The Terminator: Future Shock
【ざ たーみねーたー ふゅーちゃー しょっく】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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MS-DOS
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発売元
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Bethesda Softworks
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開発元
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Bethesda Softworks
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発売日
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1995年5月24日
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判定
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良作
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ポイント
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『ターミネーター』FPS第4作 革新的要素を詰め込んだ野心作 やたら狭い描画範囲
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ターミネーターシリーズ
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概要
言わずと知れた傑作SF映画『ターミネーター』シリーズを原作とし、同映画における「未来編」をストーリーの主軸に据えた作品。
『The Terminator』『The Terminator 2029』『The Terminator: Rampage』に続き、一人称視点の『ターミネーター』作品としては4作目となる。
開発・発売はそれまでのFPSシリーズと同様にベセスダが担当。ただし過去作とのストーリー的な繋がりはない。
ストーリー
「審判の日」により、核攻撃で文明社会が終わりを告げた未来。
世界は機械軍隊を率いるAI「スカイネット」により支配され、レジスタンスの抵抗も虚しく人類の多くが殺されるか、あるいは捕らえられていた。
2015年のある日。レジスタンスの攻撃によって収容所から解放された主人公は、瀕死の工作員からレジスタンスへの合流を頼まれる。
間一髪でバギーに乗り込み危険地帯を突破した主人公は、ジョン・コナー率いるレジスタンス本部へと合流。彼らからの依頼を受け、破壊工作を遂行していく。
しかし、レジスタンスを危険視したスカイネットは過去改変によるレジスタンス壊滅を計画。タイムパラドックスに巻き込まれ見たこともない敵に襲われた主人公は、過去の改変を止めるべくスカイネット本拠地へと向かう。
ゲームシステム
操作方法
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前後旋回をアローキーで行い、Q/Wキーで左右平行移動、左Shiftでダッシュ。Spaceでドアの開閉や乗り物への搭乗を行い、Aでジャンプ、Zでしゃがむ。
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Page Up/Dnまたはマウス操作で視点を移動させ、左クリックまたはCtrlで発砲。F1~F4で爆発物を切り替え、Enterで投擲を行う。
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キーコンフィグは完備されており、任意で変更が可能。WASD操作に変更すれば現代的な操作で遊ぶことが出来る。
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Tabキーで付近のマップを3D表示させることができ、回転や拡大縮小を行うことが可能。
ゲーム進行
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人工知能スカイネットの核発射によって壊滅したアメリカの大都市を舞台に、レジスタンスとなり敵を殲滅していくステージクリア式のFPS。
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マップ面積がかなり広く、また入れる家屋も豊富に存在するのが特徴。ビルの内部やガソリンスタンド、アパートといった各種家屋にはドアの前でuseキーを使用することで侵入が可能。
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市街地からビル内部へ侵入→ビルの非常階段を使って屋上へ移動→屋上から通路を伝って隣のビルへ移動→内部から一階に降り、隣の大通りへ、といった形に建物内部と外部が密接に関連している。
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ブリーフィング画面ではミッション内容説明や搭乗する敵の解説などを聴くことが可能。任務は画面右下の無線連絡という形で随時更新されていき、これを頼りに進んでいくことになる。
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登場する敵は自爆ドローンから偵察ドローン、二足歩行メック、VTOL機ハンターキラー、固定砲台、巨大戦車、T-600、T-800などさまざま。プレイヤーはアサルトライフルや機関銃、プラズマライフル、火炎瓶といった各種兵器を利用して敵を殲滅していく。
評価点
フル3Dのマップ・敵
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密度の高いフル3Dマップで荒廃した都市を描いており、ゲーム性の向上や映画の雰囲気の再現といった点は非常に良好。
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放置された車などの破壊可能オブジェクト、ところどころに散らばる遺骸、放射能汚染の深刻なクレーターなど、映画序盤で描かれるあの世界を忠実に再現している。
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敵も全て3Dでグリグリと動き、当時としては極めて立体的な挙動を実現している。ローポリではあるものの、もとから機械勢力のためさほど違和感は感じさせない。
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ハンターキラー墜落時には破片が落下し、落下地点で爆発を引き起こすなど作りこみも徹底している。
マウスエイム採用
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ハンターキラーの迎撃など、マウスエイムによる上下視点移動を駆使した場面が非常に多い。それに合わせて辺り判定もしっかりしており、固定砲台には部位ごとに個別の当たり判定が存在するなど違和感がない。
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地形も立体的となり、上階から吹き抜けを使って下の敵へ攻撃を加えるといった2DFPSでは不可能な芸当も可能に。
