朝日新聞連載 加藤一二三九段将棋 心技流
【あさひしんぶんれんさい かとうひふみくだんしょうぎ しんぎりゅう】
ジャンル
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将棋
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対応機種
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スーパーファミコン
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発売元
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バリエ
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開発元
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バリエ、夏システム
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発売日
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1995年9月22日
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定価
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12,300円
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周辺機器
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スーパーファミコンマウス対応
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判定
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なし
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ポイント
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初心者お断り 詰将棋123問
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加藤一二三関連作品 心技流 / 倶楽部 / 教室 / 道場
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概要
加藤一二三九段監修の将棋の第1弾。プロ棋士監修のSFC将棋としては第7弾。
対局は勿論、豊富な問題集、ユニークなエディット、名局、専門用語集など豊富にラインナップされている。
対局の勝敗はオートセーブで保存される。
最初から全ての要素を選ぶことが出来る。
内容
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将棋道場
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10人の対局相手から選べる。家武善隆、伊藤康之、有田幸二、谷 耕作、森川善正、江島二郎、斎藤晴美、中路広美、林田享子、清田和代。どれも実在棋士のもじりである。
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状況に応じて色々な表情とともにセンスの良いセリフを言う。
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コマンドには「次の一手」「封じ手」「待った」などが使える。腕に覚えがあるプレーヤー側が駒落ちにする事も出来る。
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相手も、最高速SA-1チップ搭載、通常30秒以内とある通り早くて強い。
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全日本アマ将棋トーナメント
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プレイヤーを含めた8人から優勝者を決めるモード。他の7名は10人から任意で選ぶ事が出来る。
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優勝には3連勝が要求され、待ったなどのコマンドも使えない仕様で厳しい。
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なお、このモードに限り他のキャラ同士の対局を観戦出来る。勿論スキップも出来るので快適である。
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エディット
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駒を好きなように配置して対局するユニークなモード。4ラインで合計36マスのどこに置いても良い、また置かずに持ち駒にしておく事も可。
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ここから「棋譜選択」に移る事が出来て加藤九段の20局の名局を観る事が出来る。ボタンを押しっぱなしで指し手が進んでいく。
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相手は、中原、有吉、米長、森、升田、熊谷、桐山、大山、大内とトップ棋士が揃う。
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詰めの手筋
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「詰めの手筋」は123問。更に「次の一手」は50問の三択問題と豊富に用意。詰将棋は正解手以外は弾かれて、次の一手は3択問題という仕様である。
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対局室
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二人で対局可能。基本的な仕様は一通り揃っており、「封じ手」で対局を中断する事も可能。
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将棋講座
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104の将棋用語が加藤一二三九段の顔グラとともに解説される。
評価点
加藤一二三九段の要素
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本作には名局や詰将棋が豊富に用意されている。
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豊富な問題集
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詰将棋はどれも良作揃いで現在でも通用する。更に各問毎に考え方のヒントも示される。3択問題は並び順がランダムで変わり、暗記対策も。
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加藤九段の顔グラが用意されておりあらゆるモードで色々説明してくれる。
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本編でもそっくりさんやエディット機能や将棋用語104など力が入っている。
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グラフィックも本格的な筆体で見た目も良く力の入れ具合が伝わってくる。
賛否両論点
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AIの強さ
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棋力はプロ棋士には遠く及ばない。しかしながらSFC将棋が始まってから数年続いており棋力の向上はしっかりと見られる。
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強いのはいいが、ややいびつな強さを見せる。
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強さは序盤は15級・レーティング100相当だが、終盤が非常に強く10級・レーティング600はあるとみられる。それというのもAIが最も得意とする事は詰みや必至を検出する事であり、自玉の詰みも読んで対策して来るので勝ち切るのは難しい。ポカやトン死も絶対にやらないので下手をすると勝勢からの逆転負けもありうる。形勢が互角のまま終盤に入ると生半可な実力ではまず勝ち目は無いと見て間違いない。
