あしたのジョー伝説

【あしたのじょーでんせつ】

ジャンル アクション
対応機種 アーケード(MVS)
ネオジオ
発売・開発元 WAVE
稼働開始日 1991年7月
発売日 1991年8月30日
定価 19,800円
プレイ人数 1人
判定 なし
ポイント 無理のあるストーリー改変やおかしな光景も目立つ
一応WAVE系『あしたのジョー』の中では一番原作再現度が高い
少年マガジンシリーズリンク


概要

原作は講談社「少年マガジン」で昭和43(1968)年初号~昭和48(1973)年21号まで5年4ヶ月にわたり連載されたスポ根・ボクシング漫画の象徴的作品。
同作品のゲームは前年3月にアーケードで稼働開始されたタイトー版以来。本作自身は1991年7月からアーケードで導入され、8月に家庭用で発売された。
そのため同作の家庭用ゲームとしては初となる。

タイトー版は完全にリングファイトのボクシングゲームだったが、本作は視点といいシステムといいスポーツゲームというよりはベルトスクロールや格闘のアクションゲームである。


内容

  • 『あしたのジョー』のストーリーをなぞって、数々の相手と戦っていく。
    • 奇数ステージはストリートファイトによるベルトスクロールアクションでメインの敵の他に何人かのザコ敵とも戦う。
    • 偶数ステージは1対1のリングファイトによる格闘アクションゲームになっている。
      • 原作ではリング内外で数回戦っているライバルキャラがいるが、ゲーム中では一度しか戦わない。
  • ストーリー進行は、ステージ間のテキストでのみ語られる形になっている。
    • 特定のステージではクリア時に段平が現れジョーに一言かけて労う。
  • 攻撃はパンチ系のみとボクシングらしさを出してはいるものの完全に体力ゲージによる格闘アクション方式。
    • 体力ゲージは三段に分かれており、それぞれの段を失い切るとダウンするアクションが発生する。
      • リングファイトでもカウントを取られたりすることはなく、普通に相手の体力をすべて削り切れば勝ち。

評価点

  • 多少の改変はあるものの、この当時のゲームにしては原作をしっかり踏襲したゲームになっている。
    • 特に稲垣正平*1、ゴロマキ権藤*2、タイガー尾崎*3といった原作ファンからすればそこそこ有名ながらそれ以外にはマイナーな人物まで取り込んでいる。
  • ダメージ表現のグラフィック描写は細かい。
    • 体力ゲージの横にあるキャラの顔アップはもちろんのこと、メイン画面でのキャラクターの顔まで、ダメージに応じて血で染まったりとしっかり表現できている。
    • また、ダウンにしてもボディーブローで奪ったりするとうつ伏せになるなど、しっかりリアルな表現がされている。
    • ホセに関しては2度ダウンを奪うと白髪化する*4
  • ゲーム中での丹下段平の声はアニメとよく似た声が使われている。
    • 因みに実際にアニメで演じた藤岡重慶氏は本作のアーケード導入と同時期の1991年7月23日に死去しているので本人を起用したとは思えないが、人選はある程度しっかりしていたと言えるだろう。

賛否両論点

  • 原作では2回以上戦った相手との戦いも1回だけになっている。
    • 例えばウルフ金串は、原作でもゲーム同様、プロデビュー前のジョーが控室に殴り込んでクロスカウンターで沈め、それが因縁となってウルフはクロス破りを会得してプロとなったジョーとリングで再戦している。
    • カーロスともまず白木ジムでのスパーリングで一度、公園での私闘(ゲームで使われている部分)、エキジビジョン*5、正式な試合と通算4回もあった。
    • 力石徹に関してはリングに限っても少年院時代の対抗戦、力石の出所直前の時期に練習用リングで行った果し合い、プロのリング(力石の最期となった試合)と3回あり、また喧嘩の形ならこれ以外にさらに2回あり、小競り合いも含めれば計5回は戦っている。
    • ただしゲームとしては、同じ相手と何度も戦うのは冗長気味になるだけなので無難な調整ではある。
  • エンディングはジョーがランニングしている描写をバックにスタッフロール。
    • 原作ラストの名場面「燃え尽きたジョー」が再現されていないのは残念ではあるが、タイトー版のあまりに原作を無視したエンディング(詳細はタイトー版にて)を思えば無難な終わらせ方ではある。
  • 根本はボクシングということもあって、パンチのみの攻撃で戦ってきた相手に絞られている。
    • 例えば最初期の頃のジョーはヤクザ相手に足蹴りだろうが体当りだろうが何でもアリだったが、鑑別所での西との戦いは段平から教わったジャブを忠実に実践に使ったこともあって、ボクシングスタイルの戦いを初めて行った相手でもあった。
    • しかし概要の通りリングファイトだけではなく、ストリートファイトも交えたアクションゲームと考えると、投げや蹴りがない分、単調に感じやすい。

