バイオレットと奇妙な世界

【ばいおれっとときみょうなせかい】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 Nintendo Switch
メディア ダウンロード
発売元/開発元 Forever Entertainment
発売日 2019年12月19日
定価 999円
プレイ人数 1人
セーブデータ 20個
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント ひらめきが通用せず、先に進むための方法も説明されない
アイテムの見逃しで詰みやすい

概要

ポーランドで開発された脱出アドベンチャーゲーム。

元は2013年12月にiOS/MacOS/Windows/Linuxでリリースされた『Violett』*1で、その後MacOS/Windows/Linux版は2015年7月に大幅なアップデートが施された『Violett Remastered』として現在配信されている。Switch版はこの『~Remastered』をベースに移植したもので、海外では『~Remastered』のXboxOne/Xbox Series/PS4版も配信されている。

人里離れた不気味な家に引っ越すことになったバイオレットは、これから起こるであろう退屈に憂鬱になっていたのもつかの間、ネズミの穴に光る火花に気がつく。恐る恐る中に入ってみると、そこは現実世界と全く違う場所。現実を超えた不思議な出来事に満ちた世界を冒険し、無事に家に戻ることが出来るだろうか・・・。

奇妙な異世界のデザインは、「不思議の国のアリス」やスペインの画家である「サルバドール・ダリ」から影響を受けている。

システム

  • ゲームの流れ
    • 主人公のバイオレットを操作し、異世界からの脱出を目指す。
    • 舞台となる異世界は、いくつかの部屋に分かれた構造をしており、原則はアイテムを調べたり集めたり、マップ中のギミックを正しく操作する。
    • 先に進むためには、仕掛けをいじって特定の状態にしたり、そこにいる生き物の願いをかなえてあげたりする必要がある。
      • 生き物との会話は「イラストと吹き出し」で行われ文章は一切登場しない。相手の生き物が表示したイラストと同じアイテムを持っていったり、部屋のギミックをとある状態にすることで願いをかなえたことになる。
    • 序盤はとある部屋の奥に隠されているブレスレットの破片のようなものを3つ集めることが目標となる。
    • 中盤以降は、さらに先に進み、ブレスレットにはめ込まれた3つの宝玉を活性化することが目標になる。
      • これらの過程で短い距離だけ空を飛べるようになったり、植物を成長させたり、火の中をくぐれるような能力も身につけられる。
    • 最終盤では、ボスとシューティングゲームで争い倒すことになる。
      • ブレスレットに表示されるゲージのどれかひとつが0になると、ボス戦の直前からやり直し。Aボタンで溜めた火炎弾をボスに4回直撃させると勝利。ボスの攻撃を受けたり、火炎弾を放つことでゲージが低下していく。
      • その他、ゲージを消費して盾となる植物をはやしたりも出来る。
      • ゲージの量は各部屋に散らばっている、青・水色・緑色の宝玉を集めることで強化することができる。
  • コントローラ、画面のタッチのいずれでも操作可能。
  • 「-(マイナス)」ボタンで、調べることが可能な物体・キャラを一括で目印をつけられる。
  • 移動・調査
    • 左スティックで移動。またSwitchの画面をタッチすると、そこまで自動で追従してくる。
    • 右スティックで矢印型のアイコンを動かし、そのアイコンが足のマークになっているところでAボタンを押しても、バイオレットがその足のアイコンに向かって自動で歩いてくる。
    • 生き物に話しかけるには近くにまで歩いていく必要がある。またAボタンではなくYボタンでないと会話できない場合がある。
  • アイテム
    • その場で動かすだけのアイテムと、かばんにしまって別の部屋で使うアイテムの二つのパターンがある。
    • かばんに入れられるアイテムの量に特に制限はない。かばんはXボタンを押すか、右上のかばんのアイコンをタッチすることで開ける。
    • アイテムに干渉するにはある程度近づいている必要があるが、離れたアイテムを取得したり操作することも場合によっては可能。
    • アイテムは、持っているだけで然るべきタイミングで効果発揮するもの、特定の場所でかばんから出して使わなくてはならないものがある。
      • アイテムをかばんから出して使う場合、かばんを開いてアイテム一覧を表示し、そこから目的のアイテムをドラッグの要領で目的の場所に持ってくるという操作が必要。
  • ヒント
    • 各部屋につき、画面右下に4段階まで表示されるヒントが用意されている。
    • 使用することでのペナルティはなく、オプションで非表示にする(使わない)ことも可能。
  • その他
    • ラスボス戦を除いてはダメージを与えてくるギミックは存在せず、制限時間やゲームオーバーの条件はとくにない。
    • コレクション要素として、各部屋で1~2枚、ノートのページを拾うことがある。ノートのページには不思議な世界に住む生き物に関するフレーバーテキストが書かれており、メインメニューの日記から今まで集めたものを閲覧可能である。

評価点

  • 異世界のデザイン
    • 知的な活動を行う昆虫たち、オペラを歌うカエルといった異世界らしさ満載のキャラクターが登場する。メインメニューから見られる日記(フレーバーテキスト)にも力は入っている。
  • 一部、ガイドが丁寧な部分
    • しかるべきタイミングにさしかかると押すべきボタンを常に表示してくれるので、咄嗟の操作方法が判らなくなる自体は軽減されている。
  • タッチ操作、ボタン操作の両方に対応している。
  • ボリュームはなかなかにある。

