ネクタリス

【ねくたりす】

ジャンル シミュレーション

対応機種 PCエンジン
メディア 2MbitHuカード
発売元 ハドソン
発売日 1989年2月9日
定価 5,800円
プレイ人数 1~2人
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2006年12月20日/600Wiiポイント(配信終了)
備考 Windows 95,98でフリーダウンロード版を配信
判定 良作
ポイント シンプルだが奥の深いゲームシステム


あらすじ

21世紀、人類は月にまで進出し、採掘した資源を地球に供給していた。
しかしその資源を巡って大国は対立。中でもガイチ帝国は資源の占有を強く主張した。
2089年4月6日、ついにガイチ帝国は月に軍隊を送り、ほぼ全土を占領してしまった。
月の工場はすべてガイチ帝国の手におち、帝国軍の兵器が次々と生産された。
逆らった人々は全員とらわれ、月面各地の収容所入れられてしまった。
その間にもガイチ帝国は地球攻撃のための最終兵器MOAの発進準備を進めていた
その情報を得た人々は、収容所の脱出をはかった。目指すはMOAの発射基地ベース・ネクタリス。
今、地球の命運はあなたの手に…… (オープニングより)

概要

月面を舞台とした、ターン制のSFウォーシミュレーション。
システムを簡略化し初心者でも遊び易いようになっている。

限定されたユニットで、いかにステージを攻略するかという内容に特化していることから、ウォーシミュレーションというよりは詰め将棋に近い感覚のゲームといえる。


特徴

システム

  • マップはヘックス型(六角マス)で、ステージは全部で16。なおコンティニューはパスワード制となっている。
    • 全てクリアーしエンディングを迎えた後は、マップは同じでユニット数や配置の異なる「裏面」をプレイできる。
    • その他、2人対戦プレイや、隠しコマンドを入力することで、敵軍を操作するモードやCPU同士のプレイを鑑賞するモードも存在する。
  • 自軍(連合軍)のユニットを操作し、敵軍(ガイチ軍)のユニットを壊滅させるか収容所を占領するとステージクリアとなる。逆に自軍のユニットが全滅するか収容所を占領されるとゲームオーバーとなる。

マップ

1ステージにつき、1~4画面分の広さのマップで形成されている。マップには各種地形が設定されており、各軍の収容所とユニットの他、工場が配置されている。

  • 地形
    • 谷、荒地、山脈などユニットによっては進行ができなかったり、通常よりも移動範囲が狭くなる地形が存在する。
    • 地形には「地形効果」があり、戦闘時の防御力に影響を与える。平原や道路は移動しやすい代わりに地形効果もほとんど得られない。
  • 収容所
    • 各軍に一ヶ所ずつ設置されている。敵軍の収容所を占領するとステージクリアーとなるが、自軍の収容所を占領されるとゲームオーバーとなる。
    • 工場と違い、味方の収容所の上に移動してもユニットは格納されず、そのまま守る形となる。ちなみに収容所の地形効果は山脈の次に高い(35%)。
  • 工場
    • 工場にはステージ開始時からユニットが格納されている。自軍と敵軍の他、中立の工場も存在する。
      敵や中立の工場を歩兵で「占領」すると、格納されているユニットも自軍の物にできる。いかに素早く中立工場を占領するかが、勝敗のキーとなるステージも多い。
    • また、自軍の工場にユニットを格納することで、ユニットの受けたダメージを回復できる。
      なお生産という概念はなく、工場等で新たにユニットを製造する事は出来ない。

