神仙伝
【しんせんでん】
ジャンル
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ロールプレイング
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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アイレム
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開発元
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タムテックス
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発売日
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1989年12月15日
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定価
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6,300円
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判定
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なし
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ポイント
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あまり類を見ない中華RPG 戦闘バランスに難あり 本家『R-TYPE』シリーズとの関連を匂わせる演出も
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概要
タムテックス開発の『ドラゴンクエスト』タイプのRPG。
RPGとしては珍しく、中華風の世界観を舞台としている。
キャラクターデザインは転清氏、妖刀定光氏、雑君保プ氏、はん氏の4人体制。
ストーリー
むかしむかし、あるところに巨人がいた。彼は一人だった。頭上には天が、足元にはただ地が広がっているだけ。他には何も無かった。
彼が寂しさの中で死ぬと、その身体は山となり川となり、風や雨や色々なものとなって、一つの世界ができた。
そして、人や動物が生まれた。龍や神も生まれた。
神の仕事は、皆が楽しく暮らせる世界を作る事だったので、自分が持つ強い力を四つに分けて刀を作り、人の世界の四人の王に与えた。
王達は正しい心を持っていたので、刀の力も正しく働き、平和な世界が続いた。
ある時、別の世界の悪い生き物が、この美しい世界を欲しいと思った。その為には四本の刀が必要なので、王達の心に黒い息を吹きかけた。
三人の王の心が真っ黒になった時、神と四人目の王と、何匹かの龍がこの企みに気付いた。
そして、戦いは始まった…。
システム
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ゲーム開始時に主人公の名前を決める。名前は4文字で入力可能。
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戦闘はコマンド方式で、通常攻撃と魔法に当たる「術」の他、攻撃特化の「技」が使用出来る。
技の使用に必要なポイントは「T.P」で、術の使用に必要な「MP」とは個別に扱われている。
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技は攻撃力が高い攻撃技で、単体・複数技の両方が存在する。
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パーティは主人公を含めて最大3人。
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2人目、3人目はストーリーの進行によって入れ替わる。
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ストーリーの進行は章仕立てであり、章ごとに舞台となる大陸が変わる。
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町・村の中ではBボタンを押しながら移動するとダッシュ移動が可能。
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戦闘では、主人公のHPが0になった時点で仲間が無事でも敗北となる。敗北後はタイトル画面に戻るか、最後に記録したところから再開するかを選択する。
評価点
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先駆的なシステム。
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HPが残りわずかになると敵からの通常攻撃のダメージが極端に下がり、回復の暇やボス戦でのもうひと押しに期待ができる。
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残念ながら術や技のダメージは軽減できずにあっさりやられてしまう為、決して気は抜けない。
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2つ目の章で手に入る道具「紅瓢箪」を使用する事で、ザコ敵を捕まえたり呼び出したりして戦闘に参加させる事が出来る。ある意味『ポケットモンスター』の先駆けとも言える。
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ゲームクリア後、今までに出てきた雑魚やボスと遭遇できる大陸に行けるようになる等、今のゲームではお馴染みのエクストラダンジョンのようなものまである。FCのRPGとしては非常に珍しくかつ先駆的と言える。
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町・村の中だけとはいえ当時は珍しかったダッシュ移動を導入している点も見逃せない。
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『西遊記』に登場する武器などが多く登場しており、中華風の世界観によく合っている。
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特技などの上書き。
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LVが上がるごとに攻撃術はどんどん上書きされて強力になっていく。(かりん→しゃくりん→だいかりん)これにより後半になるほど必要性が無くなる最初期の術でウインドウが圧迫されることが無くなる。
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良質なBGM。
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敵の城で流れるBGMや大ボス戦のBGMはなかなか緊迫感がある。
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また、戦闘時のBGMも4種類(雑魚戦、中ボス戦、大ボス戦、最終ボス戦)とファミコンのRPGとしては多い。
賛否両論点
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敵のバリエーション。
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本作の雑魚敵は基本的に章をまたいで出てくる事はない。また、ダンジョン内では階層毎に異なる敵が出てくる事が多く、種類も豊富。なかなかお目にかかれないようなレアな雑魚敵もいる。
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フィールドでは平原・森・山でエンカウント内容が変わり、各エリアでないと出会わない敵も存在する。
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雑魚敵のグラフィックも一部ユニークなものもおり、一例を挙げるとどんぶりに鮫の尾が入った「ふかひれ」、豆腐に顔が付いた「あざとうふ」と「よぐそとうふ」など見ていて飽きない。
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一方でこれらのユニークモンスターは「世界観を壊す」と否定的なプレイヤーも多い。特に中国が舞台とはいえパンダに化けた竜「ぱっぱりゅう」は彼?の立ち位置も相まってプレイヤーを萎えさせた。
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一種のファンサービスとも取れるが…。
