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あしたのジョー

【あしたのじょー】

ジャンル スポーツ(ボクシング)
対応機種 アーケード
発売元 タイトー
開発元 WAVE
稼働開始日 1990年3月
プレイ人数 1人
判定 シリーズファンから不評
ポイント お手軽だが試合運びが単調になるクロスカウンター
エンディングが原作完全無視
少年マガジンシリーズ


概要

「少年マガジン」で昭和43(1968)年初号~昭和48(1973)年21号まで5年4ヶ月にわたり連載されたボクシング漫画の初ゲーム化作品。
また、昭和62(1987)年1月21日に死去した漫画原作の巨匠、梶原一騎氏*1の原作作品としても初のゲーム化である。
梶原氏は本作に関しては「高森朝雄」*2という別名義で書かれているが、本項では同氏の表記は「梶原一騎」で統一する。
プレイヤーはジョーこと矢吹丈となってライバル6人と戦う。


内容

  • 基本的にはアーケード版『Punch-Out!!』に似た、一人称視点に近い画面構成のボクシングゲームで、プレイヤー(ジョー)は常に画面手前で後向きに配置され半透明になっている。
    • 左にジョーの体力バー、右に相手の体力バーがあり、ダメージを受けると減少し、0になるとダウンし、立ち上がると回復する。
      • 体力バーの両端がパンチのゲージになっており、相手とジョーが繰り出したパンチ度合いがわかる。
  • パンチはストレート、フック、アッパー、ボディーの4種類。
    • パンチの種類はレバーとの組み合わせで使い分ける。↑+パンチでストレート、→でフック、←でアッパー、ニュートラルでボディとなる。
    • 左右パンチボタンの同時押しで左右の腕をだらりと下げた、いわゆる「両手ぶらり」の状態になる。
      • クロスカウンターにつなげるための専用のモーションで、相手の動作に合わせてストレートを繰り出すことで後述するクロスカウンターが狙える。
  • 「両手ぶらり」から相手が放ったストレートに合わせてストレートを出すことでクロスカウンターが狙える。
    • 相手によっては、こちらのストレートを受け止めてダブルクロスカウンターで反撃を繰り出してくる。
    • ただし、この「受け止めて」はウルフ金串戦と力石戦でしか発生せず、ほかのキャラクターでは発生しない。
    • 対ウルフ金串の場合は受け止められた後に逆側のストレートを繰り出すことでトリプルクロスカウンターが発生する。
      • 力石は確定でダブルクロスカウンターで返されてしまい発生しない。
    • 低確率だが、一応「両手ぶらり」でなくともクロスカウンターが発生する場合がある。
  • 相手のディフェンスは固く、単純にパンチを連打しているだけではほぼ全てガードされる。
    • ほとんどのキャラは基本的に特定の予備動作の後に得意技を繰り出してくるため、それを躱した後にラッシュで反撃する試合運びになる。
      • この点は『Punch-Out!!』にも通じる。
  • 10カウントを取れれば「KO」、3度ダウンすれば「TKO」*3となる。
    • 1ラウンド3分間で3ラウンド。

対戦相手

  • マンモス西
    • チュートリアル的な対戦相手。大ぶりのアッパーとフックを回避し、ストレートを叩き込め!
  • ウルフ金串
    • このゲームで唯一トリプルクロスカウンターの爽快感が味わえる相手。両手ぶらりからの右ストレートが攻撃の起点だ!
  • 力石徹
    • 伸びあがるようなアッパーは敵ながら見とれてしまうカッコよさ。両手ぶらりからの左クロスカウンターを狙え!
  • カーロス・リベラ
    • 投げキッスの後に続く、フックからの肘打ち(反則)が非常に強力。両手ぶらりからの右クロスカウンターでねじ伏せろ!
  • ハリマオ
    • クロスカウンターが通用(発生)しない強敵。バク転からのアッパーとステップバック後の大ぶりストレートを躱してアゴを狙え!
  • ホセ・メンドーサ
    • ラッシュからのコークスクリューブローはまさに脅威。相手に攻撃させず、両手ぶらりからの左クロスカウンターに全神経を集中させろ!

