Wolfenstein II: The New Colossus

【うるふぇんしゅたいん つー ざ にゅー ころっさす】

ジャンル FPS


対応機種 Windows(Steam)
プレイステーション4
Xbox One
Nintendo Switch
発売元 ベセスダ・ソフトワークス
開発元 【PS4/One/Win】MachineGames
【Switch】Panic Button
発売日(北米) 2017年10月27日
発売日(日本) 【PS4/One/Win】2017年11月23日
【Switch】2018年7月26日
定価 8,778円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
備考 Switch版はJoy-Con操作に対応
判定 良作
シリーズファンから不評
ポイント 舞台はアメリカ合衆国へ
『The New Order』の直接的続編
より激しくなった演出・戦闘
コメディ・セクシャル要素が増加
多くの要素で好き嫌いが分かれる
Wolfensteinシリーズ


ACHTUNG!!!!!!!
この記事には前作『The New Order』の多くの避けては通れないネタバレ要素があります。

前作をプレイ済み、もしくはネタバレされても構わない方のみ記事をご覧ください。


概要

Wolfenstein: The New Order』(以下『TNO』)『Wolfenstein: The Old Blood』(以下『TOB』)に続き、MachineGamesの手がける『Wolfenstein』シリーズの続編。
ストーリーは『TNO』の直接的な続編となっている*1ため、おおまかな世界観については共通している。

エンジンは『DOOM (2016)』で使われたid tech 6。前作である『TNO』と比べると大きく進歩している。


あらすじ

ナチスが大戦に勝利し、アメリカやヨーロッパが奴らに支配された世界。

1960年のヨーロッパ、デスヘッド基地で因縁の相手であるデスヘッド親衛隊隊長を撃破したBJ・ブラスコヴィッチだったが、デスヘッドの死に際の自爆に巻き込まれ大怪我を負ってしまう。

自らの死を悟ったブラスコヴィッチだったが、クライソーサークルの仲間たちが救助し、懸命な看病のおかげで一命は取り留める。しかし傷は深く、彼は再び深い眠りについてしまう。

5か月後...

ブラスコヴィッチは再び目覚め、仲間との再会を喜ぶ。しかし、そこには強大な力を手に入れた宿敵、フラウ・エンゲルの姿があった。 今、ウィリアム・ジョセフ・"テラービリー"・ブラスコヴィッチの壮絶な戦いが再び幕を開ける…。


ゲームシステム

基本システム

  • 根幹となる部分は前作・前々作と共通。『New Order』にあったステルス、ランボー、両手持ちなどの基本的なシステムの多くは続投しているが、一部の点に変更が見られている。具体例としては
    • 武器のアップグレードシステムが今作では入手した後、どれを強化できるか選択可能。
    • ファーガスルートならレーザークラフトワーク、ワイアットルートならディーゼルクラフトワークを武器として入手可能。
    • 走りながらリロードが出来るように。
    • 両手持ちで別々の武器を選択出来るように。
  • などの要素が登場している。

新要素・パワードスーツ

  • 後半になると手に入るスーパーソルジャーの装備で特別なアクションが出来るようになる。
    • バトルウォーカーなら二段ジャンプのように高い竹馬のようなものを出して、高いところに移動可能。
    • ラムシャックルなら突進して敵に体当たりが出来るようになる。
    • コンストリクターハーネスならば狭いところを移動できるようになる。
      • ...と、様々な強化装備が追加されている。