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何と本家『R-TYPE』シリーズとの繋がりを匂わす敵もおり、ファンタジー世界におけるバイドを垣間見れる。
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中盤のとあるイベントバトルで出てくる敵が“みっくん”。『R-TYPE』8面の上下から出てくる赤子の様な雑魚敵“ミックン”である。
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三人の王を操る魔王の本当の黒幕である“別の世界の悪い生き物”である最終ボス“じゃようちゅう”はどう見ても“ドプケラドプス”。「物語に深く関わるボスの正体が実はバイドだった!」という展開を迎える。
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上述したクリア後に行ける大陸の隠しボスの名前は何と“ばいどせんかん”。姿も“グリーンインフェルノ”そのものである。
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問題点
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戦闘のバランスが大味。
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全体的に敵が硬く攻撃力が高めなので、たとえ雑魚戦でも通常攻撃のみだと戦闘が長引きやすい。術や技のコスト問題(後述)もあり他のRPGのように気軽に使用できないのでとにかく雑魚戦がキツい。
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一応、その戦闘中だけ攻撃力を割合上昇させる道具はあるが下記の成長問題も合わさって殆ど効果が実感出来ない。
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戦闘中に使用すると術の効果を発揮する武器がいくつかあり、これらの道具が揃わない序盤がきつく、攻撃手段が充実する終盤は逆にヌルめになってしまう。
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また上記の敵の種類が豊富、というのがそのまま問題点にも繋がっている。本作はエリア移動や次のダンジョンは勿論、
同じダンジョンの一つ上のフロアに上がっただけで下のフロアの上位種が出てくる
事がザラにある。
そのため多少のレベル上げでは焼け石に水。
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主人公たちの成長度が低い。
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どんなにレベルを上げても大きく成長することが無いのでレベルを上げる恩恵が薄い。レベル1からレベル9にしても最初の町周辺に出る最も弱い敵に対しても与ダメが+2~4程度の誤差の範囲しか増えない程に主人公たちの成長率は牛歩の遅さである。運にもよるが、攻撃・速さ・賢さなどは1LV上がるごとに+1程度の成長がLVカンストまで続くと思ってもらってよいぐらい。なお成長量は完全ランダムなのでLVが上がる直前でセーブして納得がいく成長までリセットを繰り返すことで成長を厳選することは可能。そこまで頑張っても誤差の範囲ではあるが。一方、HP、MP、TPは伸びやすく成長した実感があるが、術と特技のコスト問題で結局はどんなにレベルを上げてもHPの伸びしろ以外強くなった気がしない。
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術・特技のコストが悪すぎる。
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他のRPGと比べて術・特技の使用に必要なMPやTPが膨大で気軽に使えない。最下級の攻撃術「かりんの術」でも消費MP10、回復術「かんろの術」が消費20なのに対して、これらを習得する頃のMPは術が得意でMPが伸びるヒロイン・らいちですら80前後、主人公では30程度なので後述するエンカウント問題とダンジョン問題におびえながらやりくりしなくてはならない。後半になればMPが増えるが術・特技の消費MPは加速度的にインフレするため結局は気軽に使えない。一例を挙げれば、味方一人のHPを完全回復させる「まはあらの術」は消費82、味方全員のHPを少し回復させる「だるどりぃの術」は消費124、敵全体の素早さを少し低下させる「ちえんの法」は消費124、仲間を蘇生させる「かんこんの術」は消費150といった具合で、終始気軽に使うことは許されない。
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特技に関してはさらに悲惨であり、最初の特技「とういざん」で消費TP50、最強の技になると消費TP300にもなるので、習得したての頃は確実に一回しか使えないTPの成長率が悪いと覚えたのに最大TPが消費量以下のため使えないなんて事も有りうる。こんなバランスなのにMP・TPを回復する道具は存在しないので、ダンジョン攻略時は常にHP回復アイテムを限界まで詰め込まないととても踏破などできない。
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「防御」コマンドが強敵ほど機能しない。
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一般的なRPGの防御と違い、防御コマンドを選択してもキャラクターの行動順が回ってくるまでダメージ軽減効果を得られないので、レベル差があったり敵の方が素早かったりした場合、防御を選択してもダメージ軽減が出来ず、ただの無駄行動になってしまう。
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「逃げる」コマンドのクセの強さ
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逃走率はすばやさ依存なのは一般的だが、本作ではこれに加えて敵の人数が逃走率に影響してくる。敵が1、2匹だけの場合は余程素早さの差が無い限りまず確実に逃げられる反面、敵が3匹以上になってくると逃走率がだいぶ下がってくる。4、5匹エンカウントの場合はどんなに素早さが高くても敵が格下でもほぼ逃げられない。人数依存なので敵の数を減らせば逃走率も上がってくるが、前述したように本作の雑魚はどれもこれも強いので撃破するのも一苦労で割に合わない。
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馴染みの薄い中華的世界観からくる道具や術の名称が他のRPGよりも独特で、初見ではどのような効果をもたらすのかがわかりにくい。
効果説明欄的なのも無い為、説明書や攻略サイトで確認するか、自力なら逐一使って効果をメモしておかないと混乱しやすい。
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エンカウント率が非常に高い。
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具体的には「1歩エンカウントが頻発する」「5マス移動できたら御の字」というレベルであり、移動がままならない。
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一番エンカウント率が低いはずの「フィールドの平原エリア」ですら1歩エンカは珍しく無い。
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加えてダンジョン自体も長く、上述の戦闘バランスの粗もあって、どの章でもボスの所にたどり着く頃には戦力が消耗しきっている事が多い。
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物語の進行が唐突気味。
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「洞窟の奥でキーアイテムを入手した途端、いきなり拠点に戻されてストーリーが進行する」「敵のスパイが正体を現して突然別の場所に飛ばされる」等、ストーリーを把握しづらい展開が多い。
本作はメッセージ速度がかなり速めなので、上記も相まって不用意にボタン連打すると話も次の目的も見逃してわからないまま町に放り出されかねない。
総評
先駆的なシステムを多数盛り込んでプレイヤーを楽しませようとしたことは評価できるが、シビア寄りの戦闘バランスが足を引っ張ってしまった。
独自性のある中華風世界観は魅力だが、クリア後のオマケ要素の「バイド戦艦」はともかく同社パロディやユニークモンスターを本編に混ぜたのは世界観を壊すと賛否が分かれた。
序盤ほどキツく、後半になればシステムを理解していればヌルめの難易度になってしまう事に加え、どんなにレベルを上げても強くなった実感がしないのもRPGとしては問題である。序盤のうちだけだが、歯ごたえのあるRPGを求める人はプレーしてみるとよいだろう。
最終更新:2024年06月25日 09:17