Wolfenstein

【うるふぇんしゅたいん】

ジャンル FPS
対応機種 Windows
PlayStation3
Xbox360
発売元 Activision
開発元 Raven software
Pi Studios、Endrant Studios(マルチプレイ部分)
発売日 2009年8月18日
判定 なし
ポイント ハブ構造・RPG要素を採用
id Tech 4による画質向上
インパクトに欠け売り上げは低迷
Wolfensteinシリーズ


概要

1992年の『Wolfenstein 3D』から始まるid SoftwareのFPSシリーズの一つ。「Wolfenstein(2009)」と表記される場合もある。
リブート版であった前作『Return to Castle Wolfenstein』の続編として製作されており、世界観も同様にナチス+SF+ファンタジー構成。別次元「ブラックサン」への接続を企むナチスの計画を阻止すべく、OSAのスパイとなって戒厳令の敷かれたオーストリアの村アイゼンシュタットを拠点に任務をこなしていく。
開発は過去にDOOMエンジン(id Tech 1)のダークファンタジーFPSであるHeretic/HexenシリーズやミリタリーFPSの『Soldier of Fortune』等を手がけたRaven Software。エンジンは前作『Return to Castle』のQUAKE3エンジン(id Tech 3)からDOOM3エンジン(id Tech 4)に変更された。


ストーリー

1944年頃、イギリス沿岸から5マイル付近、ナチスの戦艦「ティルピッツ」。

乗船していた将軍の持つ特殊なメダルが、密かに潜入していたある男によって強奪された。その男の名はエージェント「B.J.ブラスコヴィッチ」。かつてハインリッヒ一世を撃破した、イギリスの諜報組織OSAの誇る有能なスパイである。

彼は辛くも搭載されていた水上機の許へ辿りつくが、船員に囲まれ降伏、メダルを取り出す。メダルが無事である事を確かめた艦長が射殺命令を出したその時、ブラスコヴィッチの持っていたメダルは突如光を放ち全ての銃弾を反射、その後衝撃波を放ち、発砲した全員を骨と灰に変える。

ロケットに仕掛けた爆弾が起爆し「ティルピッツ」が沈むなか、ブラスコヴィッチは水上機で脱出。特殊なメダルを手に、イギリスのOSA本部への帰路に着くのだった。

分析の結果、その不思議なメダルには「ナハトソン」という希少鉱石が含まれていることが判明。ナハトソンは「ブラックサン」と呼ばれるもう一つの次元、そして次元と次元の狭間である「ベール」へのアクセスを可能にする、特殊な力を秘めた鉱石だった。

しかし、ナチスはナハトソンが発掘可能なオーストリアの街「アイゼンシュタット」に戒厳令を敷き、希少鉱石の発掘を進めていた。ブラスコヴィッチはこれを阻止べくイゼンシュタットに潜入、地元のレジスタンスと協力し、破壊活動に奔走する。



ゲームシステム

  • FARCRY 2』に似たハブ構造を採用しており、戒厳令の敷かれたオーストリアの村「アイゼンシュタット」を舞台にストーリーを進めて行く。
    • アイゼンシュタットを拠点とするレジスタンスの依頼を受ける→街から抜け出し、待ち合わせ場所へ→目的のエリアへ赴き、任務開始、の繰り返しでストーリーを進めていく。
  • アイゼンシュタットでは武器のアップグレードが行える。改造に必要な金はレジスタンスの依頼を達成することで受け取れる報酬やシークレットを探したりすることで獲得できるが、入手頻度は多いため見逃すと詰むほど極端なバランスにはなっていない。
  • 体力は自動回復、アイアンサイト覗きこみの実装、ダッシュ制、ゆったりとしたゲーム進行など現代的な調整こそ存在するが、武器は同時携行可能、武装の威力は高め、シークレットが豊富など旧作の要素を受け継いだ部分も存在する。
  • 特殊能力「Veil」というシステムが存在し、透視、時間低速化、バリア、攻撃力上昇の4種類の能力が存在する。ベールエナジーを消費して任意に発動することができ、各自のプレイスタイルに合わせて能力を育成して進んでいく方式。
  • 書類を集めることで武器のアップグレードが、「トームズ・オブ・パワー」を集めることでVeilのアップグレードが解禁。このほかメインミッションの進行によって解禁される場合もあり、金やアイテムの収集が大事な要素となっている。全て集めるとアップグレードが無料になるという隠し要素付き。

