虹のシルクロード~ジグザグ冒険記~
【にじのしるくろーど じぐざぐぼうけんき】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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ビクター音楽産業
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開発元
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アドバンスコミュニケーション
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稼動開始日
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1991年2月22日
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定価
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7,500円
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判定
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クソゲー
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ポイント
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シナリオはなおざり 戦闘はおまけ 隊商交易は国内運搬に活路あり
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概要
シルクロードでの隊商交易をテーマとした成長のないドラクエタイプのRPG。国を追いやられた主人公が隊商交易で得るお金を元手に武器を構え、アジアに散らばった鏡の破片を回収していく。
キャラクターデザインは榎本一夫氏、音楽は小林亜星氏、シルクロードの情報として当時ドキュメンタリー映像を放映していたNHKサービスセンターが協力しており、ゲームの内容に関わらない部分にはやたらと力が入っている。
しかしその豪華な素材を活かすには、開発力・技術力が不足していたと評さざるを得ない。
ストーリー
中東の一国「リタルランド」において「
ズルー大臣
」がクーデターを起こし、王を殺害。
幼かった王子(主人公)と乳母はラドリー大臣の手助けにより国から脱出した。
成長後、乳母からそのことを知らさらされた王子はリタルランド奪還と復興の為、ラドリー大臣が7つに分けて隠した国宝の鏡の破片を求め、シルクロードを通り東へと旅立つ。
ゲームシステム
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中東から始まるゲームらしく、空腹度的な数値として「水」が存在する。水は移動でジワジワと減っていき、0になると一歩ずつダメージを受けてしまうので宿やオアシスの水、アイテムの「水筒」で補給する必要がある。
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砂漠の一部濃いタイルのゾーンを通ると水の消費が激しくなる要素もある。
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「レベル」の概念が存在せず、「武器」「鎧」「盾」の3つの装備品のランクでHP・攻撃力・防御力が決まる。
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基本的にバトルはその時点で手に入る最良の装備品を装備している事前提のバランスとなっている。
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敵とのバトルに勝利すると経験値の代わりに「ライセンスポイント(LP)」が手に入る。
特定の交易品の売買には国から発行される商売の「許可証」が必要であり、手に入れた一定量のLPを支払うことで許可証を得られる。
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許可証が無くても取引できる交易品もあるが、利益は最底辺。終盤のイベントで莫大なお金が必要になる為、やはり高価な交易品を扱える許可証はほぼ必須。
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交易品は町によって売値と買値が異なり、売買の差額による利益が儲け、ひいては主人公のお金の入手方法となる。
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アイテムや装備品の値段は同一で、買値のまま売る事ができる。
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一旦訪れた町には「船」や「魔法のじゅうたん・きんとうん」屋で料金を支払ってすぐに移動できる。
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その他、動物屋で交易品を持てる量が増える運搬用の動物を買ったり、案内屋で兵士を雇ったりできる。
…と、とにかく交易によるお金稼ぎが最重要となるシステム。
問題点
雑なシナリオやイベント
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概要欄通りの導入なのだが、この王子の出身国、リタルランドはOPとEDに名前でしか登場せずゲーム内では立ち入ることはない。
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ゲーム冒頭で乳母に話を聞かされて以降、国でクーデターが起きて王子が旅立ったという話がどの国でもなされない。友人ですらそのことを言及しない。
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確かにクーデターから数年が経っていて少しは落ち着いているのかもしれないが、一国が転覆した騒ぎなのだから、せめてアラビアの国ぐらいは話してくれてもいいものだが。
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主人公が旅立つ理由は、ラドリー大臣が逃げる際に7つに割った鏡の破片を集めるため。悪用されないために破壊するのはまだしも、シルクロードの道沿いにばらまく必要などないため、このシナリオ自体が頓珍漢で真っ当な導入が思いつかず無理やりひねり出した感じが強い。
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一つの鏡を割った割に、特に意味もなく火や水などの属性が付けられている。確かに虹の鏡というアイテムではあるため色は付いているのかもしれないが。
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敵方の追っ手は時々思い出したかのように登場し、ラスボスですら前後の流れをあまり汲まずに登場する始末。2度戦うのだが、いずれもイベント戦闘でもあるため盛り上がらない。