キャラクター

前作から引き続き登場するメンバー

  • ウィリアム・BJ・"テラービリー"・ブラスコヴィッチ(CV:中田譲治)
    • シリーズから引き続き、本作の主人公。
      • 前作のラストでデスヘッドに不意を突かれた際の大怪我でまともに立てない体になってしまった。
      • 時に詩人のように物事を語る。
      • New Orderで大暴れし過ぎたせいで、ナチスからはテラービリーと呼ばれ恐れられている。
  • アーニャ・オリヴァ(CV:木下紗華)
    • 本作のヒロイン。
      • 本作では双子の子供を妊娠しているものの、流産しかねないかなりアクロバティックな戦闘をして、戦力として活動している*2
      • 大けがで心が折れかけているBJを支えている。
      • 身長は170cm、体重は56kg、年齢は37歳
  • ファーガス・リード(CV:赤城進)
    • 元連合軍の中佐でスコットランド人。
    • ゲーム序盤で彼を生存することを選択したときのみ登場、アメリカの降伏後、彼はレジスタンスのメンバーとして活動する。
      • 序盤で手をフラウに切り落とされていて、代わりに勝手に動く不思議な義手を装着している。
      • 色々と面倒な目に合い、皮肉屋となってしまっている。
      • ワイアットを生存することを選択した場合、登場しない。
      • 身長は173cm、体重は62kg、年齢は52歳。
  • プロブスト・ワイアット3世(CV:四宮豪)
    • 純真で素朴な性格。正義感が強い。アメリカの降伏後、彼はレジスタンスのメンバーとして活動する。
    • ゲーム序盤で彼を生存することを選択した場合登場。
      • 序盤で様々なトラブルなどに合い、心をズタボロにされて、危険な薬物に手を出してしまってい、幻覚や幻聴が聞こえてしまう、そして意味不明な言葉を発したりする。
      • ファーガスを生存することを選択した場合、登場しない。
      • 身長は183cm、体重は80kg、年齢は32歳
  • キャロライン・ベッカー(CV:武田華)
    • レジスタンス組織「クライソーサークル」のリーダー。
    • ダトイシュードのアーマーを纏い、戦える体を手に入れた。
      • ブラスコヴィッチが長い眠りについている間に新型スーパーソルジャーのプロトタイプを盗んできたりと活躍していたが・・・
      • 年齢は40歳。
  • マックス・ハス(CV:アレックス・ソロウィッツ)
    • 頭部が陥没していて、障害を持っている謎多き大男。自分の名前しか話すことができない。
      • 前作では理解できなかった英語が理解できるようになっている。
      • どういうわけかチェスでセットを打ち負かしたり、芸術のセンスが開花している。
      • 体重は181kg、年齢は27歳。
  • セット・ロス(CV:林和良)
    • ユダヤ系秘密結社「ダト・イシュード」の元エンジニア。
    • ブラスコヴィッチの事を尊敬を込めてかサムソンとたまに呼ぶ。
    • New Orderでベリカ収容所に収容されていたところをブラスコヴィッチが助けたのを切っ掛けに、レジスタンスとして活躍する。
    • 本作では組織の技師として様々な発明や開発をしている。
    • リスザルの胴体にシャムネコの頭を移植したショシャナという元猫をペットとして飼っている。
      • 年齢は推定79歳。
  • ボムバテ(CV:佐野康之)
    • 元軍人で黒人。『TNO』でベリカ収容所でセット、ブラスコヴィッチと脱出した後、レジスタンスに加入。
    • マックスの世話係になって手を焼いたり、女癖が悪く三角関係を作ったりしてしまっている。
      • 年齢は38歳。
  • フラウ・エンゲル(CV:片貝薫)
    • 前作から引き続き登場。本作では大将として、BJなどのレジスタンスを退治する任務を受けている。
    • 命に対しての扱いが非常に悪い、いわゆるサイコパスであり、サディストである。
    • また、オウスメルツァーという巨大戦艦も手に入れて、大きく身分が上がったのが分かる。
      • 年齢は55歳、体重は62kg。