評価点

  • ビジュアルシーンは、それなりにうまく描けている。
    • 自他問わずダウンが発生すると、決定打がヒットするシーンがズームアップで表示されるのだが、それもリプレイ映像風になかなか凝って描かれている。
      • ダウンを奪ったパンチの種類(ストレート(クロスカウンター含む)、アッパー、フック、ボディ)によって表示される映像が変化するのはなかなか芸が細かい。
      • 90年代のゲームなのでグラフィックは多少粗いが、初期アニメのような雰囲気はちゃんと出ている。
    • 原作、ひいては現実のボクシングらしく派手な流血や顔面変形の描写もある。
      • 対戦相手をダウンさせる度に顔つきが歪んでいく様はなかなかに痛々しいが、リング上での対戦相手のダメージがちゃんと表現されるのはリアルな要素ではある。原作でもこのような表現は多々見られた。
      • 反面ホセに関してはたった一度ダウンしただけでもう白髪化しているのはどうかと思うが…*4
    • ゲームオーバー画面は原作やアニメでのラストシーンである、燃え尽きて静かに眠るジョー。
      • ただ、ホセ以外の試合でのゲームオーバーはアニメや原作に何度も出ている「ジョーが悔しさを噛み締めるシーン」、ホセ戦勝利時のエンディングは旅に出る(アニメ準拠)、負けたなら原作同様に燃え尽きて静かに眠るジョー(ちょうどこのゲームオーバーのシーン)にした方が再現度が高くなっていたのが残念。
  • 操作はレバーによる移動とボタン2つで左右のパンチ。後ろがガードやスウェイバックというのも飲み込みやすい。
    • レバー操作により移動はできるものの、それによる有利不利は特にない。
      • 一応相手をロープ際に追い込むと、パンチのヒット時にロープを背負った描写に変化する。
  • 効果音もなかなか爽快感がある。パンチのヒット音は「バン!」「バン!」と重みのある音で、クロスカウンター発生時には「バンバン!」と連続音に変化する。
    • クロスカウンター発生時には針吹き出しで「CrossCounter」と表示され、ダブル(トリプル)クロスカウンターの場合は「Double(Triple)」が重ねて表示される。
  • 最終戦のホセ・メンドーサは回避やガードなどの防御テクニックが非常に上手く、時折放つコークスクリューブローはまさに一撃必殺でラスボスらしい強さになっている。

賛否両論点

  • 強力なクロスカウンター
    • 代名詞ともいえるクロスカウンターは一部のキャラを除いて、非常に有効な攻撃となる。このため、クロスカウンターに頼りがちになってしまい展開が単調になってしまう。
      • 対力石、ホセ戦では両手ぶらり⇒左クロスカウンターの戦法が非常に有効で、タイミングに慣れればノーダメージでの勝利も難しくない。
    • 対ハリマオ戦ではクロスカウンターが全く狙えない(発生しない)ため、却って強敵となる。
  • スコアの概念が存在しない。
    • 当作品前後にも得点の概念が存在しないアーケードゲームは存在していたが、やはりスコアが無いとリピート性にも欠け、一度クリアしたら満足してそれっきり…という傾向で終わってしまう。
    • ちなみに当作品のランキング形式は ”到達ステージ及び、試合に掛かったタイム” によるものである。
      • タイムを競う(=速くクリアする事が目的の)レースゲームは回転率を上げたいオペレーターの意向に適った仕様であり、あえてそのシステムを採用したと考えれば分からなくもないが、アクションゲームでは単調なゲーム展開になりかねない。

