太平洋の嵐 ~戦艦大和、暁に出撃す!~
【たいへいようのあらし せんかんやまと あかつきにしゅつげきす】
| ジャンル | 超ド級本格派戦略シミュレーション |  
  
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| 対応機種 | プレイステーション3 (Playstation3) | 
| 発売・開発元 | システムソフト・アルファー | 
| 発売日 | 2012年11月22日 | 
| 定価 | 通常版:7,140円 限定版:9,240円
 配信版:6,264円(いずれも税込)
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| レーティング | CERO:A(全年齢対象) | 
| 判定 | クソゲー | 
| ポイント | 2012年クソゲーオブザイヤー据え置き機部門大賞 全てにおいて隙のないクソっぷり
 複雑かつ劣悪過ぎるUI
 PS初期にも劣るグラフィック
 電卓とメモ帳がなければまともに遊べない
 バカなくせに戦闘力だけは異常な敵のAI
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| クソゲーオブザイヤー関連作品一覧 | 
 
概要
2007年3月9日に発売されたWin専用ゲームである『太平洋の嵐5』をPS3に移植した戦略シミュレーションゲーム。
製作・発売は『戦極姫』で知られる「システムソフト・アルファー」(以下SSα)。
本作はPS3に移植される以前にPS2/PSPに同時展開(共に2008年1月31日に発売)されており、『太平洋の嵐DS ~戦艦大和、暁に出撃す!~』としてニンテンドーDSにも移植されている(2009年1月29日)。
ゲームはタイトルの通り、本作は太平洋戦争を舞台に、当時の実在兵器を用いて敵軍を制圧していくターン制戦略シミュレーションである。
司令官となったプレイヤーは自軍に様々な指示を下し、国を勝利に導いていくことが目的となる。
「太平洋の嵐」は「G.A.M(ジーエーエム)」という会社が製作・発売した後に「システムソフト」へ権利が移行され、同社の『天下統一』シリーズ、『大戦略』シリーズと同じく戦略シミュレーションゲームとしては一定の評価を受けていた作品。
本シリーズの最大の特徴は「海上における物資輸送」に着目している点であり、この目の付け所そのものは大変評価されている。というか、第1作なら現在の観点から見れば色々古臭かったりする部分はあるものの名作と呼んで差支えない出来である。
ちなみに本作は原作名通り、シリーズとしては5作目に当たる作品の移植となる。
ゲーム内容
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プレイヤーは自分が指揮する国(日本かアメリカ)を選んだ後、挑むシナリオと難易度を選択。
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シナリオは初期から多数選ぶことが可能で、難易度も初級から上級、更にカスタムも存在する。
 
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各シナリオに設定された根拠地の目標数を、規定のターン数のうちに占拠したり、敵本拠地を陥落させることを目的としてゲームを進めていく。
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兵器製造、人材修練、技術開発などの内政を行って国力を固めつつ、自軍戦力に命令してさらなる根拠地の確保を目指す。根拠地確保による資源収集も重要となってくる。
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資源は本作の肝と言える物資輸送に関わってくる要素であり、兵器製造に使用する鉄類の資源や、歩兵や兵器を動かすために必要な食料や燃料の輸送は、本作において欠かすことの出来ないものである。
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こういった資源は、鉄類なら工場へ、食料や燃料なら戦地にちゃんと輸送しなければならず、ただ所有しているだけでは意味をなさない。
 
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1ターンは6フェイズに分かれている。ちなみに日数にして1ターンは3日、1日は2フェイズ換算となっている。
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フェイズは指示フェイズと作戦フェイズの2つがあり、指示は主に内政面で指示を下し、作戦フェイズでは軍備面における指示を下す。
 
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戦闘パートは、これらの配置や移動を指定した後、敵戦力とぶつかった際に発生する。
 
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シナリオナレーション挿入の後、プレイヤーは指示コマンドを駆使して、外交や兵器・艦船の移動、建造などを行う。
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外交:世界情勢を見たり、終戦交渉を行える。
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地図:地図の縮小拡大、根拠地表記の切り替えが出来る。
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情報:全体の状況や情報を確認できる。
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環境:設定の変更やセーブ・ロードが出来る。
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命令:自軍に指示を与える。パイロットの育成や艦船の強化、それらの出撃命令などもこちらで行う。
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進行:ターンを終了する。何ターンか飛ばすことも可能である。
 
