通勤編 ダイヤ改正』も少数稼動した。筐体に差異はなく、画面上の表記でのみ判別可能。ただし『がんばれ運転士!!』と同時期にリリースされたため、そちらに改造してしまった店舗も多く、ほとんど出回らなかった。
追加・変更点
前作から追加・変更された要素
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運転評価が0.1点単位で判定されるようになり、スコアに差がつきやすくなった。
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本作は駅停車時に、停止位置±0m・時刻±0秒でないとGreatボーナスがもらえなくなった。従来は時刻±2秒までずれてもGreatとなっていた。
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また本作はGreatのボーナスと定通(通過駅を定刻に通過)のボーナスの加算値が共通化された。たとえ全通過駅を時刻ピッタリに通過しても、停車駅で時刻が1秒ずれると定通ボーナスも初期化されてしまう。
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つまり最大のボーナスを取るには、通過駅は全て定通、停車駅は全てGreatを取る必要がある。
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パスワードを用いたインターネットランキングが開催された。
『ダイヤ改正』で変更・改善された要素
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隠し路線が最初から運転できるようになった。
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一部ダイヤの運転所要時間見直し。
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性能低下が発生した場合にどうやっても時間に間に合わない区間が点在していたため、全体的にダイヤ設定が緩くなった。
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駆け込み乗車の発生率が低下。ほぼ各駅で駆け込み乗車が発生するようなことは無くなった。
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警笛ボーナスも増えている。無印では「警笛鳴らせ」だった箇所が隠し警笛になっている等。
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ノーマルモードではスコアが0.1点単位から1点単位に変更された。
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速度計がデジタル表記で画面上部に常時表示されるようになった。
ゲームモード
本作には従来通りのルールの「ノーマルモード」のほか、「ファミリーモード」「鉄人モード」という独自のモードがある。
ファミリーモード
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3~5駅の区間をゲームオーバーなしで運転できる。
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持ち時間の部分は「あと○えき」と残りの停車駅数となっており、残りが0になると一旦必ずプレイ終了となる。運転を続行する際は、クレジットの投入が必要。
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加減点要素はなく、どのような運転をしてもかまわない。ただし区間ごとに「駅間運転時間」が設定されており、時間切れになるとゲームオーバーになる。もっとも遅延プレイ対策であり、よほどノロノロ走らない限り時間切れにはならないが。
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このモードでは「鹿児島本線813系」「篠栗線キハ66系」「総武線209系」「山陽本線207系」のみ選択できる。
ノーマルモード
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基本的に前作に近い仕様で遊べる従来通りのモードである。
鉄人モード
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上級者向けのモードで、様々な点で従来のモードよりも難しくなっている。
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ダイヤ遅れ・オーバーランなどのペナルティの減点幅が非常に大きく、初期持ち時間も少ない。反面、ボーナスは多いというインフレ気味の設定。
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残り距離・速度制限標識の予告が一切表示されない。そのため、停止位置や制限速度だけでなく減速・停止時のブレーキハンドルの感覚も覚えないとならない。
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非常ブレーキを使用しない場合でも、低速で強いブレーキをかけると「急制動」のペナルティを取られることがある。
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一部ダイヤでプレイが変化する。
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中央線と山陰本線では終着駅の前に注意信号が固定で出現し、制限速度以下で通過してもATSベルが鳴り、これを解除する「ATS確認」という操作が求められる。ゲーム説明画面等には一切書かれていないため、まさに「鉄道に知識のあるプレイヤー向け」の仕様である。
収録路線
篠栗線の吉塚~博多および山陰本線以外は全て本作が初収録。
九州
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鹿児島本線 鳥栖→博多
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PS版『2』で収録された博多~小倉間の手前となる区間。
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鳥栖→博多間は隠しダイヤでのみ運転できる、本作で唯一の特急が運転できる区間である。
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篠栗線 篠栗→博多
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福岡近郊の非電化路線。2001年に電化されたため、その直前の姿を再現している。
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最後の1区間である吉塚~博多間は正式には鹿児島本線であり、『2』で収録されたのと逆方向を走行することになる。
近畿
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山陽本線 神戸→西明石
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初代の京都~大阪間、『3000番台』の大阪~神戸間とシリーズで繋がった区間となる。
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この区間は緩行線と急行線で線路が分かれており、普通列車と快速・新快速列車では走る線路が違う。
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山陰本線 亀岡→京都
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電車でGO!のはじまりである初代初級路線のリメイク。省略なく全区間を運転できるが、嵯峨駅は稼働当時の嵯峨嵐山駅に戻っている。
関東
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総武線 新宿→秋葉原
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山手線の輪の中を横断する大都会の通勤路線。すべての列車が各駅停車。
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区間上はここも中央線なのだが、俗称である「総武線」で呼ばれている。
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中央線 新宿→東京
+
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収録ダイヤ一覧