問題点

  • ジョーの代名詞クロスカウンターが搭載されているのはいいが、「必殺」技ではない。
    • 一応、それなりに大きなダメージには違いないが、原作では最低でもダウンを奪ったほどの威力なのに、ゲームではちょっと強いパンチという程度。
    • 相手のパンチを見ながら出すのでわりと簡単だが、これでは全くイメージに合わない。
      • しかもトリプルクロスでさえやっとこゲージの半分程度のダメージ。4倍、12倍とは一体…?
    • どうせなら『Punch-Out!!』の必殺パンチのように、ゲージ制の強力な必殺技にしていればゲームバランス的にも原作再現的にも問題なかったはず。
    • ただし、威力は「必殺」ではないものの、狙いやすさと相手からの反撃の受けにくさから、クロスカウンター狙いの動作になりがちになってしまう。
      • クロスカウンターが発生しなくともストレートを繰り出すことで相手のガード動作を誘えるため、反撃を受けにくい。
    • ストーリーの進行都合で、ノーガードから単発クロスカウンターを狙う基本戦術よりも先に、2戦目のウルフ金串戦でクロスカウンターよりももう1手かかるトリプルクロスカウンターを使わなくてはいけない。ストーリーとしては正しいのだが、ゲームの基本システムや原作(アニメ)を知らないプレイヤーの立場からするとあまりにも不親切な仕様であった。
  • ゲーム中で戦うキャラがあまり似ていない。
    • 当時はこのようなことは珍しくなく、一応特徴らしい点はそこそこ捉えているので妥協できなくもないレベルだが。
  • 名前のスペルミス。
    • ハリマオ(HARIMAU)が「HARIMAO
    • ホセ・メンドーサ(JOSE MENDOZA)が「HOSE MENDOZE
  • BGMを始めとした妙に不気味な雰囲気。
    • アトラクトデモではやけに不穏なBGMが流れ、「あしたのジョー」のタイトルロゴに徐々にヒビが入っていくという謎の演出がある。
    • 試合中のBGMも力石戦・ホセ戦はまだマシなのだが、西戦・カーロス戦とウルフ金串戦・ハリマオ戦のBGMはおよそボクシングという題材には相応しくない、陰気さや冷たさを感じさせる曲調となっている。背景のカクカクとした動作で声援を送る観客のグラフィックも少々不気味。
  • ジョーと西がプロのリングで戦っている(ように見える)滑稽さ。
    • バンタム級のジョーに対して西はヘビー級、階級違いに加えて同じジム所属のため本来は試合が出来ない。加えて、原作中に西とは一度も試合を行ってはいない。
    • リングこそしっかりしているが、実際に背景の観客をよく見ると皆囚人服なので、プロになる前の特等少年院で試合を行っているシチュエーションとなっている(原作ではジョーは力石と最初のボクシング対決を行っており、結果はクロスカウンターによるWKOで引き分けとなっている)。
      • 原作でも少年院でボクシングの院内対抗試合が行われたがジョーと西の試合はなかった。ついでに「マンモス西」とはプロ入りしてからのリングネームで少年院に服役していた当時は本名の西寛一でしかない。
    • どうせ弱い相手と戦うチュートリアル的な試合なら、デビュー戦の村瀬武夫でよかったのでは?
  • 台詞が完全に棒読み。
    • 更にジョーと葉子は声そのものが似てすらいない。
    • 当時は技術未発達による音質の低さから本業の声優を起用しないことは珍しくなかったが、本物に近づける気概すら感じられず、こんなことならいっそのことボイス無しにしたほうがマシなレベル。
  • 力石に勝つと(原作では負けた)死亡エピソードが挿入されるのだが、力石の死を伝える新聞記事と、星空を眺めて彼を思い浮かべるジョーの様子が映し出される中で、ジョーの(棒読みの)絶叫が響き渡るだけという淡白さ。
    • 容量やテンポ重視の観点では致し方ない面もあるが、原作では激闘を終えたばかりの控室で突如始まる悲劇であるからこそドラマが生まれていただけに、新聞記事というタイムラグを感じさせる描写ではあまりにも味気ない。
  • 原作を無視したエンディング。
    • 世界チャンピオンのホセに勝ったジョーが白木葉子と結婚し、これまで戦ってきたボクサー達(死んだ力石を除く)が結婚式に集まった集合写真でスタッフロールという内容になっている。
      • 原作の重い意味を持つ終わり方をそのまま使っても理解されにくいのは否定できないがゲームらしく都合主義的なハッピーエンドを狙ったとしても原作のイメージとはかけ離れすぎている。
      • 詳細は省くがジョーは結婚どころか恋愛や異性に対する興味を抱く描写すらないだけに違和感しかない。

総評

ボクシングゲームとしては遊びやすく爽快感もありまずまず無難な出来。
ただしEDを筆頭に「あしたのジョー」のゲームとしては気になる個所や意見の分かれる要素が散見される。


その後の展開

  • 開発のWAVEはその後も、ネオジオの『あしたのジョー伝説』やスーパーファミコンソフトの『あしたのジョー』を手掛けている。
    • その点からしても、それなりにこだわりを持っていることは見受けられるので「適当なボクシングゲームを作っていたところにたまたま許諾が取れたあしたのジョーを充てた」というガワ変えではないようだ。とはいえ、いずれの作品もゲーム性にはオリジナリティがあまり感じられない(既視感が強い)が…。
      • さすがに本作のエンディングはその後の作品では採用されず、可能な限り原作を意識したものに変わっている。例えばSFC版ではホセに勝利/敗北の2種類のエンディングがあるが、真エンドは敗北ルートと言うこだわりよう。
      • また、会社は違うが、コナミのPS2『あしたのジョー ~真っ白に燃え尽きろ!~』ではまさかの力石生存ルートがあり、ホセ戦に勝利したジョーは「まだ真っ白に燃え尽きられなかった」として力石との本当の最後の勝負に臨み、今度こそ燃え尽きて満足していく。
    • 今作のように、「勝って結婚して幸せにハッピーエンド」は、やはり『あしたのジョー』にはそぐわないのだ。

