乙女理論とその後の周辺 -Belle Epoque-
【おとめりろんとそのごのしゅうへん べる えぽっく】
ジャンル
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恋愛ADV
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対応機種
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Windows Vista(32bitのみ)、7~10
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発売・開発元
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Navel
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発売日
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Limited Edition:2016年5月27日
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定価
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Limited Edition:8,800円(税別)
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レーティング
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アダルトゲーム
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配信
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2018年4月27日/7,344円
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判定
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なし
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Navel作品リンク
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WARNING!!!!!!!
本作は乙女理論とその周辺プレイ済みユーザー向けのゲームです。
その為、本ページは乙りろのネタバレを含んでいます。
概要
Navelの『乙女理論とその周辺』のFD。
FDなだけあって、『乙りろ』をクリアしていないとついていけない部分も多い(公式でもプレイ済みのユーザーを対象とアナウンスしている)。
『乙りろ』ではメインヒロインだった割にシナリオがあってないようなものだった、エッテシナリオを書き直したエッテアナザーが最大の目玉。
それ以外では各メインヒロイン毎のアフターストーリーがついている形となっている(エッテアフターはエッテアナザーが元となっている)。
りそなアフターでこれまで曖昧な描写が多かった衣装とショーの様子を詳細に描写するなど意欲的な取り組みも見られる。
力が入っている部分は従来通りの力の入れ具合であり、その部分に関しては過去作や他ブランドの名作にも見劣りしない。
一方で『乙りろ』より安くなっているとは言え、フルプライス作品としては明らかにボリューム不足であり、その他にも決して小さくない問題がある。
これらが尾を引いており、名作とは言えない作品となってしまった。
あらすじ
開始時にいずれかのルートを選択する形式。
エッテアフターのみエッテアナザーをクリアしていることが条件。
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エッテアナザー
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状況としては『乙りろ』のエッテルート分岐の少し前から開始。
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最初のとっかかりはオリジナルと似たような形だが、その後は完全に別の展開になっていく。
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「アナザー」と銘打っているもののボリュームも質も面白さも別次元であり、乙りろのバッドエンドと評されてしまったオリジナルより、こちらこそが本当の「エッテルート」と言える。
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後日発売された乙りろ移植版ではオリジナルはカットした上でこちらが採用され、公式からしてアナザーとは言えない事態になった。
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りそなアフター
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りそなルートの後ということで家族間の仲が最も良好で、それぞれ交流を重ねながらも衣遠と駿我の複雑な関係についても触れられている。
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りそなの服飾に関する描写がメインになっていて、悩みに悩みぬきながらも邁進する様子が描写される。
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本作では出番がほとんどないサブキャラ達もこのルートではある程度活躍。正に乙りろの集大成のようなルートとなっている。
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メリルアフター
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大蔵家孫世代による家族会議や交流を深めながらも、根本的に欲が少なくて現状に満足しきっているメリルの意識が焦点。
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エッテアフター
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エッテアナザー直後の話であり、アナザーの雰囲気そのままにその後の様子が描写される。
キャラクター
ほぼ全キャラ乙りろから続投のためそちらを参考に。
ただし、各キャラとの関係性は各ルートによって異なる。
新キャラも一名居るが、役割的にはややモブに近い。また、存在そのものがネタバレに繋がるので後述。
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新キャラ(クリックで開閉)
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カリン・ボニリン・クロンメリン
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ベルギー出身の駿我の部下。駿我からは汚れ役的なことをしていると紹介されたが重用されているらしく、腹心の様な扱いで仕事も冷静にそつなくこなしている。
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遊星に関しても情報を与えられていて、かなり重要な立場に居ることが窺える。
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評価点
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システム面はつり乙2と同等。見た感じ進化はしていないが、元が比較的動作が軽い上に安定している&使いやすいだけに不足はない。