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路線名
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難易度
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種別
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車両
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区間
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備考
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九州
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鹿児島本線
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初級
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普通
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813系
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二日市→博多
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中級
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811系
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上級
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特急有明
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787系
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鳥栖→博多
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隠しダイヤ
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上級
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特急ゆふいんの森
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キハ72系
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篠栗線
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中級
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快速
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キハ200系
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篠栗→博多
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普通
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キハ66系
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キハ58系
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隠しダイヤ
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関東
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総武線
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初級
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普通
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209系
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新宿→秋葉原
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中級
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205系
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201系
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中央線
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中級
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特別快速
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201系
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新宿→東京
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近畿
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山陽本線
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初級
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普通
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207系
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神戸→西明石
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上級
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201系
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205系
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中級
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快速
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221系
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上級
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新快速
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223系
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山陰本線
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上級
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普通
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キハ58系
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亀岡→京都
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隠しダイヤ
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評価点
Type-Zeroによる恩恵
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窓の半透明処理や扉の開閉などが再現されるようになった。まだまだ粗い所はあるが前作までと比べればその差は一目瞭然。後の『FINAL』には及ばないものの、グラフィックの良さはPS2中堅レベルであり、及第点である。
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対向列車の窓の中を見れば車内の様子が見え、架線などもかなりリアルに再現されている。
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従来の信号だけでなく、速度制限の標識などもきちんとグラフィック中に登場するようになった。
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駅を発車する前、停車後の運転評価時は車両側面を写し、ドアを開閉する場面が描写される。また鉄道ではありがちな駆け込み乗車も発生する。ただしこれは後述するように不評点でもあるが…
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明確に時刻の概念ができた。プレイに「朝/昼/夕/夜/リアルタイム」から選ぶことができ、景色や車両の挙動(乗車率による違い)が変わる。
ファミリーモードである程度ハードルを下げた
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本作はシミュレーションゲームであるため電車好きの小さな子供がプレイするには難しいものがあったが、このモードが登場したことによりゲームが苦手な人でもプレイできるようになった。
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ただし各駅停車しか運転できず、ゲーム中の終着駅までたどり着くにはコンティニューが必須。
戸閉めブザーの追加
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AC版は知らせ灯が切れている筐体が少なくなく、慣れていないうちはいつドアが閉まったか分からないこともあった。
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それを受けて今作は、知らせ灯点灯と同時にブザーが鳴るようになり、知らせ灯が切れていてもドアが閉まったかがわかりやすくなった。
賛否両論点
筐体の古さによる問題
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「セガのMODEL3基板に負けない性能を」というコンセプトで作られたが、肝心のハードが旧式のままでその性能がスポイルされてしまっている。
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特にDX筐体の50インチ版は、以前からセガのメガロ50に数段劣ると言われていたプロジェクターをそのまま使用している。画面だけでなく音も旧来の汎用筐体と大差無く、造りも安っぽいまま。
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また、旧作からの改造機ではプロジェクターの欠点である「焼き付き」の発生したものが非常に多い。これは、上向きに光を出すプロジェクターは光源に埃が大変たまりやすいが、メンテナンスに長けた店舗でないと直すのが難しくほとんど放置状態であることが原因。
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しかし、爆発的にヒットした『電車でGO!』の筐体がそのまま活かせられるキットが、メイン基板変更でも流用出来るというのは店舗にとってもありがたい仕様であった。改造キットでなくてもほぼ据え置きなのは、プレイヤーからすれば慣れ親しんだ筐体がそのまま新作になるのですんなりと入りやすいという利点もあった。
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更に、Type-Zero自体の性能もお世辞に褒められたものと言えない。
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NAOMI等のようにCD-ROMやDVD-ROMなどのディスクメディアを扱っていた時代の基板ではないが、タイトーのカラオケ機種『X-2000』で使用する市販のHDDをそのまま流用しているためか、旧作よりもローディング時間が大幅に増えた。
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これは今作に限った問題ではないし、容量が拡大した故の仕方ない面もあるが、ローディング時間が長いと感じるのはこの時代のType-Zeroが顕著。結局Type-Zeroでこのローディング問題は全く解決せずに次代のTypeXまで「タイトーのゲームはローディングが長い」というイメージが定着してしまった。
問題点
歯止めの掛からない高難度化
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ファミリーモードもあるので誰でもプレイできるようにはなったが、従来通りのモードではよりハードルが高くなることになった。上記の鉄人モードを抜きにしても、本作はシリーズの中でもかなりの高難易度を誇る。
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追加・変更点の項目で記述した通り、本作は到着時刻が1秒でもずれただけでGood停車となるため、完璧な運転をしないとわずかしか持ち時間が増えなくなった。
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このせいで、普通にノーコンテニューで終点を目指すだけでも相当な障壁となっている。
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駅から発車する時に駆け込み乗車が発生して発車が数秒遅れることがある。しかも発生頻度は割と高く、GoodかGreat停車を決めるとほぼ確実に駆け込み乗車が発生し、グダグダな運転になってしまう悪循環に。
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さらには「当該区間で乗客が多数乗ってきた」という設定で、特定区間で加速・減速性能が低下するという仕様も。
しかも一部区間では性能低下が発生すると定時運行が不可能となる
おまけ付き。完全に調整不足と言わざるを得ない。
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停止位置の合格範囲が厳しすぎる。
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ノーマルモードはオプションの難易度設定でイージーだと誤差1m(149cm)だが、ノーマル以上は0m(49cm)とされており、明らかに他作品よりも厳しめ。なお距離表示がされない鉄人モードは難易度設定に関係なく0m(49cm)となっている。
絶対にボーナスが獲得できないボーナスゲーム
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本作は鉄人モードでプレーしている時のみ「黄色い線の外側にいる客に警笛をタイミングよく鳴らす」と「速度計非表示状態で指定速度に合わせる」の2種類のボーナスゲームがある。どちらが出現するかはダイヤによって決まっている。
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後者のゲームはゲーム開始地点はホーム手前、速度測定地点は停止位置。60km/h程度出ている中、指定速度は30km/h弱~40km/h強までと振れ幅がある。
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篠栗線でもこのゲームが出現するが、なんとたった80m程度で60km/hから30km/h以下まで落とせという、制動距離を完全無視した内容が出ることがある。これでは非常ブレーキを使っても絶対にボーナスが獲得できない。
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この欠陥は『ダイヤ改正』でも修正されていない。
その他
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鉄人モードではATS確認イベントが発生するが、うち中央線では現実にはATS確認は必要ない。ちなみにATS確認をした後に画面上では信号がもう1本出てくるのだが、どういうわけか進行信号となっている。
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逆に山陽本線各駅停車の西明石駅と、鹿児島本線・篠栗線の博多駅でも本来はATS確認が必要なのだが、なぜかこちらは省略されている。
総評
