アラビアンナイト~砂漠の精霊王~
【あらびあんないとさばくのせいれいおう】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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20MbitROMカートリッジ
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発売元
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タカラ
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制作元
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パンドラボックス
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発売日
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1996年6月14日
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定価
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7,800円(税抜)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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3個
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判定
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なし
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ポイント
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素材は高品質 戦闘バランスが足を引っ張る 真エンドへの道のりが厳しい
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概要
アラビアをモチーフにした大陸を舞台に冒険をするRPG。
プロデューサーは中野隆幸氏。シナリオは早川奈津子氏。音楽は根本一郎氏と田村大輔氏などが起用されている。
世界観だけではなく、マルチシナリオ、カードを使った戦闘など本作独自の要素があり力が入っているのは確かだが、ゲームバランスやフラグ関連の問題点も大きく足を引っ張っている。
ストーリー
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スレイマンとイフリートの時代から数百年後を舞台に、心優しき少女シュクラン、力強い精霊イフリート、盗賊のハーティの3人で世界を平和にする旅が始まる。
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舞台はアラビアをモチーフにした世界であり、魔物や精霊と人間が共存するエジプトの町も登場。本作独自のものとしては、通貨は「タム」、魔物は「デーヴ」と呼ばれている。
内容
登場人物
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シュクラン
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主人公の少女。両親を亡くして以来健気に生きていたそんなある日、指輪を拾ってイフリートに出会う。彼女の願いは「世界の平和」のためにともに旅をする事だった。
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おっちょこちょいでよくコケる。
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通常攻撃を外したり、逃げる最中にコケて捕まったり結構コケる描写がされている。
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戦闘スタイルは、得意武器が刃物で、魔法は精霊を召喚するというもの。
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イフリート
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精霊王で力自慢の熱血漢。数百年前にスレイマンに敗北して以来仕えていたが、そのスレイマンにより契約の指輪に封印されてしまう。
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本来の力を抑えられており、封印を解くには1000人の願いを叶えなくてはならない。999個の願いを叶え、残り1つの願いは少女シュクランとの平和を目指す旅だった。
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怪力で鎖程度なら簡単に破る事ができる。また、本来の力は魔水晶に封じられており、手に入れるたびに本来の力を取り戻していけるので新しい道が開けたりすることがある。
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戦闘スタイルは怪力を活かした拳と多彩な攻撃魔法。
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ハーティ
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手癖が悪い盗賊の少年。偶然出会ってから行動を共にするようになる。色々と情勢に精通している一面も。
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戦闘スタイルはブーメランなどの投擲武器、魔法は使えないかわりにSkillコマンドで相手を状態異常にかけたり、確実に戦闘から逃げる「とんずら」。他にもアイテムやカードを盗んだりと、変則的な戦略を得意とする。
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以上、本作は最後までこの3人のパーティで進行する。
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セレクトボタンで歩行キャラの表示が切り替えられ、フィールドで流れる曲や人々のセリフが変化したりすることがある。
ゲーム内容
戦闘
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ランダムエンカウント方式で、画面構成はクォータービューで表示される。
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基本ルール
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ターン制で、武器やアイテムや魔法などを使って戦う。エンカウント率は高いが逃げるコマンドは用意されている。あとは、レベルアップの際は全回復、全滅したら即ゲームオーバーになる仕様。
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オート機能も用意されており必要に応じて手動に切り替える事もできる。
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結界のカード
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本作のウリの一つ。ターン毎の行動前に『Card』コマンドから手持ちのカードを出す事が出来て、床一面が大きな絵柄に変わり特有の効果を発揮するようになる。
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全体攻撃や回復や防御力アップやクリティカル確定や物理攻撃無効など色々な効果があり3ターン持続する。勿論、敵の方も使ってくる。
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カードのレベル
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LVは0~5まである。こちらと相手が同時に出したら、レベルの高い方が優先されて、同じレベルなら相殺される仕様。尚、スペシャルカードはレベル0でありそのターンでは相手のカード全てに勝ち、発動する効果も強力なものであるが次のターンでは無条件で全てのカードに負けるというものになっている。
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カードの取り扱い
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カードは敵の戦利品として入手可能であるが、上限は16枚で取捨選択が求められる。
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力が入っている要素の一つでありカードマスターというボスまで登場している。
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精霊
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各地で精霊を仲間にすると戦闘中に呼び出す事が出来る。主人公のシュクラン専用で、パーティーの後方からサポートをしてくれるようになる。
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熟練度があり、最初はただの物理攻撃をする程度であるが、普段から使ってあげていれば有用なサポートをしてくれるようになる。
その他
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セーブ仕様
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フィールド、宿屋で行うことが出来る。また、ダンジョン内部にはセーブポイントも設置されている。書き込み先は任意の箇所に行える仕様。
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マルチエンディング