新しいキャラクター

  • グレース・ウォーカー(CV:合田絵利)
    • マンハッタンのレジスタンスのリーダー。黒人女性でアフロ。
      • ブラスコヴィッチと合流した後、BJの計画に賛同し、以降クライソーサークルのリーダーとなる。
  • スーパースペッシュ(CV:間宮康弘)
    • グレースの夫で元弁護士。スパイ活動を得意とする。
    • エイリアンとナチス、エリア51が色々繋がったような陰謀論を自分で編み出すなど、常に変なことを考えている。
  • ホートン・ブーン(CV:白熊寛嗣)
    • ニューオーリンズのレジスタンスのリーダー。大の酒好き。
    • 昔から公民権運動活動を行っており、共産主義的な政治思考を持つ。
  • シグルン・エンゲル(CV:三木美)
    • フラウ・エンゲルの娘。ナチスの独裁的な支配に疑問を抱き、ひっそりレジスタンスに手を貸していたが、フラウにばれてしまう。
    • その後、親とのすれ違いが大きくなり、キャロラインが処刑されたときにレジスタンスに入ることを決意する。
      • しかし元ナチスということであまり信頼されず、特にグレースを始めとするマンハッタン出身のメンバーからはひどい扱いを受けている。
  • ホートン・ブーン(CV:白熊寛嗣)
    • ニューオーリンズのレジスタンスのリーダーを務める高齢の男。
      • ナチスの支配前から公民権運動を行っていた。
      • 大の酒好きで、オールド・ホートン・スペシャルという机に床が空いたり、飲んだら大抵の人は気を失う酒を作った。
  • パリス・ジャック(CV:不明)
    • ニューオーリンズのレジスタンスのメンバー。ホートン・ブーンの古い親友。大の音楽好き。
    • クラリネットを常に手にしていて、どこでも音楽を即興で弾ける才能を持つ。
      • 音楽は自分で独学で学んだ。
  • プロフェッサー(CV:品田美穂)
    • ニューオーリンズのレジスタンスのメンバー。
    • ホートン曰く「牛のケツの模様と汚れを見分けられる目の持ち主」らしい。
      • 狙撃が大得意な女性。

評価点

より激しい戦闘

  • id tech 6の恩恵によりより美しくなった爆発エフェクトやグロ表現が美しくなっている。
    • また、全体的な武器の音も重みが増していてより撃っていて楽しく感じられる。

より質の高いサウンドトラック

  • 前作と『DOOM (2016)』で作曲を担当したミック•ゴードンが引き続き担当。
    • Blazko Kill the NazisやReich Between Eyesなどのより激しい戦闘曲により一層プレーヤーを楽しませてくれる。

より一層美しくなったグラフィック

  • 前作から影のディティールやテクスチャがより美しくなった事、エンジンの更新により、より美しい独裁体制の世界を眺める事が出来る。
    • 先述した通り残念ながら日本語版は規制されているもの、グロ表現も前作が全年齢ゲームに見えるほど美しくなっている。
      • 先述の要素にもかかわらず、動作は全体的に前作よりも快適に動作する*3

一新された武器、武器デザイン

  • 前作で登場した武器は本作でピストルを除いてデザインが一新されている。
    • 武器も全体的により格好よく、より強くデザインされている。
      • また、要望の多かったマシーンピストルも完全オリジナルデザインで登場。
    • ナイフはリストラされてしまっているが、代わりにハチェットが登場。
      • 前作のナイフとでは単純性能でナチスを一発で殺せなくなっていたりとやや劣化してしまっているのだが、テイクダウンの演出が手を叩き切る、首をへし折る、足を引きちぎるなどの演出が大幅強化されており、爽快感は前作の比ではない。
  • 機関銃も種類が増加している。
    • 散弾を発射するハンマーライフル、火をまき散らすディーゼルライフル、強力なレーザーを発射するレーザーライフルなどが挙げられる。
      • 中でも、『DOOM』のBFG9000を彷彿とさせるユーバーライフルも登場。超強力な球を発射する。

より演出が派手になった敵

  • 前作では服、顔立ちは違っていてもどれも似た印象で、演出も控えめだったが本作はより派手になっている。
    • 火花を散らして突進してくるスーパーソルジャー、ビームを発射しながら派手に動くユーバーソルジャー、火を吐くパンザァーハウンド*4やレーザーを発射するレーザーハウンドと、どれもより強く、前作から引き続き登場する敵も派手になっている。
      • 雑魚敵もただの銃弾も演出が少し強化されていたり、演出が違ったりと変化もある。

