ザ・ビデオキッド

【ざ びでおきっど】

ジャンル アクション
対応機種 Nintendo Switch
Xbox One
プレイステーション4
Windows(Steam)
メディア ダウンロード専売ソフト
発売元 Chorus Worldwide Games(CS機版)
Pixel Trip Studios(Windows版)
開発元 Pixel Trip Studios
配信開始日 【Win】2017年1月31日
【Switch/One】2018年8月30日
【PS4】2018年8月31日
定価 【Win】380円
【Switch/One】500円
【PS4】509円
プレイ人数 1人
セーブデータ 1箇所・オートセーブ方式
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 バカゲー
ポイント 『ペーパーポーイ』風のクォータービューアクション
ビデオ配達という名目の破壊テロ
怒涛のパロディてんこもり


あらすじ

時は80年代。少年は思った。 『働かなきゃ…働いて、ジェシカにプレゼントを買うんだ!』 …そして少年は立派な海賊ビデオ配達人・ビデオキッドに成長した。

ビデオキッドは今日もスケボーでストリートを駆け抜けビデオを配達する。 街には危険がいっぱいだ。ゴールで待つジェシカに会うことはできるだろうか?

概要

イギリス西部のブリストルを拠点にしているPixel Trip Studios開発によるダウンロード専売ソフト。
2017年にWindows版がSteamにて配信開始され、その翌年にCS機版がほぼ同時に配信された。

ジャンルはクォータービューによる強制スクロールアクションゲーム。
アタリのアーケードゲーム『ペーパーボーイ』を、PCやスマホのダウンロードアプリに散見される生き残り型の一人用ゲームに落とし込んだような様式となっている。


ゲームルール

  • ゲームの流れ
    • ステージの奥にいるジェシカの元へとたどり着くのが目的。ステージは1つのみだが、構造に微小のランダム性が含まれる。
      • 主に「テープを投げて物を破壊したり通行人にぶつける」「ジャンプで車等の上に乗る」などの行動をするとスコアが入る。
      • 配置されているコインアイテムを回収したり、赤いポストや家の窓ガラスにテープを投げると後述の買い物に使用できる「お金」が溜まっていく。
      • 時折、強化アイテムも配置されている。取ると一定時間「テープのオート連射」「超加速」「ジャンプ力が極端に高くなる」といった効果が発生する。
      • ステージ終了後はそれまでに稼いだスコア及びステージ到達率が表示される。さらには結果に応じたボーナススコアも入手できる。
    • ステージ開始前にそれまでに稼いだお金を消費して、ショップにてビデオキッドのコスチュームやステージ中に行える特殊リアクションの数々を購入できる。
  • 操作体系
    • 強制スクロールの中で移動・テープ投げ・ジャンプの各操作を行っていく。
      • アナログスティック等でビデオキッドの位置を「左寄り」「中央」「右寄り」のいずれかに移動できる。移動範囲は3箇所限定なため、操作の微調整が効きにくい。
      • ボタンでビデオキッドの左側へとテープを投げる。連射可能で回数制限やペナルティ等はないが、左側以外に投げる操作は行えない。
      • もう一つのボタンでジャンプを行う。障害物を避けたり車等の上に乗るための必須操作。ジャンプ中の左側へのテープ投下も可能。
  • ステージクリアとミス条件について
    • 上記の通り、ミスする事なくステージ奥にいるジェシカの元にたどり着けばクリア。強制スクロールなのでミスさえしなければ確実にクリアできる。
    • ビデオキッドが「通行人や車といった障害物にぶつかる」などで即ゲームオーバー。残機や途中復活などは一切ない。

評価点

  • 分かりやすい操作性とルール
    • ゲームとしては「強制スクロールに流されながら、目の前に迫る障害物等を避けつつ奥へと目指す」という分かりやすいもの。
      • 『ペーパーボーイ』とは違いテープをどのように投げてもペナルティは発生しないので、とりあえずはテープ投げ連射で操作すればほぼ問題はない。
      • 問題点の件もありかなり手強き難易度となっているが、決して理不尽なものではなく、腕前とパターン把握の両面が一致すれば十分クリアできるバランスである。
  • 密度の高いステージ展開
    • ステージの中に様々な仕掛けが所狭しと配置されており、単発ステージとしては密度の濃い面白みあり。
      • 通行人や通行車・障害物に至るまで、先の展開が毎回変化する作り込みよう。似たような素材の使い回しはほとんど見当たらず、常に新鮮味のある展開が待ち構える。
      • バカゲーポイントとして後述するが、パロディキャラがどこにいるかを探す楽しみも含まれている。もっとも、ゲームに集中しながら見つけるのは困難だが…。
  • 味のあるレトロなポリゴン描写とBGM
    • ステージ中に登場するキャラ全般はポリコンの正方形を積み重ねてドット絵風に構成された、いわゆるボクセルで描かれており、独特の味わいが感じられる。
      • 遠目から見ても立方体の塊と分かるほどの粗い外観であり、例えるならば某有名なブロックのおもちゃで作られたものがゲーム内で動くようなもの。
      • 粗いながらもキャラの特色は極めて上手く表現されており、そのデザインセンスは非常に高い。ビデオキッドを筆頭としたキャラの動きも妙なキレがある。
    • ステージ中に流されるレトロポップなBGMもゲームの雰囲気に合っており、これを聴きたいがためにクリアを目指したくなる。