問題点

  • ステージ(エピソード)間にダメージが持ち越される仕様。
    • アーケード稼働前提で作られているせいなのだろうが、ストーリー上の時間軸では数ヶ月~果ては1年以上離れているものもあるので不自然。
  • ジョーの代名詞であるクロスカウンターがまったくフィーチャーされていない。
    • タイトー版では威力こそ必殺技にしては弱いものだったが、発生すると「CROSS COUNTER」と星型吹き出しが出たりとそれなりにフィーチャリングされたが、本作ではそういったものはない。
    • 一応、それに該当するパンチになればダウンを奪える大ダメージを与えるが、単純に一般的なアクションゲームをパンチのみで戦っているにすぎない。
  • 西や力石の身長がジョーと大差ない。
    • 基本的には正式なボクシングは体重による階級制なので、敵キャラが似たような体形にはなるのはしょうがない部分ではある。だが力石はジョーとプロのリングで戦いはしたものの、本来の体型からいえばウェルター級並*6でジョーよりも頭1つほど身長で上回る。西に至ってはミドルヘビー級からヘビー級なのでジョーはもとより力石よりも大柄。
  • ストーリーの繋ぎが上記の1人に対し1戦限りのシステムと、無理なくできているとは言い難い。
    • つなぎ方も不自然で、特にウルフ戦前、プロテストに合格したジョーがウルフに喧嘩を売ったとあるが、原作ではジョーの所属する丹下拳闘クラブ(丹下ボクシングジム)が、大高会長(ウルフが所属しているアジア拳闘クラブの会長)をはじめ諸ジムの会長に揃って反対されたため、ジム自体ライセンスが認められずジョーと西のデビューが頓挫した。ジョーが同じバンタム級で新人王になったばかりのウルフを破ることでその力を世間に知らしめて丹下ジムのライセンス公認を認めざるを得ない流れを作ることで、果ては自身のプロデビューの道を開いた(この後にプロテストを受けジョー自身晴れてプロボクサーとなった)。
      • つまり先にプロになっているならばわざわざ喧嘩を売る必要がない。さすがに「稲垣>ウルフ」にはできないのと「奇数ステージがストリートファイト」という都合上仕方ないところもあるが、かなり無理矢理な感が否めない。
    • 力石は少年院で戦ったことがカットされ、少年院での戦いの相手は西になっている(実際に西と戦ったのは少年院前の鑑別所)。
    • ゴロマキ権藤はジョーを尊敬しているため初顔合わせの時は戦おうとはしなかった。権藤は過去の栄光を振り返るだけのウルフを軽蔑して叩きのめし、それを見たジョーが止めに入り、その後も権藤はウルフを罵り続けたことからジョーの怒りを買ったことで叩きのめされた。
      • 後にハリマオ戦前にジョーがその予行演習のために権藤らヤクザの面々をスパーリング相手に招聘し、その時には権藤とも戦っていたので、その前倒しとも考えられるが、明らかにシチュエーションが違う。
    • 原作に準えて後に再戦したエピソードが語られるのはカーロスのみ。それも「ジョーの辛勝」という原作と異なる扱い。単に経緯を語るだけでしかないので原作通り「両者反則の無効試合」または第2期アニメ準拠の「引き分け」扱いにしても何の問題もないので無意味な改変でしかない。
    • このようにゲームでは原作とは整合性を取った都合上、無理な改変もなされているため、キャラゲーとしては再現に問題があり充分とは言えない。
  • 一部珍妙な光景もある。
    • カーロスやハリマオとはストリートファイトステージで戦うのだが、カーロスのマネージャーであるロバートがザコ敵として登場し殴りかかってきたりするのはさすがに原作ブレイクが過ぎる。
      作中でロバートは血の気の多いカーロスがリング外で戦うことをむしろ嫌っていた。その上ロバートが戦っている描写など一度もなかった。
    • 更に、ハリマオ戦では、その取り巻きに使われている白木ジムのスタッフと思わしき男たちまでがジョーに殴りかかってくる。
      体こそ人間とはいえ心は完全に野獣のハリマオがリング外で暴走しないために付き添っているスタッフがジョーを襲うこと自体ありえない。
    • 上記を思えばあまり気にならないが稲垣とはプロテストなのに「FIGHT!!YABUKI」の横断幕やビッグビジョンなど普通にプロのリングというのもシュールな光景。

