ロックマンワールド
【ろっくまんわーるど】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ゲームボーイ
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メディア
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2MbitROMカートリッジ
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発売元
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カプコン
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開発元
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水口
エンジニアリング
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発売日
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1991年7月26日
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定価
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3,500円
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配信
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バーチャルコンソール 【3DS】2011年6月7日/400円
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書換
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ニンテンドウパワー 2000年3月1日/800円/F×2・B×0
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判定
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良作
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ポイント
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FC版『1』『2』をアレンジ 携帯機で手軽に遊べるロックマン
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ロックマンシリーズ
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概要
ファミコン版『ロックマン』及び『ロックマン2』を元に再構成したアレンジ移植作品。
この「ファミコン版の2作からボスを4体ずつ採用」という形式は、最終作である『ワールド5』を除き、受け継がれた。
シリーズ20周年に発売されたムック『オフィシャルコンプリートワークス』にて、本家シリーズのプロデューサーの稲船敬二氏は「外部に発注して製作した初めてのロックマンだったが、そこの企画マンがロックマン好きで、ロックマンをかなり分かっていると思った。そのためにいい出来になった。」と語っている。
この功績からか、次作『ワールド2』を除く後のワールドシリーズは全て同じ会社が開発を担当している。
特徴
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基本システムは初代『ロックマン』(以下『1』)がベースのためスライディングやチャージショットなどは存在せず、ライフを回復できるE缶も無いため難易度は高め。
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ただし、被ダメージ時にトゲ等の即死オブジェに触れても大丈夫であるなど、『2』の要素も取り入られているところもある。
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ボスキャラは『1』と『2』から4体ずつと、本作オリジナルの「エンカー」の計9体。また、「キャリー」という移動用アイテムも存在する。
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本作に登場しなかった『2』のボス残り4体は次作『ワールド2』に登場したが、『1』のガッツマン及びボンバーマンは結局GB作品には出られず仕舞いであった。
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この2体のボスの特殊武器の使いづらさが原因と考えられる。ただしガッツマンの武器「スーパーアーム」は後に『ワールド5』で「ディープディガー」として形を変えて登場している。
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ボンバーマンの武器「ハイパーボム」は『ロックマン ロックマン』でようやく改善された。
+
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本作のボスと特殊武器
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『1』より登場
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カットマン
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ローリングカッター: ブーメランのように戻る刃を投げる
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エレキマン
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サンダービーム: 前方と上下の3方向同時に電撃を放つ
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アイスマン
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アイススラッシャー: 敵の動きを止める
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ファイヤーマン
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ファイヤーストーム: 火炎弾を撃つと同時に自分の周囲にも火球が回る
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『2』より登場
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フラッシュマン
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タイムストッパー: 武器エネルギーが切れるまで時間を止め続ける。クイックマンにはダメージを与える
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クイックマン
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クイックブーメラン: 一定距離で戻るブーメランを投げる。連射可能
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バブルマン
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バブルリード: 地形に沿って進む泡を撃つ
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ヒートマン
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アトミックファイヤー: 火の玉を撃つ。ため撃ちも可能(その分武器エネルギー消費)。特定のブロックも破壊できる
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本作オリジナル
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エンカー
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ミラーバスター: 敵弾を反射するバリアを前面に生成
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ロックマンとボスの体力、および特殊武器ゲージ数が「19」に統一された(ファミコン版では各ゲージとも、数値は「28」)