より深まった過激な世界観描写

  • 前作の時点で十分過激だった世界観描写はさらに過激化、とうとう『高い城の男』などに代表される「ナチス文化に染まったアメリカ合衆国」という歴史改変SFモノの定番ロケーションが実現した。
    • 敵として本来は厳しい批判に晒されていたはずのKKK*5がナチスの支配下で我が物顔で闊歩していたり、アメリカの文化をナチスの人種主義にすり替えた皮肉全開のTVショーが放映されたり、かつてのニューヨークが核爆弾によって焦土と化していたりと、前作以上に様変わりした世界を歩いて楽しむことができるようになった。
      • またChange Over Dayという過激なプロパガンダ曲も登場し、よりその世界観を楽しめるようになっている。
      • 挙句の果てには老いた姿の総統閣下ご本人まで登場し、おまけに蹴り殺せる*6。ヒトラーの登場は同シリーズでは『Wolfenstein 3D』以来なんと25年ぶり。

より多彩なアクション

  • 本作では先述したようにストーリーの中盤で3つのうちの1つのアップグレード装備が手に入る。*7
    • どのアクションも多彩で、色々な遊び方を与えてくれる。

前作から増加したやりこみ要素

  • 本作のやりこみ要素のボリュームは少なかった前作より増加し、やりがいも良くなった。
    • 前行ったマップをならにアレンジした形でできるSAS Machineのチャレンジモードがありスコアアタックが楽しめる。
    • ほかにも上級司令官狩りという本編のマップで行けなかった一部のエリアなどを開放した形で行ける要素も追加。
      • ちなみに、すべての司令官を倒すと、新たに隠しエリアが1つ解放される。
  • またエヴァズハンマー号内でキルハウスや射撃場、後述する『WolfStone 3D』などの細かなやりこみ要素や一回死んだらセーブデータ削除の新たな難易度人生一度きりもあり、アイテム取集だけだった前作と比べるとなかなかの物。

相変わらず豊富なロケーション

  • 前作ではなかった廃墟のロケーションや、ナチスに支配された表だけ着飾って活気あふれるように見せてるナチス支配下の街、巨大な軍事施設となったエリア52、そして『TNO』の月に続いて金星など様々なロケーションが新たに登場している。
    • 向上したグラフィックも相まって、その世界を楽しめるようになっている。

賛否両論点

別々の武器の両手持ち

  • 痒い所に手が届くものの、操作性は慣れないうちは特に悪い。
    • 慣れたら強力なのだが、それでも操作性は良いとは言えない。

やや無理矢理で好き嫌いが分かれるストーリー

  • 前々作の時点でほぼ死んだと思われていたBJで、前作も過去編という形で綺麗に終わっていたはずだったが、ややご都合主義な展開で本作に繋がっている。もちろん前作から続きを作るには無茶な展開なので仕方ないとも言えるが...
  • 1961年、しかも戦後ナチスに支配されていたアメリカ合衆国出身*8にしてはやたらマイノリティに対する価値観が現代的すぎて作品世界からは浮いているレジスタンスの面々、突然出てくる後付けとしてのブラスコヴィッチ家ユダヤ人設定*9など、ナチスvsレジスタンスをわかりやすく強調するための対立構造の描写がやや雑な部分も多い。
    • しかし全部冷めるようなストーリー展開であるわけでもなく、熱い展開もあるので決して悪いわけでもない。

