ロックマンワールド2
【ろっくまんわーるどつー】
ジャンル
|
アクション
|
裏を見る
|
対応機種
|
ゲームボーイ
|
発売元
|
カプコン
|
開発元
|
シンキングラビット ジラフソフト
|
発売日
|
1991年12月20日
|
定価
|
3,500円
|
配信
|
バーチャルコンソール 【3DS】2013年9月25日/400円
|
書換
|
ニンテンドウパワー 2000年3月1日/800円/F×2・B×0
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
癖のありすぎるサウンド 難易度はロックマンにしては低め クイントの扱いようは…
|
ロックマンシリーズ
|
概要
ファミコンソフト『ロックマン2』『同・3』の内容を元に再構成したゲームソフト。
この『ワールド』シリーズは5作まで出ており、全て外注作品なのだが、この『2』だけは他の4作とは違う外注先が製作したものである。
特徴
-
ワールドシリーズにて、『スライディング』が導入された。
-
ただ本家と比較すると「グラフィックが本家と違う」、「スライディング中にAボタンを押してもジャンプができない」などの相違点がある。
-
『ラッシュ』が初登場。『3』と同じく、コイル・ジェット・マリンの3種類に変形する。
-
うちラッシュコイルは本家と異なり、ロックマンの標準装備ではなく、ボスを倒して入手する形式に。これは本作以降のワールドシリーズにおいても同様である。
-
『E缶』も導入された。以降ワールドシリーズにおいて、E缶の最大保有数は4つに限定された。
-
「ゲームオーバーになっても失われない」、「パスワードで記憶される」などの特徴は『3』のシステムを踏襲している。
-
はしごを登っている時に攻撃を受けても、↑を押し続けていれば振り落とされない。
-
「トゲに接触すると残りライフに関係なく即ミスになる」という点は全シリーズ共通であり、その中でも、本作ではFC版本家シリーズ初代作品『ロックマン』と同様、ダメージを受けた際の無敵時間中でもトゲに当たると即ミスになると思われているのだが、実はトゲには接触判定はなく、トゲをすりぬけて転落死しているのである。
-
このため、メタルマンステージなど「トゲの下に地面が見える部分」では無敵時間中に接触してもミスする事はない。
-
しかし、こんな仕様になっているのはシリーズを通じて本作のみであり、「らしくなさ」に拍車をかける事となった。
-
エネルギー回復中に画面が静止せず、武器セレクト画面開閉操作を含め、あらゆる操作ができる。
-
これを応用した裏技として、武器エネルギー(大)を取得し、現在装備中の武器エネルギーゲージを回復させている間に、武器セレクト画面を開き、他のエネルギーが減っている武器を選択するとその武器のエネルギーまでも回復できる。
-
本作では、特殊武器のエネルギーが一発未満分だけ半端に残った場合、『ロックマン4』以降と異なり最後の一発を撃つことが出来ない。
-
この点は『ロックマン2』と同じ仕様であり、微妙な違いだが、この仕様が影響する特殊武器もある(「問題点」の項目にて後述)。
+
|
本作のボスと特殊武器
|
『2』より登場
|
クラッシュマン
|
クラッシュボム: 壁などにくっつく時限爆弾を投げる。特定の壁も破壊できる(本作に壊せる壁は存在しない)
|
メタルマン
|
メタルブレード: 5方向に撃ち分け可能な、回転ノコギリ型の刃を投げる
|
ウッドマン
|
リーフシールド: 木の葉を4つ自分の周囲に回転させ、移動方向に射出。敵弾は防げない
|
エアーマン
|
エアーシューター: 3連の竜巻を斜め上に撃つ
|
『3』より登場
|
ニードルマン
|
ニードルキャノン: 連射性能が高い針弾を撃つ。攻撃ボタン押しっぱなしで連射可能
|
マグネットマン
|
マグネットミサイル: 磁石弾を撃つ。縦方向の敵を感知し、一度だけ直角に軌道を変える
|
ハードマン
|
ハードナックル: 低速から徐々に加速する高威力なパンチが飛んでいく。特定の壁を破壊できる(本作に壊せる壁は存在しない)
|
タップマン
|
タップスピン: ジャンプ中のみ使用可能で、身体を高速回転させての体当たり。回転中は全身に攻撃判定が発生し、通用する雑魚敵なら一撃で倒せる
|
本作オリジナル
|
クイント
|
サクガーン: ホッピング型の機器に乗り、高く飛び跳ねて踏みつけ攻撃
|
|
評価点
-
ゲーム内容の発展
-
本作はFC『3』がベースなだけあってか、同作で好評だった「スライディング」や「ラッシュ」といったシステムも導入された事でプレイヤー性能自体は続編相応に進化している。
-
また、前作では中盤ステージでボスのみが登場していた後半のボス達にもステージが設定された事で、ようやく携帯機でも8ステージを遊べる様になった事は評価に値する。
