VS.スーパーマリオブラザーズ
【ぶいえす すーぱーまりおぶらざーず】
対応機種
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アーケード
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発売元
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任天堂
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稼働開始日
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1986年
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配信
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アーケードアーカイブス 【Switch】2017年12月22日/823円
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判定
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なし
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ポイント
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FC版をAC用にアレンジ
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マリオシリーズ
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概要
ファミコン版『スーパーマリオブラザーズ』をアーケード向けにアレンジした移植作品。
タイトルの「VS.」とはファミコン本体の構造を利用して開発された業務用基板「任天堂VS.システム」向けに作られた作品であるためで、本作自体に競争要素があるわけではなく、実際に競えるのはスコアランキングくらいである。
任天堂のアーケード撤退後にリリースされたため、日本国内では未発売となっていたが、後に日本のゲームセンターでも逆輸入版が出回っている。
変更点
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ステージ内容はファミコン版『1』をベースに『2』のものも混ぜられており、コインエクステンドも100枚以上に設定できるなど、アーケード向けにいろいろ手が加えられている。
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エンディングの内容が『2』と同様になっており、残りタイム×50点と1機×100000点のボーナス加算され、エンディング終了後はそのままゲームオーバーになる。
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ただしピーチ姫のグラフィックは描き直された『2』の方ではなく『1』と同じままであったり、『2』ではディスクシステムの拡張音源を用いていたBGMの音源がファミコン版準拠になっている(テンポ及び曲の構成は『2』に準拠しているが、後半のみ若干短縮されている)。
評価点
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ステージ使い回しの廃止
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FC版では後半面のいくつかが前半面の使い回しになっていた点が問題視されていたが、本作では廃止されている。
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代わりに差し替えで登場したステージは新規ではなく『2』からの流用ではあるが、この点は評価できるだろう。
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スコアランキングの追加
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本作はアーケードで稼働するに当たってデモ画面に他のアーケードゲーム同様にスコアランキングが追加されている。
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スコアランキングの追加に伴い、「いかにして点数を稼ぎ全国スコアを目指すか」というアーケード版ならではの新たな楽しみが生まれる事になり、FC版では無意味に近かったスコアにも非常に重要な意味合いを持つようになったと言える。
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コンティニューの改良
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FC版でのゲームオーバー時のコンティニューは裏技扱いであったが、本作ではアーケードゲームの形態に合わせ、ゲームオーバー後に即座にコンティニュー画面に移行する。
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コンティニューすると、残機が通常より1多く与えられる(標準設定)。最初からやり直すより少しだけお得というわけで、ここも改良点である。
賛否両論点
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ステージ難易度が全体的に上昇傾向。
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AC版では道中の雑魚敵の配置が変更されている上に増加していたり、一部のステージが難易度の高い『2』の物に差し替えられている、後半ステージのクッパ城のループの抜け方が全く異なる物に変更されているなどの変更点が多い為、FC版と同じ感覚で本作に挑むと難儀するだろう。
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アーケードに合わせた仕様変更。
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アーケード版ではインカムや永久パターン防止対策上、無限1UPを封じるための修正が行われており、無限1UPで残機を溜めてごり押す方法が通用しなくなった。
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無限1UPになる場所(段差の上にいるノコノコ)の敵が、ことごとく踏むと消えるクリボーに差し替えられている。
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甲羅のスコアボーナス自体も変更されており、連続キックや連続踏みのボーナスによる1UPが一度につき1回限りとなっている(8000→1UP→8000→8000→……となる)。
