史記英雄伝 ~人竜伝説~
【しきえいゆうでん じんりゅうでんせつ】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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12MbitROMカートリッジ
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発売元
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株式会社アウトリガー工房
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開発元
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BE-ON WORKS
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発売日
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1995年7月7日
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定価
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10,800円(税抜)
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セーブデータ
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3個(バッテリーバックアップ)
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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史記をおちょくったゲーム 破綻しているゲームバランス 突如挿入される寒いギャグと本格派パズル
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概要
司馬遷が記した前漢時代の歴史書、「史記」を題材にしたゲームのはず。
史記の英雄と言えば皆が口を揃えて荊軻(けいか)の名を挙げるが、本作の荊軻は仲間として登場するだけで、主人公は架空の人物である。
ストーリーも史記をなぞっていくのではなく、ただ史記の時代を舞台にしただけのオリジナルストーリーが展開される。
そんなわけで史記を知らない人でも問題はない。史記に関連したものも一部出てくるので、知っていればより楽しめるかもしれない。
システム
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敵から逃げても経験値が入る。
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特に序盤はどう頑張っても勝てない敵と戦う羽目になったりするので逃げる行動は必須。
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有名な「孫子」の教えである「三十六計逃げるに如かず」という言葉も出てくるが、これは「いざとなったら逃げることも必要」という教えであり、初めから逃げることしか考えないのとは意味が全然違う。
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キャラの「腕力」が低いと、重いものを装備できない。
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腕力が高いキャラほど優秀な装備ができる。しかしそういうキャラは武器が弱くても与えるダメージが大きく、体力も高いので防具が弱くても特に問題なかったりする。
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逆にひ弱なキャラはろくに装備もできないという、欠点だけが目立つシステムになってしまっている。都合の悪いことに主人公がひ弱なほうなのですぐ死んでしまう。
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敵を倒してもお金は落とさない。
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お金は敵のドロップや宝箱から入手したアイテムを売って得る。それにしては敵のドロップ率が低く、貯めようと思ってもなかなか貯まらない。
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最初の方の敵はドロップもないので宿に泊まる金すらない極貧生活を強いられる。
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お金で食客を雇うことができる。
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戦闘に参加できるのは三人までで、それ以外の仲間はサブメンバーとなる。
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メインの三人が全滅するとゲームオーバー。サブメンバーは全滅を見守るだけで何もしない。
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食客の数自体は結構多いのだが、役に立つのが三人しかいない。そのうち二人はイベントで使うのみで、戦力になるのは一人だけ。
何のためにこんなに作ったんだ
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最強の食客として町人の噂にもなっている人物の名前は関飛。彼だけ能力値がズバ抜けて高く、彼以外全く戦力にならない。ちなみに後に張羽という人物も加わる。
おバカな点
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時代錯誤が甚だしい。史記の時代(紀元前200年頃)にあるはずのないものが平然と登場する。
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著名な人物としては
関飛と張羽 孟子(紀元前300年代)などがいる。あんたこの時代にもう死んでるだろ。
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RPGで言うところの魔法に当たるのが「気功」だが、気功は20世紀になってから広まったものである。
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そもそも気功は民間療法のようなもので、炎を出したり敵を惑わしたりするものではない。「仙術」とかならまだよかったのに。
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西遊記でおなじみの「金斗雲」も登場する。西遊記は16世紀頃の……
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移動アイテムのタクシーチケット、収集要素のスタンプ帳、空き家が多いのは
手抜きバブルがはじけたからで……
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中国の名刀がダマスカスの剣。ダマスカスは中国最西部からアフガニスタン・イラン・イラクを超えてさらに西のシリアの地である。どうやら歴史だけでなく地理も適当なようだ。
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町人との会話で世界観をぶち壊すギャグが飛び交う。
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「邯鄲へ行くのは簡単ですよ」というオヤジギャグ、「バグ探しはやめよう」という制作者からのメタ発言、「ハドウケンが役に立ちますぞ」というパクリセリフなどなど……。
問題点
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戦闘バランスがおかしい。
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どこにでもいそうなザコ敵が、突然味方パーティーが壊滅するほどの超強力な
魔法気功をぶっぱなしてくることがある。
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どのくらい強力かというと、主人公のHPがだいたい150~170くらいの時に200を超えるダメージの全体攻撃が来る。主人公は死ぬ。
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直接攻撃なら防御力を上げれば対処できるが、魔法防御や耐性という概念がないのでどうしようもない。
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何の脈絡もなく突然挿入されるパズル要素。結構難しいわりに解かないと先に進めないのでテンポが悪い。
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ゲーム開始後、旅立つ前に先生にいきなりパズルをやらされる。なぜやるのかを主人公が問い詰めるが、先生はうるさい!だまってやれ!と返すのみ。
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ダンジョン内でも唐突にパズルモグラなるキャラが出現しパズルをやらされる。
モグラぐらい倒せよ!