キャラクターの扱いの差

+ 詳細について  ※本編エンディングまでのネタバレを含む
  • 前作の主要キャラであるはずのレジスタンスリーダー・キャロラインはごく序盤でいきなり処刑され見せ場が無くなってしまい、グレースの夫であるスーパースペッシュもすぐにフラウ・エンゲルに殺されてしまう。
  • シグルン・エンゲルは「フラウ・エンゲルの娘という立場を捨てて味方になる」というキーパーソンになれそうな背景を持ちながら、ろくなキャラクター像の掘り下げも無いままとにかく不遇な扱いを受け続ける(使い走りにされる、グレース達から終始ナチス呼ばわりされる、三角関係に巻き込まれる等)だけの存在となっている。
    • 一応少しだけイジメに干渉したり慰めの言葉を掛けるシーンもあるものの、どこか余所余所しさが残っておりあまりフォローになっていない。
      • そもそも前作の時点でクラウスという元ナチスのレジスタンスもいたのだが、その存在が忘れられている感もある。一兵卒と大将の娘では立場が違うとは言え、彼と共に戦った経験があるBJ達ならもう少し親身な態度になっても良かったのではないだろうか。
    • 終盤にはとうとう我慢の限界を迎えてグレースに反発、以降は全員から仲間と認められる様になる。しかし特別彼女が成長を見せる様なイベントがあった訳でも無いので、これまた唐突感が否めない。
  • 前作で登場したファーガスは皮肉屋になっていてギャグ系キャラの扱いになっており、一方のワイアットは麻薬に手を出してしまっていて全体的にキャラ崩壊を起こしてしまっている。
    • だがワイアットはエンディングで心を揺さぶる演説を行うシーンがあるので、そこは良い見せ場になっているが、ファーガスは特に無し。
  • 扱いが比較的良いキャラクターも存在する。
    • グレースは全体的に扱いが良く、キャロラインの死後新たなリーダーとなってクライソーサークルの指揮をしている。
    • アーニャは妊娠して、様々な心情の変化や、前作とは違いより激しい戦いをする見せ場が多くなっている。
    • セット・ロスはダトイシュードの技術を用いて技師としてレジスタンスの協力をしている。
    • 前作では見せ場がいまいちだったフラウ・エンゲルは本作では悪役としていい形で活躍できている。
  • このような前作登場・新登場キャラクターの扱いの差なども相まって、『TNO』のキャラクター描写を好んでいたファンからは不評を買っている。

コメディ、セクシャル要素の増えた作風の変化

  • ドアを開けたら中で性行為の最中だった、乳房を義手の誤作動で触ってスケベ扱いされるなどの前作までにはなかったコメディ要素が大幅に増えている。
  • ギャグも全体的に深夜アニメのようなものやコロコロコミックのような稚拙なギャグまでありあまり良くはない。
    • 全体的にそういったギャグシーンで本編の暗い世界観を少し明るくして、新規を受け入れやすくしようと試みていて、IGNからは「シリアスとゴメディがうまく混ざっていて、驚くほどよく構成されている」と絶賛されたのだが、旧作ファンからは「サウスパークとクエンティン・タランティーノの映画を交互に見せられている気分」「ギャグをしたいのかシリアスをしたいのかはっきりしろ」とあまり受け入れられていない。
    • 斬首によって処刑されたBJの首を回収し、スーパーソルジャーの体と結合して復活させるという中盤の展開も人によってはギャグにしか映らないだろう。
  • 元々本作はシリアスさとバイオレンスを強調したシリーズで、どちらかと言えば陰鬱なものを好むプレーヤーを対象にしていたこともこの問題に拍車を掛けている。勿論前作までにも笑えるシーンは存在していたが、ここまで露骨にふざけてはいなかったので困惑されるのは当然だろう。

ラスボス戦の肩透かし感

  • 前作ではしっかりデスヘッドがロボに乗って壮大なラスボス戦があったのだが、本作のボスは フラウエンゲルではない。 代わりに登場するのがDer Zerstörerという巨大ロボット二体。
    • そこまで強くはなく、中ボスと思えてしまう。
  • フラウエンゲルご本人は一応倒すべき相手として出てくるのだが、ハチェットを頭に叩きつけられてあっさりとやられてしまう。

よりSFのみに絞られた世界観描写

  • ただでさえ薄かった『TNO』よりオカルト要素が薄くなり、SF要素を前面に押し出している。
    • そのようなものを好む『TNO』以降のファンにとっては純粋に評価点ではあるのだが、『TNO』で首を傾げ、続く『TOB』を評価していた『Return to Castle Wolfenstein』(以下『RtCW』)以来のファンからはあまり受け入れられていない。『RtCW』は『RtCW』でそのファンタジー要素は賛否両論ではあるのだが…。
    • メカ関連のデザインは独特な格好良さを維持しており、『TNO』のオーバーテクノロジーな雰囲気はしっかりと維持しているため、決してSF作品であるから劣っているという訳ではない。また、ファンタジー路線の『RtCW』『Wolfenstein(2009)』のリブート的位置づけとして前作『TOB』が製作されていたため、それに続いてのマンネリ化は阻止できている。