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各ルートで特に大蔵家男子面々の立ち位置が異なり、その違いっぷりが面白い。
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エッテアナザーでは大胆な流れになりながらも、遊星らしさも活かされていて読み応えのある話になっている。
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背景にもやたら力が入っており(外国の風景なので珍しい)、発売前のカウントダウン動画ではこれを売りにしていたほど。
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ネタバレ(クリックで開閉)
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エッテアナザーではサブキャラの中では今まで扱いが酷かったアンソニーが大活躍し、もう一人の主人公になっている。
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このルートでのアンソニーは今までのキャラクター性を損なわず、その上で前向きな発想や人の良さ以外はどうにもよろしくなかった彼が成長する話となっている。
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遊星達と他ルート以上に親しくなり、兄達には力及ばずとも年上の従兄弟として、また自身の為にも遊星に助力する頼もしい兄としての姿を披露。
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遊星側としても彼と交流を深めるうちに親しみを覚えるのだが、近付いた目的は仕方なく陥れるというものでかなり心を痛めるもの…と、何だかエッテよりもヒロイン的な存在でもある。
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現実的な他の兄や総裁殿の思想とは違って、とんでもない運命至上主義をどうして標榜するに至ったかの理由が明かされた。
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内容はやはりというべきか、兄に張り合っても何一つ勝てず次第に諦めてしまったというもの。つり乙プロローグ時の遊星と同じようなものでそうなるのも無理はないと理解できるものだった。
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りそなアフターではりそなの夢に対して邁進する姿やサブキャラなどとの交流などが描かれている。
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乙りろでは一発屋じみた勢いで一位になったが、その後はハードではないもののイージーでもない様子が描かれている。
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他ルートではほとんど省略されている服飾の制作過程なども描写されており、遊星の活躍っぷりも素直に描かれているバランスの良いストーリーになっている。
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つり乙と乙りろのヒロイン達が勢ぞろいし、今までそのルート中のヒロイン以外の衣装はおざなりだった従来の作品と比べて、しっかりショーの様子が描写されている。
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このショーの流れやりそなの衣装は、過去最高峰にショーらしくなっていると言っても過言ではない。
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サブキャラの中ではルナデザインのガーリッシュながらもコンテスト向けでもある服装は特に見栄えが良い。
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賛否両論点
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ネタバレ(クリックで開閉)
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エッテアナザーではエッテも十分に活躍しているのだが、なにぶんアンソニーとの交流とその活躍っぷりや境遇などの方がかなり目立つため、アンソニールートと言われたりもする。
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また、このルートでは諸々の都合で遊星が服飾に関わらないので、自ずと服飾や学園の様子などはほぼ描かれない。ほぼ大蔵家に関わることに終始している為、遊星の目標とはかけ離れた展開になっていることは賛否両論。
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服飾要素もアナザーの重要な演出に関わっていて、演出としては王道そのものだが直前の展開が展開なだけに良いと言える。
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しかし、遊星がその場に関わっていない事もあって製作過程などはほぼ全カット。過去作と比べて服飾関係に関する感情移入はしづらい。
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家族の関係性も他ルートと違い、アンソニーと仲良くなり、決裂しない様に頑張ったものの全く改善はされておらず、むしろギスギスしている。
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この展開自体は納得できる描写なのだが、まだまだこれからという印象が非常に強いまま終わっているところが残念な点。
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また、駿我は衣遠には自身のピンチに際してまだ奥の手があるかのように言っているが、一度話題にした後は全く触れられない。彼の能力やキャラクター性から奥の手が無い方が不思議ではあるのだが、別のFD等で発表されるのだろうか?
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エッテアフターではエッテ自身との話も多いが、どの様に生活を送るかを決めつつ、エッテに遊星を取られたりそなのことが物語の肝となっている。
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メリルルートでは事情がややこしすぎて傷はそこまで酷くないが、エッテとなるとそうはいかず色々と複雑な思いが溜まっている様子が窺える。
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そのことやそれをどうにかしようと遊星が頑張ったりエッテが人当たりの良さをいかして働きかけるのは良いのだが、こちらもどうにもエッテの印象がやや薄い。
元々エッテのキャラが他キャラより薄いのである意味仕方ない。
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ちなみに過去最高に遊星が空気を読まない…を通り越してとても酷いことをりそなにしている。詳細は省くが、りそなが本気で怒るのは当然である。その直後に衣装が絡んだイベントがあるのだが、そこも服飾の制作過程はほぼカット。しかもゲーム中の時系列でも他の衣装に比べて時間を余りにもかけていない(○月上旬に作成開始→同月上旬披露)なので、思いを込めて…というより小手先じみている印象が強くなってしまっている。
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問題点
