本項目ではファミリーコンピュータ ディスクシステム用ソフト『スーパーロードランナー』(判定:良作)、および『スーパーロードランナーII』(判定:不安定)の2作品について記述する。
スーパーロードランナー
【すーぱーろーどらんなー】
ジャンル
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アクションパズル
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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アイレム
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発売日 ()は書換開始日
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1987年3月25日(1987年5月1日)
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定価
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3,100円
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プレイ人数
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1~2人
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判定
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良作
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ポイント
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メーカーは違えどバッチリ発展形 入門からチャンピオンシップ級まで網羅 息の合った連携が試される2Pモード 移植元との番兵性能の違いから別物感も
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バンゲリング帝国三部作 チョップリフター (FC) / ロードランナー (FC / スーパー / レジェンドリターンズ エクストラ / POWER / ドムドム団のやぼう / キュービック) / バンゲリング ベイ (FC)
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概要
アイレムが1987年に発売したアクションパズルゲーム。
原作はアメリカのブローダーバンドから1983年に発売されたアクションパズルゲームで、『バンゲリング ベイ』『チョップリフター』と並ぶバンゲリング帝国三部作の一つである。
ハドソンのファミコン参入第1号で有名なアクションパズルゲーム『ロードランナー』より以前の1984年にアイレムがアーケード版を発売。本作はそのアーケード版準拠の移植作である。
アーケード版は4作目まで出ており、後期になるにつれパズル要素が濃くなっていった。
内容的にはハドソン版で例えるなら「ロードランナー」と上級者向けの「チャンピオンシップロードランナー」を複合したような内容になっていると言えるだろう。
アーケード版『IV』で採用され、ハドソン版には無かった2人プレイのモードを搭載しており、2人が協力し合わなければとても突破できないステージも用意されている。
ストーリー
魔神によって略奪された民衆の宝(金塊)は、すべて魔神の塔に運びこまれた。そしていま、奪われた金塊を取りもどすために、コマンダーが魔神の塔に潜入。魔神の手下たちの追跡をふりきり、金塊を取りもどせ。
内容
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基本的にはオリジナルと同じで、金塊を集めて全て回収すると脱出用のハシゴが出るので、それを上がってクリアとなる。
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番兵も金塊を回収し、主人公に襲い掛かってくる。
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戦う手段は穴を掘って埋めること。
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番兵の頭の上に乗っている分にはミスにならず、それを利用しないと取れない金塊がある。
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アーケード版は性質上時間制限があったが、今作では撤去されている。
ハドソン版と異なる主な特徴
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得点の加算はその場その場で行われる。
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ハドソン版同様プレイするステージ選択ができるが、クリア済のステージのみ可能。
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ハマリ時はハドソン版同様セレクトボタンで戻れるが、リトライではなく自滅扱いで残機が減る。
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見えないレンガがあり、掘ると以後見えるようになるが、見えない状態でも足場になっている。
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レンガに隠れた番兵「ハイドキャラ」がおり、穴を掘ったら姿を現す。
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発見するとステージ内の番兵が1体増える代わりに1000点が加算される。
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敢えてこのハイドキャラを出して、穴をふさがせたりなど利用しないと突破できない場面がある。
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Sマークのある「スペシャル金塊」は、最初に取ると3000点の高得点。他の金塊を先に取るとSマークが消えて普通の金塊と化す。
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埋めて倒された番兵は画面上部から復活するが、復活までの時間がハドソン版に比べると長い。
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番兵を1人も倒さずクリアすると10000点ボーナス。
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番兵のグラフィックは14種類(能力は同じ)で、5面ごとに入れ替わる。
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番兵が直感的な動きでプレイヤーを追いかけてくる。
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ハドソン版は通称スイッチと呼ばれる特定行動に反応して行動を変えるので、慣れないプレイヤーは番兵の動きに翻弄されやすい。
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2人協力プレイのモードがある(詳細は後述)。
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エディットで作成したステージをディスクカードの特性を利用してセーブできる(1P・2Pそれぞれ5面ずつ)。
2人協力プレイの特徴
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相方プレイヤーの頭の上に乗って足場とすることができる。
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これを利用して下に向かって垂直に2列掘ることもできる。
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頭に乗せたまま左右移動もできるが、十字キーを2人同時に押し続ける必要があり、息が合わないと落下してしまう。