-
ただ、後半の4体ボスは、カプセルの中に入ってステージに移行するという形になるため、どのカプセルがどのボスに対応しているか、入ってみなければわからない。『2』以降のボスラッシュに似た形式となる。
-
目立つバグは少なく、グラフィックも特別酷くはない。
-
処理落ちも敵が増えた際の軽いスプライトのチラつき程度で、動作が遅くなるという事がないので、その点では快適に遊べる作品ではある。
-
最新のTASで用いられるもので画面の切り替え時にハードナックルを撃つ事でスクロール先が異常になるバグが存在している。
-
プレイに支障の出ない要素としては、特定の動作(バスター撃ち、着地等)を行う事で矩形波の比率が変わるというものが存在する。
-
難易度は抑えられている
-
ノックバックや被ダメージが小さい、パスワードでE缶が記憶される事により、本作の難易度は比較的低い。
-
しかし、それはあくまで「ロックマンシリーズとして」であって(同シリーズの難易度は基本的に高めである)、ひとつのアクションゲーム作品として見た場合、簡単すぎるというほどでもない。
-
ちなみに前作『ワールド1』では、E缶が無く後半にボス5連戦がある等の理由から、難易度はかなり高く「シリーズ最高難度」とも言われる。
問題点
-
ステージ構成がオリジナルを真似した部分が多く、ゲームボーイの狭い画面に合っていないため無理矢理な移植感がする。
-
そのためやたら狭い箇所があったりして、ダメージを受けやすい。
-
またステージによっては、一見しただけでは背景と足場との区別がつけ辛かったり、背景グラフィックがまるでバグが発生しているかのような、ゴチャついた外見になっていたりもする。
-
ゲームスピードが遅く、ストレスがたまる。
-
特に敵弾がやたら遅く、かえって避けにくい場面が多くある。
-
ライフ回復中(ピロロロ…)に、スクロールで画面が切り替わると回復が止まるなど、他作品と異なる仕様がある。
-
最初の4ボスを除き、ボスを倒しても武器エネルギーが回復しない。
-
『ワールド3』を除いた『ワールド』シリーズ全体にほぼ共通の仕様。ただし他の作品ではラストステージ突入時に全回復する、武器エネルギーを任意のタイミングで回復できるアイテムがあるなどの抜け道がある。
-
本作のBGMは、ロックマンワールドシリーズの中で唯一開発会社が違うため、原作の流用が『ロックマン3』の武器入手BGMのみで殆どオリジナル曲であり、従来のロックマンとは一味違う独特の哀愁漂う雰囲気の曲になっている。
-
しかし、音源が酷く耳をつんざくような曲が多い。ほとんどの曲が「キンキン音」+激しいドラムで構成されているためである。
-
特にステージ選択画面やボス戦のBGMは、「楽曲」という形をなしていない雑音ともいえるレベルである。ただ、これについては実はソースコードにバグがあって正常に鳴らされていないためであり、本来は『3』のステージセレクトのアレンジだった模様。
-
また、ニードルマンステージやマグネットマンステージ、ハードマンステージなどメロディ自体は評価されている曲もある。特にタイトル画面のBGMは人気が高く、それをワイリーステージで使う演出はベタながらも、ファンの間で高い評価を得ている。
-
作曲者の山崎憲司氏は、当時ゲームにはあまり興味がなく『ロックマン』がどのようなゲームなのか知らず、そのため哀愁漂うメロディーになってしまったらしい。「音楽的にもさして取り上げる所は無いと思う」と自己評価も低いが、ネット上で様々なアレンジが行われるなど現在でも人気は高い。
-
効果音も悪く、特に武器ゲット音はボス戦の余韻に見合わぬ脱力加減。
-
E缶を取ったときの効果音が「ブリュッ」、1UPを取ったときの効果音がマリオがコインを取った時の音に似た「コイーンコイーン」…何かが違う…。
-
本作には、「クイント」というオリジナルボスが登場する。彼はロックマン自身の未来の姿であり、タイムマシンを手に入れたワイリーによって洗脳されたという設定なのだが…。
-
ロックマン自身と出会うと、セリフも何もなくいきなり戦闘になる。
専用BGMどころかボスBGMすら流れず、中間ステージ選択画面のBGMのまま戦うことに。
-
その動きは「削岩機型の武器に乗って飛び跳ねる」というバカっぽいもので、しかも動きは遅く、弱い。
-
倒されると逃げ出して行き、それっきり登場しなくなる。洗脳は解けたのか、元の時代へ戻れたのか、全て投げっぱなし。
-
入手武器「サクガーン」は役立たず。ホッピングのように高く飛んで踏みつけるような武器であり、敵に接触すると自分もダメージを受ける。さらに、乗っているだけで常時エネルギーを消費するため途方もなく燃費が悪い。
-
ロックバスター以外で唯一ラスボスにダメージを与えられる武器ではあるのだが、ラスボスは3体のメカでそれぞれに耐久があるので確実に自分のライフか武器エネルギーが先に尽きてしまう。