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そしてクーデターを企てた大臣はといえば、王子が正当なる後継者の証を持って帰国したことに畏怖し、悪あがきの末剣を突きつけられ逃亡するというオチ。クーデター後に何年も国を率いているはずなのに、
なんでこんな小心者が国家運営出来たのか
……。
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要するに、交易というテーマとメインシナリオが噛み合っていないのである。金稼ぎそのものを目的としたストーリーではRPG好きの少年達への求心力が薄いと考えて「亡国の復興」という王道RPG的な設定を付けてしまったのかもしれないが、それならそれで金の力で国を買い戻すくらいの大胆なストーリーにしても良かったのではないだろうか。
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終盤の国の扱いがよくない。
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町一つで済まされた朝鮮と、わざわざ海を渡って遭難イベントを用意してまで登場させた日本にあるものが2つの街、お使いイベントとラスボス、登場人物も卑弥呼と牛若丸、武蔵坊弁慶のみと蛇足に近い。
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8世紀ごろの海の道における東の終着点のため、登場させたことの意味はあろうが、ならば出すべきは
平城京
であり
卑弥呼や牛若丸
ではなかった。
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クーデターについても言及されず、各国を巡って王に謁見しても助けてもらえるわけでもなく、人探し、敵討伐、護衛のいずれかのお使いを頼まれるだけ。それがスタートからエンディング直前の日本まで続く。変わり映えせず重要度が低い。
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フィールドでもイベントらしいイベントは片手で数えられるぐらいしかない。91年のゲームとしてあまりにも貧弱すぎる。
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モンゴルに至っては、イベントとダンジョンをこなした末手に入るのが店売りのアイテム一個、また数秒間だけ動きが遅くなる呪いが入っている宝箱といった残念極まりないものがある。
その分を中国や日本に回せたろうに。
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しかしこれをスルーしてしまうとモンゴルの国土の広さの割にイベントが1つしかないという有様。
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必須アイテムの鏡の欠片も、特に説明もされないダンジョンの宝箱に入っていたり、報奨として直接もらえるわけでもなく、国の宝箱に入っていたりとチグハグ。
その他の問題点
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戦闘の存在感のなさ。
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このゲームにはレベルアップの要素がなく、他、経験値、戦闘報奨金とドロップアイテム、魔法や特技といった技能がない。
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敵は呪文や火を吐いたり、毒などの状態異常を付与する攻撃を使うが主人公は物理攻撃しかできない。
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あるのはHPと攻防のステータスだが、経験値とレベルアップの要素がないため成長しない。HPと攻防の全ては装備品によって上昇する。
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また攻防はシンプルな攻撃-防御=ダメージ量のシステムのため、お金をケチって装備品をステップアップしないという選択肢は基本存在しない。
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逃走率と奇襲率が他のRPGに比べてやや高い。
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また攻撃の命中率もやたら低い。1ターンで主人公と仲間全員が攻撃を空振るという現象も珍しくない。
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案内所で兵士を雇い入れる事が出来るが、これらの性能も微妙。
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前述の通りレベルの概念が無いため、性能自体は完全に主人公と同一。装備品でステータスがすべて決まるのも同じで、装備品さえ用意できれば、兵士を雇うほど単純に戦力が増える。
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しかしザコ敵はこちらの数に比例して出現数が増える為、一概に数を増やせば楽になる訳ではない。しかしボスに主人公一人で挑むと大抵打ち負けるバランスなので、兵士を雇う事自体は必須。
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兵士が攻撃してくれるのは主人公が攻撃した場合のみ。道具を使って回復したターンは何もしてくれない。
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その他ゲーム進行でスポット参戦してくれる仲間もいるが、そちらはイベント的側面が強い。
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ただし、後半で雇える「ゆうし」などはたまに二回攻撃を行うなど戦闘面の強化はある。
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唯一戦闘する意味にライセンスポイント(LP)という交易品の一部を
取引する許可証を購入するため
に必要なポイントを得ることがある。
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そのため戦闘自体は必須なのだが一戦で得られるポイントに対し要求ポイントが高い。要素として不要になりかけた戦闘に無理やり意味をもたせている。
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遠距離交易に向いていないシステム。
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このゲーム唯一の評価点が陸路での交易を主眼においたことである
。主人公は商品を買い、別の町で売る利ざやでお金を得る。交易ゲームとして当然のシステムだが、以下の要素から
