本ページでは『Syberia』およびその続編『Syberia II』について記述しています。



Syberia

【しべりあ】

ジャンル ポイントクリックADV
対応機種 Windows XP/Vista/7/10
MacOSX(IntelMacのみ)
開発・発売元 Microïds
発売日 2002年1月9日(フランス国内版)
2002年8月9日(欧州)
2002年9月1日(北米)
定価 1,280 円(Steam, Origin*1)
$ 12.99(GOG)
プレイ人数 1人
セーブファイル 4スロット
判定 良作

ストーリー

弁護士のケイト・ウォーカーは、からくり人形の町として栄えていたフランスの小さな町バラディレーンに、工場の買収手続きを進めるためにニューヨークから派遣された。
紆余曲折あって、ケイトは契約相手の行方を捜すためにヨーロッパ中を旅することになる。

概要

往年のポイントクリック形式を取り入れたアドベンチャーゲーム。
3Dグラフィックだが、操作は間接的で、アクション可能な場所をクリックするとケイト・ウォーカーがその場所に移動して各種行動を行うタイプである。

ゲーム内容

  • 概要の通り、アクション可能な場所をクリックするとケイトがその場所に移動してアクションを起こす。ダブルクリックすると走る。
    • ただクリックした通りのアクションをとるだけでなく、とあるアイテムを取るように指示すると「水に濡れていて汚れているので持ちたくないわ」とプレイヤーに反抗することもある。
  • ストーリー分岐はなく、一本道である。
    • バッドエンドもない。*2
  • ケイトは携帯電話を所持しており、ボスに状況を報告したり、あるいは恋人・友人・家族からの電話を受けたりする。
    • 電話の内容から、ゲーム内ではプレイ時間以上の時間が経過していることが窺える。
    • 一部の謎解きでは、携帯電話で外部と連絡することで状況が進展することも。
    • ただ、ストーリー展開的に段々と架かってくる電話が鬱陶しくなってくること請負である。

評価点

  • 凝った演出
    • 時代相応ではあるがPS2レベルのグラフィックで*3、パンフレット内の「博物館所蔵の絵画」の画像などタッチの異なる画像もあるなど、細部まで凝った映像が魅力的である。
    • からくり人形が主産業の街ということで、街中に様々なからくりが施されており、それらを動かすことで話が進むという、世界観とゲームシステムがマッチしている。
    • 無機質なからくり人形との対比のために人間は人間臭く表現されており、工場の庭の手入れをする女中のうんざりした態度など、細やかな表現が行われている。
    • 洞窟近くの風景は麗美で、見ごたえがある。
      • 視点が操作できないのが残念である。
    • 携帯電話の向こう側のN.Y.でも物語が進んでゆく。
    • 日本語訳された手紙などのテクスチャーも手書き風になっており、原作の雰囲気を損なっていない。