賛否両論点

  • バタくさいキャラデザイン
    • 不思議な異世界のデザインは、写実的で不思議ではあるがどこかグロテスクでもある。
    • 爬虫類や昆虫、無脊椎動物をモチーフとしたキャラクターが多く、バイオレットのキャラデザも、日本では万人に受けないであろう類のもの。
    • テイストとしては『バンジョーとカズーイの大冒険』のグランチルダのようなイメージ。
  • BGMの主張が強い
    • こちらを悩ませ焦らせるような類のBGMである。印象には残るがパズルを淡々とこなすには邪魔か。
  • セーブシステムについて
    • どこでもセーブできて便利なのだが、セーブすると必ずメインメニューに戻されてしまう。

問題点

  • ゲームの攻略に関して
    • 脱出ゲームの仕様ともいうべき問題かもしれないが、先に進むには何をすべきなのか、クリアするには何をすべきなのか説明してくれない。
    • 舞台が異世界だからか、ギミックや登場人物が考えていることも常識から外れていることが多い。何がどうなって、何故先に進めるようになるのか分からないケースが多い。それでいて、先に進むために必要な行動を答えとして閲覧できる機能がほぼない。画面右下のヒントで答えを教えてくれることはあるが、すべて答えで見られるとは限らず、本当の意味で詰んだら正しい答えが出るまであてずっぽうするしかない。
      • 例としては、蒸気を吹き付けて邪魔してくるポットの気をそらすために蝿を蜜で誘導して巨大なビンに閉じ込める必要があったり、水が流れる樋を特にいわれもなく逆流させると先に進む道が開けたり等。
      • ヒントなしでもプレイできるかというとそうとも限らない。特定の蛇口を特定の箇所にひねる、本に浮かび上がる模様を特定の順番で押す、といった動作が求められる一幕があるが、ヒントをみないと100通り程度ある試行をこれまたあてずっぽうするしかない。
      • 少しのアイテムを見逃しても行き詰る可能性が高い。部屋を先に進むには、別の部屋からアイテムを拾ってきている必要がある場合もある。ささやかな場所に隠してあったりするので見逃しやすい。
    • 部屋にも2種類あり、さらに奥の部屋に進むことが目的の部屋、システムで挙げたブレスレットの活性化に関係する部屋(=行き止まりの部屋)の2種類がある。後者が行き止まりだということも当然説明してくれないので、さらに先に進むための方法を無駄に考えてしまう事態もありうる。
      • そもそもの話、ブレスレットのかけら集めや活性化に関しても、ゲーム中の目的としてはっきり明示してくれず、プレイヤー側がゲームの雰囲気から察する必要がある。
      • ブレスレット関連で、何かしらをとり逃したりやり逃したりすると、緑色の芋虫のおじさんがいる部屋から先に進めないのだが、そもそもブレスレットが先に進むフラグになっていることに気づけないケースも考えられる。
    • 以上のことから、クリアするために攻略サイトやyoutubeのプレイ動画を覗いたプレイヤーも多いのではないだろうか。
    • ボスの存在も唐突。いままでフラグがあってチラチラと出ていたのではなく本当に急に出てくる。なぜ倒さなくてはならないのかといった疑問を挟む余地を与えてくれない。ゲーム性も急にシューティングゲーに変わるので困惑必至。
  • ヒントの仕様
    • 画面右下にある4段階のヒントがなぜか数秒間しか表示されない。理解するのに時間のかかるイラストがヒントになっていることもあるが、やはり数秒間しか表示されない。
    • 「-(マイナス)ボタン」によるヒントも数秒間の表示にとどまっている。
  • 位置関係の管理が雑
    • 大抵の物体は、バイオレットがかなり離れていた状態でも干渉できる。一方でバイオレットが指定された位置に立っていないと干渉できないような物体も一定の割合存在する。その2パターンの間で何が違うのかもはっきりしない。
    • ゲームを進めていくと空を飛べるようになるが、その能力を使ってどこでもいけるというわけではなく、ゲームの都合上指定された範囲しかいけない。
  • 不具合など
    • 左スティックでバイオレットを操作しづらい。バイオレットのフットワーク自体がもっさりしているのもあるが、攻略しているマップによっては、入力に反してあらぬ方向にいってしまったり。そのためSwitch画面をタッチして、バイオレットを逐一導いていったほうがミスは少ない。
    • 別の部屋に移動しようとした際、バグでマップが切り替わらないことがある。こちらもボタンではなくタッチ操作することでバグが起こりにくくなる。

総評

洋ゲー特有のバタくさいデザイン、少し奇妙でグロテスクな世界観が特徴で人を選びうる。それだけでなく特にゲームを先に進めるうえで必要な説明がかなり省略されているので、クリアするのがなかなか大変なゲームとなっている。そのため奇妙な世界から脱出するために、時にはノーヒントで常識をかなぐりすてた解法を思いついて先に進んでいかなくてはならない。

最終更新:2021年09月15日 18:19

*1 誤植と思いがちだがこれが原題である。