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バーにぶら下がった相方にぶら下がって移動できる。
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この場合も十字キーを2人同時に押す必要があり、息が合わないと落下する。
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その状態でレンガを掘ることも可能。
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残機は共通で、どちらか片方がやられるだけでミスとなり最初からやり直しとなる。
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ステージクリアもどちらか片方がゴールするだけで達成となる。
評価点
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2人プレイはお互いがしっかり解法を理解してバッチリ息の合った連携を要求される。
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兄弟にせよ友達にせよ、お互いの息を合わせて難問を突破した達成感は1人では味わえない感慨深さがある。
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また2人プレイの特徴をしっかり活かした形になっている。この連携が理想的に機能できるプレイヤーはまさに心の通い合ったナイスコンビと言えるだろう。
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豊富なステージ構成。
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1人プレイ用55面、2人プレイ用15面と全70面あり、ハドソン版での50面に比べても豊富。
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難しいテクニックもいきなり多用が必要にならない適度な難易度。
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最初の5ステージはほぼ練習モードに近い。6ステージからは番兵を利用したハイテクニックが必要になるが、それも少しずつ難易度が高まっていくので比較的バランスが良い。
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2人用プレーの場合もステージ1は特に連携プレーをする必要もなくクリア可能なので実質練習面になっている。
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こちらも、連携のテクニックを順番に慣れていけるようなバランスの良い構成になっている。
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スペシャル金塊や敢えて番兵を倒さないで得られるボーナスによる技術介入要素。
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スペシャル金塊の取得が難しい面があり、高得点のためには更に一段階難しく考えたりする必要があるなど元々ハイレベルだったアクションパズルに+αの奥深さを加えている。
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所によっては、これを敢えて諦めなければ突破できない面がある。
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また番兵を敢えて倒さずクリアというのも、難しい面が多々あり、敵はただ倒せばいいという単純な考え方を払拭している。
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敵を倒さなければ突破できない面も存在するため、全ステージで達成する事は不可能。
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ディスクの特性を生かしてエディット面のセーブができる。
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ハドソンのロムカセット版単体ではできなかったため、ゲームをプレイするたびに入力しなければならなかった。 また、ステージを作成する時に落とし穴や脱出ハシゴの位置が先バレてしまうという難点があったが、それを克服している。
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ディスク特有の難点であるロード時間も5面毎と頻度が低いので、ロード頻発の煩わしさを感じにくい。
賛否両論点
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他機種版と全く異なる番兵の挙動
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元のアーケード版とは異なる独特の動きや性能のため、アーケード版の攻略パターンが通用しない。
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コマンダーとの間に穴(床の切れ目)や窪みがあろうが、こちらに寄ってきて勝手に落ちていく。
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コマンダーが上方にいると足場から落ちることなく端で反転するという特徴がある。このため落としたい場合は、番兵の頭上やそれ以下の高さまで降りて誘導する必要がある。
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また窪みにシール(閉じ込め)してもコマンダーの動きに関係なく右往左往する。さらにアーケード版独自の仕様として、1か所の窪みに何体でもまとめてシールできるというものがあったがもちろんこれも不可能。
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このようにアーケード版はおろか他機種(特にハドソン版)と異なるアルゴリズムや仕様のため初心者にはありがたいものの、それらに慣れ親しんだプレイヤーほど戸惑うことだろう。アーケード版のファンからは「がっかり移植」と言われてしまうことも。
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1UPがない
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アーケード版にあったスコアによる1UPも撤廃されているため、スコアの持つ意味がやや薄れている。
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ただしハイスコアがセーブされる仕様もあり、通しプレイによるスコアアタックの楽しみはある。
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不可解な一部敵のグラフィック
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番兵のグラフィックはがんばって再現されているが、1Pモード第2の敵「バービー」に、なぜかアーケード版の別の敵のドット絵が使われている。
問題点
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バーの判定がシビアで、少し下にズレているだけで掴まれずに落ちてしまう。
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ハドソン版の感覚が残っているプレイヤーには少々やりづらいところ。
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当該の場合バーを掴むようなグラフィックになりながらも落ちてしまうという挙動を取るため紛らわしい。
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2人プレイの場合、スクロールがついていかず、必然的に常に近場での行動を強いられる。
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一応、連携が必須のゲーム性なのであまり障害にならないのは幸い。