賛否両論点

  • 統一感がない
    • 1つ目の町ではカラクリを動かすパズル的な問題が多かったのに対して、2つ目の駅ではしつこい聞き込みによって相手にボロを出させるというゲーム性に変わっており、一貫性がない。
    • いろんな世界観が味わえるという意味では許容されるのではないか。
  • ストーリー的には「前編」
    • 元々開発側はSyberia・SyberiaIIを1本のゲームとしてリリースする構想であったが、ボリュームや開発スケジュールなどの兼ね合いで2本に分割してのリリースとなった。
    • そのため、本作の結末は中途半端なところで唐突に途切れた様な終わり方となっている。作中で重要なキーワード「マンモス」が幾度となく出てくるが、本作では伏線が回収されず、実際に本編に絡んでくるのはIIに入ってからである。
  • N.Y側のごたごたが鬱陶しい。
+ ネタバレにつき折りたたみ。
  • ボスについて
    • 元々工場の買収交渉は終わっており、後は契約書にサインを貰うだけと言うことでケイトが出向いたのだが、到着とほぼ同時に契約の相手方が死亡してしまい、更に交渉時に伏せられていたが実は数十年前に行方不明になった兄が財産の相続者となっているため、契約書にその兄のサインが必要になってしまう。
    • 本来は戻って仕切り直す案件なのだが、ボスはそのまま調査の続行を命じたため、ケイトの探索行が始まると言うストーリ。
    • 上記のとおり、ケイトにとって(及びボス・クライアントにとっても)不運であっただけであり、か細い手がかりを追ってケイトは出来るだけの調査をしているのだが、当初こそ「頑張ってくれ」と言う態度だったボスが調査が長引いて行くと「なんで見つからないんだ」「見つからないのはお前が悪い」の様な態度になっていき、しまいにはクビも匂わせるような態度の電話となっていく。
      • そもそもケイトは弁護士であって探偵ではないのだが。そして次回作では、逃げ出したケイトを追跡するために探偵を雇っている。 だったら最初から派遣してくれ。
  • 恋人について
    • 上記の経由でヨーロッパを回るハメになったケイトに対して、慰めの言葉をかけるわけでもなく最初からひたすら「なんで戻ってこれないのか」「どうにかならないのか」「なにを考えているのか」と言う電話をかけてくる。
    • 不運とボスからの無茶な命令と恋人からの連絡の板挟みになったケイトは友人にグチをこぼすのだが……
  • 友人について
    • 仕事と恋人からの罵倒についてケイトが友人に電話で愚痴をこぼしたため、友人は上記の恋人に対して「一度文句を言ってあげるわ」、と言うことで直接乗り込むことになるのだが……
+ あっ(察し…
  • 電話で泣きながら「ごめんなさい。彼と寝たの」というトンデモない電話を掛けてくる。
  • 彼は彼でまったくもって反省もせず、帰ってこないお前が悪いんだと開き直りまくり。
  • 母親について
    • 少々若作りな処もあるが、上と違ってケイトに悪意を持っている人物ではない。
    • あるオペラ歌手の追っかけをしており、ケイトは「相互に多少面識がある歌手とファン」程度の関係だと思っていたのだが、ある人物の消息をその歌手が知っていると言う情報を確かめるため母親に対して歌手に連絡をとれないかと電話をかけたところ、「いまベッドの隣で寝ているから聞いてみるわ」と言う 驚愕の 返事をしてくれる。
    • 配偶者はすでにいないため別に不貞ではなく個人の自由恋愛ではあるのだが、それを聞かされる娘からしたら複雑(すぎる)展開である。
  • ヨーロッパ側のストーリーはどこか現実離れした空想的な空気の中で展開されるのに対し、N.Y側は現実的かつ自分が戻れない中でこじれまくるゴタゴタには妙なリアリティがあり、ケイトもプレイヤーもどんどん鬱陶しくなってくる。 謎解きゲームなのに現実を拗らせてどうする。
  • 本作最後の最後におけるケイトの選択については、プレイヤーも「ですよねー」と共感できてしまうので、カタルシスのための伏線としては良くできているとも言えるが。

問題点

  • 不親切な点がある。
    • マウス右クリックでアイテムインベントリーが開くことなどのUIの説明がゲーム内で行われず、不親切である。
    • 一見移動可能に見えないが移動が可能な場所がある。おそらく意図的なものであろうが、プレイヤーに対してフェアとは言えない。

Mac版のみの問題点

  • Windows版は2014年5月に日本語が追加されたが、Mac版は日本語未対応のままである。

総評

値段の割にはボリュームのあるポイントクリックADV。からくりの町だけでなく、駅ごとに異なる世界を見せてくれる。
グラフィックは当時のものとしては美しい部類であり、からくり人形の無機質さと生物の対比が際立っている。

