ランディングギア
【らんでぃんぐぎあ】
ジャンル
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フライトシミュレーション
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対応機種
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アーケード
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使用基板
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JCシステム
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販売・開発元
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タイトー
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稼動開始日
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1996年3月中旬
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プレイ人数
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1人
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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多様な飛行機を操縦可能 処理落ちで体感難易度上昇 生々しい墜落描写
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ランディングシリーズ ミッドナイト / トップ / ギア / ハイジャパン
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概要
『ランディングシリーズ』の第3弾。
今作では7種類の飛行機で、それぞれに対応したシチュエーションで飛行する事が出来る所がウリである。
ゲームの進行
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【1】初級か上級かを選択する。それぞれ全4ステージ。
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【2】離陸ステージで操縦する飛行機を選択する。ここで失敗しても着陸ステージには進める。
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【3】着陸ステージで操縦する飛行機を選択する。順番は不問。
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【4】コースアウトせずに速度が0ktになったらクリアー。失敗した場合はコンティニューで続ける事が可能。
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【5】3と4を繰り返し、全4ステージクリアー出来たらエンディング。
登場する飛行機
今作では飛行機と空港の組み合わせは固定である。初級コースはステージセレクトは出来ないため、離陸はプロペラ練習機のみ。
飛行機
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着陸滑走路
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初級
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練習機
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プロペラ機。
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小型ジェット機
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ビジネスジェット。
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水上機
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水陸両用双発プロペラ機。ダム湖に向けて着陸。
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旅客機
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中型機。
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上級
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旅客機
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初級と同じ飛行機を使用するが、 シチュエーションが少し難しい状況となっている。
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大型旅客機
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ボーイング747を模したジャンボジェットを操縦する。
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戦闘機
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空母へ離着陸する。離陸はカタパルト射出ゆえに、 ゲーム中最も離陸ステージが簡単なステージである一方で、 着陸は段違いな難しさと初見殺しを誇る。
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オービター
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離陸ステージが無い唯一のステージ。 スペースシャトルのうち、オービターだけで航行した状態からスタート。 エアブレーキを操作して速度を調整するため、失速が墜落に直結する。 最初にこのステージを選び、無事に着陸出来れば別のステージでの離陸から始まる。
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上級コースではステージセレクトが出来るが、店側の設定でOFFにする事も可能。この場合は離陸は中型旅客機のみ。空母からの戦闘機の離陸は容易にほぼ満点を得られるため、ハイスコア狙いであればステージセレクト設定がOFFの場合は不利になる。
評価点
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多種多様な飛行機が運行できるようになったこと。それに加えて、ビハインドビューで映る固有の3Dグラフィックと固有のコックピットが用意されたことにより、より飛行機を操縦している実感が生まれた。
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機敏になった挙動。全作まではどちらかといえば重い挙動であったため、それらを操縦するハードルをある程度下げることに成功はした。
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前作のトップランディングの「スロットルは実質使わなくてよい」が解消されて、操作が必要になった。
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スロットル操作が重要になった事に加え「時間制限」と「失速」の要素が追加された。本作の難しさは滑走路の座標合わせよりも、「進入速度が速すぎても墜落、遅すぎると失速して墜落、慎重になりすぎるとタイムオーバー」へとなり、トップランディングとの大きな差別化が図られている。
賛否両論点
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デバイスがかなり簡略化されており、操縦桿がサイドスティックになっている。操作のしやすさでいえばもちろん評価点だろうが、雰囲気を楽しむという観点で見れば好みの問題なども大きく絡んでしまうだろう。結果、多種多様の機体を操作出来るようになった反面、小型機も旅客機も、戦闘機もスペースシャトルオービターもサイドスティック操作とハード側に無理を強いている格好に。
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操縦桿の「ミサイル発射ボタンに該当する位置にあるボタン」が視点切り替えボタンである。実際に使ってみると確かに便利ではあるのだが、一例として『アフターバーナーII』などの大型筐体戦闘機ゲームや、家庭用で『エースコンバットシリーズ』などをフライトスティックでやりこんでいる人にとっては、何とも不思議な気持ちになってしまうだろう。