DLCについて

  • 本作のDLC、Freedom Chroniclesは本編と共通の世界観だが、分離した形であり、本編、前作をクリアしてもしなくても楽しめる内容になっている。
    • だが基本的に一パートごとのボリュームは一つのDLCをクリアするのに1時間という短さでボリューム不足感は否めない。
      • しかもマップはどれも本編のアセットを再利用したもので、新武器の追加もなく値段も少し高めな1000円で『TOB』のような高クオリティな作品を期待してたファンからは落胆の声が上がる。
    • しかし、アメコミ漫画のような丁寧に作られたカットシーンなどもあり、悪いわけでは決してない。

オンライン要素の欠如

  • 本作には前作同様にマルチプレイが存在しない。ただしその分をシングルプレイ部分に充てており、前作同様にシングルの完成度は飛躍的に高まっている。

問題点

前作と比べ、難易度の急上昇したステルス

  • 前作ではある程度大雑把にやっても成功したステルスだが、本作ではそうはいかなくなっている。
    • 敵AIの大幅な改善、隠れる場所の減少、敵の増加などが挙げられる。

性能差に難のある武器バランス

  • 全体的にマシーンピストルもしくはアサルトライフル、ショックハンマーで進めることが多く、ガンプピストーレやレーザークラフトライフル、ディーゼルクラフトワークの出番が少ない傾向にある。
    • 中でも機関銃は本作のスピィーディーな戦闘であまり役に立たないことが多い。

活かし切れてないロケーション

  • 先述した通りロケーションは豊富なのだが、全体的に廃墟と軍事施設に偏り過ぎている。
    • 『TNO』のようなロケーションをフルで活かしたステージを求めていた人には落胆がある。

前作と比べるとイマイチな日本語ローカライズ

  • 前作ではほぼ無修正、修正点も違和感のないように作られているのだが、本作は修正点が多め。
    • まず無修正だったゴア規制に規制が入ってしまうが、どういうわけか一番エグイ死に方をするフラウ・エンゲルの死に様は無修正。
    • そしてギャグシーンとしてのセックスシーンは音声すら消されていて、何をしていたのか、どこが面白いのかわからない程に雑な修正が行われている。幸い本編にはあまり関係のないシーンなので、ストーリー的な影響は無いが。
      • 発売前に公開された日本向けのトレーラー(1:43辺り)では該当シーンの吹き替えがある事が確認出来る為、当初は入れる予定だったものの発売直前になって急遽カットしたものと思われる。
  • また、映画男優のフリをして潜入するミッションがあるのだが、初期バージョンは何故か読めないといけないところの言語は中国語。
    • 後々のアップデートで修正された模様。
  • 日本語吹き替えの訳はしっかりしており、前作であった字幕とセリフのズレがほとんど解消される、海外版の問題点*10を打ち消すなど評価できる部分もあるが、一方で前作のあらすじでは違うセリフをしゃべっていたり、海外版ではない謎のセリフが入っていたりと違和感のある描写も多い。

総評

高い評価を得た『TNO』の基本は忠実になぞりつつも、よりブッ飛んだ絶望的世界観、よりド派手な視覚的演出、より爽快感のある戦闘といった、前作で評価されたあらゆる要素に更なるアップグレードを施した続編。
少なくない反発を招いた過激なノリも衰えるどころかより過激となり、ファンも納得の超暴力的シューターとなっている。

一方で部分的に見ればストーリーの粗さや薄っぺらさ、武器バランスの悪さなど問題点も少なくない。
特に、『TNO』からのキャラクターの雑な扱いや、『TOB』で復活の兆しを見せていたオカルト要素が完全に失われた点は、前作ファンや『RtCW』ファンからすれば首をかしげざるを得ない部分だろう。
しかし、前作同様にゲーム作品としての作りは非常に丁寧であり、今日では珍しい、高いクオリティのシングルプレイFPSとして多くのプレイヤーから評価された。


