地獄少女 澪縁
【じごくしょうじょ みおよすが】
ジャンル
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ミステリーアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション2
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メディア
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DVD-ROM
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発売・開発元
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コンパイルハート
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発売日
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2009年9月17日
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定価(税込)
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7,140円(通常版) 9,240円(限定版)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:C(15歳以上対象)
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セーブデータ
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20箇所
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判定
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なし
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ポイント
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多視点からひとつの物語を読み深める 黒幕が超人すぎる
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概要
地獄をテーマにした復讐劇を描いたオリジナルアニメーション『地獄少女』のゲーム化作品。
本作はアニメの第3期にあたる『地獄少女 三鼎』をベースに、とある山村、媛馬村(ひめうまむら)での連続殺人事件が物語をひもといていく。
原作のおおまかな設定
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地獄少女と地獄流しについて
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地獄少女「閻魔あい」は一種の霊的な存在。他人に強い恨みを持つ人間の前に現れ藁人形を渡す。
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依頼者が藁人形にくくりつけられた赤い糸を解くと、恨まれた対象は即座に地獄に流されこの世から消滅する。
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地獄流しが起こると依頼者の死後の地獄行きも確定する。また1人の人間が2人以上の人間を地獄に流すことはできない。
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閻魔あいと連絡を取るには、強い恨みを抱いて午前0時に「地獄通信」というサイトを検索し、憎い人間の名前を書き込めばいい。
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三藁
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閻魔あいに付き従う妖怪たち。妖怪だけでなく、人間の姿にもなり社会に溶け込むことができる。
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地獄少女が渡す藁人形も、三藁の誰かが変身したものである。
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御影ゆずき
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『地獄少女 三鼎』のキーキャラクター。一人暮らしをしている中学3年生の女子。とある理由から特異体質であり、閻魔あいの見聞きしたものを彼女もまた体感できてしまう。
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本作では神林明日香の家に居候しつつ媛馬村の生活を体感する。媛馬村の中学生たちとも打ち解けることとなる。
あらすじ
御影ゆずきは古い友人である神林明日香から手紙を受け取り、明日香が小さいときに住んでいた「媛馬村」に遊びに来ることを提案される。
媛馬村は古い伝承があり、村に仇なすものを地獄少女「六道るい」が地獄に送るという。村では彼女の仕業とされる行方不明事件が発生していた。しかし村の伝承はゆずきの知っている地獄少女「閻魔あい」とは少し異なっており…。
システム
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基本は、選択肢を時折選んで文章を読み進めるADVゲーとなっている。
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最初は「御影ゆずき」の視点で、媛馬村の生活とそこで起こる事件に対処していくことになる。
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特定の条件を満たすことで、ゆずき以外のキャラ(明日香や中学3年生の友達等)を選び、彼らの視点から物語を追体験できるようになる。
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各キャラのルートは互いに独立しており、選んだ選択肢が別のキャラのルートに影響したりはしない。
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選んだキャラに応じては、地獄通信を利用して誰かの名前を書き込んだり、証拠となるアイテムを回収して必要に応じて突きつけたり、千里眼を使って別の誰かを観察したりといった独自のシステムが組み込まれることがある。
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おまけ
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本編のED到達条件に応じて、「To Hell~地獄少女物語~」というおまけストーリーを見られるようになる。選択肢を選ぶ必要はなくただストーリーを読み進める内容。
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内容は本編に登場したキャラたちが織り成すドタバタ劇。シリアスな本編の雰囲気を根底から覆す内容となっており、閻魔あいのキャラ崩壊も楽しめる。
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タイトルロゴは『To Heart』とかなり似ている。
評価点
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キャラクターの描写
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登場人物は大して多くはないながらも、それぞれの設定や心理状況に関してきちんと掘り下げができている。