評価点

進化したグラフィック

  • DOOM 3エンジン(id Tech 4)の改良型が使用されており、QUAKE3エンジン(id Tech 3)を使用していた前作『Return to Castle』と比較するとかなり画質が向上している。アイゼンシュタットの描写などは美しく、前作と比較すると技術的進歩が垣間見られる。
    • 当時の水準で見ると「まぁまぁ」なレベルだが、極端に悪いわけでもないため違和感なく遊ぶことが出来る。NPCや小物、武器の造形も出来は良く、特にSF武器のデザインはレトロフューチャー感が強く秀逸。

破綻しない育成要素

  • Deus Ex』のようなイマーシヴシム的側面を出すため、武器と特殊能力「Veil」は獲得した金を利用した改造が可能となっている。資金獲得の難易度はそれほどでもなく、前作では意味を成さなかったシークレット探しにも意味が生まれた。
    • 武器もそれぞれ特徴で差別化されており、好みの武器を強化することで好みのプレイスタイルで進めることが可能。

現代化による恩恵

  • 前作『Return to Castle』には存在しなかった「覗き込み」動作が利用可能となった。サブマシンガンの単射もより正確に行えるようになり、ブレが酷くまともに照準を合わせられなかった前作と比較するとストレスが少ない。
    • 丁寧な進行ルート表示システムや任務内容表示システム、マップなども実装され、前作のような手探りの探索感はない。探索は快適であり、迷うことによるストレスが発生しない。

しっかり作られているゴア表現

  • 本作を語るときにあまり話題にならないのだが、ゴア表現の出来がしっかりしている点である。
    • 本作のゴア表現は後のWolfenstein: The New OrderWolfenstein II: The New Colossusには及ばないものの、頭が粉々になる、斧で叩いたら手がもげるなどしっかり練られている。
      • モーションに関しては続編よりも凝っている出来であり、ベタな動きではあるが、それらしい動きをやっている。
      • それらの要素は本作の撃ち合いの楽しさをしっかり引き上げてくれる。

問題点

拠点となるアイゼンシュタットの問題

  • 毎回往復する拠点の都市アイゼンシュタット*1なのだが、ナチスとレジスタンスの局地的な抗争が頻発しているため任務を受けても即座に目的地へ向かうことができない。毎回レジスタンスに加勢して戦闘をするのも作業じみてくるため、飽きると邪魔な要素でしかなくなってしまう。
    • 特殊武器の弾薬は拾いにくいのだが、それを購入可能な店の数自体が少ないせいで特殊武器の使い勝手が悪くなってしまっている。せめてもう少し店の数が増えれば特殊武器の出番も増えただろうが...

武器・育成バランスがやや不安定

  • 金で弾薬を購入したり好きな武器を強化可能なのだが、無限に金を稼ぐ手段は存在しない。計画的に強化するという点ではRPG要素に深みを与えているものの、肝心の弾薬補給の面で見ると改造コストが安く道中で容易に弾薬が拾えるサブマシンガンやライフルのコスパがずば抜けて高く、反対に弾薬も強化も高コストかつ弾もあまり落ちていない特殊武器のコスパが悪い。随時使用可能なVeilの強化と平行して行うとどうしても強化資金を節約するプレイスタイルに陥りがちであり、これらシステムのせいでRPG要素があるのにもかかわらず特殊武器を使用してのプレイが採りづらくなってしまっている。
    • 上述の無料アップグレードという隠し要素も発揮されるのは最終盤であり、いずれにせよサブマシンガンとライフルに金をつぎ込むほうが難易度が下がることに変わりはない。しかし、一度クリアすれば金を無限に得られるチートが解禁されるため特殊武器も使い放題なプレイもできる。