ユニット

  • 戦場での駒となる兵器ユニット。
    次ステージへの引き継ぎはなく、ステージごとに初期配置されるユニットは固定となっている。先述の通り生産という概念も無いため、「初期配置・初期工場内のユニットの活用」および「中立工場内のユニットの確保」が重要となる。
  • 各ユニットには移動範囲・射程範囲・攻撃力・防御力が設定されており、さらに対地・対空要素も存在する。
    ユニットにはその他にもZOC(範囲効果)の要素があり、敵ユニットの進路を塞いだり、味方を隣接させる「支援効果」や、敵を複数のユニットで囲むことで弱体化させる「包囲効果」といった要素が存在する。
    • ユニットは1編成につき8機で構成されており、これが体力値に該当する。0になるとそのユニットは壊滅となる。自軍の工場に入ることで1ターン経過後に機数を最大まで回復することができる。
    • ユニットは戦闘で経験値を得て能力が強化される。1戦闘毎に星が増え、最大で☆8(表示は大きな☆1つ)まで育つ。なお経験値も次ステージへは持ち越されない。
  • ユニットは主に8種類に分類され、それぞれに特徴がある。
    + ユニット詳細
    • 歩兵ユニットは、唯一工場や基地の占領ができる。基本能力は低いので戦闘には向かない。
      • 主に配備されるのはパワードスーツ歩兵「ムンクス」。たまに攻撃力が高く鈍足な「ダーベック」が加わる。敵を避けて収容所や工場を目指す・山脈(地形効果40%)に篭って敵を引き付けるなど活用法は様々。飛行ユニット以外では谷や山脈を越えられる数少ないユニットでもある。
      • 稀に配備されるバイク兵「ドレイパー」は地上ユニットでは最高の移動力をもつ。但し道路以外では移動力がガタ落ちし、荒地や山脈には入れない。
    • 戦車ユニットは、移動力と攻撃力を兼ね備えた主力兵器。一部を除いて対空戦ができない。
      • 主力だけあって種類も配備数も多め。よく配備されるのは移動力重視の「バイソン」、攻撃力重視の「グリズリー」、防御力重視の「アルマジロ」辺り。
      • 対してガイチ軍は、戦況が進むと更に移動力の高い「スラッガー」、攻防共に高い「モンスター」を投入して来る。
      • 要塞戦車「ギガント」は、滅茶苦茶頑丈で攻撃力も高く、対空攻撃まで出来るという、まさに動く要塞。但し超鈍足(移動力2)なのが欠点で前線に送り込むのも一苦労。
      • 旧式戦車「レネット」は…まあ腐っても戦車なので歩兵よりは戦闘力あるし…。
    • 自走砲ユニットは、射程範囲が広く設定されているが、隣接されると攻撃ができない。また支援効果や包囲効果を得られない。
      • 射程重視の自走砲「ナスホルン」と、攻撃力重視のロケットランチャー車「エストール」が存在。
    • 戦闘機ユニットは、空中を飛び回り高い移動範囲と攻撃力を擁する強力な兵器。ただし地形効果を得ることができない。
      • 連合軍側は主に対地重視の「ジャビィ」と対空専用の「ファルコ」を扱うことになる。他のユニットには対空攻撃が出来ないものも多いため、包囲などにも活用できる。
      • それに対し、ガイチ軍は全方面に隙の無い凶悪な万能戦闘機「ハンター」をバシバシ繰り出して来る。このハンターをいかに捌くかが、1つの課題ともいえる。
    • 対空車両ユニットは、戦闘機に対抗できる地上ユニットの主力。(他の地上ユニットの大部分は対空能力が貧弱or皆無)
      • 対空機銃車「シーカー」は対地対空どちらも可能(但し対地攻撃力は低め)。対空ミサイル車「ホークアイ」は対空型自走砲ユニットというべき存在で、射程範囲が広いが隣接されると無力、対地攻撃力も無い。
    • 軽装車両ユニットは、移動範囲が広く、攻撃後にも移動が可能な唯一のユニット。
      • 対地攻撃力が高い戦闘用バギー「ラビット」、射程2ながら対地間接攻撃が出来るバギー「リンクス」が存在。一撃離脱や、攻撃後に敵後方に回り込んでの包囲など、独特の戦法が取れる。なお貧弱ながら対空攻撃も可能。
    • 輸送ユニットは、移動範囲に特化しており、他のユニットを搭載して遠方へ移動させることを目的としている。輸送ユニットが壊滅すると、搭載されたユニットも壊滅となる。
      • 輸送車両「ミュール」は歩兵並みの攻撃力をもつが、歩兵や設置型ユニットしか運べず、地上ユニットなので谷などを越えられない。一方、輸送航空機「ペリカン」は(先述のギガント含め)ほぼ何でも運べるが全くの非武装。
    • 設置型ユニットは絶大な攻撃力もしくは防御力を持つ兵器。自走できないため輸送ユニットでの運搬が必須で、また再回収も修理もできない。
      • 遠距離砲撃用の野砲「モノケロス」と、進路妨害用の地雷「ヤマアラシ」が存在。