問題点

  • ゲームとしてのボリューム不足感
    • 約4分でクリアできるステージが1つしか収録されておらず、まとまったボリュームは明らかに期待できない。
      • いくらステージの密度が濃いとはいえ、ステージクリアするとそこで終わってしまうというのはさすがに物足りない。ステージが延長するサプライズも特に見当たらず。
    • ステージクリア後の記録がされず、ハイスコアを目指すプレイが行えないのも残念。
      • 一応PS4版ではトロフィー、Windows/One版では実績解除といった記録を残せるシステムが(一応)存在するが、Switch版にはそれすらもないためクリアするだけで終わってしまう。
  • 常時ミス危険の恐怖
    • ビデオキッドの異様なまでの虚弱体質が災いし、その難易度はかなり高い傾向にある。
      • 障害物等がわずかにビデオキッドをかするだけでもアウトという鬼畜仕様で、ステージ全域が死亡フラグまみれという過酷さを乗り越えなければならない。
      • 移動の小回りが利きにくい操作体系や、前兆もないままに一瞬で死亡フラグを踏んでしまいやすい初見殺しの多さも難易度の高さに拍車をかける。
    • 途中復活もできない上にコンティニューすらできないため、ある意味ミス連発でステージをやり直す忍耐力が試されるゲームといえる。
      • ミス即ゲームオーバーやコンティニュー非搭載については公式自らがその点に言及しており、「 怒りのあまりコントローラを投げたり、うっかりテレビを破壊しないようご注意ください。 」などと述べている。
      • また、ミス時には洋画に登場する不良キャラを彷彿とさせる音声によるビデオキッドへの罵声が流れる。英語が理解できるプレイヤーにとっては腹立たしさの追い打ちになるかもしれない。
  • お金の使い道が少ない
    • ショップで購入できる品揃えが少なく、ある程度プレイを繰り返すだけでも買えるものがなくなってしまう。
      • コスチュームやリアクションの種類はあまり多いとはいえず、全部購入した後はお金が溜まるだけとなる。なお、溜められるお金の上限はなぜか多い。

バカゲーポイント

  • ビデオ配達という名目の破壊テロ
    • ビデオキッドは「ポストに配達する」名目でビデオテープを投げているはずだが、実際にやっている事は破壊テロそのものである。
      • 手裏剣の如くテープが連射投棄された先には、豪快な音と共に窓ガラスがバリバリと割られ、周辺の人をひるませる光景が繰り広げられる。
      • これだけドンパチやればお咎めがありそうだが、そんなものは全く発生しない。それどころか、スコアやお金を手に入る推奨行為である。
      • 実際、公式のプレイ動画からして「レッツ破壊」といわんばかりに積極的なテープ投げが行われている始末。完全に確信犯であるのは明確といえる。
      • 一応、序盤に配置されるランダムなイベントの一つとして「女性に絡んでいる不良にビデオテープをぶつけて撃退し、女性に感謝される」と言うヒロイックな行いを見せる事もあるが…。
    • それ以前に海賊ビデオ配達人というビデオキッドの肩書きがおかしい。自ら犯罪行為に足を踏み入れる理由とは…?
      • 後述の様にボクセルグラフィックでなければ確実にアウトであろうギリギリなパロディ満載の作風には、ある意味合致した設定と言える。
  • 治安崩壊の世紀末なステージ舞台
    • 異常なのはビデオキッドの行動だけでなく、ステージ舞台までもが色々とおかしい。明らかに治安国家の風景ではない
      • 一見では普通の住宅街が舞台だが、パトカーや暴走車が絶えず爆走しており、通報待ったなしの変質者がうろついている異様な光景が目につく。
      • そんな異常事態の中で恋人に会うという理由で外出するビデオキッドの行動力がやばい。無防備にステージ奥で待ってくれるジェシカの大胆さも同じくやばい。
    • やはりというか、本作のレーティングはCERO:Bの犯罪アイコン指定がされている。どこをとっても犯罪現場しかないので当然である。
  • 怒涛のパロディてんこ盛り
    • ここまででおわかりの通り、本作そのものが『ペーパーボーイ』のパロディ作としてかなり凝った模倣をしている。もはや言い逃れ不可能といわんばかりの元ネタの再現度の高さもあり、著作権的な意味でトラブルにならないかが心配になるレベル。
      上述の日本語版ページに書かれているあらすじも、原作の日本国内MD版のみに存在するパッケージ裏のキャッチコピーのパロディである。…が、これは序の口。
    • ゲーム内にはペーパーボーイ以外にも有名映画等のパロディネタがこれでもかといわんばかりに詰め込まれており、そういう意味での見所も非常に多い。
      • 一例としては「亀忍者とネズミ師匠」「ホッケーマスクや人形の殺人鬼」「パックなドットイートキャラ」の通行人がいるなど、挙げるときりがない。
      • パロディ対象は1980年代アメリカを意識したものに集中*1しており、若年層のプレイヤーや大半の日本人には馴染みが薄いネタの比率がやや高いのはご愛嬌。
    • ビデオキッドのコスチュームにもパロディネタが含まれており、突っ込みどころがこれまた多い。
      • 蝙蝠ヒーローの敵ピエロ」「be backなシュワ」「セサミな着ぐるみ」などがおり、それらを操作できるのはある意味豪華といえる。 偶に若年層や大半の日本人が置いてけぼりなのも普通にいるが(以下略)。

総評

ビデオテープ配達とは一体何だったのか…?」という疑問を抱かずにはいられない、突っ込みどころのバーゲンセールのといわんばかりのカオス具合が素晴らしい一作。

ゲームとしてのボリュームはかなり小粒なので、本格的なものを期待せずにネタ満載のバカゲーと割り切ってプレイするのが好ましい。幸いにして価格の方も、ボリューム相応程度に手ごろである。


最終更新:2022年07月28日 09:50

*1 タイトル画面でも作品タイトルの下部に「80th edition」と表記されている