-
無理して使う必要がないのが逆に有り難い…かもしれない。「必ずしも使わなくても良い」という点では『ワールド4』の「バラードクラッカー」や『ワールド5』の「スパークチェイサー」と同様だが、使い勝手には雲泥の差がある。
-
…このように、何もかもがダメな要素満載である。しかし逆にそこがネタ的に愛される要素となっており、「クイント」と「サクガーン」はしばしばロックマン関連の話題で登場する単語となった。
+
|
取説の説明が涙を誘う。というか突っ込み所が多い
|
-
クイントのイラストに思いっきり映っているにもかかわらず「?」にする意味は? というか「未定」とは(言葉の使い方が)意味不明である。
-
「必ず必要なときがくる」とあるが、サクガーンはクリアに必須ではない。
|
-
特殊武器の性能や需要に格差が大きい。
-
登場する特殊武器の中では「メタルブレード」がやはり猛威を振るっており、原作でメタルブレードが効かなかった「クック」をたったの一撃で倒せたり、マグネットマンのもうひとつの弱点になったり、発射の際に足が止まらなくなっていたりと、強すぎる性能がさらに強化されている。そのため、ゲーム後半で入手できる武器が「サクガーン」以上に存在意義の薄い扱いになってしまっている。
-
本作では、原作と異なり弾速が遅いため、場面によってはメタルブレードを“追いかける”ことができる。さすがにずっと追いかけ続けることは不可能だが、一撃で倒せる敵を先行したメタルブレードでなぎ倒しながら進むことが可能。
-
一方で「タップスピン」は、効かない敵に連発してもエネルギーを消費しないという改良がなされており、『ロックマン3』よりも使い勝手が向上している。
-
エアーシューターの威力が大幅に低下し、弱点であるはずのクラッシュマンに全弾打ち込んでも、エネルギーを削りきれない。
-
前述の「最後の一発分」が足りないという、微妙な削り具合となる。
-
本作には、特定の特殊武器で壊せる「壁」が存在しないため、「ハードナックル」はともかく「クラッシュボム」にはほとんど需要がない。クラッシュボムを弱点としているメタルマンは、たいてい最初に攻略されることが多いのでなおさらである。
-
ラッシュジェットが便利すぎるため、相対的にラッシュコイル・ラッシュマリンの存在意義がやや薄くなっている。
-
本作のラッシュジェットは基本的に『ロックマン3』仕様(例外もあり、後述)であり、上下左右を自由自在に移動可能。消費エネルギーを大幅に節約できる裏技まで再現されている。おまけに、ゲーム前半のエアーマンステージをクリアすることで確実に入手でき、後半ステージのトラップの多くを無視できてしまう。
-
ちなみに、クラッシュマンステージには動く足場のギミックや、特殊なアイテム(入手するにはラッシュジェット必須)が配置されており、ラッシュジェットに頼りがちなステージであるにもかかわらず、このステージをクリアする事でラッシュコイルが手に入る。このように、各ラッシュアダプターの入手タイミング自体にも疑問が残る。
-
ただし、本作のラッシュジェットは水中では使用不可能である(この点のみ『ロックマン3』とは異なる仕様である)ため、一応ラッシュマリンとの差別化は図られており、マリンが必須の場面もある。
-
「メタルブレード」「エアーシューター」「クラッシュボム」の使用モーション(バスター射出グラフィックと投擲グラフィック)が、それぞれなぜか原作と逆転している。メタルブレード(射出)とクラッシュボム(投擲)に関しては違和感はあまり無いが、エアシューターを投げつけるそのグラフィックには大きな違和感がある。
-
本作では、ワイリーマシンに搭乗しているワイリーのサイズが、なぜかロックマンよりも小さくなっている。しかも本来のワイリーとは似ても似つかない。
-
中間イベントでは、普通のサイズ(本来のワイリーの姿)なのだが…。
-
ワイリーマシンもとてもみすぼらしく、迫力もラスボスとしての風格も無い。
-
どうやら設定上では開発費がいちばん掛かっている…のだが、この風貌ではそのようには感じられない。
-
公式図鑑などでは「2回変形する」などと記述されているが、厳密には「マシンが壊される→残ったコックピット部分(ワイリーカプセルではなく今作独自の飛行機型のメカ)が、さらに奥にある別のボディと合体する」という変形が2回あるというもの。つまり、実質合計3台分のワイリーマシンがあるということなので、確かにコストはかかっているようだ。
-
一応「ワイリーマシン」としては原作含めてシリーズ最多形態である。
-
撃破するとワイリーマシンから特殊武器を取得する。ただしこの武器を使用するのは、エンディングデモンストレーションで逃げ出したワイリーを撃ち落とす時のみである。…ロボット三原則は、どこへいったのだろうか?