総評

ボクシングらしいファイトスタイルは取り込めておりボクシングゲームと考えれば出来そのものは悪くはないが、原作を抜きにしてにアクションゲームとして考えると技のバリエーションの少なさが否めない。
『あしたのジョー』のゲームと考えるとクロスカウンターの扱いが地味だったり、対戦相手の関係者が原作の立ち位置無視で揃いも揃ってジョーに殴りかかってきたりと扱いが雑なところがチラホラ見られる。
とはいえ、これでも後述のスーパーファミコン版を含めWAVE開発作品の中では一番原作を再現できていたと言えなくもない。それだけに『あしたのジョー』をボクシングやアクションゲームで再現する難しさを物語っていると言えるだろう。


その後の展開

  • あしたのジョーは1992年12月にスーパーファミコンソフトとして発売された。ケイ・アミューズメントリース発売で、開発は本作同様WAVE。
    • こちらは本作の偶数ステージに近いサイドビューリングファイトのボクシングゲームだが、それだけでファン目線での再現にこだわった結果、ゲームでは勝ったのにイベントの演出で負けになったりするいろいろとおかしなゲームになった。
      またストーリーパートなるものがないため原作を知らない世代にはわけがわからないというどっちつかずなものとなりクソゲーの汚名をほしいままにした。

余談

  • 実は本作はWAVEの3作品の中で一番力石の死の扱いが軽いものでもある。
    • 前述のタイトー版にせよ、ケイ版にせよリングファイトのゲームながら一応、そのためだけに特別なデモが用意されているが本作はストーリーパートで他と同じように語られるのみ。
    • とはいえ上記のエピソードは非常に有名でアニメ名場面の番組で『あしたのジョー』が取り上げられれば、ほぼ確実にそればかりになるので「認知度が充分高いからいちいちデモパートは不要」という判断は無難とも取れる。実際特別なデモが展開されるタイトー版にしてもケイ版にしても充分な再現はできていない。
      • 上記のような番組で力石が死ぬシーンは「最終回」とテロップ表示されることが多々あったが、実際にはアニメ第1期(1970年4月~1971年10月)では全79話中の51話であり、最終どころかやっと後半に入る時期でしかない*7。原作屈指の名シーンであることや、劇場版(1980年3月公開)では本当に力石が死んで終わること、アニメの第2期(1980年10月~1981年9月)は最初は力石戦の後に放浪するジョーから始まることもあって、番組の制作担当者自身が誤解したとも考えられるが、これに限らずその影響で直接アニメを見ていなかった層では「アニメ第1期は力石戦まで」と誤解している人は珍しくない。
最終更新:2022年07月18日 13:53

*1 ジョーのプロテスト時のスパーリング相手

*2 力石との死闘後にボクシングから遠ざかっていた時期のジョーが出会うことになる喧嘩屋

*3 力石との死闘後にボクシングに復帰したジョーが、致命的な弱点を突かれて完全にKO(正しくは段平がタオルを投げ入れた)されるプロ選手

*4 ただし原作で白髪化したのは全ラウンドを終えて判定を聞いて勝ち名乗りを受けている時で試合中はずっと黒いままだったので、正しくは原作再現にはなっていない。タイトー版(こちらは一度のダウンで試合中に白髪化)でも同じことが言える。

*5 8オンスグーロブの4R制で行った試合でアニメではカットされている。

*6 ジョーと戦うためにフェザー級から今も伝説的に語られる減量を経てバンタム級に降りてきたのだが、少年院服役前はウェルター級だった。作中でも「元々フェザー級にしてもギリギリで無理のある体格」と触れられている。因みにこうなったのは原作の梶原一騎氏と作画のちばてつや氏間で起きた見解の違いから力石がジョーよりかなり大きく描かれた作画ミスを辻褄合わせした都合。

*7 ちなみに本当の最終回は原作のカーロス戦(ゴングすら無視してお互いに反則を繰り出しながら、よけようともせず殴り合いを続けた果てに二人とも力尽きて終わる無効試合)の後ジョーが再び旅に出て終わる。