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ハイドキャラは攻略に必要にもかかわらず、その場所はノーヒント。
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トラップキャラとしては問題ないが、それを利用しなければならないことを考えると少々理不尽。
総評
元々完成されていたゲームにアーケード版の追加要素であるスペシャル金塊といったボーナスや2人協力プレイなど+αが加えられ、ゲームの幅は更に広がった。
全体的な難易度こそ高いものの、最初の5ステージが実質練習モード的な位置付けになっており、他機種版未経験のロードランナー初心者でも入っていけるなど間口も広い。
更に対戦という形ではなくお互いの連携が必須となる2Pモードは、2人の息がピッタリ合わなければクリアできないという当時の他のゲームでは味わえない斬新さがある。
4作も出たアーケード版でよりブラッシュアップされて更に良質なものとなったと言える。
その後の展開
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同年8月24日に、本作の続編『スーパーロードランナーII』が書き換え専用で発売された。詳細は下記。
余談
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ハドソン版でロードランナーはかつてロボットだったという設定になっているが、本作の主人公コマンダーはれっきとした人間である。
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説明書の挿絵は、小学館学習雑誌の「スーパーマリオくん」や、ファミマガの「ディスくん」の漫画などでおなじみの嵩瀬ひろし氏が描いている。
スーパーロードランナーII
【すーぱーろーどらんなーつー】
ジャンル
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アクションパズル
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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アイレム
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書換開始日
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1987年8月25日
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定価
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500円(書換専用)
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プレイ人数
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1~2人
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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スーパーロードランナーの敵仕様を生かした面構成 初心者お断りの突き抜けた難度
クリア不能面あり
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エンディングの見れない
2Pモード
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概要(II)
スーパーロードランナー(以下『前作』)の続編。前作の内容を踏まえ、より上級者向けの内容になっている。
また2Pモードのステージは、前作発売後にユーザーから公募されたもので構成されている。
内容(II)
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基本的な仕様・ルールは前作とほぼ同じで、番兵のアルゴリズムも同一。穴掘り音が「バシン」という軽いものから「ズバン」というやや重厚なものになるなど、一部のSEが異なる。
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ステージは1Pモード・2Pモードともに全30面で、本作完全オリジナル。前述の通り2Pモードのステージは公募によるもの。
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番兵はこちらも本作完全オリジナル。前作のような獣型のもののほか、目玉やナメクジのような番兵、果てはコマンダーの偽物のような者など、前作とはまた違った方向性のデザインでバラエティに富む。名前が設定されていないのが残念なところ。
評価点(II)
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独特の番兵アルゴリズムを生かした面構成
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番兵を1ブロック分のハシゴの上で引き付けることで一周回すような格好で頭乗りできたり、窪みを右往左往するおかげで番兵1体で長い谷間を渡れるなど、アーケード版等と全く違う動きを逆手に取ったステージ構成はなかなか見事。他機種版では攻略不可能な地形も多々あり、それらに親しんだプレイヤーでも新鮮な気持ちでプレイできる。
賛否両論点(II)
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運任せ要素のある面が複数ある
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1Pモード・2Pモードともに複数存在する。特に2Pモードはユーザー募集のステージのため、運要素だけでなく非常に面倒なステージも多々ある。
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2Pモード終盤の数面はかなり極悪。クリア動画の製作者によれば「実機でのクリアは困難を極める…というか絶望的なレベル」とのこと。
問題点(II)
仕様をまんま流用しているため、前作の問題点は本作にもそのまま当てはまる。ここではそれらを除いた、本作独自の問題点を挙げる。
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クリア不能面の存在
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本作最大の問題点。2Pモード側に2つほど、作り込みが足りずクリア不能面が存在するという、製品としての大問題がある。しかもうち1面はよりにもよって最終面であるため、エンディングが正規の手段では見ることができないという有様。
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前作同様面セレクトの裏技が実装されているので、途中の1面はこれで飛ばすことができる。
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アイレムに問い合わせると、ソフト郵送後その面をクリアした状態のデータで返却されたとのこと、要は"飛ばせ"と言うことなのだろう。尤も上述の理由でそれでもエンディングを見ることはできないのだが。
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ちなみにエンディングの内容はステージ製作者の名前が並んだのち「THE END」となる案外素っ気ないものである。
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また2Pモードは難易度曲線もかなりいびつ。2面でいきなり難易度が跳ね上がったと思うと9面・10面あたりで落ち着き16面あたりは本作最低ランクに落ちたりする。ただ前述の通り最終面付近は運任せの激高難度ステージが連続するのだが。
総評(II)
前作の反省からか移植元と異なる仕様を逆手に取った面構成、そしてユーザーからステージを募集するという意欲的な企画によって難しいながらも面白い作品に仕上がる可能性はあった。
しかし応募ステージの内容・難易度の充実と製品の開発期間に制作陣が板挟みにされたのかクリアチェックや難易度調整が行き届かず、未完成と言われかねない残念な状態で世に出てしまった、悲運のロードランナーといえるだろう。
最終更新:2024年02月23日 19:54