問題点
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通常版でもおよそ6,000~7,000円台というフルプライスなのに対し617MBというPS3のゲームなのにCD-ROM未満の容量の時点で分かると思われるが、内容自体は断じて厚みのあるものではない。
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本作を難解としている理由は、「細かすぎてわかりづらい設定項目の数々」であり、ゲーム自体が濃いわけではない。
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本作は評価点の全てを問題点が完璧に潰しており、結果として褒めるところが一つもないゲームということになってしまった。
 
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シミュレーションゲーム史上最悪レベルのUI
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操作方法はWin版の複雑なキー操作を元にしている。そしてそれを無理やりゲームコントローラーに当てはめたため複雑怪奇な操作性になっている。
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本作のオリジナル版である『太平洋の嵐5』からして、内容は非常に特殊かつ(悪い意味で)無駄に高度な内容となっており、一見しただけで基本を理解するのは不可能である。にもかかわらず、本ゲームにチュートリアルは一切ない。
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しかもまともな説明書が通常版には入っていない。なんと正式なものは限定版に同梱された解説書だけである。別売の説明書を買わなくてはならないというのはちょうど10年前に前例があったが、まさか限定出荷しかないとは驚きである。
 
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一目見て理解しろと言うにはあまりにも無理がある謎のパラメーターの数々が、最初にプレイヤーをお出迎えする。この暗中模索の時点でやる気を削がれるのはお決まりである。
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船を出すときも、根拠地にカーソルが吸い付くためとにかく困難を極める。「カーソルのドライビングテクニックを試されているんだ」と言われるほど。
 
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グラフィックも非常に粗末で、初代PSのゲームの水準にも満たない。
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公式サイトでは、当時開発途上で実戦には参加しなかった兵器を含め3Dグラフィックで「可能な限り再現」「兵器マニアも納得のクオリティ」と紹介されている。また、戦闘シーンは「大迫力」「リアルな挙動」と謳っている。
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しかしそのクオリティの低さたるや、「当時の同人ゲームのほうがずっとクオリティが高い」「最近のフリーゲームもこれより頑張ってる」と言われる程稚拙で、兵器グラフィックの精巧さは皆無。
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歩兵達はなんとホバーするように移動してくる。人がホバーで移動するのが戦争におけるリアルな挙動ということなのか?
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まるで電気鉄道の模型で作ったようなのっぺりとした大地には、ギャグ漫画に出てきそうな一本の木がポツポツと生えており、雑に置かれたディティール皆無の箱型建造物、地平線と透明感が無い無味な青空と、背景のクオリティもHDハードレベルに達していない。
 
 
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BGMや効果音などのクオリティも極めて低い。「フリー素材の方がマシ」と言われる程である。
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特に発砲音は実在兵器のような重厚さは一切なく、文字にすると「パンッ!パンッ!」といった感じの気の抜ける効果音が戦闘シーンでは終始流れる。よって戦闘シーンには戦争の泥臭さなどなく、カラオケの古い汎用映像でも見ているかのような空気になりただでさえ少ししかないやる気がみるみるうちに減ってくる。
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音が割れるほどの爆音ながら、ローカル放送局の漫才番組にでも流れていそうなBGMは、もはや迫力の戦闘という次元を通り越している。実際に聞けばどれ程やる気が削がれるかが分かるだろう。
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ちなみにBGMの音量設定は起動のたびに毎度リセットされる。
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こういった粗悪なグラフィックとサウンドのため、迫力もリアルさもあったものではなく、もはや「戦場」という名目の三流コメディを見ているかのよう。
 
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肥大化が極まって迷宮化したゲームシステム。
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本作は先述したように海上輸送に重きをおいたゲームである。要するにどうやって海上の輸送ルートを確保しつつ、敵の輸送ルートを遮断するかということが重要になるのだが、シリーズを重ねていくうちに設定項目が複雑化しすぎて、プレイすること自体が億劫になるまでに肥大・劣化してしまった。
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特に本作で問題なのは、1つの輸送船に1種類の貨物しか積めない点にある。積載量がどれほど余っていても、鉄なら鉄、食料なら食料で別々に船を用意しなくてはならない。
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そのため輸送船団の編成も、他のゲームなら「複数の輸送物をまとめて積んで1~2隻程度」で済む分量でも、本作では「必須物資の種類分+必要数」の船が必要となる。更に沈没のリスクを考慮すると、その何十倍もの大輸送船団を構成する羽目になる。
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終盤になると輸送船だけで100隻以上も用意する必要に迫られる。本作は「海上輸送シミュレーション」ではないのだが…。
 