乗り物の実装
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機銃を搭載した自動車と、大型のVTOL機であるハンターキラーの二種類が登場。当時としては珍しく、しっかりと操作してマップ上を縦横無尽に移動したり、搭載された装備で敵を攻撃することができる。
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自動車の登場するFPS自体物理演算の普及した現在では当たり前の要素だが、当時は『Shadow Warrior』など例外を除けばほとんど見られない要素であった。
映画登場兵器の再現
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T-800の購入したUZI、警察に配備されていたM16、カイルが奪ったショットガン、レジスタンスの巨大なカメラ付きプラズマライフル、レジスタンス襲撃時にT-800が使用したプラズマキャノン、固定機銃として映っていたM2機関銃、砲台付きトラック、パイプ爆弾など、使用可能兵器は映画の未来編・過去編に登場したものが多い。
賛否両論点
マルチプレイの欠如
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『DOOM II: Hell on Earth』が大ヒットし、賞金を賭けたマッチが白熱していた1995年にありながらもマルチプレイが搭載されておらず、本作を評価したプレイヤーからの主な批判点となった。
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翌年に発売された続編『SKYNET』では、本編にも登場する乗り物を駆使できるマルチプレイが実装され評価された。
デフォルトのキー配置が酷い
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マウス操作に特化したWASD操作が『QUAKE』マルチプレイで発明される前のため、極めて不便なキー配置となっている。ただし上述の通り設定変更はいつでも可能。
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空中を飛行するハンターキラーなどマウスエイム前提の敵が多く登場するためキーボード操作は絶望的だが、かといってデフォルトのキー配置でもまともにプレイできない。洗練されていないキー配置は批判要素となった。
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マウスエイムの概念自体が浸透していなかったのもあり、ビデオゲーム雑誌Next Generationの記者からは「操作が複雑すぎて困る」というレビューが寄せられた。
マップが使いにくい
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周囲一定距離を表示する3Dマップだがその描画範囲がやたら狭く、マップとしての意味を成していない。旋回操作も複雑など使いにくさが目立つ。
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全地形を3D表示できるほどのスペックがなかったと考えれば仕方のない部分ではあるが...
車の乗り心地は良くない
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地形自体がガクガクのローポリであり、なおかつまともな物理演算処理も行われていないため平地以外の乗り心地はかなり悪い。
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車載機銃はそれを補って余りある火力があるため爽快ではあるし、当時のスペックを考えれば仕方のない部分ではあるが...
問題点
描画範囲が狭い
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当時のPCスペックの都合上、意図的に描画範囲はかなり狭く設定されており、一定以上離れると真っ暗闇で何も見えなくなる。
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一応敵の攻撃開始範囲もきちんと見える範囲のみのため、見えないところからの攻撃といったことはあまりない。このため戦闘中にストレス要因となることはあまりない。
弾薬を共有する武器が多い
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「UZI」「M16」「M2機関銃」と「レーザーライフル」「レーザーキャノン」、「プラズマピストル」「プラズマライフル」「プラズマキャノン」の3カテゴリで弾薬が共有されている。未来兵器はともかくUZIとM16、M2機関銃の弾薬が共通なのは突っ込みどころ。
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ただし弾薬配置数は多いため、切れて詰むといったことは起こりにくい。
干渉可能オブジェクトがわかりにくい
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破壊できる車や電磁フェンス、進入できる建物のドアといった要素がわかりにくく、何が壊れるのか把握していないと先に進むのが難しい。
満タンでもアイテムが取得可能
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体力やアーマー、弾薬が上限に達している場合でもアイテムに触れると回収してしまうため、資源が満タンのときにアイテムに触れるとその分ロスとなる。
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物資の所持上限もあまり多くはなく、一通り弾薬が揃うと廃墟の探索の意味がなくなってしまう。
総評
フル3Dで構成された複雑な地形、戦車からVTOL機までフル3Dで立体的に動く敵たち、マウスエイムによる直感的な照準、様々な家屋に侵入できる自由度、さらには広大なマップを乗り物で走破と、1995年発売ながらそれ以降にFPSで普及したさまざまな要素が詰め込まれた野心作。
しかし描画範囲・画質・マップ表示機能といった当時の一般的PCスペック上の問題、洗練されていないキー配置、マルチプレイの欠如などが問題視され、群雄割拠のFPS市場で高い評価を得るには至らなかった。
映画版権タイトルということで移植にも恵まれず続編の『SKYNET』共々3D化の波に埋もれていってしまったが、今日のFPSの形態を見るにその先見の明は正しいものだったと言えるだろう。
本作の様々な要素を実現した画期的なエンジン「XnGine」は、後に『The Elder Scrolls II: Daggerfall』『ESL: Battlespire』『TESA: Redguard』といったTESシリーズを筆頭とする複数のベセスダ製作品に受け継がれていった。
余談
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本作の月は銃で撃ち続けていると落とすことができる。
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本作での「審判の日」の日付は、1999年だった「ターミネーター」、1997年だった「ターミネーター2」とは異なり1995年に設定されている。この年は本作の発売年でもある。このほか、タイムパラドックスの発生により本来2020年以降に開発されるはずのT-800が2015年に出現するなど時系列に部分的な食い違いが発生している。
最終更新:2024年04月03日 17:08