HITMAN 2: Silent Assassin
【ひっとまん つー さいれんと あさしん】
ジャンル
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暗殺ステルスアクション
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対応機種
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Windows PlayStation 2 Xbox Gamecube(海外)
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発売元
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EIDOS interactive ツクダシナジー(Win日本語版) アイドス(家庭用) Io-Interactive A/S(Steam)
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開発元
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IO Interactive
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発売日
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2002年10月1日 2003年1月31日(Win日本語版)
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定価
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【Steam】1,120円
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レーティング
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CERO:Z(18才以上のみ対象)
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配信
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Steamにてダウンロード販売中
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判定
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良作
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ポイント
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暗殺アクションシリーズ第二作 多彩な選択肢による高い自由度 部分的にパズル気味
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ヒットマンシリーズ
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死を生業にし 死で贖罪とす
汝、生まれし運命を求めん…
概要
2000年に発売され高い評価を得た暗殺ステルスアクション『ヒットマン: コードネーム47』。本作はその2年後に発売された2作目である。
基本的な要素は前作を受け継ぎながらも、色々なパワーアップを果たしている。
なお日本のCS機版でのタイトルは、前作がCS機に出なかった影響でナンバリングが抜けた『ヒットマン:サイレントアサシン』となっている。
ストーリー
幾多の暗殺をこなし伝説となった殺し屋、通称No.47。
それまでの生き方に疑問を感じた彼は裏社会から姿を消し、雇用主であるエージェンシーとの連絡を絶ってイタリア・シシリーの教会で庭師として暮らしていた。
自分を息子と同等の存在として扱う心優しきヴィットーリオ神父と共に平穏な日々を過ごし、これまで犯した罪を懺悔していた47。
しかしある日、庭師が伝説の暗殺者だと突き止めた地元のイタリアンマフィア、ドン・ジュリアーニによって神父は誘拐されてしまう。
エージェンシーと再び連絡を取り神父の救出を試みる47。しかし、神父は何者かによってジュリアーニの邸宅から移動されていた。
捜索能力に長けるエージェンシーの協力無くして、恩人であるヴィットーリオ神父の救出はできない。取引を結んだ47は神父への贖罪のため、再び一流の暗殺者として世界中を駆け巡る。
ゲームシステム
基本システム
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教会の庭で武器の射撃訓練や操作の確認を行い、自分の小屋でミッションを選択、ブリーフィングを受け持ち込む武器を選択した後に現地へ赴き、暗殺をこなす。ミッションを全て達成した状態で脱出ポイントに到着するとステージクリアとなり、その際に持っていた武器が所有物として登録される。
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合計ミッション数は20。各ミッションは達成後も自由に選択でき、クリア時の称号によっては武器が追加されるなどの恩恵を得られる。
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武器弾薬の購入システムなどは廃止された。弾薬費を気にせず好きな武器を現地へ持ち込めるため、武器さえ教会へ持ち帰ることができれば「M60を担いで敵地へ潜入し、それのみで制圧する」といった芸当も可能。
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システムはオーソドックスなFPS方式。マウスで視界移動と発砲・アイテム選択、WASDで移動、Z/Cでリーンを行う。Mキーでマップを開き、Qキーで武器クイックチェンジまたはしまう動作、Gキーで所持武器を落とす。Bキーでブリーフィング内容及び目標達成数の確認。