評価点

  • 初心者にも優しいハードルの低さ
    • 初期ステージは、登場するユニットの種類や数も少なく、いわゆるチュートリアル的な内容になっている。また、当時のコンシューマ機には珍しく、ゲーム内にマニュアルが存在するなど、一般的にはハードルが高いウォーシミュレーションを、できる限り初心者にもわかりやすく遊べるように設計されている。
    • 基本的な行動は移動と攻撃のみで、生産の概念もないなど、複雑な要素は極力省かれている。それでいて地形効果や、ZOCの概念を利用した支援効果など、ウォーシミュレーションとしての体裁はしっかり保たれている。
      この手のゲームに不慣れなプレイヤーでも、ハードルの高さを気にする事なくプレイできる点は評価に値する。
  • 絶妙なゲームバランス
    • 上記の通り初心者にも優しい内容ではあるが、ステージが進むにつれて、敵軍の戦闘機ユニットの存在や、中立工場の占領などの要素が増えていく事で、徐々に戦略性を増していくゲームバランスは絶妙といえる。
    • 戦場での駒となるユニットもそれぞれ個性がはっきりしており、明確な下位互換はあまり無い。
      そして、多少弱いユニットでもうまく配置すれば、直接戦闘する味方ユニットを包囲効果や支援効果という形で援護できる。特に敵ユニットを自軍ユニットが囲んだ「包囲効果」による攻撃は、相手の攻撃力・防御力を半減させるという重要な効果がある(敵軍からの攻撃にも同様の効果がある)。
      • そのため、基本的にはある程度一団となっての戦法が基本となるが、中立工場の占領にはスピーディーな単独行動が求められるなど、局面に応じてユニットの個性を活かした戦略が求められる点は、このゲームならではの醍醐味といえる。
      • 「ハンター」や「ギガント」など、単体でのスペックを見たら頭を抱えそうなユニットに対しても、各種効果を活用すれば手持ちユニットで十分に対処可能である。
    • また、上級者向けには前述の通り裏面が存在しており、こちらもパスワードを利用してのプレイが可能なため、初心者から上級者まで幅広い客層が楽しめる内容となっている。
  • 独自の世界観の構築
    • 緊張感のあるオープニングデモや、ゲーム内で各ユニットについての概説が確認できるなど、月面を舞台にしたSFの設定がきちんと構築されており、ゲーム内容をより魅力的なものにしている。
    • ドットによるユニットのデザインは、平易的ながらも各ユニットの個性が十分に表出されており、プレイ感覚を損ねることなく、世界観にも問題なくマッチングしている。
    • BGMやSEもシンプルながら心地よい内容で、ゲームの世界観の構築に十分な役割を果たしている。
      • ゲーム中のBGMは優勢な場面では軽快な、劣勢だと危機感を煽るようなアレンジに切り替わる。不利な開始盤面から押し返し、優勢BGMが流れたときのイケイケ感は演出として際立っている。

賛否両論点

  • 生産や次ステージへの能力の継承といった概念がないため、本格的なウォーシミュレーションを求めるプレイヤーにはやや物足りないかもしれない。もっとも、ハードルの低さを重視している以上は致し方ないともいえる。
  • 戦闘時に攻撃力と防御力に補正がかかる仕様となっているが、その際に加算される乱数が非常に幅広く、またその計算式もやや大雑把。そのため、想定していた戦闘結果に比べて、良い方へも悪い方へも転がりがちになる傾向が多い。
    • 緻密な戦略を重視するウォーシミュレーションにおいては、幅広い乱数補正は邪魔な存在といえるが、運の要素を採り入れることで、ワンパターンな戦略に陥らない仕様であるとも言えなくはない。
    • 防御力はパーセンテージベースで計算されるため、防御力の高いギガント・ヤマアラシなどは地形効果と合わせて100を超えると単体攻撃相手には無敵状態となってしまう。さらに支援効果も合わせると包囲効果による防御力半減をもってしても完全無敵状態にすることも出来てしまう。
      • もっとも、そのような状況になることは滅多に無いが、防御関連の仕様を知らないと苦戦したり、逆に知っていれば優位に進められる場面はそれなりにある。