余談

  • タイトルにもなっている「Syberia」は、作中に登場するロシア北部にあるとされる架空の島の名前*4
    • 作中では「サイベリア」と発音されている。
    • ロシアの実在の地名(英語表記)は「Siberia」でスペルが異なる。
    • ただし後述の国内CS版のタイトルは「シベリア」表記である。
  • 2002年 IGN.COMの「Best of 2002: Adventure」部門にて「Readers' Choice」を勝ち取っている(次点は『Silent Hill 2』)。
  • 2003年9月26日にメディアクエストから日本語版が発売されている。
  • 2003年3月にはPS2の欧州版が、同年6月にはXboxの欧州版が発売されている*5
  • 2008年には北米でDS版が発売されている。
  • 2014年12月には欧米にてPS3版と360版が発売されている。
  • 2017年にはSwitch版が発売されている。
  • 2021年にIndieGalaからWindows版のDRMフリー版が無料配布された。なお、このバージョンは英語のみで日本語は無し。
  • 上記の無料配布版やGOG配信のWindows版は Windows10対応を謳っているものの、互換性の問題でプログラムのプロパティをいじらないと起動しない。
    • ゲーム自体は本来32bit(or16bit)カラーであるのに、Windows10の「互換性の問題」のUIのせいで逆に8bitカラーに制限される場合もある。

Syberia II

【しべりあ つー】

ジャンル ポイントクリックADV
対応機種 Windows XP/Vista/7/10
MacOSX(IntelMacのみ)
開発・発売元 Microïds*6
発売日 2004年3月30日
定価 1,280 円(Steam, Origin*7)
$ 12.99(GOG)
プレイ人数 1人
セーブファイル 4スロット
判定 なし

ストーリー(II)

+ 『Syberia』のネタバレとなります

ハンス・ボラルバーグとともにSyberia島を目指す事にしたケイト・ウォーカーは、さらに北へと向かう途中でまたもやトラブルに巻き込まれるのだった。

  • メニュー画面に「前作のあらすじ」のボタンがあり、前作のダイジェストムービーが見れる。
    • しかし、可能であるならば前作からのプレイを強くオススメする。
  • 前作のMapが一部だけ出てくる。そこでは前作で会えなかった人と話せたり、前作で行けなかった区画へ入れる。

概要(II)

  • システムやUI、前作から引き続き登場する物体のテクスチャや操作感まで、ほとんど変わっていない。
    • 前作同様、ストーリー分岐もバッドエンドもない一本道である。
  • 2016年2月に日本語が公式に追加された。
    • 日本語版と英語版はパッケージが異なる。このことがSteam版で起動時にトラブルを生む原因となっている。
      • GOG版はインストール後はGOGコネクト(もしくはGOG Galaxy)を経由せずに起動できるため、Steam版のようなトラブルはない。つまり、ゲーム自身の問題ではなくSteamに起因する問題であるので、本稿での問題点とはしない。
  • パズル系の謎解きの難度が上がっている。
    • 問題点で後述するが、総当たりに近い作業が必要なものもある。

評価点(II)

  • UIが一部改善された
    • 移動できる方向について前作ではやや分かりにくかったが、本作ではアイコンに矢印がついたことでどの方向に移動できるのかが明確になった。
      • それでも、移動可能な部分が分かりにくい場面は多く残されている。
      • 逆に、移動出来そうなのに立ち入れない場所もあって、無駄に試行錯誤してしまうハメになることもある。
    • NPCとの会話メニューで、一度話した内容は選択肢から消えるようになった。話す内容が無くなった人物とは会話メニューすら表示されない。
      • 同じ会話を何度も見るハメにならないので、ゲームが進めやすい一方、ヒントとなる会話も一度しか見られない問題点も。
    • メニュー画面の項目において、おそらく一番使用頻度が高いであろう「ゲームに戻る」が一番上に並べ替えられた。

問題点(II)