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Shiftでダッシュを行い、Spaceで忍び歩きを行う。基本的に、変装中にダッシュを行うと警戒度が一瞬で上昇するようになっている。
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マップを利用することで常に敵の位置やアイテムの設置場所、調べるべき場所などが表示される。表示中も時間は止まらないため、巡回経路の把握も可能。
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倒した敵に対してはEキーで引きずったり服を奪ったりといった行動が可能。変装状態では敵に顔を見られなければバレないが、左上の警戒度メーターが最大まで振り切れると変装がバレてしまう。
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変装を見破ったかどうかは敵ごとに個別管理されており、一度見つかって銃撃戦を行った場合でも、遠くから駆けつけた敵は変装を見破れず攻撃してこない。
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持ち運び可能な武器はスナイパーライフルや機関銃・カタナといった大型武器は一種類のみ、ハンドガンなどの小型武器及び特殊アイテムは無制限となっている。
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大型武器は威力が高い反面、懐にしまうことが出来ず変装しての潜入時に持ち込めないなどの欠点がある。武器は道中取得したか否かではなく持ち帰った瞬間に記録されるため、大型武器の収集にはコツが必要。
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小屋に武器がずらりと陳列されるのもあり、如何にレアな武器を持って帰れるかといった武器収集もやりこみの一つとなっている。
評価点
自由度の高い潜入
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複数の選択肢から自分にあったものを選択するという、シリーズの根幹を担う要素はしっかりと維持されている。
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最初の任務であるジュリアーニ邸でも、「花を持ってきた配達員を始末して変装し、正門から入る」「食料配達人に変装してカゴに銃を忍ばせ、そのままキッチンへと潜入する」「用を足しに来たボディガードを暗殺し、変装して勝手口から進入する」「全てのボディガードを射殺して進む」といった複数の手段を取ることができる。
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基本的にルート解説なしのトライ&エラーであり、後の作品のようなダイアナのアドバイスが聞ける要素はない。しかし完璧な潜入から銃の乱射まで許容範囲は広く、自分のスタイルで依頼をこなす自由度は確保されている。
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前作はターゲットでない敵でも必ず始末しなければならない箇所も多かったが、今作は本格的にステルスゲームとなっている。
金銭システムの廃止
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金を気にせず幾らでも武器を持ち込めるようになった。金を稼ぐための周回は必要なくなり、ストレス要因が軽減された。
最初から貫かれるストーリー
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「ヴィットーリオ神父の救出」という最大の目的が最初にドラマチックに描かれ、暗殺の動機もエージェンシーとの取引という点でメインストーリーと繋がりが保たれている。更に最後にはそれらの依頼が一人の人物に繋がり、衝撃の決闘へと繋がる。
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前作よりもドラマチックかつ一貫したストーリーの採用により、ばらばらな暗殺任務でありながらも状況が分かりやすくなっている。
途中セーブ機能
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回数は限られるものの任意セーブが可能。ここぞという時にセーブし、様々なアプローチによる試行錯誤を楽しむことができる。
非殺傷で無力化可能な装備の導入
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「使えるのは背後の至近距離からのみ」「使用時間に応じた分しか効果がない(いずれ目覚める)」「所持量が少ない上に補充手段なし」など、かなり条件は限定的ではあるが、殺傷せずに敵を無力化できる「クロロホルム」が登場。通常プレイを行う上ではワイヤーの下位互換でしかないが、暗殺対象以外の殺害数が評価に影響するためサイレントアサシンを行う上ではほぼ必須。
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以後シリーズでも非殺傷武器が必ず登場するようになったが、時間経過で無効化されるものは登場していない。
賛否両論点
怪しい日本観
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雪の降る北国の人里離れた山奥に巨大な天守閣(+ハイテク警報機器完備)を建造するヤクザ「ハヤモト(早元)家」が登場。日本人からすれば突拍子もない突っ込みどころ満載のロケーションであるが、ある種のバカゲー要素と取ることもできる。
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もちろん(?)護衛役として忍者も登場するが、これもかなり独特。忍者装束に暗視ゴーグルに銃器(サブマシンガンやスナイパーライフル)と特殊部隊のような恰好。梁の上に潜んで日本刀で奇襲を仕掛けてくる個体もいる。