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しかも1ターンの輸送量計算は全て人力処理。つまり余程の計算力と記憶力がない限りプレイの際は電卓・メモ帳もしくはそれらの機能を搭載したスマートフォンやタブレット端末等が必須で、コントローラを置いてただひたすら地道に計算をさせられる。こういう面倒な部分だけはやたら現実的。
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戦闘機のパイロットを1機ずつ設定できるが、何万人もいるため実際に司令官がこんなことをしていては過労死必至。
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本作でもただ退屈で面倒で苛立ちを募らせるだけの仕様であり、KOTYの選評執筆者が「舌を噛み切りたくなる」と語るほどのストレスパートである。
 
 
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ゲームバランスも明らかに崩壊している。
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とにかく敵のAIがバカで戦略性もクソもなく、それでいてやることなすこと尽くチートという理解に苦しむ挙動。「戦略シミュレーションゲームなのに戦略も戦術もない」のである。
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まず本作は補給ルートを寸断することが醍醐味の一つであるが、敵側の輸送は全てステルスであり、妨害はもちろん包囲しても一切無駄。そして燃料関係は備蓄が無限というチート設定。
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逆にこちらの輸送船は謎ワープしてきた敵の部隊に問答無用で叩かれてしまう。念の為に言うが、本作の舞台はファンタジー世界や近未来SF世界ではなく、史実の太平洋戦争真っ最中の現代世界である。
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ちなみに敵基地を占拠しても、無限備蓄してあるはずの燃料類は一個たりとも入手出来ない。
 
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戦闘においての敵AIはあまりにも稚拙で戦術が幼稚過ぎて戦術性など欠片も存在していないバカなAI。戦略シミュレーションゲームなのにである。
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陸戦ではこちらの倍以上はいる戦力の敵が、なんと弾切れによって一気に壊滅。計画性ゼロ。なぜ弾切れで壊滅するのかは永遠の謎だが。
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海戦においては輸送船団が率先して敵の迎撃に乗り出す。そもそもなぜ武器を持ってない輸送部隊に自殺同然のことをやらせるのか意味不明。戦闘部隊がいるのにもかかわらずこれである。
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さらに言えば爆撃機を10機用意すれば旧日本軍の最強艦隊をあっさり全滅させることが可能。旧日本軍を雑魚扱いしてるのかと思いたくなる上もはや爆撃機ゲーである。
 
 
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以上を含めもはやどれがバグでどれが仕様か分からない程カオスな挙動。
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SSαのお家芸とも言えるフリーズは本作でも平然と発生する。「特筆するにも値しないほどSSαのゲームでは当たり前」と言われる体たらく。
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本ゲームにおいて様々な検証が重ねられてきたのだが、結局仕様とバグの差を洗い出すことが出来なかった。以下、当時のKOTYスレ住民の報告を記していくので、読者の方にそれを是非見極めて欲しい。
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一度も硫黄島に上陸していないのに硫黄島決戦で勝利判定。
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用意した潜水艦60隻がいつの間にか失踪。
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戦艦10隻なら襲われないと思っていたら、非武装の輸送船団20隻に襲われる。
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艦艇に何かが衝突したため調べると、潜水艦が海の底から湧き出てぶつかっていた。
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海上封鎖したはずの敵部隊が、いつの間にかワープしてこちらの拠点を攻撃していた。
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フェニックスからメキシコシティまで陸路で移動した結果、半日で行軍を終えた。ちなみにこの間の移動距離はなんと2021km。そんな距離をどうやってたった半日で歩いたのだろうか?
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海上拠点から半径1000km以内に潜水艦が湧いてくる可能性は150%(別のポイントから2隻目が湧いてくる確率が50%という意味)。
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何の前触れもなく潜水艦やパイロットが消滅する。1人や1隻という生易しい数ではなく、時にはエース級が百人単位で消える。
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対空砲火で狙われる順番が「リストの上部から」という仕様のため、上部に配置される戦闘機の消耗がとにかく早い。時には対空砲火だけで戦闘機100機以上が撃墜されるという場面すらある。
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そもそも情報表記が間違っている。(例:睦月級駆逐艦 最大積載燃料:420(t) 燃費:1512(kg) 最大航続距離:7200(km))
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敵潜水艦が無限湧きする。どうやらマップ上のどこかに発生ポイントが設定されているらしい。
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戦艦と重巡が各2隻しかない南雲艦隊をハワイに突撃させたら、1回の砲撃で停泊中の敵戦艦10隻ぐらいとその他多数を撃破した。
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敵潜水艦を効率よく撃破出来ない。攻撃できるのは索敵中の爆装した機体のみで、しかも発見時に撃破しなければ行方をくらましてしまう。
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兵器一覧を見ていたらフリーズ発生。しかもPSボタンすら効かないタイプのフリーズ。
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マップ上でどれだけ離れていても、陸路さえ確保していれば隣接する根拠地間の移動は1ターンで済む。
 