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フルプライスなのに全体的にボリュームが少なく、いくらファンディスクと言ってもフォロー出来ないレベル。乙りろの様に特典でフォローしているわけでもない。
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仮にミドルプライスだったら納得の量ではあるのだが…。
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新曲もかなり変わった曲調のものが揃っていて面白いのだが、OP・EDと合わせて6曲と少ない。
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乙りろプレイ済みが前提の作品とされているが、微妙に核心的なネタバレはしないように配慮されていて一部迂遠な描写になっている。
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このことは少なからず影響があり、しかも色々なところで事前の乙りろプレイを推奨しているので、余計な配慮と言えるだろう。
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ネタバレ(クリックで開閉)
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エッテアナザーでも結局総裁殿が一番の問題児で、特に本作ではその頑迷さや独裁者的な面がよく表れている。確かに頭は悪くないようだが…。
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つり乙2と違って立場や時系列的には最も自然なのだが、ユーザーからするとどうにも「またか」と言う印象になるのは仕方ないだろう。
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メリルアフターは流石に乙りろでのエッテルートの様な酷さではないが、本作ではかなり微妙なものになっている。
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しっかり問題提起はされているのだが、全体的にドラマ性が著しく欠けていてあっという間に終わる。
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服飾で悩む様子も描かれるがそこらはあっさり解決し、そして実際に作るとなった後はいくら天才設定とは言え製作過程は全カット。
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数少ないCGもただのネタ枠で一つ埋まってしまっていて不憫(※シーンそのものは悪くない)。
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ただし、大蔵家孫連合の家族会議の様子はこのルート独特のものでそこは面白い。
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いくらりそなが牽制しているとは言え、リリアは前作での行動や信念を考えると大人しすぎる上、出番も活躍もほぼない。
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特にメリルルートでは彼女が憎んでいる大蔵家の人間であることが判明した為、牽制程度の嫌がらせ程度しかしていないのがおかしいほどである。
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りそなルートでは出番すら無いがこちらは仕方ないと言える。しかし、華花から間接的に彼女の過去の話が話題に挙がるのである意味最も出番が多い。
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彼女の強烈なキャラクター性には色々と期待を寄せられていたので、ルートが無いのも残念である。
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リンデもリリアや他のサブキャラ同様にほとんど活躍の場がない。りそなルートではとてもいじらしい様子を見せてかわいらしいのだが、それ以外の出番はほぼない。
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作中理由も多少言及されてはいるが、りそなアフターでの瑞穂の衣装は洋服ながらも和を上手く演出しているものの、余りにもシンプル過ぎて他キャラの衣装(ディテールが多め)とショーという立場で見ると明らかに浮いている。いくら専門は和裁&次点を明確にルナにするためとは言えやりすぎな印象を受ける。
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かと言ってユーシェはユーシェで、過去作でのデザイン画や遊星と一緒に作った衣装と比べて凄い様変わりしている。かなり奇抜でパリコレでのイロモノ一歩手前程度の衣装(流石にイロモノ衣装ほど突き抜けてはいないが)みたいである。
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りそなルート以外では衣遠との関係は解決しない。
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ルナアフターアフターでやったように、乙りろのりそなルートと同じような展開に無理やり繋げられても困るものの、全く進展しないのは肩透かし感がある。
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総評
簡潔にまとめると、同シリーズ別作品に比べると残念な部分の多い作品になってしまった。
力が入っている部分は過去作同様でほぼ文句の付けどころがなく、乙りろのエッテルートの様な酷すぎる部分もない。
そんじょそこらの作品と比べればよく出来ているので凡作と言うにはやや惜しいが、価格と内容量の差や微妙な部分が多いことなどが相まって決して名作とは言い難い。
期待度の非常に高いシリーズで、迂闊なシナリオを書けないプレッシャーがあるのは理解出来るのだが、もっと冒険したり、完成度を上げたり(特にメリルアフター)、ヒロインを追加して欲しかった作品と言えるだろう。
余談
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初回特典で乙りろに小倉朝日をフルボイス化するアペンドディスクが付いている。
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これ自体は嬉しいことだが、これで本作の値段が釣り合うかと言うと微妙で、更に本作発売後に発表された乙りろ移植版でも使われるだろうものなので、ついでだから初回特典にしてしまった印象が強いものになってしまっている。
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他の原画家の絵柄と合わせるためか、リンデの顔のデザインが変化している。
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ちなみに上記のアペンド適用後の乙りろや移植版の公式ページでも変化後のものになっている。
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遊星は乙りろのりそなルートでジャンのアトリエを見せてもらえると約束されていたが、本作でやはり忘れていることが判明してすっぽかされた。ジャンはやはり適当だった。
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衣遠はつり乙時点から濃い味付けが好みと明言していたが、本作で乙りろでのアンソニーが用意した味付けが濃くて豪快な料理を素で気に入っていたことが確定。更にあの『TONKATSU』も本編に登場。衣遠兄様のキャラは今後どうなるのか。
最終更新:2024年01月06日 14:23