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変装していても怪しい行動をすればID照合して変装を見破る、戦闘になれば素早いサイドステップで銃弾をかわす等、配置を覚えるまではかなり厄介な敵となっている。
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護衛達は日本語を喋るが、「ヤメー! ヤメ-!」と連呼したり、「バカー!」と叫びながら襲ってくるなど、内容が所々おかしい。
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これは翻訳の問題。それぞれ「Stop!」「you bastard!」の翻訳を「止まれ!」「このクソ野郎」でなく「止め」「馬鹿」にしてしまったせいである。
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もちろん日本人声優も雇われていない。ただ、スタッフロールのボイスキャストを見ると日系二世と思しき名前がチラホラ見られる。そのため海外ゲーに有りがちな「外人が無理矢理日本語を喋って当てている感じ」は無く、実際聞いてみると内容は滅茶苦茶でもイントネーションはかなり日本語に近い。
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世界観が怪しいロケーションや年代的に不穏な空気の漂うロケーション・暗殺対象は他にも多数存在するが、日本の怪しさは際立っている。
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日本以外では、ロシアのサンクトペテルブルグ市街地や古のスパイ映画そっくりの風貌の高官たち、中東のモスクや核武装を企てる中東のテロ組織リーダー「ユセフ・フセイン」、インドの仏教系カルト教団を警護するサブマシンガンで武装した坊主など…。
軍事施設ばかり
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スペック的な都合上、大量の人員を表示することは出来ず、ミッションと無関係な一般人の登場するロケーションは少ない。兵士ばかりが巡回する軍事施設的ロケーションが大半を占めるため、民衆に紛れてミッションをこなす後の作品と比較するとゲーム性はかなり異なる。
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反面、ミッション攻略に関係のない余計な要素が減っているため、一般人を利用する際の試行錯誤はやりやすくなっており、作風には合致しているとも言える。
遅すぎる忍び足
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47の移動は基本的に足音が発生するため、至近距離に接近する際は忍び足になる必要があるが、これが非常に遅い。
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相手が静止していない限り確実に引き離されるほど遅いため、常に移動を続ける敵はもちろん、立ち止まる時間が短い敵も近接で倒すのは困難。
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足音に気づいた相手は立ち止まってそちらを見るので、一応、背後から接近して振り向く首の向きに合わせて47の進行方向をうまくずらせば背後をとれなくはないが、かなり難易度が高い。
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簡単に倒せない敵はそういうものと割り切ってしまえばよいのだが、やはり不評も多く、次回作以降はかなり移動速度が上がっている。
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「ムーンウォーク」と呼ばれるダッシュ直後のスリップを利用したテクニックで解決はできるが、これはこれで使いこなすとゲーム難易度が急激に低くなるという問題児である。
問題点
極端に自由度の低いパズルマップの存在
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ステージ3やステージ4などの序盤に、やたらとプレイヤーを拘束するパズル的なステージが挿入されている。ヒントこそあれど基本的にトライ&エラーであり、原因が分からないまま気付いたら「ミッション失敗」と表示され詰むという状況に頻繁に遭遇する。
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ロシアを舞台としたこれらのステージではランボープレイが不可能だが、その後のステージでは銃火器を利用して片っ端から敵を倒すごり押しが通用する。ゲームバランス的には通常逆であるべきで、やや難易度を高く感じがちな部分。
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ロケーションとしては正しく、ゲームとしてあって悪いものではないが、自由度の高さを求めるとやや面白みに欠ける部分となってしまっている。
やりこみは実質一本道
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ほとんどのマップにおいて最高ランク「サイレントアサシン」を取得するための方法は実質一本道。運要素はあまり絡まないため完璧に把握すれば不可能ではないが、最初から最高ランクを目指すとなると自由度は低くなる。
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後年のシリーズと違い事故死や毒殺がNG、発砲回数にも制約があるなど判定が厳しく、自ずとルートが限られる。
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NPCの行動パターンがルーチンワークではなく、見つからずに殺せるタイミングが一度しかないターゲットも多いため、ステージ開始から即座に無駄なく行動する必要がある。