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ステージ道中の1UPキノコの数が大幅に減少し、更に1ステージ最大1回しか出現しないよう変更された(出現ステージでミスをすると、そのステージでは出現しなくなる)。
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スコア上限の桁数も増築される等、AC版では主にスコアランキング導入の影響で変更された要素も多い。
問題点
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『2』のステージについて
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敵を踏みつけたときの反動が大きくなっていることを前提とした『2』のステージを『1』の挙動のままでクリアしなければならない場面があるなど、やや調整不足が目立つ。
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FC版から修正を行ったにもかかわらず、結局永久パターンが発見されてしまった。
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スコアランキングの導入に伴い永久パターンの排除が色々と試みられているが、「手間はかかるが実質永久パターンが可能な方法」が見つかり、結局スコアランキングも無意味になってしまった。
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前述通り階段での無限1UPを防止するためか、殆どの階段でノコノコが不在となっているのだが、6-1のゴール付近のパタパタを上手く誘導して踏むことで実現できてしまう。
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無限1UP自体は1回につき1UPまでと制限が加えられたとは言え、一旦降りてからもう一度甲羅を踏み直せば再び1UP+スコア大量獲得が可能。パタパタの誘導が必要なため難易度はやや高いが、おそらく見落としと思われる。
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FC版ではとあるバグを使うと「-1」面などのバグステージに行くことが出来たが、本作ではその対策のためかゴール前の土管の天井ブロックが削除され、それを使ったすり抜けが不可能になっている。
しかし、ブロックに背中をこすらせて画面をずらす方法や、地面のブロックにかすってめり込む方法は依然使えるため、難易度は上がっているものの本作でも「-1」面に行く事が出来てしまう。
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しかも、本作の「-1」面は水中ボーナスステージでループするため、多数配置されたコインをかき集めまくるだけで残機とスコアをいくらでも稼ぐことが可能になっている。
総評
アーケードゲームの制約ゆえ難易度の上昇が大きく目立ち、一部、攻略法が異なる等オリジナル版とプレイ感覚が異なる仕上がりとなった。
それゆえ、オリジナル版と全く同じ感覚でプレイする事はできないため、アーケードならではの作品として楽しむのが良いだろう。
余談
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本作を始め、ファミコンからVS.システム向けに移植された任天堂のゲームは、タイトルの冠に「VS.」が付くのが慣例となっていた(商品名上のみで、タイトル画面では「Vs.」がつかないタイトルも存在する)。
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また、「元は他社のFC用作品だがVS.システム版のパブリッシャーが任天堂」の場合もこれに準じている。
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『レッキングクルー』に至ってはアーケード版『VS.レッキングクルー』の方がファミコン版よりも先に発売となっており、ファミコン版はAC版のアレンジ移植となっている。
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ちなみに、「VS.システム」は「向かい合わせに2台のモニターを配置した赤色の新型筐体」を指す呼称でもあり、複数の筐体による複数人の同時対戦を実現したことが名称の由来となっている。Vs.システム対応のタイトルは全てこの筐体でリリースされたが、アップライト筐体が主流の海外では2台のアップライト筐体を背中合わせに配置する形になっている。
最大で4台まで同時プレイが可能であり、FC版で有人対戦プレイができなかった「テニス」では最大4人の同時プレイが可能であった。
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本来は日本国内で正式発売されていない筈なのだが、一時期、ROMの在庫(メーカー在庫?)が大量放出され中古市場に出回ったこともあり、後年になってから、レトロゲームとして国内未発売タイトルとは思えないほど大量に導入されたため、探せば設置店舗を見つけることは地方によっては難しくないだろう。
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本作唯一の新規BGMであるネームエントリー時のBGMは、後に『スーパーマリオワールド』の発売当時にリリースされたサウンドトラック内に過去作のBGMと共に収録されている。
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2017年9月14日の「Nintendo Direct 2017.9.14」でNintendo Switchへの移植が発表され、2017年12月22日にアーケードアーカイブスで配信された。
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これまではファミコン版の移植が多かったがアーケード版の移植は初。
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なお、アーケードアーカイブスのため発売元は任天堂ではなくハムスター。既存作品の配信とはいえ、任天堂の看板とも言える本作が他社から発売されるのは非常に珍しい。
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また、作品自体が看板作品であるとはいえ、任天堂は過去の自社製アーケード作品の復刻に関しては消極的であるため、発売されたことそのものも珍しい。
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アーケードアーカイブス10周年記念イベントで行われた「Arcade Archives Award」にて、アーケードアーカイブスで一番売れたタイトルとして特別賞を受賞している(配信アーカイブの該当箇所)。
最終更新:2024年10月19日 11:51