余談

  • 本編中には言及のみで済まされるが、一部のプロパガンダ番組、映画、映像がYouTubeで見られる。
    • 『ブリッズメンチ』はドラマ『怪鳥人間バットマン』のパロディであり、『エリートハンス』はフィギュア『GI・ジョー』のパロディ。世界観に沿った皮肉たっぷりの歪んだ演出はもちろん、単純にパロディ動画としても無駄に原作再現度・完成度が高くファン必見。
    • なお、本作の世界では『Wolfenstein 3D』が『Wolfstone 3D』というエリートハンスシリーズのアーケード FPSゲームとして設定されており、本作および『Youngblood』ではミニゲームとして実際にプレイ可能*11
  • 本作のコレクターズエディションの購入特典としてブラスコヴィッチのフィギュア化が行われていた。
    • これは本作のナチスのプロパガンダである『エリートハンス』のノリをイメージしたものであり、フォント、レトロな外箱が物語っている。
      • 着せ替えで、本作のコスチューム、前作『TNO』『TOB』*12のコスチュームにも着せ替えが可能。
      • アクセサリーで、ショックハンマー、ハチェット、マシーンピストル、ディーゼルクラフトワークとレーザークラフトワークがあり、なかなか凝っている。
  • 本作のやりこみ要素である上級司令官狩りだが、一通り司令官を倒すと隠しミッションが発生する。
    + そのミッションはというと…。 ※ネタバレ注意
  • 狭い通路の中にて、暗闇の中でロボ兵やスーパーソルジャーと対峙する。
    • 少し単調でどこかWolfenstein 3Dを彷彿とさせる。
      • 通路をある程度進むと普通のナチス兵が出てくる。
      • そのあと梯子を上ると目的の司令官がいるのだが、その背後には崩れた自由の女神像がある。
  • 本作のドイツ版ではハーケンクロイツが別のマークに置き換えられる恒例の修正に加えて、前述した総統閣下についても特徴的な口髭を削除する措置が取られている。

その後の展開

  • 本作発売の翌年にはSwitchにも移植された。移植担当は同社の『DOOM(2016)』でもSwitch向けの移植を担当したPanic Button。
    • 映像は720p・30fpsとPS4/Oneに比べ劣っている他、DLCも配信されていないが、性能や容量、そして外でも遊べることを考えると十分な出来。
+ Switch版のプレイ映像

  • 2019年8月8日にスピンオフ『Wolfenstein: Youngblood』がPS4/One/Switch/Winで発売された。『II』の19年後を舞台にB.J.ブラスコヴィッチの双子の娘であるジェスとソフが、ナチスに支配されたパリでこれまで以上となる数のナチスを相手に戦う。
    • シリーズ初となるCO-OPプレイと言った新たな要素が多数実装されている。ただしシリーズ恒例の日本語吹き替えは無く、英語音声+日本語字幕のみとなっている。
  • 2018年9月に行われたBethesda SoftworksのPete Hines氏への公式インタビューにおいて、続編となる『Wolfenstein III』は「必ず発売される」と明言された。
    • しかし、具体的な開発状況・対応機種・発売時期に関しての言及は一切無かった上、2021年に開発のMachineGamesが『インディ・ジョーンズ』のゲーム製作に携わることが発表されたため、本シリーズの先行きは不透明な状態となっている。

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FPS Wolfenstein
最終更新:2022年05月15日 09:12

*1 『TOB』は前日譚であり、時系列的には一番過去にあたる。

*2 双子は『Youngblood』で主人公として登場している。

*3 ただし、SSDに保存していればの話だが。

*4 いわゆるメカ犬のこと。

*5 クー・クラックス・クランを意味する。白人至上主義を唱える秘密結社だが、本作ではナチスに味方してしまっている。

*6 これを実行すると取得できるトロフィー/実績まで用意されている。ただし、やった瞬間に周りの兵士に殺されて問答無用でゲームオーバーになってしまうが。

*7 ここで選ばなかった装備も後から入手可能

*8 当然ながら、50~60年代のアメリカ黒人公民権運動は起こっていない。

*9 母親がユダヤ系で、父親はステレオタイプな白人至上主義者の白人。

*10 I'm from Arizonaのパート。シュール過ぎてネタにされたパートだったが、違和感のないように修正されている。

*11 なお、外部ツールでECWolfやWolfStoneExtractなどを使うことでより快適なプレイが可能。

*12 はっきりいって半裸なだけだが。