画質の向上やリアル度の上昇でシリーズファンを喜ばせた一方で、メインのゲームの難しさは据え置きである。間口を広げるため初級者向けの「ファミリーモード」と上級者向けの「鉄人モード」が用意されたが巻き返しはならず、メインだったプレイヤー層にとってはかえって優しくない作品になってしまった。
ただし本作のみの収録路線は多く、その再現度も高いため、過去作でシステムに慣れている人ならやはり楽しめる。結果的にシリーズのニッチ化を進めることになり、同時期の『がんばれ運転士!!』をもってACでの展開はストップすることになった。
余談
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Type-Zero基板は先述の通り「セガのmodel3基板を超える」がコンセプトだが、超えられなかった仕様が多いものの高性能な箇所もある。
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代表的なものはmodel3がグローシェーディング採用なのに対しType-Zeroはフォンシェーディングを採用している。しかし本作ではほとんどその威力を実感出来ない。
電車でGO!3 通勤編 (PS2)
【でんしゃでごーすりー つうきんへん】
電車でGO!3 通勤編 ダイヤ改正 (Win)
【でんしゃでごーすりー つうきんへん だいやかいせい】
ジャンル
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電車運転シミュレーション
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対応機種
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プレイステーション2 Windows
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発売元
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PS2
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タイトー
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Win
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アンバランス
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開発元
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タイトー
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発売日
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PS2
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2001年3月15日
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Win
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2002年3月21日
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価格(税別)
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PS2
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6,800円
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Win
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5,980円
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廉価版
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PS2
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TAITO BEST 2002年5月30日/3,024円
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SIMPLE2000シリーズ Vol.22 THE 通勤電車運転士 ディースリー・パブリッシャー発売 2003年3月27日/2,000円
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Win
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本格的シリーズ 2006年3月17日/1,980円
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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変わらず堅実な移植 長くなったロード時間 難しさも据え置き
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電車でGO!シリーズリンク SIMPLE2000シリーズリンク
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概要(CS)
無印版および『ダイヤ改正』の移植作。基本的にはベタ移植である。
PS2では無印版、Windowsでは『ダイヤ改正』のみ移植されている。PS2版にはシリーズ定番の車両解説などを見られる鉄道資料館が追加されている。
評価点(CS)
共通の評価点
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きちんと移植されており、特に目立った劣化は見当たらない。
PS2版独自の評価点
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『電車でGO!新幹線 山陽新幹線編』の体験版が付属している。SEや車両グラフィック・車両性能・運転評価の採点方法が製品版とは違っているほか処理落ちもなく、当初は体験版の方が出来が良いとまで言われていた。
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新大阪→新神戸限定で0系による昔のひかりダイヤが運転できる。
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なお、この体験版はPS3では正常に動作しないので要注意。
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今作でもおまけ要素は充実している。
問題点(CS)
共通の問題点
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AC版で問題になっていた難しさや再現ミスは据え置きである。
PS2版独自の問題点
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ロード時間がACよりさらに伸びてしまった。
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運転モード選択前、車両紹介の直前と、運転中も中盤の駅停車後に1回だけ10秒弱のロードが入る。ロード時間10秒は、少なくとも問題点にするほど長い時間ではない。だが運転終了ごとにタイトルまで戻される仕様のため、連続で運転する度に20秒以上余計に待たないといけない。
しかも本作のみの仕様として、運転中ポーズを掛けた時に「始発駅に戻る」が存在しないため、最初からやり直したい場合はいちいちタイトルまで戻る必要があり煩わしい。
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『ダイヤ改正』が稼動した後に発売されたが、それに収録された追加要素や変更点が未収録。
Win版独自の問題点
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追加要素は一切なし。ACのベタ移植になってしまっているのは勿体ない。
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鉄道写真が登場するが、何故かわざとグラフィックを粗くしてぼかしたものが表示される。
総評(CS)
今作でもしっかりとした移植度やおまけ要素は健在である。
しかし散々指摘された難易度や再現ミスといった部分は改善されておらず、良くも悪くもベタ移植である。「通勤編」を家庭用でプレイしたいファンにはおすすめできるが、くれぐれも高難度は覚悟されたい。
最終更新:2024年07月28日 09:17