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各ゲージが19に統一されたことにより、FC版と比較してロックマンの体力や特殊武器の使用回数が相対的に減少した。
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もっともボスの体力も減少しているため、FC版よりも短期決着をつけやすくなったボスも存在する。本作以降では、それがより顕著になる。
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ロックバスターでボスに与えられるダメージが「1」に固定された。特に、FC版では最弱クラスだったカットマンが、バスターだけではかなり倒しにくくなった。
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ジャンプ中や落下中に慣性がつくようになった(ただし、次作『ワールド2』は除く)。
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上記2つは、以降のワールドシリーズに受け継がれることとなった。
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エンカーから取得できる武器「ミラーバスター」は、前方にバリアを張り敵弾を跳ね返すというシリーズ全体から見ても非常に珍しいタイプのもの。
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ただし使えるのは最終ステージのみで、後述の理由から実質対ラスボス専用武器となっている。
評価点
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携帯機で気軽にロックマンをプレイ出来るようになった。
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ステージ中の仕掛けなどは基本的にはファミコン版がベースとなっているが、独自のギミックも多く、本家シリーズ経験者でも退屈することなく楽しむことが出来る。
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ゲームボーイの画面に合わせキャラを大きくステージを狭くしてあるが、その範囲で楽しめるよう構成も工夫されている。
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カットマンステージなどは屋内ステージに変更され回転式になったスーパーカッターや耐久力の高い本作オリジナル敵キャラ「カッティングホイール」が様々な動きをしながらロックマンに襲い掛かる難ステージになっている。
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しかし、特殊武器「アイススラッシャー」さえあれば楽に突破でき、強化されたボスも弱点武器で簡単に倒せるので特殊武器をうまく使ってクリアするというロックマンの特長が色濃く出ているステージともなっている。
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『1』では初期作ゆえの理不尽な敵の動きやステージ構成があったが、本作では問題点が見直されており遊びやすくなっている。
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『1』のボスで強化されたのはカットマンだけであり、エレキマンの理不尽な大ダメージ攻撃はなくなり、アイスマンの攻撃もよけやすくなったため、パターンにハメて攻略しやすくなった。よってステージ選択の幅が広がったとも言える。
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BGMも『1』は他のシリーズと比べ、電子音感が強かったり、妙にスタッカートが多く聴きにくい感じがあったが本作ではなめらかで聴きやすく改善されている。
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特殊武器の需要も高めで、中でも攻撃範囲の広いサンダービームや、敵の動きを止められるアイススラッシャーが役立つ場面が多い。
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サンダービームは近距離の判定が小さくなった上、威力も一撃でくっつきスージーを破壊出来ないレベルになったりと多少の弱体化が施されているが、それでも非常に強く主力装備として十分に使っていけるレベル。
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ローリングカッターは射程が短くなってしまったものの、近距離の雑魚に対して多段ヒットさせやすいため所謂「ソード系」の武器として割り切って使いやすい。むしろ本家より強化されている特殊武器と言っても良い。
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バブルリードは弾速が遅くなってしまったものの、一発の威力が非常に大きいため、メインとなる特殊武器の代役として十分に活躍させる機会を得たと言えなくもない。
問題点
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画面サイズが小さくなったためか、ロックバスターなどの弾速が遅くなり、連射が効きにくくなった。
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それだけでなく、敵の攻撃が回避しにくくなったといった弊害も生じた。
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画面に対してキャラが大きいので、敵の弾に当たりやすい。
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画面内に1発でもプレイヤーの攻撃が残っていると武器選択画面を開けない。
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武器選択画面を開ける条件に少々クセがあるので、今作では他の作品のような攻撃を出した直後に別の武器に切り替えるという動き方が出来ないのが難。流石に次回作以降は解消されているのだが。
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ステージ数が少なく、『2』のボス4体及びエンカーはワイリーステージ1の最後にボスラッシュ形式でまとめて戦うことになるなど、後半に詰め込み過ぎな感がある。
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そのため特殊武器を試し撃ちする暇が無く、全てのボスを倒して次のステージ(最終ステージ)に進むまで武器エネルギーは一切回復することが出来ない。
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フラッシュマンから取得できる「タイムストッパー」は一度使うと、スクロールなどで画面が切り替わるか、エネルギーが切れるまで解除できないため、誤って無駄遣いしてしまうと悲惨である。
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ワイリーステージ1でゲームオーバーになれば、再開地点はステージの最初で、ボスラッシュで得た特殊武器も没収される。他作品のようにボスラッシュから再開することはできない。
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もっとも原作『1』の最終ステージでも再戦という形式ではあるが最後にボスラッシュがありゲームオーバーになるとステージの最初からやり直しである。
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実は以後の作品よりもステージ道中が長めに設定されている。そのため5ヶ月後に出た次作はちゃんとボスごとにステージが用意されているにもかかわらず容量は同じで、総プレイ時間もそこまで変わらないため、面白くなるよう1ステージごとの容量を確保した結果『2』のステージを削らざるを得なくなったというのが実情だろう。
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カットマンとクイックマン(共にブーメラン使い)、ファイヤーマンとヒートマン(共に高熱使い)のように、わざわざ選抜しているのにイメージが重複しているキャラがいる。
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実際に戦ったり特殊武器を使ったりする分には性能差も感じられるとはいえ、「なんでこのセレクト?」と疑問に感じる部分はある。特に2の方は8体から4体を選出しているのだから、被らないようにするのも難しくはなかったはず。