交易ゲーとしての面白さを殺している
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なおこのゲームでは一つの町においての売り買いの値段は同じ。なので買値の安い町で仕入れ、売値の高い町で売るのが普通である。値段の変動もしない。
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ただし、値段が変動すると交易の難易度も上がるため、固定は致し方ない部分でもある。
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高利益商品はライセンスがないと売買不可。
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いきなり一青年が高額商品を扱えるというのもおかしな話ではあるが、だったら二束三文とはいえ無許可で売買できる交易品があることがおかしい。
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特産品が1つずつしかもらえない。
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無料でもらえ、かつ売値がどの町でも高額である交易品が貰えるが、1品しか貰えないため転売しにくい。
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しかし、高額且つ即利益を出せるアイテムのため金欠時に重宝する。
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大量のアイテムの持ち込みには税金がかかる。
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主人公と最大2人まで雇用できる兵士のアイテム枠は8で装備品は別枠。多くの交易品を持ち歩くには、国ごとに指定された動物をレンタルし、荷物持ちとして隊商を大きくする。
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レンタルできる動物の最大数は5、アイテム枠は10であり、最大58のアイテムを持ち運ぶことができるため、この体制が整ってからはお金が貯めやすいように思えるが…
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陸路で国を越境しようとすると、
動物ごとに税金がかかり、それが一頭あたり2,000G
。検疫のためか動物の乗り換えという言い訳がなされているが、
これだけで最大10,000Gの出費
。
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動物を一頭でも連れていると移動手段の一つである絨毯に乗れない
ため近郊の街には移動できない。
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動物を一頭でも連れていると移動手段の一つである
船に乗るのに税金がかかる
。これもやはり動物の乗り換えであり、
一頭あたり2,000Gで最大10,000Gまで
掛かることになる。
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と事あるごとにお金が入り用になる。確かに越境にかかるお金も船の代金も必要経費と言われれば確かなのだが、結局遠くに運ぼうとするとその分の出費も大きくなってしまい赤字ということもざら。
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とどめに最終盤では日本に渡るために船が必要となり、50万もの大金を交易で稼ぐ必要がある。交易のつまらなさを無理やりやらせる嫌がらせにしかなっていない。
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以上を踏まえ高額の利益を上げるには、
陸路で行ける、税金が発生しない同じ国の隣の街同士を行き来するのが最善手
となり、シルクロード貿易をするゲームとはほど遠い隣町の荷物運搬ゲーとなる。
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確かに4~8世紀ごろの貿易は遠方に向かうにつれ費用が嵩むほどに過酷だったのかもしれないが、そんなリアリティは不要だろう。
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分かりにくい店と民家
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入り口がひと目見て分かるそれではなく、道の先の壁がそうだったり、一目では分からないところに入り口があったりする。
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店が屋根付きの建物の中にある場合、看板が屋内にある。外から見て分からない看板に一体なんの意味があるのか。
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なお、建物の扉を通り抜けると押し開ける効果音が鳴り扉は消滅するが、同じ場所を再度通ると扉は消えているのにまた効果音が鳴る。細かい点だが処理の雑さが目に付いてしまう。
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名前入力において、4文字の枠に対し濁点、半濁点で1文字扱い。
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80年代のゲームはそれが普通だが、これは91年のゲームである。文字表で30文字増加する圧迫を嫌っての処置ではあろうが、ならば削るべきものは他にあった。
賛否両論点
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主人公の喉の渇きシステムの存在
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アラビアから砂漠や高原地帯を横断するゲームであることからか、水の保有量メーターが存在する。メーターがなくなると数歩ごとにダメージが発生。
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町で水を買う、オアシスの水を飲む、アイテムの水筒を使用することで回復可能だが、下記要素から基本的に購入せずとも困らない。
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もっとも終盤で獲得できるアイテムで水の量が二倍に増えて減りもさほど気にはならなくなるが。
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水やHPがソフトリセットにより完全回復する。
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セーブ情報に水の残量が記録されないため、ソフトをリセットしてセーブから再開すると水の残量が回復する。プレイヤーからすれば便利だが、発売年を考えると残念な仕様である。