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後手を持って△4四歩からの奇襲戦法である「4四歩パックマン」を仕掛けると、乗って来て△9五角の王手からの強襲が決まり敗勢に陥ってくれる。だが終盤力が高いのでそれでも勝ち切るのは容易ではない。
問題点
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長期戦に未対応
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300手経過で、対人戦なら後手の勝ち、CPU戦ならCPUの勝ちになる。
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駒落ちはプレイヤーのみでCPUは落としてくれない。
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飛落ち、角落ち、飛香落ち、2枚落ちの4通りなので尚更厳しい。
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CPUとの対局の不自然さ
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タイマーはプレイヤー側しか正常に作動せず、CPU思考中の際には止まり、指した際に一度に進む。
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これは画面の更新を抑え、全リソースをCPUの思考に割り振っているためであると考えられる。とはいえ、ユーザーエクスペリエンスの観点で見ればあまり良いものではないだろう。
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対局相手は10人いるが強さも戦法も似たり寄ったり。駒落ちで勝っても特に何もないし記録にも残らない。
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トーナメント本戦では「封じ手」「待った」などが使えない仕様であるが、表示は変更されず使用不能であることが分かりにくい。
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エディットモード
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一度配置した駒は駒台に戻すことは出来ない。どうしても戻したいならリセットボタンを押すしかないが、そのまま続けて配置しても非常に有利な構成に出来るので楽には勝てる。更に成り駒にする事も出来るので尚更。本作で一番簡単なモードと言える。
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詰将棋
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最初から全問選べるのは良いのだが、移動は1問ずつしかできないので意外と時間がかかる。
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問題によっては解答が二つ以上あるが、どれか一つだけが正解であり、別の解答手だと不正解扱いで1手戻される。
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説明書には強い方の駒で詰ませた方が良いとの事。棒に振るのは数秒程度だが、詰ませたのに不正解扱いは違和感が大きい。
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玉方の合駒を読みましょうという問題もあるが、実際に挑むと自動で合駒をするので考える必要が無かったりする。
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第一問からヒントには5手指すと決まるとあるが実際のその手順が示される事がないのでプレイヤーが頭の中で読むしかない。
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選んだ手に応じて点数が付くが解説もなく点数の集計が行われたりという事はない。
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一度クリアした問題に印が付いたり記録に残るという事はない、全問解いても何も起こらない。
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出題では本作のAIは活用されておらず極端に言うとツクールでも出来るレベル。
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対局室
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駒落ちした際は落とした側が先手になるのは良いが表示が上手下手ではなく先手後手のまま、上手が「王」下手が「玉」になるべきだが逆になる。
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将棋講座
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講座というよりも用語集。104項目と非常に手間がかかっており、問題集のヒント文章とともに本作のフォントは殆どここに費やされているのだが、インデックスは平仮名のみ、解説文は漢字を含んではいるが短い文章のみで盤面で表現されるという事もないので有難味がなく、力を入れる部分を間違えたと言える。
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棋譜選択
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モード選択から直接選択できず、なぜかエディットの内部モードとなっているのでやや不便。説明書にも載っているのでプログラムミスではなく仕様と思われる。
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「エディット」自体が自由配置将棋でありネーミングが不自然なのだが、変則将棋と棋譜鑑賞を同じ選択肢の下部に設置するのもかなり分かりにくい。
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20局もの名対局を観れるのは良いのだが解説は無い。
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ただ、加藤九段の自戦記は非常に稚拙なことで知られており、監修とは別に解説の執筆者も探して依頼し……となると時間的にもコスト的にも負担が大きかったことは予想される。
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と金の音声読み上げは「と」が一般的だが、「成り歩」となっている。
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フォント
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漢字が使われているのは良いが、漢字と平仮名のサイズのバランスがおかしくて見づらい。
総評
かなり強めのAI、豊富な問題数など腕自慢向けの設定。CPUキャラは実在棋士をモデルとしており、収録棋譜も将棋ファン垂涎。
腕に覚えがある加藤九段のファンならば本作を手に取ってみると良いだろう。
ただし、難易度的には初心者には厳しく、「ひふみんのゲームだ」と喜んで始めると心を折られる可能性も高い。
余談
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加藤一二三九段は名人獲得経験を持つなどの実績を誇る将棋界のトップ棋士の一人であり、また数多のユニークなエピソードでも知られ多くの将棋ファンに愛されている。
その後の展開
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バリエから後に『テーブルゲーム大集合!!』が発売。
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大集合とある通り「将棋」「麻雀」「花札」「トゥーサイド(オセロ)」が収録されている。加藤一二三九段推薦であるものの将棋ゲームとしては特筆すべき点はない。バリエSFC最終作。
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97年には引き続きプロ棋士監修第8弾として『加藤一二三九段 将棋倶楽部』がヘクトから発売。SFC将棋の最終作でもある。
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それ以降も、1999年にはGBC『加藤一二三 九段の将棋教室』や2018年発売のSwitch『ひふみんの将棋道場』がある。
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ひふみんの将棋道場は、駒の動かし方から教えてくれるので全くの初心者にも安心である。
最終更新:2023年10月27日 16:32