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タイトーの職ゲーはハード面に力を入れる事が多いが、今作ではゲーム内容がハードに妥協を強いた形となっている。
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墜落描写が黒煙を上げて炎上するという、タイトーらしい鬱描写。コックピットビューの場合だとヒビが大量に入る描写があるため、ゲームの雰囲気とのギャップが激しい。
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前作とは違い、着陸してエンジン出力をOFFにすると強力な自動ブレーキがかかるようになったため、まっすぐ着陸さえ出来ていれば滑走路のやや奥のほうに着陸してもオーバーラン事故はほとんど無くなり、良くも悪くもスリルが軽減。
問題点
ゲームバランス
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ゲームバランスは悪く、初級でも着陸タイミングがおざなりにされるなど、やはり不親切。もちろん角度を付けて着陸すれば墜落である。『トップランディング』に存在した着陸した際の補正も無くなっており、姿勢を間違えた時は悲惨である。得点の算出もかなり難しくなっており、ハイスコアを狙うハードルはかなり高い。
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それどころか、今作ではオーバースピードで着陸した際も、墜落として判定されてしまい即黒煙であるため、尚更着陸には細心の注意を払わなくてはならない。特に上級は全ての飛行機の特性にクセがあるため、操作に難儀する上、初見殺しすらも散見される。
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その中でも戦闘機の着陸は「ゲーメストを読んでないと不可能」とまで揶揄される代物であり、そのやり方がなんと「そのままではオーバースピードで着陸不可能であるため、適正な速度へ落とすために大廻りしたうえで着陸させる」というもの。初見でこれに気付いたものは皆無に等しいだろう。
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今でこそインターネットで調べる事が容易ではあるが、最終面のスペースシャトルは「現実のスペースシャトルも地球帰還時の着陸は滑空しかできず、エアブレーキでの減速だけの一発勝負なので、失速防止に着陸時の機首の角度は通常の航空機よりも深い」という前知識が無いと、何がなんだかわからないまま開始直後に即失速&墜落してしまい、いったい何が悪くて失速してしまうのか気付く事が容易には出来ないどころか、研究する気も失せるほど即100円玉が消える。しかし仕組みが一度わかってしまえば、あとはプレイ数を重ねればさほど難しくはないのだが、稼働当時にこれらの知識を知るのは簡単な事ではないだろう。
グラフィック
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特にポリゴンのグラフィックの出来は良くなく、とても1996年のゲームとは思えない。『バーチャレーシング』に軽いテクスチャを貼った様なレベルと言えばわかりやすいか。しかもそれとは違い、処理落ちが多発する為、思い通りに操作する事が難しく、結果的にゲーム全体の難易度も無駄に上がってしまっている。
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とくに画質の一番の問題点は滑走路である。ランディングシリーズに限らずフライトシム全般といえば、遠くに見える滑走路へ向かっていく美しい景色と座標合わせが面白さなのだが、本作は滑走路のグラフィックはモザイクがかかっているかの如く不鮮明かつ実にグニャグニャで、しかも途中まで中心がズレて表示される事もあり目視がいまひとつアテにならない。レーダーの滑走路の中心座標もなぜか少し中心からズレていて計器飛行も難しい。着陸寸前の低高度でようやく滑走路らしくなるという有様で、ゲーム性に明確な悪影響がある上に臨場感が大幅に減ってしまった。
その他
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天候と昼夜は全て固定で、トップランディングにはあったプレイごとに変化する風景の楽しみは無くなった。また、風の要素はほとんどゲーム性に影響を与えていないと言ってよい。
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今作の出来が時代相応と言えるかは微妙であり、仮にも一流大手ゲーム企業のお出しするモノとしては、96年でこれではお世辞にも少々お粗末なものと言われても仕方ないだろう。
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設定でデモサウンドをONにしても専用BGMは無く、タイトルコールも無い。デモプレイではBGM無しでのエンジン音が響くだけなので、デモサウンドはOFFのほうが良い。
総評
操縦出来る飛行機も増え、シチュエーションも今まで以上に増加。
しかしグラフィックの出来の割に頻発する処理落ち、相変わらず難しい箇所がまだ目立つ等、全体的に良作になり損ねた感が強いのもまた事実である。
一方で本作の「難しさ」は初見殺し的な意地悪要素だけと言っても良く、一度タネがわかってしまえば毎回ほぼ確実にクリア自体は出来るようになるのでシリーズで一番簡単ではあるが、ハイスコアにこだわらないのであれば単調で飽きやすく、やり込む理由が無くなってしまうというゲームバランスの悪さを抱えている。
製作スタッフの裏話などは世に出ていないので詳細は不明ではあるが、製作期限に追われて細かいところや演出面が色々と未完成のまま世に出てしまったような印象を受ける。最低でも各ステージの天候と昼夜の変化ぐらいは欲しかったところ。
全体的に作り込みが甘い点が目立ち、よりゲームバランスが洗練されていれば、また評価も変わっていたかもしれないが、操縦性がリアルかどうかはともかく操作性の良さから、ライトユーザーやファミリー向けには、少なくとも初心者コースは「わかりやすいゲーム」と前向きに評価しても良いだろう。
次回作の『ランディングハイジャパン』ではシリーズで最も操作が複雑化&高難易度化したので、カジュアルに楽しみたいなら本作は選択肢としてアリかもしれない。現存数は減りつつあるが、2022年の時点でも稼働しているお店や空港がいくつか確認されているので、もし触れる機会があればぜひ遊んでおこう。
余談
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翌年には本作と『サイドバイサイド』のBGMを収録したサウンドトラック『ランディングギア/サイドバイサイド』がリリースされた。
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CD版は既に廃盤となっているため入手困難だが、配信版はiTunesなどで現在も購入可能。しかしサントラはゲーム音源での収録ではなく、少々アレンジが効いたフルバージョンものとなっている。
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当時直営店や大型施設に設置されていた映像体感筐体「IDEA」で遊べた数少ないゲームでもある。
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「D3-BOS」と同様にゲームもオプションで遊べるというIDEAだったが、遊べたのは確認されたのは本作と『ギャラクティックストーム』『スーパーチェイス』の3作品のみ。その中でもほとんどはギャラクティックストーム、後は同梱の映像ソフトとなかなかお目にかかれなかった。
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この時代のゲームには珍しくフリープレイの設定が存在しない。そのため時間貸し制のゲームコーナーに設置されている筐体には、クレジット用ボタンを付けるために筐体に穴開け加工などがされている場合がある。
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店側で設定できる難易度はイージーからベリーハードの4段階。しかし明確に難易度の変化がわかるのは空母着艦ステージでのスタート位置が変わるぐらいで、他のステージでも、どれもさほど難易度の違いはわかりにくい。ここも造り込みのやや甘い点か。
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さらにベリーハード設定では、スタート時に空母がほぼ目の前の下あたりにいるため、「これは一度大きく旋回しなければならないのでは?」と、むしろ仕組みがバレやすく逆に難易度が下がると言える。
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ちなみに本作は逆側からの着陸が基本的にどのステージでも可能で、スコアもちゃんと得られるという魅せプレイが出来る。しかし滑走路のグラフィックはしていても、本来の滑走路ではない所へは正確に着陸しても墜落となる。
最終更新:2024年12月22日 10:04