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もっとも、最高ランク獲得で手に入る武器を利用しなくともミッションの達成自体は容易。このため難易度自体が高いわけではない。
FPS的な視界制御
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現在の一般的なTPSタイトルとは異なり、視点の位置がそのまま47の向いている方向となる。ゲームシステム上、変装しての移動中に敵と顔を合わせないことで警戒度が上がらないようになっているのだが、この「プレイヤーの視界=47の目線」というシステムにより「目線を逸らして潜んでいる間、視界外の敵の姿を見ることが出来ない」という問題が生じている。
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TPSタイトルが自由視界+入力方向移動と肩越し視点武器構え+前後平行移動を別にするようになるのは2005年の『バイオハザード4』の大ヒット以降。それ以前のTPSである本作は設計思想的にはFPSそのままとなっており、現在の作品と比較するとやや不便。
あまりに突拍子のない罠展開
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終盤の展開に関するネタバレのため注意
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ステージ18「終末看護」のクリア直前に、47に似た敵が遠くから銃撃してきてすぐ逃げるが、それを追いかけるといきなり殺害されゲームオーバー。全くヒントが示されないので、気づけというのは無理である。
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ただ、ステージクリア後に黒幕が47を殺そうとしているという展開が判明するので、ストーリーとしては真っ当である。
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ステージ19「サンクトペテルスブルグの罠」に至っては、そのタイトルの通りミッション自体が罠なのだが、ダイアナからの無線や47の独り言などでの説明は無く、罠である事にプレイヤー自身が気付かなくてはならない。
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ステージのマップ構成はステージ2「サンクトペテルスブルグにて」とほぼ同じだが、ステージ2では狙撃銃があった位置に空砲の狙撃銃がある、狙撃可能な位置からターゲットを視認すると書き割りになっているなど、一応は罠だと気付かせるような配置はされている。
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しかし、書き割りになっていることが見えてもイベントは発生せず、クリア条件となるターゲットは不明でターゲットマーカーも同じ位置を示したまま(真のターゲットはマップに表示されない)等、非常に不親切。書き割りそのものに近づいてもなんの反応もない。
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他にも、ターゲットマーカーのある建物に近づこうとすると、いきなり狙撃されて死亡する等、かなり説明不足な点が多い。ステージ1での小部屋突入時などのように、ブリーフィングと異なる状況に遭遇した際にダイアナに連絡を取る場面さえあれば問題なかったのだが。
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総評
より美しいグラフィック、よりドラマチックなストーリー、よりゲームに適応した操作性、より自由度の高いマップ構成により前作から順当にパワーアップした続編。
カジュアルからやりこみまであらゆるゲームプレイを許容する自由度の高い暗殺ミッションは高く評価され、現在も続くシリーズの人気を決定付けた。
後の作品のような攻略ルートの説明といった親切さはまだないものの、シリーズとしては前作よりも初心者向けと言える出来となっている。
購入のハードルは低いため、グラフィックや洋ゲー的な不親切さといったものへの抵抗がなければ遊んで損はない作品と言えるだろう。
余談
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ペトロナスツインタワーステージの一室には、ゲームクリエイターの間でミームとなっているid Softwareのゲーム『Commander Keen』のDopefishが置物として登場している。
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後の作品『HITMAN』にも登場するフグ毒による暗殺は、本作のミッション6が初出。
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このミッションではターゲットとなる早元Jr.が死ぬ直前の会話シーンでの日本語会話が所々笑いを誘う。特にフグ毒に当たった時のセリフは必聴。また、勘違いジャパニーズ世界観にありがちな早元Jr.の怪しいムーブも必見と言える(参考動画)。
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2006年のCERO改定の際に後付けでCERO:Z(18歳以上のみ対象)に指定されたソフトの1つ。同改定で禁止表現に指定された「性器の露出」が含まれているためか、以降廉価版やリマスター版などは日本では一切発売されなくなった。
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2013年に続編2作とセットでHDリマスターが施された『Hitman HD Trilogy』が発売されている。
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元からHDである『BLOOD MONEY』は変化なし。CEROの禁止表現やローカライズ元のバラつきのためか日本未発売。
最終更新:2023年11月27日 16:16