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特に最初にプレイすることになる「御影ゆずき」のルートでは、ゆずき本人が村の部外者であることもあり、周りの登場人物の行動の理由までは分からないことがほとんどだが、別の人の視点で見ることで、前日憚が語られたり、心情が述べられたりするなどして初めて判明する事実というものもある。
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ネタバレ注意
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篠崎真弓は、頭の悪いキャラを演じつつも、実は周到に周りの様子をうかがっていることが判明する。
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本作の黒幕も、最初は誰かを殺めることのリスクにおびえているのだが、次第に抵抗がなくなっていくといった心理の推移の描写は上手。
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ワンパターンとならないADVパート
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キャラの個性に応じて、ADVパートでできることも変化する。
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ゆずきには、閻魔あいが上記の藁人形を渡すシーンを見てしまえるので、契約実行を止めさせるかどうかを選ぶような選択肢がよく現れる。
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観察眼の高い中3女子の篠崎歩弓のルートでは、証拠となるアイテムをあつめて適切に会話相手に証拠を突き出すことを求められたりする。
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変り種のシナリオとして、三藁の一人である「一目連」の視点になるルートもある。一目連の千里眼能力を駆使して、村で起こる出来事を垣間見るというルートとなっている。
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その他
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バックログ、既読文章のスキップといった基本的な機能は備わっている。
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全編フルボイスである。
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ゆずきの設定は、かなり原作アニメに忠実なものになっている。アニメのネタバレになるので詳細は伏せるが、ゲーム中では誰もゆずきのことを殺すことができない点も、原作アニメ再現である。
問題点
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原作の設定をある程度知っていないと内容の理解に支障がある
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本来の地獄少女である閻魔あいによる「地獄流し」が、どういう工程で行われるのかの説明が不足している。
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三藁の誰かが藁人形に変身することや、1人の人間が2人以上の人間を地獄送りにできないことも特に作中では説明されていない。
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特に後者の設定を知らないと、本事件の黒幕がなぜ閻魔あいを利用せずに連続殺人しなかったのか?という疑問を発生させかねない。
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物語のボリューム自体は少ない。
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本作で起こる出来事は、恨み合いや疑心暗鬼から3日かけて連続殺人事件が複数件発生したというもの。もちろん連続殺人事件なので深刻な事態とはなっているのだが、時間のスケールとしてみればはかなり小規模。
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キャラひとりごとに発生する選択肢の回数も5回前後であり、エンディングまでのテキスト量も少なめ。
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ゆずきの影が薄い
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彼女は実質媛馬村の部外者であるため、媛馬村の事件へ特に関与はできない。地獄少女の渡してくる藁人形の糸を解かせるか、解かせないように止めるかといった駆け引きぐらいしかできない。
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ゆずき目線のシナリオだと、媛馬村に起きた事件の全貌が分からないほか、逆に媛馬村に住む中学生たちの目線のシナリオだとゆずきがいったい何者なのかまでは分からない。
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黒幕が超人すぎる
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ネタバレ注意
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ゆずきとともに生活する中学生女子のうち誰かが本作の黒幕であり、六道るいに扮して連続殺人を犯している。
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その中学生は、連続殺人を成功させるために、武術をならい非常にするどい観察眼で周囲の人間の状況を把握するのだが、この時点でやや人間離れしている印象は出ている。ルートにもよるが大の大人相手に、相手をパニックに貶めるような心理戦を持ちかけたり、バールを投擲して急所に的確に命中させるなどのアサシン顔負けの技術を披露する。
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身体能力、観察眼だけならまだしも、閻魔あいの地獄通信に書き込まれた名前を把握できるという、御影ゆずきに匹敵する超能力をもっている。そこからものすごい推理力で殺すべき対象を特定してしまうという流れもあるため、シナリオ運びを強引に感じやすい。
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被害者を殺害する前に、被害者の身上を口頭で述べあげる行動をとるのだが、やや演出として過剰なきらいがある。殺すまでの勢いがそがれるほか、場合によっては逃げる猶予になっているようにも見え、やや興ざめに感じられるのではないか。
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ADVゲームとして
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BGMの種類が特段多くない。緊迫したシーンではギターをかき鳴らす曲が使いまわされる。
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キャラの立ち絵のパターンもあまり多くない。
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誤字がまれに含まれる。保証と書くべきところを保障と書いたり、助詞の「に」を2個連ねて書いていたりすることがある。
総評
数日分の出来事を複数人の視点で追っていくというスタイルをとっているため、ADVとしてのボリュームはやや弱め。
物語の黒幕もやや超人過ぎるため、プレイする人によっては気になるところがあるかもしれないが、原作の『地獄少女 三鼎』の設定にかなり忠実な世界観を有したADVである。
最終更新:2023年10月30日 20:21