 
評価点
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そこそこ頑張っているオープニングの映像。
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それでもせいぜいPS2初期において「なかなか出来が良いムービー」程度であり、これが突出して評価される事は殆ど無い。
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粗悪なBGMと効果音が雰囲気を台無しにしており、盛り上がるかと言えば答えは「NO」である。
 
総評
ゲームの実態は五里霧中で、その真相をどれだけ掴もうとしても、謎は雲散霧消して何もわからなくなってしまう。
内容がないゲームのことをKOTYスレではいつしか「ゲー無」と呼んできたが、本作は中身があまりにも掴めないことから、それにかけて「ゲー霧」と呼ばれ散々な評価を下されるようになった。
この記事も大衆が読むのに合わせて比較的要点をざっくり記しているだけにすぎない。このゲームの闇はそれほどまでに深く、到底語り尽くせるものではない。
余談
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2012年クソゲーオブザイヤー据え置き部門では大賞を受賞。
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KOTYスレではプレイヤーが選評を書く前に脱落・失踪するという事態が続出し、その後提出された選評も原稿用紙100枚以上に相当する上目次付きという前代未聞の物量となっていた。
 
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公式サイトでは当初、「PlayStasion 3専用ソフト」という誤植があった。
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初代『太平洋の嵐』の原作者とも言うべきプランナー/プログラマーを務めた阿部隆史氏は『太平洋の嵐 DX』(1988年)の発売後、「ジェネラル・サポート」という会社を立ち上げ、「太平洋戦記シリーズ」等の軍事シミュレーションゲームの開発・販売を行っている。
 同社のゲームはグラフィックよりもとことんシミュレーション部分に力を入れたゲームとして作られており、PC向け軍事SLG専門のデベロッパーとして現在も活動中である。
その後の展開
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2016年12月22日にはタイトルを変えて『太平洋の嵐 ~皇国の興廃ここにあり、1942戦艦大和反攻の號砲~』がPSV移植版が発売。
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チュートリアルの搭載やタッチ操作への対応など、一応改善の兆しがない事は無いが、それを加味してもゲーム根本への評価は覆しようがないというのが実情。
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タッチパネルによりマウスライクな操作ができると言えば聞こえは良いが、一方でボタン操作に対するフォローが著しく欠けている。
 
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画面遷移毎に数秒の停止を挟むレスポンスの悪さや強制終了、それらに対するサポートの悪さも相変わらずである。
 
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2016年10月28日でシリーズ最新作『太平洋の嵐6 ~史上最大の激戦 ノルマンディー攻防戦!~』が発売。その1年後、2017年11月9日にPS4/PSV版が発売。
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「今まで使い難かった操作性を改善」と会社側が認めている。
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だが『6』でも肝心の操作性やユーザーインターフェースはあまり改善されていない。
 
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このシリーズを最後に製作は停滞。2020年1月1日で「システムソフト・アルファー」は日本一ソフトウェアの子会社「システムソフト・ベータ」へ事業承継の公表によって事業撤退を発表。事実上シリーズも幕を下ろすことになった。
最終更新:2024年01月10日 04:01