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全滅したらセーブした町からやり直し。
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セーブは町でしかできない。最初は自宅から始まるので、町を見つける前に野垂れ死んだら最初からやり直し。もちろんパズルも解き直し。
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ダンジョンで目的を達成しても帰りは歩きで、帰還中に全滅する事もよくある。もちろんパズルモグラも(ry
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次の目的地への指標がないことが多い。
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間違った方向へ進むと場違いな敵が出現して全滅など日常茶飯事。
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ちなみにレベルが数段上の敵からは逃げられないので出会ったら終わりである。
賛否両論点
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やりこみ要素が豊富。
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特定の人物にYボタンで話しかけるとスタンプがもらえる。
半年前に発売された大貝獣物語の丸パクリなのでは?
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スタンプを全部集めると……ネタバレ注意
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隠しボスと戦えるようになる。それだけ。倒しても特に意味はない。
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倒すにはクリアレベルを遥かに超えたレベルまで鍛えなければ勝てない。そこまでして倒しても、本当に何もない。
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BGMには良いものがある(多いとは言わない)。
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特にボス戦などの壮大系BGMは格好良い。戦闘画面が暗めなのも相まって、緊迫した雰囲気が出ている。
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しかし決して中華風ではなく、どちらかというと洋風なBGMが多いので、ミスマッチとも言える。
評価点
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ザコ敵を出なくする「隠密」という気功技がある。
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エンカウント率がやや高めで理不尽な全滅が多発するゲームなので、これがあるだけでもありがたい。
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シナリオの都合により使えなくなる場面もあるので、そうなる前に逃亡用のアイテム「煙玉」を大量に用意しておこう。
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数少ない、史記の時代を題材にしたゲームということ。
史実に忠実では無いが
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中国の歴史ゲーと言うと三国志ばかりで、史記のゲームは本当に珍しい。
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後に『雷子 紺碧の章』という、史記に記される「呉越戦争」を題材にしたゲームが発売された。
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オリジナルながら味のある深いストーリー。
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生き別れた家族との再会、突如始まる仇打ち、
パズルやダンジョンでの全滅などなど……
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後半になって主人公が今までの出来事を思い出しながら書にしたためるシーンは感動もの。ここでギャグさえなければ……。
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パズルの出来はかなり良い。
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色合わせパズル、絵合わせパズル、石取りゲーム、倉庫番型パズル、天地人パズル、史記クイズ……と、RPGとは思えないほど充実している。
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オマケ要素として、カジノを模した賭場や、本編で登場したパズルのさらに上位版を集めた隠し場所もある。やりごたえ十分。
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これらをまとめて構築し直せば、一本のパズルゲームとしても十分通用するレベルのものが出来たであろう。なぜRPGと抱き合わせにしてしまったのか。
総評
深いストーリーやパズルの出来の良さなど、光る部分は確かにあるのだが、ギャグで味付けしてごちゃまぜにする事によりムチャクチャなゲームになってしまった。
出来の良い部分だけを楽しむことができず、悪すぎるゲームバランスという高い高い壁が立ちはだかる。
いっそのことRPG要素をなくして、おバカなパズルゲーとして売ればそれなりに……。
最悪のゲームバランスや畑違いのパズルを乗り越える自信のある人にはお勧め。
最終更新:2023年09月14日 21:44