-
ちなみに、ワイリーから特殊武器を取得できるのは、現時点で本作と『MEGA MAN』だけである。
-
また、お約束であるワイリーの「眉毛ピクピク」「ジャンピング土下座」等がない。この点も違和感や異色さを感じさせる。
-
土下座もせず、一目散に逃げるワイリーを問答無用にミサイルで撃つロックマンはある意味新鮮。ワイリーは、機体の制御が出来ないままそのまま地球に突入、そしていつもの大爆発。もはや確実に死んでいる。
-
もっとも、本編でも『3』の終盤で瓦礫の下敷きになって放置されておきながら、次作『4』で普通に再登場しており、後発作品『7』でも、鉄骨の下敷きになるも本人はピンピンしている。…と、このようにシリーズを通じてワイリーの生命力は、人間の常識をはるかに超越しているという設定のようである。
単なるギャグ補正の可能性もあるかもしれない。
-
やはりというか、次回作ではしっかりと生きている。
理由付けはないが。
総評
元が名作なだけに、ひとつのアクションゲームとして考えるならば、十分に遊べる出来にはなっている。
しかし、ロックマンの体裁は保っているものの、電子音全開のBGMやSE、そして遅いゲームスピード等シリーズ経験者にとっては違和感が大きく、特にロックマンに難しさを求めるプレイヤー層からは一段落ちるという評価を下されがちな作品。
ただ面白くないのかと言われればそんな事も無く、BGMを始めFC版と大きく異なる箇所が豊富に存在しており、むしろ大胆なアレンジを楽しむという点ではワールドシリーズでも上位に食い込む面白さがあるといえる。
ワールドシリーズ中では特に難易度が低い為、それらのネタを目当てに気軽に手を出してみても損はないだろう。
余談
-
シリーズ20周年に発売された画集『オフィシャルコンプリートワークス』でのプロデューサーコメントによると、「ロックマンをわかっていない会社に頼んだため、このような出来になった」との事。
-
「前作の出来が良かったにもかかわらず、なぜ同じ外注先に依頼しなかった?」と疑問に思う声も多いかもしれないが、実は、前作と今作はほぼ同時期に開発が進められており、それに伴って外注先も別々の会社に同時期に依頼していたためである。水口エンジニアリングに発注された前作『ロックマンワールド』は満足のいく出来栄えとなっており、以後、ワールドシリーズは同社が請け負うことになった。
-
後にクイントは『ワールド5』にも中ボスとして登場しているのだが、他のボス同様会話も何も無く戦い、倒されて爆散する。本人ではなく複製品とも取れる描写はあるが、やはり何の説明も無い。
-
前半ステージを全てクリアした後、ロックマンが研究所内でワイリーに詰め寄って落とし穴にはまるイベントシーンがあるが、このシーンでBボタンを連打していると画面が切り替わる寸前にバスターが発射され、ザコ敵を倒した時の効果音が鳴ることがある。もしやワイリーを…。
-
あるステージの特定の場面で、画面が切り替わってから暫く待たないと出現しない雑魚敵が1種類存在する。
-
もっとも、その箇所は長く滞在するような場所でもないので、雑魚敵の存在に気付かないままクリアした人も多いと思われる。
-
1996年に永岡書店から出版された絵本『ロックマン Dr.ワイリーをやっつけろ!!』に本作のワイリーマシンが出演している。
最終更新:2024年07月05日 23:00