問題点

  • 敵軍のCPUは行動パターンがやや単調なため、手順を掴んでしまえば、ある程度パターン化した戦略ができてしまうステージも存在する。
  • 発売されたのが1989年である事を考慮すれば致し方ない部分もあるが、敵軍の思考ルーチンはそれなりに時間がかかる他、自軍の操作中は敵軍ユニットの移動範囲が確認できないなど、現代のウォーシミュレーションに比べると、少々見劣りしてしまう箇所はある。

総評

それまで敷居の高さゆえにプレイヤーを選んでいたウォーシミュレーションというジャンルにおいて、システムを簡略化し初心者にも遊べる内容を施しつつ、ZOCによる支援効果や包囲効果といった要素を盛り込むことで、戦略性を損なわない絶妙なゲームバランスを構築した良作といえる。
その後も多くの機種に移植されたり、オリジナルステージを作成して配信が可能になるなど、息の長いシリーズ展開が継続され、今なお根強いファンを有する作品である。


続編・移植など

  • 1992年に、同じ主要スタッフによって作られた精神的続編といえる、スーパーファミコンの『アースライト』が発売された。
  • 1994年には正式な続編となる『ネオ・ネクタリス』がPCエンジン SUPER CD-ROM2で発売された。この作品はオリジナルゲームに加えて『ネクタリス』がそのまま収録されている。
  • 1997年にはWindows 95でフリーダウンロード版が配信された。コンストラクションモードを搭載しており、オリジナルステージを作成・配信することができた上、マップコンテストも開催された。1999年にはWindows 98版もフリーで配信された。
  • 1998年には、プレイステーションとゲームボーイに移植された。いずれもコンストラクションモードが搭載され、PC版のマップコンテスト入賞マップも遊べるようになっている。
    なお、プレイステーション版は、PS3・PSPのゲームアーカイブスで配信されている。
  • 2004年には携帯電話アプリとして移植された。
  • 2009年には、Xbox Liveアーケードで『ネクタリス ミリタリーマッドネス』がリメイクされた。
  • 2010年にはAndroid版がリリースされた。
  • 2020年に発売したPCエンジンminiには、国内版に加え、海外版の『Military Madness』が同時収録されている。

余談

  • ユニットのうち「リンクス」だけは、射程が多少ややこしい事になっている。射程の読み違えで移動後に攻撃し損ねたりしないよう注意が必要。
    • リンクスの対地攻撃は射程2だが、他の間接攻撃ユニットと同様に隣接マスには攻撃できない。つまり1マス開けた射程2ぴったりの位置にしか攻撃できない。
    • 一方、対空攻撃は射程1。こちらは間接攻撃では無いので注意。
    • なお他のユニットは「対地対空とも同じ射程」「片方しか攻撃出来ない」「全く攻撃できない*1」のいずれかなので迷うことは無いだろう。
  • 最終撃破目標である「MOA」について。
    + ネタバレのため折り畳み
  • PCエンジン版において詳細は不明であったが、プレイステーション版のムービーにて登場した。
    • 双胴の宇宙戦艦のような形をしており、オープニングにてベースネクタリス内で格納されている姿を見ることができる。
    • エンディングでは炎上するベースネクタリスから飛び立とうとするが、最後の締めとして連合軍のバイソンとシーカーの集中砲火を受け、発生した内部爆発の連鎖が全体に達して轟沈した。
    • また、ゲームオーバー時やガイチモードのエンディングにおいても登場し、衛星軌道上にて船体中央から展開された巨大な砲門から、ビームもしくはレーザーを地球に放つ様子が見れる。

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最終更新:2022年09月20日 20:39

*1 ペリカン、ヤマアラシが該当