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行く先々では選択を突き付けられる事があり、それがエンディングに関わって来る。ただし初見ではいくつか外す事も多いだろう。
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ちなみに、通常エンドと真エンドで更にそれぞれ2択が出てくるので併せて4通りとなる。
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あらゆる場所でのあらゆる出来事に応じて、シュクランが日記をつけており冒険の内容を記している。勿論、後で見返す事が出来る。
評価点
素材は良好
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良質なグラフィック
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アニメ絵調のキャラデザを再現した大きな顔グラや戦闘時にアニメーションする敵グラフィック、キャラクターを縮小表示してマップの広大さを表現する手法、街中に流れる雲の影を半透明で表現する手法など、グラフィックの質が優れており、近い時期に発売されていた有名作にも劣らない美麗な出来栄えとなっている。
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ドット絵は多彩な動作が描き込まれている。
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戦闘中も色々な動作をするがレベルアップした際のポーズまで用意。フィールドでもシュクランがコケたり、落下した際はイフリートが受け止めたり、服を手に入れると着替えて色々な服装になったり力が入っている。
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フィールドでは斜め移動に対応している。
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BGM
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作中では良曲が豊富に用意されている。
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サウンドテストも用意されており、作中で一度聴いた曲はいつでも聴けるのも良い。
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ユーザーインターフェースも快適
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メニュー画面ではコマンドは1つ1つにアイコンが用意されていて分かり易くて操作性も良い。
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アイテムの取り回しも良い
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こちらもアイコンが用意されているのは勿論、解説文もついており、ワンタッチで並べ替えができるなど、機能面でも配慮されている。また、通常アイテムとイベント用で分けられているのもプラスポイント。
ゲーム性
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戦闘
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基本的に武器と魔法で殴り合うのはオーソドックスであるが、そこに手持ちのカードをぶつけ合うという軸が加わり、駆け引き要素もある。
賛否両論点
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ストーリー面で重苦しい場面もある
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訪れた村が既に滅ぼされていたり人々が命を落としたりする場面もでてくる。また、後に協力者になってくれる鋼の精霊バルドゥは面白半分で村を滅ぼし命を奪っているのだが共感は難しい。勿論、真エンドでは彼も味方に付けなければならない。
問題点
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通常戦闘
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まず、エンカウント率が高めで鬱陶しい。しかも固い敵が多く倒すのに時間がかかり中には魔法でしか倒せない敵もいたりしてより面倒である。
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ボスバトル
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ザコ敵が固い一方、殆どのボスがHPが低く簡単に倒せてしまうので盛り上がらない。戦闘中には会話の類は一切なく武器と魔法で殴り合うのみである。
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カードの取り回しが悪い
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最大所持数が少ない
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合計で16枚しかなく簡単に全部埋まってしまうので、色々と集めて色々と試してみるという事は難しい。
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不要なカードを売ったりする事も捨てる事も出来ないので、戦闘で使ってなくすしかない。既に埋まっている際は敵を倒してもカードを落とさなくなっている。せめて別のカードを捨てて手に入れられれば少しは違ったのだが。
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敵が厄介なカードを使って来る
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一部の敵は「おかね きゅうしゅう!!」を出してくるのだが、所持金を大きく持っていかれてしまう。更には、その相手を倒した際でも戻ってこないのがきつい。
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1戦で数十タム得られるのに対し1回で数千タム持っていかれる事があり痛い出費になってしまう。このあたりはゲームバランスという面でも大きなマイナス要素になっている。
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ストーリーとの関連も薄い
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人々からカードの仕様については殆ど説明がなく、強いて言うならレベル0のカードの入手の話くらいである。
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真エンドを見るための条件が厳しい
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各地では選択肢がたびたび出てくるのだが、1つでも外したら真エンドへの道は絶たれる事になり、しかも詰んでいる事も後になってから気付く事になる。このため初見では通常エンドを見てから、また最初からゲームを始めるという前提になっている。
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右に行くか左に行くかの分かれ道があり、間違ったほうを選んだだけでアウトという場面もある。
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協力してくれる精霊を全て集める必要があるのだが、その条件が厄介なものも少なくなく、分かりづらい位置にある隠し宝箱や各地をまわってアイテムを回収してくるなど面倒なものが多数。
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一部の精霊は順番を後回しにすると登場しなくなるなど、手順を間違えるだけで詰んでしまう。
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ラストダンジョン関連の構成も悪い
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ようやく来れた本当の最終盤の構成も悪く、ラストダンジョンから戻ってくる事はできずにラスボスを倒しに行くしかなくなる。作中ではそういう説明が一切ないまま話が進んでしまうのでより難儀な事になってしまっている。
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ラストダンジョンも、特に仕掛けなどはなく今まで攻略した建物内部と変わり映えがしない。ただし、ラスボス手前のマップは力が入っている。
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ザコは強いがボスは弱いというバランスに漏れず、ラスボスも簡単に畳み込めてしまうのでまったくもって味気ない。
その他
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文章のバランス
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顔グラが表示されているのは良いが、それにより文章のスペースが圧迫されており詰め込んだ印象、しばしば変なところで改行が入るのはザラ。シリアスな場面でもそうなるのでやや興が削がれる。
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階段の斜め移動には未対応
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大きな階段が立体的に描かれているのは良いのだが、方向キーをジグザグに押さなければならないので不便。ただ、人々が階段を上って避難する際は斜め移動をしているようになっている。
総評
本作の世界観は良く練られており、良質な素材がそれらを引き立てている。
しかしながら、その一方では終始戦闘バランスに悩まされ、カード要素やマルチシナリオ関連も大きな問題点を抱えており、強みを活かすどころか大きく足を引っ張っている。
総合的に良作と呼ぶのが難しいのは残念なところである。
最終更新:2022年08月17日 23:32