  • 前作に比べて全体ボリュームが減っている。
  • サイドストーリーの質が落ちた
    • N.Y.サイドのストーリーが前作に比べて意外性がない。
      • 前作ではN.Y.側のゴタゴタに主人公が愛想を尽かしたためN.Y.に帰らずにSyberiaへ向かうことにしたという動機付けになっていたのだが、今回のサイドストーリーはメインストーリー側にあまり影響を与えていない。
      • というかN.Y.側のサイドストーリーがなくてもメインに全く問題がないと言って良い。主人公は主人公で、N.Y.側に残してきた家族や仕事を心配する様子が全くないのでなおさら。
  • 一部のマップのつながりが分かりづらい。
    • 特に後半で訪れるとある部族の集落はウンザリするほど広く、さらに謎解きの難易度も高いので、位置関係を掴めないままウロウロする羽目になる
  • アイテムやクリックする箇所が見づらい。
    • 前作も一部見づらいアイテムがあったが、今作はさらに悪化している。ギミックは分かっているのにどこをクリックすれば良いか分からない所が増えている。
  • 超人化している主人公。
    • 雪原の絶壁を道具無しで登ったり、雪で覆われた急斜面を棺桶で滑ったりと、まるでトゥームレイダーインディ・ジョーンズばりのアクションを繰り広げる。主人公は野生児や冒険家ではなく、都会育ちのキャリアウーマンのはずだが……。
  • 総当りに近い作業を要求される謎解きがある
    • 宇宙船のコックピットにて通信周波数を特定する際に、コックピットのスイッチ類をほぼ総当たりでOn/Offする必要がある。
    • 機関車の操縦席を操作する際に、ノーヒントでレバーやスイッチをいじくり回す必要がある。ただし、こちらは動かないものについては「動かない」と出るため、試行回数は宇宙船のコックピットよりは少ないが。
    • 魚釣りで、本当にピンポイントにルアーを投げ入れたときだけ喰い付くレア魚を釣り上げる必要がある。
    • こういう総当たりを強要されるフラグ立ては序盤から終盤まで付きまとい、謎解きというよりも試行錯誤を繰り返すだけの作業ゲーになっている。
  • 一部のキャラクターの扱い
    • 前作のような複雑な事情を持つ個性豊かなキャラクターも居るには居るが、最初の町だけであとは動物や言葉の通じない異国の民ばかりが登場する。
    • 前作のキャラクターも再登場するが、協力するだけしてあとの消息は不明。
    • 主人公の相棒である「オスカー」というキャラも影が薄く、前作ファンはモヤモヤと思われる。

総評(II)

前作のその後を描いた続編。前作のファンであれば、その後のストーリーを知るためにプレイしないと気がすまないであろう。
しかし、からくりが減っており、そちらの世界観が好きだった人には物足りないのではないだろうか。
全体のボリュームが減り、風景は雪原ばかりとなり、N.Y.側のストーリーは意外性がないことから、前作に比べると見劣りする出来となってしまっている。

その後の展開

  • 2004年8月にメディアクエストから日本語版が発売されている。
  • 2004年10月に北米でXbox版が、同年11月に欧州でPS2版が発売されている。
  • 2015年に360版と、欧米でPS3版が発売されている。
  • 2017年にSwitch版が発売されている。
  • 2021年にIndieGalaからWindows版のDRMフリー版が無料配布された。なお、このバージョンは英語のみで日本語は無し。
  • 2017年4月に13年振りとなる続編の『Syberia 3』がWindows, MacOS, PS4, XboxOne向けに発売された。

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ADV Windows 2002年
最終更新:2025年02月03日 16:54

*1 Windows版のみ

*2 ただし、唯一のエンディングがなかなかの不幸エンドであるが……

*3 海外ではPC版の発売後にPS2、Xbox版も発売されている。

*4 なお、ポーランド北部にSyberiaという実在の地名があるがこれも関係はない。

*5 Xbox版は同年7月に北米地域でも発売された。

*6 発売当時は"MC2-Microïds"という社名だった。

*7 Windows版のみ