余談

  • 本作の対戦相手のうち、原作でジョーが純粋にKO勝ちを収めた相手はウルフ金串のみ。
    • マンモス西とは階級差・所属の関係で対決しておらず、力石戦はKO負け、カーロス戦は反則技の応酬の末に無効試合、ハリマオ戦は蹴り・噛み付きなどを繰り出したハリマオの反則負けが宣告された後にジョーが(正当技で)叩きのめし、ホセ戦は判定負けとなっている*5
  • 当時のアーケードゲームとしては珍しくTVCMが放送された。
    • アーケードゲームのTVCMは黎明期の1970年代の時点でも存在していたものの、80年代に風営法が適用された影響で放送出来なくなっていた。だが、89年頃に緩和されたのをきっかけにカプコン*6やタイトーが自社の販促としてCMを流すようになった。
    • 日本国内で最初のアーケードゲーム作品のTVCMはセガの『侍』と言われているが、現時点ではネット上ですら動画は確認されていない。
    • 更に近年になって日本バーリーが1978年に発売した『コスモス』というブロック崩しのCMが発見されており、これが現在確認出来る国内最古のアーケードゲーム作品のTVCMとなっている。
  • WAVE倒産後はコナミが『ボクシングマニア あしたのジョー』のタイトルでアーケードゲーム化しており、他にもPS2やGBAでもあしたのジョーのゲーム化作品をリリースしている。
  • 概要の通り『あしたのジョー』だけでなく梶原一騎氏の原作作品としても初ではあるが、以後も『あしたのジョー』が同氏原作作品で最も多くゲーム化されている。
  • ジョーは本作以前にライバル力石とともに1989年発売のファミコンソフト『名門!第三野球部』で決勝戦の相手「まかしん」の打者として出演している(キャラグラは汎用のものなので名前のみの扱い)。
    • 「何故野球ゲームに?」というツッコミたい所だが、そのチームは文字通りマガジン作品キャラの集まりで『あした天気になあれ』の向太陽や『おそ松くん』のイヤミといった畑違いの面々が並んでいる。
  • ゲーム以外であしたのジョーは2001年9月に奥村遊機(2015年に倒産)からパチンコ化された。
    • それ以降はしばらく途絶えていたが2010年から主にサミー系*7で時折パチンコやパチスロ化されている。
    • またこのうち2010年のパチンコ『びっくりぱちんこCRあしたのジョー』はPS3のパチンコシミュレーションゲーム『びっくりぱちんこ あしたのジョー KYORAKUコレクション Vol.1』でプレイ可能。

最終更新:2024年07月05日 18:21

*1 『あしたのジョー』『巨人の星』以外にも『タイガーマスク』や『空手バカ一代』など無数に手掛け昭和40年代のスポ根漫画ブームの中核となった作家。

*2 本名「高森朝樹」の末尾一文字を変えたもの。この名義は他に『ジャイアント台風』等でも使われている。

*3 実際のボクシングのルールでは、これも「KO」(ファミコン版『Punch-Out!!』にも同じ誤用が存在していた)。因みに「TKO」は一方の選手の劣勢が続いたり何らかのアクシデントが発生した際、リング禍や後遺症を防ぐべくレフェリーが試合を止めた場合やセコンド陣がギブアップを示した場合(通例タオルをリングに投げ入れる)等で使われる。また原作では3度のダウンで決着した試合は1つもない。

*4 実際は最終ラウンドを終えて判定勝ちを聞き、レフェリーに勝ち名乗りをされているところで白髪になった。つまり試合中は常に黒いまま。

*5 アニメではカーロス戦は12ラウンド戦い抜いた末に判定で引分け、ハリマオには普通にKO勝ちした。

*6 「ロストワールド」等CPシステムのゲーム画像をいくつも組み合わせて、商品名は出さない企業CMを行っていた

*7 2010年のパチンコのみ京楽産業製だが、これも開発はサミーとの共同。