否めないおつかい感

  • アイゼンシュタットを拠点に任務地点を往復するため、地形やゲームシステムを覚えるにつれ作業感、おつかい感が強くなってくる。演出や巡回敵の変化などで差別化は図られているものの、終盤になってくると反復のゲーム進行への抵抗感は否めない。

オカルト傾向なシナリオ

  • 前作『Return to Castle』のような取ってつけたオカルトではなく、オーパーツ兵器や特殊能力「Veil」などプレイヤー側が世界観の恩恵に預かれる部分が増えたことは評価点と言える。しかし、やはり『Return to Castle』同様にリブート前の強烈なナチ描写は鳴りを潜めており、過激な作風を望んでいたファンからは受けが悪かった。
    • 特殊能力「Veil」に関しても戦闘補助のお助け機能的側面ばかりで、物語の演出上で重要な要素を占めるかといえばそうでもない。展開も戦争中に1計画を阻止してそのまま終わりであり、ストーリーが純粋に楽しめる内容かというと微妙なところ。

バグの多いマルチプレイ

  • 前作『Return to Castle』で高く評価されたマルチプレイ。今作は前作のSplash Damageではなく、Endrant Studiosが開発を担当したのだが、バグが頻発した上に開発会社のレイオフによってアップデートやバグフィックスが絶望的となった結果、前作『Return to Castle』や『Enemy Territory』のような人気は獲得できずに終わった。

総評

ゲームとして極端に出来の悪い部分が存在するわけではないが、前作『Return to Castle Wolfenstein』と同様に際どいナチス要素を排除してオカルト・ファンタジーに傾倒したことでやや対ナチスFPSとしてのインパクトに欠ける作品となってしまった作品。計画的な育成・利用が必要なRPG形式や特殊能力も『Wolfenstein 3D』を神格化していたファンからは受けが悪く、その結果商業的には失敗に終わった。*2

Zenimax Mediaによる買収の後、開発をMachine gamesが担当し、2014年に発売されたリブート作『Wolfenstein: The New Order』はオカルトから超科学ナチス路線へと回帰したことでファンから高い評価を得るに至ったが、対する本作はSteamはおろかXboxLiveやPSNからも抹消された*3ことでプレイ手段が極めて限られる知る人ぞ知るタイトルとなってしまった。続く『Wolfenstein II: New Corossus』でも公式のタイムラインから外れたことが確定するなど、不遇続きの作品である。


余談

  • 本作に登場するスキンヘッドの狂科学者デスヘッドは、前作『Return to Castle』において黒魔術による怪物「Xクリーチャー」を製造していた科学者。前作で逃走後も本作で暗躍するもののブラスコヴィッチに阻止されるが辛くも生き残り、後の『The New Order』においてはストーリー通してのボスに昇格する。
    • しかし、Machine gamesのものと前作『Return to Castle』から本作までの世界線は異なるため、同姓同名の別人扱いというのが定説となっている。これはMachine games側がファンタジー要素を極力減らす方向でシナリオを作成したことによるものであり、デスヘッドの専門分野も異なっている。
    • 『The New Order』の時点では分からなかったが、続く『New corossus』では本作開始時点で既に死亡していたはずのヒトラーが登場、本作の非正史扱いを決定付けた。
  • 本作に登場する「トーム・オブ・パワー(力の本)」はRaven Softwareによる公式DOOMクローン『Heretic』に初登場したアイテムであり、名前通りプレイヤーの火力を大幅に向上させるアイテムの一つ。

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最終更新:2021年04月09日 22:47

*1 オーストリア東部のブルゲンラント州に実在する都市。

*2 初週の売上が約10万本という結果から、親会社であるActivisonにより本作に関わったRaven Softwareの開発陣(30~35人)がリストラされた。

*3 2014年に突然各プラットフォームの販売ページから削除された。理由については現在も明らかになっていない。