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しかし、フィールド上にオアシスが存在する事からも町の外に出たら気にかける必要はある。特に砂漠、熱砂地帯を歩くと水の消耗が激しくなるのだが、その反面、わざと敵のエンカウント率を増加させたり町へのショートカットなどもできるのでメリットとデメリットのバランスは取れている。
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プレイヤーのHPも回復するため、序盤は宿屋代金の節約になるので抜け道な初心者への救済措置といえる。ただし、兵士は回復しないので宿屋自体が腐るわけではない。
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あまり存在価値のない妖精
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ストーリー進行において妖精を助ける機会があるが、その妖精の役割は
所持アイテムの説明
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しかし、初見プレイ時にアイテムの用途を把握したり、イベントでも会話をするのでまったく無駄な存在ではない。
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街の移動に使う船や絨毯が自然災害で難破することがある。
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幸いにして出着する街間の
マップの何処かに放り出されることと交通費が返金されないこと
以外にデメリットはないが、確率は低くないので鬱陶しいことこの上ない。
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とはいえ、道中の敵を倒してLPを稼ぐ必要もあり、交通費がかかる以上、頻繁に利用するものでもない。
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ゲームとしてトラブル的な変化をもたらせるためこのような要素を入れてあると思われるが、幸いにもセーブポイントのある町中なのでどうしても気に入らなければリセットしてやり直せるのは救済措置と言えるだろう。
評価点
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音楽パターンは豊富。アラビアから中国まで、国に因んだ音楽が聴ける部分は小林亜星氏を起用した意味があった。
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榎本一夫氏のデザインであること。
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桃太郎電鉄シリーズの貧乏神、キングボンビーのモデルとして有名だが、榎本氏の本職はプロのデザイナーであり、ドラゴンクエストシリーズのロゴマークや取扱説明書のデザインの実績がある。
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ドット絵も細かい工夫がなされている。ただ戦闘することの意義があまりないのだが。
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陸路の隊商交易ゲームとしての存在価値。
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船による海洋交易のゲームはその前年に登場したが、歴史的価値はあるものの地味になりがちなオアシスの道にスポットを当てた点だけは評価できる。
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交易をテーマとするゲームはゲーム慣れした大人のユーザー向けが主で、地理の知識を必要としたり細かいパラメータが設定されていたりと複雑なものが多い。シルクロードというわかりやすい(商売のための往復はともかく)一本道の舞台で、低年齢層にも理解しやすい形で交易を描写しているというのは時代を考えると意欲的な試みである。
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実績を積み信用を得て新しい商品を扱う許可を得る、交通手段や税金に苦労するといったゲーム上の要素も「陸路交易というのはどういうものか」をイメージさせるのに一役買っている。前述の通り歴史関連は無茶苦茶なので歴史や地理の勉強にはならないが。
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陸路交易を扱ったゲームには後年発売の『オアシスロード』などがある。そちらは神話ベースの架空世界寄りで実在の国家などは登場しないため雰囲気は大きく異なるが、シルクロードがモチーフのひとつとなっている。
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同作も本格交易ゲーではなく雰囲気ゲーとの評価。航路をある程度自由に設定できる海上貿易に比べると、陸路交易そのものをゲームとして面白くするのはやはり難しいのだろう。
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相場を知る楽しさ
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各国の町に商品の相場を調べてメモなどに書き起こして独自の転売ルートを確立する楽しみ方がある。現在はネットで攻略サイトを確認するだけだが、当時ならではの楽しみ方であった。
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恵みの部屋
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何をするにもお金がかかるゲームだが、金欠時にお金を恵んでくれる役人が各国の都に存在する。
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初心者向けにこういった救済措置が存在しており、未然に詰むのを防いでくれる。
総評
発想は良かったが、それを形にする力が足りなかった惜しいクソゲー。本来のシナリオは忘れかけた頃にしか登場せず結末も雑。戦闘は交易のためにやらなくてはいけないのだが、戦闘する楽しみが一切ない。唯一のボス戦は戦闘している感覚になるが、申し訳程度。
退屈な戦闘を重ねLPを集めても、効率を考えると遠くへ運べない隣町貿易で地道に稼ぐだけになってしまう。特色であるはずだった部分をゲームとしての面白さに落とし込めなかった結果といえる。
制約や苦労が多い所を含めてシルクロード交易の雰囲気に浸るための「味」と取れなくもないが、それをじっくり味わうのはマゾゲー愛好家でないと難しい。繰り返すが、着眼点だけは良かったのだ。
せっかくのシルクロードに関する映像を借りたところで、肝心のゲームがこの出来では宝の持ち腐れだったことだろう。
最終更新:2023年12月16日 08:24