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移動用アイテムの性能が微妙
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元の作品には『1』にはマグネットビーム、『2』には後のラッシュの原型となるアイテム1号~3号という移動用アイテムがあったが、本作では代わりにオリジナルの「キャリー」というアイテムを入手できる。
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このアイテムは最初の4ボスを倒すと入手できるが「自分の真下に足場を1個だけ出現させる」というアイテム1号の劣化版でしかない。
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容量の関係でこうなってしまったのかもしれないが、このために『2』にあった「移動用アイテムを駆使して進む」という多彩なステージ構成が失われている。
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本家ロックマンシリーズの多くでは『1』のアイスマンステージにおけるフットホールダー地帯や『2』のヒートマンステージのブーンブロック地帯といった様に「通常のプレーでは時間をかけて移動するエリアが存在するのだが、アイテム2号やラッシュジェット等の横に移動する系のサポートアイテムを用いる事によって仕掛けをスキップしつつ大幅な時間短縮も狙える」という様な芸当が出来た。しかし、残念ながら今作ではサポートアイテムの性能からこれを行う事が出来ない。
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ワイリーステージ2前半にはブーンブロックを用いて非常に長いトゲ地帯を渡っていくシーンが存在するのだが、残念ながら今作ではサポートアイテムでのエリアスキップを行う事が出来ず、結果ブーンブロックを正方法で渡りながら進む必要がある。また、パスワードからの再開場所の関係もあり、毎プレーの際に必ずブーンブロック地帯を正攻法で抜ける必要がある事から、自由が利かず繰り返しプレーの際にマンネリを感じやすいのは辛い。
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ラスボスのリカバリーが面倒である。
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第2形態はこちらからの一切の攻撃が効かないため、「ミラーバスター」でラスボスの攻撃を跳ね返しダメージを与える必要がある。そのためミラーバスターのエネルギーが尽きた時点で敗北が確定する。
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ラスボスにロックバスターが通らずに特殊武器の枯渇が敗北を意味するのは、本家シリーズでも特に初期作ではお約束の仕様ではあったので、この仕様自体はそこまで問題視されてはいない。
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エネルギーを回復するには事実上ゲームオーバーになるしかないが、再開地点はステージの最初。前述のブーンブロック地帯を含む長いステージをやり直す必要がある。
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一応、第1形態で出てくる雑魚敵は攻撃力の高い特殊武器で倒すことができ、エネルギーを回復できることがある。しかしドロップ率は低く、その特殊武器のエネルギー的に試行回数にも限界があることから、実用的とは言い難い。
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このことから、道中でミラーバスターを使いすぎると詰む。
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ボスをカウンターで倒すという特異性、回避の難しい前座のカッティングホイールの猛攻で体力を減らされた後「エネルギーが切れたら負け」という状況で臨むラスボス戦の緊張感はよくできているだけに、ミス後のリカバリー手段がないことが惜しまれる。
総評
外注作品でありながら出来は良く、アクションゲームとしてもロックマンシリーズとしても十分楽しめる内容。
単なる移植ではなくゲームボーイの特性を理解したうえでステージ構成が工夫されており、携帯機ロックマンの模範を示した良作と言える。
本家第1作が荒削りだったこともあり、大胆なアレンジをすることができ本家シリーズにも引けを取らないほどの出来となっている。
それだけに本家第2作のステージを省かれてしまったことは惜しいが、オリジナリティは高く、純粋な移植に留まらない別バージョンとして存分に楽しめる一作である。
その後の展開
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本作オリジナルボスのエンカーは後にシリーズ最終作『ワールド5』のワイリーステージの中ボスとして再登場している。
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他にも『ロックマン10 宇宙からの脅威!!』で他のロックマンキラーと共にスペシャルステージのボスキャラとしても登場している。ちなみに彼のスペシャルステージは本作のワイリーステージを再現したものとなっている。
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ワールドシリーズに登場するロックマンキラー達も、通常ボスと区別して音楽用語から名づけられることになるが、先駆者である彼の名前の由来は「演歌」。第一作目からいきなり渋いチョイスだ。
余談
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本作のエンディングにはスタッフロールが存在せず、その代わりにゲームに登場した敵キャラクターの紹介が行われる形式になっている。
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中でも8ボスとロックマンキラーは以降の作品ではボス戦の際のドットを使用しているのだが、今作のみ書下ろしの顔アイコンという形での紹介になっている。
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穴に落ちて死亡した際の挙動が、ロックマンが謎の攻撃判定を連続で喰らって死亡するという独特なものである。
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パスワード入力を間違えた際における演出の、ミスをしてしまった感が何かスゴイ。
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具体的にどの様なものかというと、画面が暗転した後にパスワードエラーといった旨の文字が表示されると同時に機械が暴走を始めたかの様な音が鳴り始め、やがてミスをした際の所謂ティウンティウン音が発生してタイトル画面に戻らされるといったものとなっている。音声のみなのではっきりとしたことは分からないが、おそらくロックマンは…と思わせる妙に気合いの入った(?)演出となっている。これは後のワールド作品はおろか、本家の方でも無いものである(多くの作品ではダメージ音やエラー音がなって間違えたと知らせる文字が表示される程度)。何故こんな所に妙な力が入っている感じになっているのか。謎である。
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バグのせいなのか、ボス戦のライフゲージ上昇演出でSEがあるのはワイリー戦だけで、それ以外は全て無音である。
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本作の開発を手掛けた水口(みなくち)エンジニアリングは現在の滋賀県甲賀市水口に拠点を構えていた外注開発専門のデベロッパーで、秘匿主義を徹底していたことからその実態は殆ど知られておらず、開発担当作品についても約40作ほどのCS機/MSX2/AC作品に関わったと言われているが、元開発者の証言等で一部が判明しているだけにすぎない。
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尚、Webサイトは2002年頃まで存在していたことが確認されているが、同年にサイトが閉鎖され、(時期は不明だが)その後会社組織を解散しており既に存在していない。
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ゲームオーバー時には本家同様に「そのステージをやり直す」か「ステージ選択画面に戻る」かを選べるが、海外版では「ゲームを終了する(タイトル画面に戻る)」項目がセレクトボタンに追加されている。
最終更新:2024年06月08日 22:41